不動産投資コラム

収益物件を売却したときの税金をシミュレーション付きで徹底解説!計算方法から節税対策まで

収益物件を売却したときの税金をシミュレーション付きで徹底解説!計算方法から節税対策まで

収益物件の売却時には、さまざまな税金が発生します。「思ったよりも手残りが少なかった」と後悔しないためにも、税金は正確に把握しましょう。本記事では、収益物件の売却時にかかる税金の種類や計算方法などをシミュレーション付きで徹底解説します。効果的な節税対策や手取りを最大化する売却戦略なども紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

なお、ノムコム・プロでは、投資用マンションの売却や査定をはじめとした不動産投資に関するご相談を承っております。「売却にあたってアドバイスがほしい」「自分のケースではどのような対策が有効か」など、お気軽にお問い合わせください。

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※以下の情報は2026年4月時点の情報をもとに、税理士の田中裕之が監修しています。

この記事で分かること

  • 収益物件の売却時には所得税、住民税、復興特別所得税、印紙税、登録免許税などの税金のほか、仲介手数料、ローンの一括繰上返済手数料などの費用が発生する。
  • 譲渡所得の計算では減価償却費の累計額が取得費から差し引かれるため、売却価格が購入価格を下回っていても課税されるケースがある。
  • 税負担を抑えるには取得費や譲渡費用、経費などを適切に計上するほか、長期譲渡判定、損益通算や各種特例の活用の検討など、売却前の戦略設計が重要になる。

目次

収益物件の売却時にかかる税金の種類

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収益物件を売却すると、複数の税金や費用が発生します。売却価格がそのまま手元に残るわけではないため、それらを見誤ると実際の手残りとの乖離が生じやすくなります。最初に、税金と費用の全体像を把握しましょう。

◎税金・費用の全体像
売却時の利益にかかる税金 所得税・住民税・復興特別所得税
売却手続きにかかる税金 印紙税、登録免許税
課税事業者が支払う消費税 建物部分の売却価格にかかる消費税
税金以外にかかる主な費用 仲介手数料や司法書士報酬、ローンの一括繰上返済手数料など

収益物件の種類や利回り相場、収益物件を購入・売却するメリットやデメリットについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
関連記事:収益物件とは?種類やメリット・デメリット、利回り相場などを丸ごと解説

売却時の利益にかかる税金

収益物件の売却で得た利益は「譲渡所得」として扱われ、所得税・住民税・復興特別所得税の3つの税が課されます。譲渡所得は分離課税のため、給与所得や不動産所得(家賃収入)とは合算できません。税率は物件の所有期間によって異なり、売却した年の1月1日時点で5年以下か5年超かという区分で決まります。

◎税率の早見表参考:国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」
国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」
区分 所有期間 税率 税率の内訳
短期譲渡所得 5年以下 39.63% 所得税30%+住民税9%+復興税0.63%
長期譲渡所得 5年超 20.315% 所得税15%+住民税5%+復興税0.315%

短期と長期では税率が約2倍も異なるため、売却のタイミングは慎重に判断したいところです。なお、復興特別所得税は所得税額の2.1%を加算する形で、2037年(令和19年)12月31日まで適用されます。詳しい計算方法は、「収益物件の売却時にかかる譲渡所得税の計算方法」でご確認ください。

短期譲渡所得と長期譲渡所得について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産税金ガイド「2.短期譲渡所得、長期譲渡所得」

売却手続きにかかる税金

売却時の契約・登記手続きには、印紙税と登録免許税が発生します。金額は大きくないものの、確実に発生するコストのため、あらかじめ資金計画に組み込んでおきましょう。

印紙税は、紙の売買契約書に貼付する収入印紙に対する税金で、契約金額に応じて金額が変わります。締結が電子契約のみで完結した場合は、印紙税法上の課税文書に該当しないため、印紙税はかかりません。

◎投資用マンションの取引価格帯で多い金額区分の印紙税額
※軽減税率:2014(平成26)年4月1日~2027(令和9)年3月31日までに作成された不動産譲渡契約書に適用
参考:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
契約金額 本則税率 軽減税率(※)
500万円超~1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超~5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超~1億円以下 6万円 3万円
1億円超~5億円以下 10万円 6万円

