不動産投資コラム

修繕費・資本的支出をフローチャートで簡単判断!迷いやすいポイントもわかりやすく事例で解説

修繕費・資本的支出をフローチャートで簡単判断!迷いやすいポイントもわかりやすく事例で解説

不動産投資において、リフォームなどの費用を「修繕費」と「資本的支出」のどちらで計上するかというのは悩みやすいポイントです。本記事では修繕費と資本的支出の違いを整理したうえで、国税庁の基準に基づき、判断基準をフローチャートを用いて解説します。迷いやすい事例や実務で失敗しないポイントも具体的に紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

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※以下の情報は2026年4月時点の情報をもとに、宅地建物取引士の河原田琢人が監修しています。

この記事で分かること

  • 修繕費は「原状回復・維持管理のための支出」であり、資本的支出とは「資産の価値や耐用年数を高めるための支出」という違いがある
  • 修繕費と資本的支出の判断は国税庁の基準をもとに、「20万円未満か」「おおむね3年以内の周期の支出か」といった6つのステップで確認できる
  • どうしても判断が難しい場合は、合理的な基準として「修繕費70%・資本的支出30%」に按分することも可能

目次

修繕費と資本的支出の違い

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不動産投資において、修繕やリフォームなどにかかった費用は「修繕費」「資本的支出」のどちらに区分するかで、税務処理が大きく異なります。最初に、基本となる「修繕費」「資本的支出」の定義をしっかり押さえましょう。

1. 修繕費の考え方と事例・会計処理
2. 資本的支出の考え方と事例・会計処理
3. 修繕費と資本的支出を間違えるとどうなる?

修繕費の考え方と事例・会計処理

修繕費は端的にいうと、建物や設備を従来の状態に戻す、または現状を維持・管理するための支出です。税務上は「収益的支出」とされ、支出した年度に全額を経費として計上できます。当期の課税所得を直接引き下げる効果があるため、節税効果を得やすい点が特徴です。

◎修繕費に該当する支出の例
「壊れたから直す」「劣化したから戻す」という考え方が基本

参考:国税庁「資本的支出と修繕費」
原状回復 台風で壊れた屋根の補修、退去後の壁紙張替え など
維持管理 外壁の定期塗装、排水管の定期清掃 など
小規模な修理 ドアノブの交換、蛇口のパッキン交換 など
その他 建物の移築で、旧建物で使用していた資材を70%以上使用し、かつ
同規模で再建築した際にかかる費用 など

一方で、建物に本来なかったものを新しく取り付ける工事など、資産価値が明らかに高まるようなものは、修繕費にはなりません。次節で説明する「資本的支出」に含まれます。

◎修繕費に含まれないものの例参考:国税庁「No.5402 修繕費とならないものの判定」
物理的な付け足し 外付けの非常階段の設置、建物の増築、屋上への防水加工(以前より高機能な素材への変更) など
用途変更のための改装・改造 事務所を居住用の部屋にするための間取り変更、和室から洋室への大規模なリフォーム など
機械の性能アップをともなう部品交換 既存設備と比べて明らかに性能・機能が向上する設備への更新(例:大幅な省エネ性能向上をともなう設備更新)など

この判断基準は、「【フローチャートで簡単】修繕費と資本的支出を判断する6ステップ」の章でわかりやすく紹介します。

資本的支出の考え方と事例・会計処理

資本的支出は端的にいうと、建物や設備の価値を高める、または使用可能期間を延長させるための支出です。金額が少額でも、明らかに価値を高める目的の支出は、資本的支出に該当する場合があります。
税務上では資産に計上し、耐用年数に応じて減価償却していきます。節税効果が複数年に分散するため、修繕費と比較すると当年度の節税効果は小さくなるのが特徴です。

◎資本的支出に該当する支出の例
「以前より良くなった」「寿命が延びた」という考え方が基本

参考:国税庁「資本的支出と修繕費」
機能向上 耐震補強工事、省エネ設備への入れ替え など
グレードアップ 標準品から高性能モデルへの設備交換 など
用途変更 事務所を居室に改装する間取り変更工事 など

◎資本的支出の減価償却の考え方

● 支出額を取得価額として扱う
● 元の資産と種類・耐用年数が同じ新たな資産を取得したものとみなす
● 原則として、既存資産とは区分して減価償却する
● 元の資産は、これまでどおりの方法で減価償却を継続する
● 既存資産の取得価額に加算して減価償却する方法も認められる場合がある

参考:国税庁「No.5405 資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」

修繕費と資本的支出を間違えるとどうなる?

