キャップレートとは、不動産の収益価格を試算するための基準となる利率で、「還元利回り」とも呼ばれる指標です。本記事では、キャップレートの見方や考え方を、プロが実務視点で解説。キャップレートの相場や相場の調べ方、収益物件タイプ別のポイント、投資判断に活かすための検証手順なども紹介します。
※以下の情報は2026年8月時点の情報をもとに、宅地建物取引士の河原田琢人が監修しています。
この記事で分かること
- キャップレートは、不動産が生み出す純収益と価格の関係を表す利率で、既知の価格から利回りを確認する方法と、市場の利回りから収益価格を試算する方法がある
- NOIとNCFでは収益の範囲が異なるため、キャップレートを比較・設定するときはどちらを使用するかなどの条件をそろえる必要がある
- キャップレートから求めた収益価格をもとに平常時のNOI、購入諸費用、融資返済、金利上昇、将来の売却価格などを検証して反映することで、自分にとっての購入上限額を判断しやすくなる
目次
キャップレートとは?
最初に、キャップレートを投資判断に活かすために必要な、基本の知識を押さえましょう。
キャップレートの定義と計算式
キャップレートとは、不動産が一定期間に生み出す純収益(NOI)と、その不動産の収益価格との関係を示す利率です。日本語では「還元利回り」とも呼ばれ、不動産鑑定評価で収益価格を求める際の基礎となります。
保有している物件やすでに取引された物件など、価格がすでにわかっている場合は、価格に対する純収益の利回り水準を確認できます。一方、購入を検討している物件では、売出価格が提示されていても、その価格が妥当とは限りません。市場調査や類似物件の取引などを参考に、適用するキャップレートを設定すれば、純収益から収益価格が逆算できます。このように、対象物件へ適用するキャップレートを設定することを、「キャップレートを置く」と表現する場合があります。
| キャップレート |
|
|---|---|
| 収益価格 |
|
| キャップレート | 収益価格 | キャップレートが0.5ポイント上昇した場合の差 |
|---|---|---|
| 3.5% | 約3億4,286万円 | - |
| 4.0% | 3億円 | ▲約4,286万円 |
| 4.5% | 約2億6,667万円 | ▲約3,333万円 |
計算に使う純収益とキャップレートの前提は、そろえなければなりません。NOIを使う場合はNOIに対応したキャップレート、NCFを使う場合はNCFに対応したキャップレートを使用します。前提が異なると、収益価格を見誤る恐れがあるため、注意が必要です。
NOIキャップレートとは
NOI(Net Operating Income)は、一般的に「純営業収益」と訳されます。物件で得られる収入から空室損失や貸倒損失、物件の運営に経常的に必要な費用などを差し引いた金額で、下記の手順で計算できます。NOIを使用して計算するキャップレートが「NOIキャップレート」です。
◎NOIキャップレートの計算式
「NOIキャップレート」=「NOI」÷「不動産価格」×100
NOIが1,500万円、不動産価格が3億円であれば計算式は「1,500万円÷3億円×100」で、NOIキャップレートは5.0%です。
実務上は、取得価格や売出価格から逆算したNOI利回りも「キャップレート」と呼ばれることがあります。ただし、価格から逆算した利回りと、物件の収益価格を求めるために市場分析から設定した還元利回りは、意味が同じとは限りません。
売出価格から逆算した利回りが5.0%だからといって、市場が当該物件を5.0%で評価しているとは限らない点に注意が必要です。
| 1.有効総収入を計算する | 「有効総収入」=「満室想定の総収入」-「空室・貸倒損失」 |
|---|---|
| 2.NOIを計算する | 「NOI」=「有効総収入」-「経常的な運営費(※)」 |
| 運営費に含まれるもの (NOIから控除する) |
維持管理費、プロモーション費用、固定資産税、都市計画税、損害保険料、共用部の水道光熱費、経常的な修繕費、平準化した募集費用など |
|---|---|
| 運営費に含まれないもの (NOIから控除しない) |
借入金の元利返済額、減価償却費など |
借入金の返済額や減価償却費など、NOIから買い手ごとの資金調達や税務の条件を除くことで、物件自体の運営収益力を比較しやすくなります。ただし、資料によってNOIの計算条件が異なる場合があります。比較するときは、次の点を確認しましょう。