登録免許税は、売却にともなう抵当権抹消登記にかかる税金で、不動産1件あたり1,000円に固定されています。区分マンションの場合は土地(敷地権)と建物で2件とカウントされるため、合計2,000円になります。土地が複数筆に分かれている場合は、その分だけ加算される点に注意しましょう。

課税事業者が支払う消費税

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売主が消費税の課税事業者に該当し、事業として土地付き建物を譲渡する場合、譲渡における建物部分の金額は消費税の課税売上高となります。その場合、土地部分の金額は消費税の非課税売上高です。売主が消費税の免税事業者に該当する場合でも、売却によって課税売上高が1,000万円を超えた場合は、基準期間等の判定により2年後に課税事業者となる可能性があります

見落としやすいこのポイントは、「収益物件の売却後に備えておくべきこと3選」の中の「3.消費税課税事業者になる可能性の確認」で別途解説します。

◎消費税が発生する主なケース

● インボイス発行事業者(課税事業者)である
● 事業用テナントの賃料収入がある個人オーナーで、前々年の課税売上高が1,000万円を超えている
● 法人名義で投資用マンションを所有しており、前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えている

税金以外にかかる主な費用

売却時には税金だけでなく、仲介手数料をはじめとした複数の費用が発生します。想定外の出費とならないよう、事前に把握しておきましょう。

◎税金以外にかかる主な費用※参考:国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」
費用項目 金額の目安・補足
仲介手数料 ● 売買価格×3%+6万円+消費税
● 売買価格400万円超の場合の上限
● 売買価額が800万円以下の場合は、依頼者の了承を得たうえで仲介手数料を30万円+消費税とできる特例もある(※)
司法書士報酬 ● 5,000円~2万円+消費税
● 抵当権抹消登記の代行費用
ローン一括繰上返済手数料 ● 3,000円~5万円+消費税
● 金融機関により異なる(ネット銀行では無料の場合も)
測量・境界確定費用 ● 30~80万円程度
● 一棟・土地付き物件で隣地との境界が未確定の場合に発生

一棟物件や商業系物件では、「境界明示」を求められるケースも少なくありません。その場合の測量費用は売主負担になるのが一般的です。
テナントが入居している状態で売却する「オーナーチェンジ」であれば、基本的に立退料は発生しません。ただし、そのテナントを空室にして売却するほうが、オーナーチェンジで売却する場合より売却価格が上がるケースもあります。どちらが手残りで有利になるかは、一概にはいえません。
建物を解体して「更地渡し」で売却するのも一つの手段ですが、解体によりその土地の固定資産税の住宅用地特例が外れる恐れがあります。売却前の税負担が増えるリスクを念頭に置き、シミュレーションのうえ慎重に判断しましょう。

オーナーチェンジ物件のメリットやデメリット、オーナーチェンジ物件選びのポイントなどについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
関連記事:オーナーチェンジ物件とは?不動産投資初心者に人気の理由、注意点を解説!

収益物件の売却時にかかる譲渡所得税の計算方法

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収益物件の売却で税負担が大きくなりやすいのが、譲渡所得税です。「手残りが想定よりも少なかった」という事態を防ぐためにも、計算の仕組みを正しく理解し、シミュレーションの精度を高めましょう。

1. 譲渡所得税の計算式と構成要素
2. 収益物件の取得費と減価償却費の関係
3. 譲渡費用に計上できるもの・できないもの
4. 収益物件の取得費がわからない場合の5%ルール

譲渡所得税の計算式と構成要素

譲渡所得税の計算は、次の3ステップで進めます。計算式自体はシンプルですが、取得費の金額から減価償却費の累計額を控除する必要があるため、長期保有物件ほど譲渡所得の金額が大きくなりやすい点には注意が必要です。短期譲渡と長期譲渡の判定と税率比較については、「売却時の利益にかかる税金」をご参照ください。

◎各構成要素の内容
売却価格 ● 売買契約書に記載された金額
● 実務上、固定資産税清算金も売却価格の一部として取り扱われる場合がある
取得費 ● 購入価格+購入時の諸費用
● 仲介手数料、登録免許税、不動産取得税なども含む
減価償却費累計額 ● 所有中に計上した建物の減価償却費の合計
● 取得費から差し引くため、累計が多いほど譲渡所得が増える
譲渡費用 ● 売却時にかかった直接費用
● 仲介手数料、印紙税、測量費など
◎譲渡所得税の計算3ステップ
ステップ1.
譲渡所得を算出する
売却価格-(購入時の取得費-減価償却費累計額)-譲渡費用
ステップ2.
所有期間を判定する
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下か5年超か
ステップ3.
税額を算出する
譲渡所得×税率(長期20.315%または短期39.63%)