修繕費と資本的支出の区分を誤ると、税務上のリスクや資金計画への影響が懸念されます。具体例で確認しましょう。

◎誤って修繕費として計上した場合

例:エアコンが故障したので、スマートフォンの連携機能や高性能な空気清浄機能を備えた最新モデルへ交換した

この場合、元の設備と比べて明らかに機能や性能が向上しているため、基本的には修繕費ではなく資本的支出と判断するのが適切です。これを修繕費として全額経費に計上すると、税務調査で否認される恐れがあるほか、追徴課税や延滞税が発生するリスクがあります。
さらに、仮装や隠蔽と判断されるようなケースでは、過少申告加算税ではなく重加算税の対象となる可能性があるため、注意が必要です。

◎誤って資本的支出として計上した場合

例:エアコンが故障したので、同程度の能力を持つ現行モデルに交換した

この場合、交換したエアコンは標準的な性能であり、実質的には原状回復にあたると考えられます。本来は修繕費に該当する可能性が高いのですが、資本的支出として処理すると、当年度に全額経費計上できなくなります。本来得られるはずの節税効果を逃すことになり、場合によってはキャッシュフローの悪化を招きかねません。

いずれのケースも収支計画に影響するため、正確な判断が必要です。

【フローチャートで簡単】修繕費と資本的支出を判断する6ステップ

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修繕費と資本的支出の違いは、国税庁が定める基準を順番に確認していくことで判断できます。ここでは6つの判断ステップと、フローチャートでも判断がつかない場合の実務的な対処法を解説します。

◎修繕費と資本的支出を見分ける簡単フローチャート
「※あくまでも目安ですので、詳細は税理士などの専門家にご相談ください

ステップ1.支出額は20万円未満か
YES→修繕費 NOもしくは判断できない→ステップ2へ
ステップ2.おおむね3年以内の周期の支出か
YES→修繕費 NOもしくは判断できない→ステップ3へ
ステップ3.維持管理・原状回復が目的か
YES→修繕費 NOもしくは判断できない→ステップ4へ
ステップ4.資産の価値増加・使用可能期間の延長にあたるか
YES→資本的支出 NOもしくは判断できない→ステップ5へ
ステップ5.「60万円未満」「前期末取得価額の10%以下」のどちらかに該当するか
YES→修繕費 NOもしくは判断できない→ステップ6へ
ステップ6.それでも判断がつかない場合は7:3ルールを活用する
修繕費70%・資本的支出30%に按分する
※ステップ1~6で明確に判断できる場合は適用できません(判断不能な場合のみ適用可)
※詳細は税理士にご確認ください

ステップ1.支出額は20万円未満か

YESの場合:修繕費
NOもしくは判断できない場合:ステップ2へ

支出額が20万円未満であり、かつその支出内容が明らかに資本的支出に該当しない場合は、修繕費として処理できるケースがあります。金額の少ない支出を一つひとつ資本的支出として管理するのは実務上の負担が大きいため、少額特例として認められています。

◎ステップ1のポイント

● 20万円の判断は1つの工事ごとに行う
● 複数の工事をまとめて発注した場合、合計額が20万円以上になると適用できない場合がある
● 意図的に工事を分割して20万円未満に収めようとする行為は、税務上否認されるリスクがある

参考:国税庁「No.5402 修繕費とならないものの判定」

ステップ2.おおむね3年以内の周期の支出か

YESの場合:修繕費
NOもしくは判断できない場合:ステップ3へ

おおむね3年以内の周期で定期的に行われる支出は維持管理目的と判断され、原則、修繕費として処理可能です。ただし、周期だけで機械的に判断するのは避けましょう。「継続的な維持管理かどうか」が判断のポイントです。