- ● 空室損失は実績値か、想定値か
- ● 現在の賃料か、市場賃料へ補正した金額か
- ● 修繕費は単年度の実績か、平準化した金額か
- ● テナント募集費用を計上しているか
- ● 自主管理の場合も管理費を見込んでいるか など
NCFキャップレートとは
NCFは「Net Cash Flow」の略で、純営業収益へ敷金・保証金などの一時金の運用益を加算し、資本的支出を除いて求めた純収益です。大規模な設備更新のような数年ごとの支出まで反映するため、NOIより数字が保守的になりやすいという特徴があります。NCFを使用して計算するキャップレートが、「NCFキャップレート」です。
◎NCFの求め方
「NCF」=「NOI」+「一時金の運用益」-「資本的支出(※)」
※資本的支出は、建物や設備の価値を高めたり、耐久性を増したりする部分に対応する支出です。通常の維持管理や原状回復に必要な経常的修繕費とは分けて考えましょう。
資本的支出の詳細は、下記の記事で解説しています。ぜひ、ご覧ください。
関連記事:修繕費・資本的支出をフローチャートで簡単判断!迷いやすいポイントもわかりやすく事例で解説
◎NCFキャップレート
「NCFキャップレート」=「NCF」÷「不動産価格」×100
| 項目 | NOI | NCF |
|---|---|---|
| 主な役割 | 通常の純収益を確認する | 資本的支出などを反映した純収益を確認する |
| 経常的な運営費 | 控除する | 控除する |
| 一時金の運用益 | 含めない | 含める |
| 資本的支出 | 控除しない | 控除する |
同じ物件でも、使用する純収益によって利回りの水準は変わるため、資料を比較するときは、純収益の種類もそろえましょう。なお、「NOIキャップレート」「NCFキャップレート」という名称や計算条件は、すべての資料で統一されているわけではありません。名称だけで判断せず、分子となる収益と分母となる価格を確認することが大切です。
表面想定利回り・実質想定利回り・表面現況利回り・実質現況利回りとの違い
不動産投資では、キャップレート以外にも複数の利回りが使われます。ただし、「表面想定利回り」「実質想定利回り」といった名称や計算条件は、法律や会計基準によって完全に統一されているわけではありません。代表的な利回りは、下記のとおりです。
| 表面想定利回り |
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|---|---|
| 実質想定利回り |
|
| 表面現況利回り |
|
| 実質現況利回り |
|
これらの利回りは、その物件の実績や想定をベースに収益性を測る指標です。一方でキャップレートは、その価格自体が妥当かどうか、市場目線で検証する指標といえるでしょう。知りたい内容にあわせ、適切に使い分けるのがおすすめです。
利回りの詳細が気になる方は、下記の記事をご覧ください。
関連記事:表面利回りとは?実質利回りとの違いや計算方法をわかりやすく解説
関連記事:アパート経営で重要な4つの利回りの考え方や計算方法、目安となる相場などを簡単解説
キャップレートが示す物件価格とリスクの関係
キャップレートと収益価格は、逆方向に動く性質があります。
| 項目 | キャップレートが低い場合 | キャップレートが高い場合 |
|---|---|---|
| 同じ純収益に対する 収益価格 |
高くなる | 低くなる |
| 市場からの見え方 (傾向) |
|
|
| 投資判断の ポイント |
価格上昇の背景と将来の賃料を確認する | 高い利回りの理由と、収益の再現性を確認する |
ただし、キャップレートの高低を、単純に「安全・危険」だけで判断することはできません。高い利回りの背景には、次のような課題が隠れている恐れがあります。
- ● 現在の賃料が相場より高い
- ● 近く大規模修繕が必要
- ● 特定テナントへの依存度が高い
- ● 退去後の再賃貸が難しい
- ● 特殊な事情で、売却時の買い手が限られる
重要なのは数値の高低ではなく、「なぜその水準になっているか」という理由です。地域要因と物件の個別的要因を分析し、納得できるかどうかで判断しましょう。
キャップレートの相場と調べ方