収益物件の所有中は減価償却費を経費計上できますが、その分だけ帳簿上の取得費が目減りするため、売却時の譲渡所得は膨らみます。長期保有には税率面のメリットがある一方、減価償却累計額が増えることで譲渡所得が膨らむケースも少なくありません。税負担は必ず、トータルで判断しましょう。

譲渡所得税の計算方法は、下記の記事でも詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。
関連記事:不動産税金ガイド「2.譲渡所得税の計算の仕方」

収益物件の取得費と減価償却費の関係

取得費は「購入価格+購入時の諸費用」で算出しますが、収益物件の場合は、ここから所有中に計上した減価償却費の累計額を差し引きます。所有中に減価償却費を計上すると帳簿上の取得費が減少するため、結果として売却時の譲渡所得が大きくなる場合があります。

◎減価償却費の計算式(定額法)
定額法:毎年一定額を計上する償却方法で、建物および建物付属設備が対象

「減価償却費」=「建物の取得価額」×「償却率」

◎構造別の法定耐用年数と減価償却率(定額法)参考:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表
構造 法定耐用年数 償却率
木造 22年 0.046
軽量鉄骨(3mm以下) 19年 0.053
軽量鉄骨(3mm超4mm以下) 27年 0.038
重量鉄骨(4mm超) 34年 0.030
RC(鉄筋コンクリート) 47年 0.022

木造物件の減価償却率は、RC造の約2倍です。そのため、同じ保有期間でも木造物件のほうが減価償却累計額が大きくなりやすく、売却時の譲渡所得も膨らみやすい傾向があります。

また、中古物件を取得した場合の耐用年数は、一般に簡便法で算出します。築古物件ほど耐用年数が短くなり、年間の償却額が大きくなるのが特徴です。

◎耐用年数の計算式(簡便法)

(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2

建物と建物附属設備(エレベーター・給排水設備など)を区分して計上している場合、設備部分は建物本体より耐用年数が短くなります。所有中の節税効果は高まりますが、そのぶん売却時の譲渡所得が早い段階で膨らむリスクも否めません。繰り返しになりますが、購入時からトータルの税負担をシミュレーションしておくと安心です。

減価償却費は、収益物件の利益に直結する非常に重要な要素です。下記の記事でも詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。
関連記事:魔法の経費!減価償却費で税金をコントロールする!

譲渡費用に計上できるもの・できないもの

売却のために直接要した費用は「譲渡費用」として、比較的経費に認められやすい傾向があります。一方で、所有や維持のための費用は、対象外となるケースが大半です。

◎譲渡費用として認められやすい費用の例

● 仲介手数料
● 売買契約にともなう印紙税
● 売却のために実施した測量費
● 更地にして売却した場合の建物解体費用(売却のために直接必要である場合に限る)
● 入居者に退去を依頼した場合の立退料 など

参考:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」

◎譲渡費用として認められない費用の例

● 売却期間中の維持・管理費(空室期間中の管理費・共益費など)
● 固定資産税や都市計画税(精算金として受け取った分も含む)
● 売却準備のために行った原状回復工事(壁紙の張替え、ハウスクリーニングなど)
● 住宅ローンの繰り上げ返済手数料 など

ただし、項目自体は認められやすい費用であっても、領収書がなければ計上できない場合も少なくありません。売却が決まった段階から引き渡しまでに発生した費用の領収書は、すべて保管しておくことをおすすめします。特に金額が大きくなりやすい仲介手数料や立退料、解体費用などは、確実に計上できるよう領収書の管理を徹底しましょう。

収益物件の取得費がわからない場合の5%ルール

「購入当時の売買契約書を紛失した」「相続で取得した物件で購入価格がわからない」など、取得費を証明できないケースは珍しくありません。この場合、「概算取得費」として売却価格の5%を取得費にすることが可能です。ただし、5%ルールを適用すると取得費が低く抑えられ、税負担が大幅に増えるリスクもあるため注意が必要です。(参考:国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」