◎具体例参考:国税庁「資本的支出と修繕費」
周期 工事の例 判断
1~2年ごと 外壁の簡易補修、設備の定期点検費用 修繕費の可能性が高い
3年ごと 屋上防水の定期メンテナンス 修繕費の可能性がある
5年以上 大規模な外壁塗装工事 周期だけでは判断できない
→ステップ3へ

◎ステップ2のポイント

● 厳密には3年以内でなくても、実態として定期的な支出であれば認められる場合がある
● 周期性の証明に活用できるため、過去の修繕履歴や工事記録は保管しておく

ステップ3.維持管理・原状回復が目的か

YESの場合:修繕費
NOもしくは判断できない場合:ステップ4へ

支出の目的が明らかに維持管理または原状回復である場合も、修繕費として処理可能です。ここでは「明らかに」という点がポイントで、目的が曖昧な場合はこのステップでは判断できません。少しでも不安がある場合は、早めの段階で税理士などの専門家へ相談すると確実かつ安心です。

◎具体例参考:国税庁「資本的支出と修繕費」
工事の例 判断
退去後の原状回復工事(クロス張替え・クリーニング) 修繕費
雨漏りが発生した箇所の補修 修繕費
老朽化した配管の同等品への交換 修繕費
設備のグレードアップを目的とした交換 判断できない
→ステップ4へ

◎ステップ3のポイント

● 工事の目的が維持管理・原状回復であることを示す書類があると、税務調査での説明がしやすくなる
● 見積書や工事明細書、写真などは確実に保管しておく

ステップ4.資産の価値増加・使用可能期間の延長にあたるか

YESの場合:資本的支出
NOもしくは判断できない場合:ステップ5へ

支出によって資産の価値が明らかに増加する、または使用可能期間が延長される場合は、資本的支出として処理します。ステップ3とは表裏一体の判断で、「原状回復ではなく改良・改善だ」と判断できる場合は、ここで資本的支出に分類されます。

◎具体例参考:国税庁「資本的支出と修繕費」
工事の例 判断
耐震補強工事 資本的支出(使用可能期間の延長)
省エネ性能の高い設備への交換 資本的支出(価値の増加)
間取りの変更をともなうリノベーション 資本的支出(価値の増加)
同等品への単純交換 修繕費の可能性が高い

◎ステップ4のポイント

● 価値が増加したかどうかは、工事前後の状態を比較して判断する
● 迷う場合は、税理士への相談がおすすめ

大規模修繕のコストはアパート経営の収支に直結します。黒字化の目安や計算方法については、下記の記事でご確認ください。
関連記事:アパート経営は何年で黒字になる?目安・計算方法・黒字化を早めるコツを徹底解説

ステップ5.「60万円未満」「前期末取得価額の10%以下」のどちらかに該当するか

YESの場合:修繕費
NOもしくは判断できない場合:ステップ6へ

「支出額が60万円未満」もしくは「支出額がその資産の前期末取得価額の10%以下」のどちらかに該当する場合も、修繕費として取り扱える可能性があります。
「前期末取得価額」とは、その資産を取得した際の取得価額(購入価格+付随費用)を指します。減価償却後の帳簿価額とは異なるため、注意しましょう。

◎計算例参考:国税庁「資本的支出と修繕費」
条件 計算 判断
修繕費用:50万円 60万円未満に該当 修繕費
修繕費用:80万円
前期末取得価額:1,000万円
80万円÷1,000万円=8%
(10%以下)
修繕費
修繕費用:80万円
前期末取得価額:500万円
80万円÷500万円=16%
(10%を超える)
判断できない
→ステップ6へ

◎ステップ5のポイント

● 前期末取得価額は、当期に取得した資産には適用できない
● 建物全体の工事など工事が複数の資産にまたがる場合は、基準となる資産を明確にする

ステップ6.それでも判断がつかない場合は7:3ルールを活用する

ステップ5までのすべてを確認しても判断できない場合には、「7:3ルール」を活用します。これは実務上で用いられる合理的な考え方の一つで、支出額の70%を修繕費、30%を資本的支出として按分処理する方法です。
ただし、7:3ルールというのは、明文化された制度ではありません。所得税基本通達37-14では、修繕費と資本的支出の区分が明確にできない場合、合理的な基準による区分を認めています。この「合理的な基準」として、修繕費70%・資本的支出30%とする処理方法が用いられるケースが多いという慣行によるものです。