キャップレートは物件の用途やエリア、状態などによって相場の水準が異なります。ここでは公表されている数値を例に、利回りの読み方と、対象物件へ適用するキャップレートを調べる方法を解説します。
- 1. キャップレートの相場
- 2. キャップレートの調べ方
キャップレートの相場
キャップレートには、全国共通の相場があるわけではありません。エリアや用途が同じ物件でも、築年数や駅からの距離、建物規模、稼働率、テナントの構成、契約条件、修繕状況などの要素によって適切な水準は異なります。
キャップレートは複数の信頼できる情報をもとに、おおむねの範囲でとらえることが大切です。相場については、下記の記事でご確認ください。
CRE-NAVI「キャップレートの動向 ~最新の不動産投資家調査より(2025年10月)~」
キャップレートの調べ方
キャップレートを調べる方法は、主に下記の3種類です。
| 方法 | 概要 |
|---|---|
| 不動産の収入・支出明細から計算する |
|
| 類似物件から計算する |
|
| キャップレートの公開データを活用する |
|
いずれの場合も、分子となる純収益の定義や分母となる価格の種類、調査時点、物件条件を可能な限りそろえて比較しましょう。
方法1.不動産の収入・支出明細から計算する
保有している物件や購入価格が判明している物件では、下記の計算方法で「NOIキャップレート」が計算できます。
| 計算式 | 「NOIキャップレート」=「NOI」÷「不動産価格」×100 |
|---|---|
| 例 | 年間の賃料収入などが2,000万円、運営費が500万円、物件価格が3億円の場合、年間NOIは1,500万円で、NOIキャップレートは5.0%です。 「NOIキャップレート」=1,500万円÷3億円×100=5.0% |
◎計算に必要となる主な資料
- ● レントロール
- ● 過去12~24ヵ月程度の収支実績
- ● 管理委託契約書
- ● 固定資産税・都市計画税の課税明細
- ● 損害保険の契約書
- ● 修繕履歴
- ● 水道光熱費や清掃費などの明細 など
売主から示された満室想定賃料だけを使うと、空室損失や運営費が反映されず、実際の運営収益力より高く見える場合があります。一方、直近1年間の収支をそのまま使えば良いというわけでもありません。
一時的な満室・空室や突発的な費用を切り分け、通常の運営状態で見込まれるNOIへ調整しましょう。なお、この方法でわかるのは、既知の価格に対するNOI利回りです。その価格が適正かどうかを判断するためのキャップレートは、類似取引や公開資料から別途検討が必要です。
下記の記事では、レントロールの見方や作成方法などについて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:レントロールとは?プロが教える見方、作り方、危ない物件の見分け方
方法2.類似物件から計算する
対象物件と条件が近い物件について、年間NOIと成約価格がわかれば、次の式で取引時のキャップレートが逆算できます。
| 計算式 | 「類似物件のNOIキャップレート」=「類似物件の年間NOI」÷「成約価格」×100 |
|---|---|
| 例 | 年間NOIが1,200万円、成約価格が2億5,000万円の類似物件なら、キャップレートは4.8%です。 「類似物件のNOIキャップレート」=1,200万円÷2億5,000万円×100=4.8% |
複数の事例を集めて条件の違いを比較すると、対象物件へ適用するキャップレートの範囲が検討しやすくなるため、おすすめです。
◎比較する条件の例
- ● 立地:エリア、駅からの距離、周辺環境 など
- ● 用途:住宅、店舗、事務所、ホテル など
- ● 建物:築年数、構造、規模、延床面積、戸数 など
- ● 稼働:稼働率、賃料水準、空室期間 など
- ● 契約:契約形態、残存期間、解約条件 など
- ● 収支:NOIに含まれる収入・費用 など
- ● 取引:取引時期、特殊な取引事情の有無 など
ただし、条件が異なる物件の利回りを、そのまま当てはめることはできません。類似事例より駅から遠い、築年数が古い、空室リスクが高いといった要因があれば、より高いキャップレートが求められる場合もあります。複数の取引事例を比較し、対象物件との条件差を一つずつ確認しましょう。
また、Webサイトなどで公開されている利回りは、売出価格と満室想定賃料から計算した表面利回りであることも少なくありません。成約価格とNOIを使った利回りかどうかなど、条件を確認する必要があります。