売買契約書が手元にない場合でも、下記のような書類が補助的な証拠として認められた裁判例があります。あきらめずに資料を探してみる価値はありますが、判断に迷う場合は早めに税理士へ相談するのが確実です。

◎売買契約書の代わりになる可能性がある書類・根拠

● 購入時の不動産会社の仲介台帳・取引記録
● 住宅ローンの融資関連書類(金銭消費貸借契約書など)
● 登記簿の抵当権設定額からの逆算
● 購入当時の固定資産税評価額と市場価格の比率からの推計 など

【ケース別】収益物件の売却税金シミュレーション

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ここでは「利益が出たケース」「損失が出たケース」「取得費がわからないケース」の3パターンでシミュレーションを行います。なお、シミュレーションはあくまで一例です。実際の税額は物件の条件や所得控除の状況などによって異なるため、参考としてご覧ください。

1. 利益が発生したケース
2. 損失が発生したケース
3. 取得費が不明なケース

シミュレーション1.利益が発生したケース

収益物件の売却では「購入時より高く売却できたものの、減価償却累計額のぶん税負担が増えた」というケースがよくあります。具体的な数字で確認していきましょう。

◎前提条件

● 購入価格:5,000万円(建物3,000万円/土地2,000万円)
● 構造:RC造、所有期間:15年(長期譲渡所得に該当)
● 売却価格:5,500万円
● 譲渡費用:170万円(仲介手数料・印紙税など)
● 年間減価償却費:3,000万円×0.022=66万円
● 減価償却費:累計66万円×15年=990万円

◎計算結果(長期譲渡)
取得費(減価償却後) 5,000万円-990万円=4,010万円
譲渡所得 5,500万円-4,010万円-170万円=1,320万円
譲渡所得税額 1,320万円×20.315%=約268万円

売却価格と購入価格の差額は500万円ですが、減価償却累計額990万円が取得費から差し引かれます。そのため、課税対象は1,320万円に膨らんでいます。同じ譲渡所得でも、所有期間が5年以下の場合は5年超の場合と比べて税額が約255万円増えることが下表からわかります。

◎短期譲渡(所有期間5年以下)の場合と長期譲渡(所有期間が5年超)の場合との比較
区分 所有期間 税率 税額 差額
短期譲渡所得 5年以下 39.63% 約523万円
長期譲渡所得 5年超 20.315% 約268万円 約255万円

シミュレーション2.損失が発生したケース

売却で損失が出た場合は、譲渡所得税はかかりません。ただし、「損失を他の所得と相殺して節税できるか」という点は別問題です。

◎前提条件

● 購入価格:5,000万円(建物3,000万円/土地2,000万円)
● 構造:RC造、所有期間:15年(長期譲渡所得に該当)
● 売却価格:3,800万円
● 譲渡費用:130万円(仲介手数料・印紙税など)
● 年間減価償却費:3,000万円×0.022=66万円
● 減価償却費累計:990万円(66万円×15年)

◎計算結果(長期譲渡)
取得費(減価償却後) 5,000万円-990万円=4,010万円
譲渡所得 3,800万円-4,010万円-130万円=▲340万円
譲渡所得税額 0円(損失のため課税なし)

収益物件の譲渡損失は、土地建物等の譲渡損失に関する損益通算制限の対象です。給与所得や不動産所得(家賃収入)など、他の所得との損益通算は原則としてできません。居住用の不動産とは取り扱いが異なります。
ただし、同じ年に別の収益物件の売却で利益が出ている場合は、その譲渡益と損失を通算できます。複数の物件を保有している方は、売却する年度をそろえる戦略もご検討ください。

シミュレーション3.取得費が不明なケース

収益物件の購入価額が不明な場合や、実際の取得費が売却価格の5%を下回る場合は「収益物件の取得費がわからない場合の5%ルール」で説明した「5%ルール」が活用できます。実際の取得費より概算取得費が低い場合は、譲渡所得税が高くなるケースに注意しましょう。5%ルールを適用した場合に税負担がどれほど変わるのか、下記の例をご覧ください。