また、7:3ルールはここまでのステップを飛ばし、いきなり適用することはできません。あくまでも最後まで判断がつかなかった場合の例外的な措置のため、適用前に判断過程をもう一度確認しましょう。税理士に相談するのが確実です。

◎計算例
条件 工事費用200万円(ステップ1~5で判断がつかない場合)
計算 ● 修繕費:200万円×70%=140万円
● 資本的支出:200万円×30%=60万円 など
結果 140万円を当年度に全額経費計上し、60万円を資産計上して減価償却する

◎ステップ6のポイント

● あくまで判断がつかない場合の救済的な取り扱いであり、恣意的に活用することはできない
● 翌年から別の処理方法に変更すると税務上問題になる可能性がある
● 金額が大きい工事への適用は、事前に税理士に相談するのがおすすめ

【参考1.】20万円未満の少額特例と7:3ルールの使い分け

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フローチャートを使う際に混乱しやすいのが、少額特例(実務上の簡便的な取り扱い)と7:3ルールの使い分けです。両者は適用できる場面が明確に異なるため、下記の表で整理しておきましょう。

◎少額特例と7:3ルールの違い参考:国税庁「No.5402 修繕費とならないものの判定」「所得税基本通達37-14」
項目 少額特例 7:3ルール
確認順位 先に確認する 最後に確認する
適用条件 支出額が20万円未満 ステップ1~5で判断がつかない支出
処理方法 全額を修繕費として計上 70%修繕費・30%資本的支出に按分
金額の上限 20万円未満 明確な上限はない
継続処理 不要 不要

2つのルールは、同時に適用できません。また、意図的に工事を分割して20万円未満に収めようとする行為は税務上否認されるリスクがあります。制度は正しく活用しましょう。迷う場合は、税理士への相談が有効です。

【参考2.】個人と法人で異なる実務上の判断スタンス

個人でも法人でも、修繕費と資本的支出の判定基準や基本的な考え方に大きな違いはありません。ただし、税率や融資評価、キャッシュフローへの影響などが異なるため、実務において重視されるポイントに違いが出る場合があります。

◎個人と法人の実務上の違いの例
項目 個人 法人
適用される税法 所得税法・所得税基本通達 法人税法・法人税基本通達
修繕費計上の影響 所得が高いほど、当年度の税負担軽減効果を得やすい 税率が比較的一定のため、節税効果を想定しやすい
資本的支出計上の影響 減価償却によって複数年に分散されるため、当年度の経費化額は小さくなりやすい 資産計上や利益計上のタイミングが変わるため、金融機関が確認する財務内容に影響する場合がある

いずれの場合も、修繕費・資本的支出の判断は「実態に基づく正確な区分」が原則です。節税や融資評価を目的とした、実態と異なる区分処理は避けましょう。

修繕費?資本的支出?迷いやすい事例を具体例で解説

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フローチャートで修繕費と資本的支出の判断基準は理解していても、実際の場面で迷うケースは少なくありません。建物・設備系の工事は高額になりやすく、判断を誤ると税務リスクに直結するため、慎重な判断が必要です。

◎考え方の早見表参考:国税庁「資本的支出と修繕費」
1. 「同等品基準」で考える ● 従来の状態と同じ性能・グレードへの交換なら修繕費
● それを超える部分は資本的支出と判断する
2. 超過分だけ切り出す ● 同等品との差額部分だけを資本的支出として計上する
● 7:3ルールとの併用も検討する(判断が難しい場合は専門家へ相談)
3. 工事の主目的で判断する ● 修繕と改良が混在する場合、支出の主な目的がどちらかで全体の区分を判断する
● 金額が大きい場合は分割計上を検討する

よくある工事の事例を、下表にまとめました。ただし、あくまで下記は一例です。実際は工事の内容だけでなく、支出の目的などの要素を総合的に判断する必要があります。同じ工事内容であっても判断が分かれるケースがあるため、一つの参考としてご確認ください。