方法3.キャップレートの公開データを活用する
類似物件の情報を十分に集められない場合は、公的機関や調査会社、J-REITが公開する資料を参考にするのがおすすめです。市場の水準を把握したうえで、対象物件のNOI、類似取引、個別条件などと照合して活用しましょう。
| (一財)日本不動産研究所 「不動産投資家調査」 |
|
|---|---|
| J-REITの開示資料 |
|
| 国土交通省 「不動産情報ライブラリ」 |
|
| 不動産仲介会社・調査会社の市場レポート |
|
| キャップレートマップ |
|
【物件タイプ別】キャップレートの見方とポイント
同じキャップレートでも、物件タイプによって収益が変動する要因は異なります。ここでは物件タイプ別に、純収益が決まるポイントや確認すべき事項を説明します。
タイプ1.住宅
住宅タイプは現在の入居率だけではなく、退去後も同じ賃料で貸せるかどうかを慎重に見極める必要があります。
◎確認のポイント
- ● 現在の賃料と、周辺の募集賃料・成約賃料との差
- ● 入居者の平均居住期間と、年間の退去率
- ● 退去から次の入居までの期間、フリーレントの有無
- ● 仲介会社へ支払う広告料、原状回復費
- ● 設備の更新時期
- ● 入居者属性の偏り など
現在は満室でも、入居者が相場より高い賃料を支払っている場合、退去後に同じNOIを維持できるとは限りません。現在の賃料と市場賃料の両方でNOIを計算し、収益価格への影響を確認しましょう。
満室物件では、空室がないこと自体よりも、「退去した場合に何ヵ月で、いくらの賃料で再募集できるか」を確認することが重要です。
長期間入居している住戸は現行賃料が相場より低いこともあれば、サブリースや新築時の特殊な募集条件により、相場より高い賃料が維持されていることもあります。
現況NOIだけではなく、全住戸を現在の市場賃料へ置き換えたNOIも計算しましょう。
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タイプ2.店舗・テナント
店舗・テナントタイプの物件は、入居者の業績や商圏の変化によっても賃料収入が左右されます。特に、収入の大部分を1社や特定テナントへ依存している物件は退去時のリスクが高くなるため、注意が必要です。
◎確認のポイント
- ● テナントの業種・業績・信用力
- ● 賃料が固定型か、売上連動型か
- ● 普通借家契約か定期借家契約か、契約の残存期間、中途解約条項
- ● 原状回復の範囲、内装・設備の所有者と費用負担
- ● 後継テナントを確保できる立地か
- ● 現在の設備を別業態でも使えるか
- ● 周辺商圏や歩行者数の変化 など
たとえ長期契約であっても、中途解約条項やテナントの信用力によって収益の安定性は変動します。契約期間だけで判断しないようにしましょう。特殊な内装や設備がある場合は、退去後の撤去・改装費や後継テナントの募集期間も見込んでおく必要があります。
テナントの信用力が高く長期契約であっても、賃料が市場水準を大きく上回る場合、契約満了や退去後にNOIが低下する可能性があります。契約期間中の安定性と、退去後の再賃貸性は分けて評価する必要があります。
タイプ3.事務所・オフィス
事務所・オフィスタイプは、住宅に比べて景気の影響をダイレクトに受けやすいのが特徴です。不景気になると企業がコスト削減で退去し、次の企業が入るまでに数ヵ月から1年以上も空室が続くケースもあります。立地だけでなく、建物の仕様やテナント需要への対応力なども収益を左右する要因です。
◎確認のポイント
- ● 退去後の想定空室期間、フリーレント期間
- ● テナント募集費用、内装工事費・原状回復費の負担
- ● テナントの業種・信用力、特定テナントへの収入集中
- ● 空調方式、エレベーターの台数・更新時期、電気容量
- ● セキュリティ、通信環境、天井高・床荷重
- ● 耐震性能
- ● 周辺の新規供給計画 など
空調やエレベーターなどの大型設備が更新時期を迎えると、多額の資本的支出が発生します。NOIだけでなく、設備更新を反映したNCFや年度別のキャッシュフローでも検証するようにしましょう。
タイプ4.ホテル
ホテルは宿泊需要、客室単価、稼働率、運営方式などによって、収益が変動します。ホテルを分析するときは、まず運営方式を確認しましょう。