◎5%ルール適用時の税負担比較(売却価格5,000万円・長期譲渡の場合)
※あくまで一例で、実際の結果を保証するものではございません
項目 実額で算出 概算取得費5%
取得費 3,500万円 250万円(5,000万円×5%)
譲渡費用 170万円 170万円
譲渡所得 1,330万円 4,580万円
税額(20.315%) 約270万円 約930万円
税額の差 約660万円

取得費を証明できるかどうかだけで、約660万円の税額差が生じています。収益物件は取引金額が大きいため、この影響は深刻化しやすい傾向があります。売買契約書は確実に保管しておきましょう。紛失の場合も前述のとおり代替書類で対応できる可能性があるため、早めに税理士へ相談するのがおすすめです。

収益物件売却の節税対策4つのアプローチ

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収益物件の売却における税負担を軽減する方法は、大きく4つのアプローチに分けられます。要件を確認せずに売却してしまうと、使えたはずの特例が適用にならないケースもあるため、事前にしっかり理解しておきましょう。

1. 課税される「金額」を圧縮する
2. 適用される「税率」を低減する
3. 課税の「タイミング」を調整する
4. 課税の「構造」を変える

アプローチ1.課税される「金額」を圧縮する

節税の基本となるのが、譲渡所得そのものを圧縮する方法です。具体的には2つの方法があります。

取得費・譲渡費用の計上 ● 取得費や譲渡費用を漏れなく適切に計上する
● 建物の取得費は減価償却分を差し引いた金額で計算する
複数物件の損益通算 ● 同年中の不動産譲渡益と譲渡損失は相殺できる
● 売却時期を調整することで税負担を抑えられる可能性がある

原則として、収益物件の譲渡損失は、給与所得や家賃収入と通算できません。通算できるのは同じ年(1月1日~12月31日)に発生した不動産の譲渡所得同士に限られるため、年度をまたがないようご注意ください。

アプローチ2.適用される「税率」を低減する

譲渡所得税の税率は所有期間によって約2倍の違いがあります。そのため、5年超の長期譲渡(20.315%)と5年以下の短期譲渡(39.63%)では、手残りも異なります。
基本的には、長期譲渡の税率が適用されるタイミングでの売却を意識したいところです。しかし、税率だけを理由に売却を先延ばしにすると、市場価格の下落や空室リスクで手残りが減るケースも否定できません。売却は、税率と市場環境の双方の視点から総合的に判断するのがおすすめです。

◎判断のポイント

● 所有期間の判定基準は「売却した年の1月1日時点」
● 長期譲渡を狙うなら、「購入から6回目のお正月を過ぎてから売る」と覚える
● 売却には平均的に3~6ヵ月程度かかるため、長期譲渡が適用されるタイミングから逆算して活動を始めると良い

アプローチ3.課税の「タイミング」を調整する

売却益への課税を将来に先送り(繰り延べ)することで、手元のキャッシュを温存しながら資産規模を維持・拡大するという方法もあります。効果的な手法が「事業用資産の買換え特例の活用」と「デッドクロスの見極め」です。

◎事業用資産の買替え特例(租税特別措置法第37条
所有期間10年超の事業用不動産を売却し、一定期間内に新たな事業用不動産を購入した場合、売却益の最大80%に対する課税を次の物件の取得費に引き継げる制度です。
税金が免除されるわけではありませんが、手元のキャッシュを減らさずに資産を入れ替えられる点がメリットです。
◎相続税の取得費加算の特例(租税特別措置法第39条
相続した収益物件の売却であれば、相続税の取得費加算の特例も検討の対象となります。
「相続税の取得費加算の特例」とは、相続で取得した物件を、相続税の申告期限から3年以内に売却した場合に限り、支払い済みの相続税の一部を取得費に上乗せできる制度です。該当する方は、期限内に売却できるかどうかを早めに検討しておきましょう。
◎デッドクロスの見極め
デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態のことです。所有初期は減価償却費が大きく税負担も抑えられやすいものの、時間の経過とともに償却が進むと、経費が減少して帳簿上の利益が膨らみ、税負担が増加していきます。
デッドクロス前に売却できれば、所有中の節税効果が高い期間を活かしつつ、税負担の増加前に手残りを確保できる可能性があります。

収益物件の売却判断は、下表の4ステップを参考にしてください。

ステップ1 あと何年で減価償却費がゼロになるか
ステップ2 元金返済額が減価償却費を上回る年度はいつか
ステップ3 デッドクロス後にキャッシュフローはどこまで悪化するか
ステップ4 所有し続けた場合と売却した場合、どちらが手残りで有利か