※判断の目安の「資本的支出」は確定ではなく可能性です

工事の種類 内容 判断の目安
外壁・屋根の塗装工事 定期的な外壁塗装(同等の塗料で塗り直し) 修繕費
防水性能を大幅に向上させる塗装材への変更 資本的支出
給湯器・エアコンの交換 故障した給湯器・エアコンを同等品に交換 修繕費
故障したエアコンをスマートフォン連携付きの最新モデルへ変更 資本的支出
キッチン・水回りの入れ替え 故障したキッチンを同等グレードの製品に交換 修繕費
旧式のユニットバスを最新システムバスへ交換 資本的支出
原状回復工事 退去後の通常損耗による壁紙・床材の張替え 修繕費
全室まとめて高級クロスへ変更 資本的支出
エレベーターのリニューアル 老朽化したエレベーターを同等品に交換 修繕費
エレベーターを高速・多機能モデルへ更新 資本的支出
防犯カメラ・オートロックの設置 故障による同等品への交換 修繕費
セキュリティ強化を目的とした新規設置・高性能機への交換 資本的支出

外壁補修工事と同時に断熱材を追加するなど、原状回復と機能向上が混在する工事を一括発注するケースも迷いが生じやすい事例です。
この場合は、見積書と工事明細それぞれに修繕部分と改良部分を明確に分けて記載してもらうと良いでしょう。工事前に業者と相談し、明細を分離できる形で契約しておくと後の処理がスムーズです。

築古アパートを一棟丸ごとリノベーションや大規模改修する場合も、判断が複雑になります。賃料の大幅な値上げや新たな入居者層の獲得を目的とした改修は、資本的支出と判断されやすくなります。ただし、工事明細ごとに修繕費・資本的支出を分類するケースも多いため、事前に税理士に相談しておくと安心です。

修繕費・資本的支出の判断で失敗しないための5つのポイント

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ここでは実務で見落としがちなケースを踏まえ、不動産投資家が特に押さえておきたい5つのポイントを紹介します。

1. 支出の「目的」と「結果」の両面から判断する
2. 複数工事の一括発注は合計額に注意する
3. 税務調査で指摘されやすいケースを理解する
4. 工事の都度、証拠となる書類や資料を残す
5. 税理士などの専門家と連携する

ポイント1.支出の「目的」と「結果」の両面から判断する

修繕費と資本的支出の判断は、支出の目的と支出の結果(効果)の両面から考える必要があります。たとえ目的が原状回復であっても、結果として資産価値が向上した場合は、資本的支出と判断される場合もあります。思い込みで結論を出さず、慎重に判断しましょう。

◎主な対策

● 工事前後の状態を比較し、性能や機能が向上していないか確認する
● 工事の目的を明確化し、見積書や契約書に工事内容を詳細に記載してもらう
● 単価だけでなく工事の質的な変化にも目を向けて、総合的に判断する

ポイント2.複数工事の一括発注は合計額に注意する

複数の修繕工事を一括で発注すると、個々の工事は20万円未満でも合計額が20万円以上になるケースがあります。この場合は少額特例が適用されず、フローチャートによる個別判断が必要となります。見落としがちで問題になりやすいポイントのため、あらかじめ理解しておきましょう。

◎主な対策

● 見積書・工事明細は工事ごとに分けて作成してもらい、保管しておく
● ただし、少額特例の適用を目的に、意図的に工事を分割する行為は厳禁

ポイント3.税務調査で指摘されやすいケースを理解する

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指摘されやすいケースと理由は、下記のとおりです。

指摘されやすいケース 指摘される理由
高額な修繕費を一度に計上している 資本的支出ではないかと疑われやすい
毎年多額の修繕費を計上している 意図的な節税と疑われる恐れがある
耐用年数付近に修繕費が集中している 耐用年数の操作と疑われる恐れがある
工事内容が曖昧な領収書・請求書がある 支出の目的・内容が証明できない

◎主な対策

● 工事ごとに見積書や契約書、工事完了報告書を保管する
● 修繕費として計上する根拠(原状回復・維持管理であること)を書面で残す
● 工事前後の写真があると説得力が高まる
● 高額な工事は事前に税理士に相談し、処理方針を決めておく