◎ホテルの主な運営方式
- ● 固定賃料で運営会社へ貸す方式
- ● 固定賃料と変動賃料を組み合わせる方式
- ● 売上や利益に連動する変動賃料方式
- ● 所有者が運営リスクを負う運営委託方式
固定賃料方式では、日々の宿泊売上が変動しても、ただちに影響が出るとは限りません。一方、変動賃料方式や運営委託方式では、宿泊市場の変化が所有者の収益へ反映されやすくなります。
◎確認のポイント
- ● 運営方式、契約期間・中途解約条件
- ● 固定賃料と変動賃料の割合
- ● 客室稼働率(OCC)、平均客室単価(ADR)、販売可能な客室1室あたりの収益(RevPAR)
- ● 運営委託料、予約サイトへの手数料
- ● 人件費、水道光熱費、家具・什器・備品の更新費、大規模改装費
- ● 周辺の新規ホテル供給 など
たとえRevPARが上昇しても、人件費、水道光熱費、予約サイト手数料などが増えれば、NOIの伸びは小さくなります。ホテルは賃料だけではなく、運営事業の収支や契約条件まで含めた分析が必要です。
ホテル投資の判断に関しては、下記の記事でも詳しく解説しています。あわせてぜひ、ご覧ください。
関連記事:ホテル投資の魅力と実態!利回りから具体的手法まで投資戦略を徹底解説
関連記事:RevPAR(レブパー)とは?計算式やADR・OCCとの違い、ホテル投資への活用法などを解説
関連記事:【計算式付き】ホテルのADRとは?収益を最大化する5つの分析手法と戦略を徹底解説
キャップレートから適切な購入価格を算出する4ステップ
キャップレートを使って算出できるのは、対象物件の純収益と市場利回りから試算した収益価格です。しかし、収益価格と自分が実際に購入できる上限価格は、異なる場合があります。実際の投資場面では、諸経費や修繕費、ローンの返済負担まで考慮して、適切な購入価格を見極めなければなりません。
ここでは、相場評価から自身の適切な購入価格を導き出す4つのステップを解説します。
ここで使用する物件や数値の例は、あくまでも計算手順を再現するための仮定です。キャップレートや融資条件などを一般的な相場として示すものではありません。
実際の場面では、ご自身が取得した資料や見積書に置き換えてご検討ください。
ステップ1.「平常時のNOI」を割り出す
最初に、標準的な運営状態で見込まれる年間NOIを算出します。参考になる主な資料は、「方法1.不動産の収入・支出明細から計算する」でご確認ください。
売主から提示された満室想定賃料や直近1年間の収支だけではなく、過去の実績や市場賃料を確認し、一時的な満室・空室や突発的な費用の影響を調整します。
ステップ2.類似物件の取引利回り・期待利回りから市場の基準を設定する
次に、対象物件へ適用するキャップレートの範囲を検討します。詳細は「キャップレートの調べ方」でご確認ください。
1件の事例や1つの公表値だけで決めず、複数の情報から「4.5~5.0%」のように幅をもたせるとシミュレーションの際に役立ちます。期待利回りと実際の成約価格から計算した利回りでは性格が異なるため、単純に平均するのではなく、それぞれの定義と物件条件を確認しておきましょう。
ステップ3.市場利回りを対象物件の個別条件に応じて補正する
「相場より築年数が古い」「駅から遠い」など、検討物件ごとのリスクを考慮し、ベースのキャップレートを調整しましょう。
| キャップレートを上げる要因 | キャップレートを下げる要因 |
|---|---|
|
|
| 個別条件 | 評価の方向 | 補正 |
|---|---|---|
| 類似事例より築年数が古い | キャップレートを上げる | +0.15ポイント |
| 駅からの距離が長い | キャップレートを上げる | +0.10ポイント |
| 合計 | - | +0.25ポイント |
調整後のキャップレートを使用して、市場における物件の「収益価格(評価額)」を算出します。具体的な算出方法は、「キャップレートの定義と計算式」でご確認ください。
※補正値は計算手順を説明するために任意に設定した仮定であり、市場の標準値や一般的な補正幅を示すものではありません。実際の補正幅は、複数の取引事例や鑑定評価、市場参加者へのヒアリングなどをもとに判断します。
ステップ4.出口・金利上昇への耐性を検証する
最後に、ステップ3で計算した収益価格から、購入時にかかる諸手数料などの費用を反映して、自分が購入を検討できる上限価格を絞り込みます。