不動産投資の相続税対策について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:相続税対策のための不動産活用術│仕組みや具体策、リスクを解説

アプローチ4.課税の「構造」を変える

個人での所有・売却に限界を感じてきた場合、法人化によって課税の仕組みそのものを変えるという選択肢もあります。
個人で収益物件を売却すると、譲渡所得は分離課税となり、給与所得や不動産所得との損益通算ができません。一方、法人で売却した場合は、売却益が法人税の課税所得に合算されるため、本業の損失や他の経費と通算できるようになります。

◎法人化の主なメリットと注意点
主なメリット ● 法人税率の適用により、税負担の軽減効果が大きくなる
● 家族を役員にすることで所得を分散し、世帯全体の税負担を軽減できる
● 売却益と本業の損失・経費を通算できる
● 青色申告法人は赤字を10年間繰り越して将来の黒字と相殺できる
主な注意点 ● 法人設立には20~30万円程度の費用がかかる
● 法人住民税の均等割(年間7万円程度)が赤字でも発生する
● 課税所得の規模によっては法人維持コストのほうが上回り、かえって負担が増えるケースもある
● 個人から法人へ物件を移す際は、原則として時価での売買となるため、移転時に譲渡所得税が発生する

法人化すべきかどうかは、物件の規模や将来の投資計画によって判断が分かれます。下記の記事では、個人と法人の損益分岐の考え方や法人化で後悔しないためのポイントなどを解説しています。不動産投資の拡大を考えている方は、ぜひご覧ください。

関連記事:不動産投資は法人化すべき?損益分岐と出口戦略の「後悔しない判断術」とは

収益物件の売却後に備えておくべきこと3選

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収益物件の売却にともなう税金負担は、売却した年だけで終わるとは限りません。「売却代金の全額を次の投資に回してしまい、翌年の税金が払えなかった」という事態を防ぐためにも、売却後に必要な手続きと資金確保のタイミングを整理しておきましょう。

1. 確定申告の準備
2. 住民税・健康保険料の増加への準備
3. 消費税課税事業者になる可能性の確認

1.確定申告の準備

収益物件の売却で譲渡所得が発生した場合、売却した翌年の2月16日~3月15日に確定申告が必要です。譲渡所得がプラスの場合だけでなく、買換え特例や損益通算の適用を受ける場合も申告が必要になります。

◎確定申告に必要な主な書類
書類 入手方法・注意点
売買契約書 購入時に取得・保管(取得費の証明に必須)
仲介手数料の領収書 売却時・購入時ともに必要
登記事項証明書 法務局で取得
固定資産税納税通知書 市区町村から送付
減価償却の明細書 過去の確定申告書の控えから確認

過去の確定申告で計上した減価償却費累計額と売却時の計算額が一致していない場合は、税務調査で修正を求められる恐れがあります。売却が決まった段階で、過去の申告書控えを再度確認しておきましょう。
また、「課税されないから申告不要」という思い込みにも注意が必要です。特例の活用で税額が0円になる場合でも、申告しなければ特例そのものが適用にならないケースがあります。税理士への早めの相談がおすすめです。

◎効果的な対策

● 過去の確定申告書の控えを準備し、累計額の整合性を確認する
● 売却完了時に売買契約書や仲介手数料の領収書、印紙税の領収書など、譲渡費用に該当する書類をまとめてすべて保管しておく
● 売却が決まった段階で早めに税理士へ相談・依頼する

下記の記事では、不動産投資の確定申告に役立つ実務ポイントのほか、効果的な節税対策などについて解説しています。事業の拡大に必要な考え方も紹介していますので、ぜひご覧ください。
関連記事:不動産投資の確定申告│やり方、経費、節税、電子帳簿保存法など迷うポイントを一気に解説

2.住民税・健康保険料の増加への準備

収益物件の売却で譲渡所得が発生すると、売却翌年の6月以降に住民税が増加する場合があります。国民健康保険は健康保険料の算定基礎に譲渡所得が含まれるため、翌年の保険料も上がりがちです。売却代金の全額を次の投資に回してしまうと、翌年の支払いにあてる資金が不足する事態も起こり得るため、事前の備えが欠かせません。