ポイント4.工事の都度、証拠となる書類や資料を残す

保管しておくと良い書類や資料は、下記のとおりです。

書類・資料 保管のポイント
工事前後の写真 損傷・劣化状況と工事後の状態を記録
見積書・工事明細書 工事内容・数量・単価が明記されたものを保管
契約書・工事請負書 工事の目的・範囲が明確に記載されたものを保管
工事完了報告書 工事が完了した証明として保管
領収書・請求書 支出の証拠として保管
過去の修繕履歴の記録資料 周期性を証明するために過去の工事記録も保管

書類等の保管期間の目安は一般的に、青色申告の個人と法人はともに7年間です。減価償却資産に関する書類は、資産を売却するまで保管しておくと安心です。(参考:国税庁「No.2070 青色申告制度」「No.2080 帳簿書類等の保存期間」

法人化によって修繕費や減価償却の扱いが変わり、幅が広がるケースもあります。不動産投資の規模の拡大を視野に入れている方は、ぜひ下記の記事もご覧ください。
関連記事:不動産投資は法人化すべき?損益分岐と出口戦略の「後悔しない判断術」とは

ポイント5.税理士などの専門家と連携する

修繕費か資本的支出かの判断は、最終的に税務調査で説明できるかどうかが重要です。判断に迷う場合は、早い段階で税理士などの専門家へ相談しておくと確実です。

◎専門家との連携
相談すべきタイミングの目安 ● 1件あたりの工事費用が100万円を超える場合
● 修繕と改良が混在する複合的な工事の場合
● 一棟まるごとのリノベーションなど規模が大きい場合
● 税務調査を受けた経験があり、同種の工事を再度行う場合
相談先の選び方 ● 不動産投資に精通した税理士が最適
● 不動産会社や管理会社から紹介を受ける方法もある
相談時のポイント ● 見積書、工事明細書、写真などの資料を事前に用意する
● 相談の論点を明確に整理する
● 将来の税務調査での説明まで見据えて判断してもらう

修繕費と資本的支出を正しく使い分けて、投資効率を高めよう

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修繕費と資本的支出の正しい使い分けは、短期的な節税だけでなく、長期的な投資効率の最適化にもつながります。日々の判断を積み重ね、税負担やリスクを軽減しながら、安定した不動産運営を実現しましょう。

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よくある質問

Q:修繕費と資本的支出の違いは何ですか?

A:一言で表すと、「原状回復か、価値向上か」という判断軸が一番の違いです。修繕費は「建物や設備を従来の状態に戻す・現状を維持管理するための支出」で、支出した年度に全額を経費として計上できます。一方、資本的支出は「資産の価値を高める・使用可能期間を延長させるための支出」で、資産計上したうえで耐用年数に応じて減価償却します。

Q:外壁塗装は資本的支出ですか?

A:状況によるため、断言できません。同等の塗料で定期的に塗り直す場合は、修繕費として処理できる可能性があります。防水や断熱の機能を大幅に向上させる塗装材への変更は、資本的支出とみなされる場合もあります。工事の目的と結果(性能・機能の変化)の両面で判断し、迷う場合は税理士に相談することをおすすめします。

Q:修繕費と資本的支出のわかりやすい見分け方を教えてください

A:最もシンプルな見分け方は「工事の前後で、建物や設備の性能・機能・価値が変わったかどうか」で判断することです。基本的には、「元の状態に戻しただけ=修繕費」「元より良くなった・長く使えるようになった=資本的支出」という考え方が有効です。判断に迷う場合は、国税庁の基準をもとにした本記事内のフローチャートを活用し、順番に確認してみてください。

河原田 琢人宅地建物取引士

新卒で大手上場不動産会社にて勤務。主に契約履行業務に携わり、不動産における税務、法務に精通。その後、投資用物件の出口に特化したベンチャー企業へ転職。転職初年度から取り扱い件数1位を獲得。入社2年で最年少キャリアへ。

法務、および売却の実務に精通していることから、特にサブリース物件の出口戦略においては顧客のみならず、同業者からの相談をも解決している。
監修コラム一覧

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