購入上限額は、一人ひとりの資金調達額や必要収益率、保有期間などにより異なります。諸費用だけを見ても「仲介取引・売主直販」「融資手数料が定率・定額」「課税標準額」など、金額が変動する要素はさまざまです。項目を網羅的に拾い出し、できるだけ詳細に見積もりましょう。
キャップレートと借入金利の差は、投資の余裕度を見る一つの目安になります。しかし、キャップレートは元本返済、購入諸費用、資本的支出、税金を反映していません。
例えば、NOI利回りが4.5%、借入金利が2.0%であっても、元本返済や大規模修繕を含めれば、実際の手残りがほとんど残らない場合があります。
キャップレートと金利の差だけではなく、DSCR、LTV、年間キャッシュフロー、将来の資本的支出を併せて確認する必要があります。
また、返済への耐性を確認する代表的な指標として活用できるのが、DSCR(Debt Service Coverage Ratio)です。DSCRとは、不動産から得られる収益によって借入金の返済をどの程度カバーできるかを示す数値であり、「元利金返済カバー率」などと訳されます。
「DSCR」=「一定期間のNOI」÷「同期間の借入金元利返済額」
一般的に、DSCRの数値は、大きいほうが金融機関からの融資を受けやすくなる傾向があります。しかし、それだけでは物件の購入後に発生する税金や突発的な修繕費まで十分に賄えるとは断言できません。特定の数値を一律の安全基準とせず、金融機関の条件と、自身が必要とする余裕の両方を確認しましょう。
実際の出口検証では、次の項目も念頭において収支を試算することをおすすめします。
- ● 投入した自己資金、売却費用、売却時のローン残高
- ● 税金
- ● 保有中のキャッシュフロー
- ● 資本的支出・追加修繕
- ● NOIの増減
そのうえで、次の条件を満たす範囲と照合すると、購入上限額を判断しやすくなります。
- ● 市場の収益価格と大きく乖離しない
- ● 金利上昇やNOI減少後も返済余力がある
- ● 諸費用や修繕費を含めても必要な収益を確保できる
- ● 突発的な支出に対応する資金を残せる
キャップレートを活用して、不動産の本当の価値を見極めよう
キャップレートは「答え」ではなく、価格を検証するための前提です。実務では、売出価格から逆算した利回りに合わせて購入判断をするのではなく、まず平常時のNOIを算出し、その物件に市場が要求するキャップレートを検討します。
特に注意したいのは、キャップレートがわずかに変化するだけで、収益価格が大きく変動する点です。採用するキャップレートを一点に決め打ちせず、複数の利回りで価格を試算することが重要です。
また、購入時のNOIとキャップレートだけでなく、賃料下落、空室増加、金利上昇、大規模修繕、出口キャップレートの上昇が同時に起きた場合でも、返済と売却が成立するかを確認します。
「最も高い価格で買える条件」ではなく、「想定外が起きても保有を継続できる価格」を購入上限額とすることが、安定した不動産投資につながります。
現在の市場に出ている物件情報を知りたい方は、野村の仲介プラスが取り扱う投資・事業用不動産の検索サイト「ノムコム・プロ」をご活用ください。
よくある質問
Q:キャップレートと利回りの違いは何ですか?
A:キャップレートも広い意味では利回りの一種ですが、計算式のもととなる収益の考え方や使用目的が異なります。
表面利回り・実質利回りなどの一般的な利回りは、その物件の収益や経費のデータから「いま何%で回っているか」を計算した数字です。一方でキャップレートは、市場の相場やリスクをもとに「この純収益(NOI・NCF)なら、いくらの価格で取引されるべきか」を逆算できる利率です。投資判断の精度を高めるうえでも、キャップレートの活用は欠かせません。
Q:キャップレートとNOIはどう関係ありますか?
A:キャップレート(還元利回り)とNOI(純営業収益)は、不動産の適正価格(収益価格)を計算するための「分母と分子の関係」にあります。キャップレートが一定であれば、賃料アップや経費削減でNOIが増加するほど、不動産の評価額は高くなります。
Q:キャップレートの相場を教えてください
A:キャップレートの相場は、物件タイプや用途、立地などにより異なるため、一概にはいえません。キャップレートを調べる方法は、本記事の「キャップレートの調べ方」で紹介していますので、ぜひお役立てください。