◎効果的な対策

● 国民健康保険の場合、地域の自治体のホームページで公開されている保険料シミュレーターなどで概算額を確認する
● 税理士に試算を依頼し、翌年の住民税・保険料の金額を把握する
● 住民税と健康保険料の増加分は、翌年6月まで普通預金などの流動性の高い資産で確保する

なお、給与所得者は住民税通知が勤務先に届くことがあります。勤務先に知られたくない場合は、確定申告書の「住民税に関する事項」欄で「自分で納付(普通徴収)」を選択することで回避できるケースもあります。自治体によっては切り替えられない場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

3.消費税課税事業者になる可能性の確認

収益物件の建物部分の売却価格は、消費税の「課税売上」に該当します。売却時点では免税事業者でも、建物部分の売却などによって課税売上高が1,000万円を超えると、翌々年に課税事業者となる可能性があります。

◎効果的な対策

● 売却前に当期の課税売上高が1,000万円を超えそうかどうかを確認しておく
● 課税事業者になりそうな場合は、簡易課税制度(※)の届出を検討する(事業用として使用していた建物の売却は、みなし仕入率60%の第4種事業に該当により、原則課税よりも納税額を抑えられるケースがある)
● 複数物件の売却は年度を分けて実施することで、課税売上高を1,000万円以下に抑えられる可能性がある

簡易課税制度とは、実際の仕入れにかかった消費税を計算する代わりに、売上に一定の「みなし仕入率」をかけて納税額を算出できる制度です。基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が対象で、適用したい課税期間の開始日の前日までに、納税地の所轄の税務署長に消費税簡易課税制度選択届出書を提出しなければなりません。

収益物件売却時の税金を正しく理解し、次の投資につなげよう

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収益物件の売却時には、譲渡所得税や印紙税、登録免許税、仲介手数料など、さまざまな税金・費用が発生します。こうした負担を把握していないと、「想定より手元にお金が残らなかった」「売却後の納税資金が不足した」といった事態を招きかねません。税金の仕組みを正しく理解し、事前にシミュレーションしておくことが大切です。
取得費や譲渡費用に計上漏れはないか、損益通算や特例が使えないか、売却のタイミングは適切か。こうした点を一つずつ整理したうえで自分に合った売却戦略を立て、次の投資につなげていきましょう。

ノムコム・プロでは、投資用マンションの売却や査定をはじめとした不動産投資に関するご相談を承っております。「売却にあたってアドバイスがほしい」「自分のケースではどのような対策が有効か」など、お気軽にお問い合わせください。

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よくある質問

Q:収益物件を売却して損失が出た場合、税金はかかりますか?

A:譲渡所得がマイナスであれば、譲渡所得税はかかりません。ただし、収益物件の譲渡損失は給与所得や家賃収入との損益通算が原則できない点に注意が必要です。譲渡益と損失の相殺は、同じ年に別の収益物件を売却して利益が出ている場合に限り有効です。

Q:収益物件を売却すると確定申告は必要ですか?

A:譲渡所得がプラスの場合は、売却した翌年の2月16日~3月15日に確定申告が必要です。損失が出た場合でも、買換え特例や損益通算の適用を受けるには申告が求められます。申告をしなければ特例が使えなくなる恐れがあるため、利益・損失にかかわらず確認しておきましょう。

Q:収益物件を売却する際の「5年ルール」とは何ですか?

A:「5年ルール」という言葉自体は正式な税法用語ではないため、正確な定義もありません。一般的には、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで、税率が大きく変わる仕組みを指します。5年以下の場合は短期譲渡所得として39.63%、5年超の場合は長期譲渡所得として20.315%の税率が適用されます。単純に購入日から売却日まで5年経過すれば良いわけではなく、売却年の1月1日が基準になる点に注意しましょう。

田中 裕之

税理士(田中裕之税理士事務所代表)、企業役員

ASK税理士法人、辻本郷税理士法人などを経て、現職。「会社にお金を貯めていく」キャッシュフロー経営の提案を重視しており、「売上があっても手元にお金が残らない」という悩みに対する支援に力を入れている。税務・経理だけでなく、資金調達(融資)、経営計画策定、記帳代行・経理体制の構築なども支援対象にしており、経営の"土台づくり"から相談できる。

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