不動産投資コラム

レントロールとは?プロが教える見方、作り方、危ない物件の見分け方

レントロールとは?プロが教える見方、作り方、危ない物件の見分け方

レントロールとは賃貸物件の「家賃明細表」とも呼ばれる、賃貸借契約に関する条件を一覧化したものです。主に、物件の部屋(または区画)ごとの家賃や敷金、契約期間、契約日などの契約条件や、入居者の属性などが記載されています。本記事ではレントロールの見方や作り方、レントロールを活用した危ない物件の見分け方などを解説します。ぜひ、最後までご覧ください。

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※以下の情報は2025年11月時点の情報をもとに、不動産投資家・2級ファイナンシャル・プランニング技能士の前田裕太が監修しています。

この記事で分かること

  • レントロールとは部屋の面積や間取り、家賃、入居状況、契約期間などを一覧化した資料だが、作成の法的義務はない
  • レントロールで危ない物件を見極めるポイントは「家賃のばらつき」「入居日の偏り」「特定の法人への依存度」など7つ
  • 家賃滞納の有無、敷地外の駐車場や自動販売機からの副収入などはレントロールに記載されないことが多いため、別途確認が必要

目次

レントロールとは?最初に知っておきたい基本知識

不動産投資を始める際、物件の収益性を正しく判断するために欠かせない資料がレントロールです。しかし、レントロールに何が書かれているのか、どう読み解けばよいのかわからない方は多いのではないでしょうか。最初にレントロールの基本的な定義や役割、入手方法について説明します。

1. レントロールとは「物件の成績表」
2. 不動産投資でレントロールが重要な理由
3. レントロールに作成の法的義務はない

レントロールとは「物件の成績表」

レントロールとは物件の賃貸条件を一覧にまとめた資料で、「家賃明細表」「賃貸条件一覧表」ともいいます。家賃や入居状況、契約期間などが可視化されるため、投資判断の基礎資料となる重要なツールです。

レントロールは主に、マルチテナントビルや一棟賃貸マンション・アパートなど、複数の借主がいる物件で活用されます。戸建てや区分マンションのように借主が1人しかいない物件では、賃貸借契約書がレントロールの役割を担うケースも一般的です。

戸建て不動産投資や区分マンションの投資に興味がある方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:戸建て不動産投資とは?向いている人や失敗を防ぐ3つのコツ
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不動産投資でレントロールが重要な理由

レントロールは、不動産投資家が収益をシミュレーションする際の根拠となります。レントロールを読み解くことで、下記のようなさまざまな情報が把握できます。

◎レントロールで把握できることの例

● 実際の家賃収入(現況利回り)と満室時の想定家賃収入(満室想定利回り)
● 空室の数や期間、空室により失われている収益(機会損失)
● 入居者の定着率(契約開始日からの経過期間で判断)
● 家賃の下落傾向(新旧入居者の家賃比較)
● 特定法人への依存度(リスク管理)

レントロールは投資家だけが活用するものではありません。金融機関が融資審査時に物件の収益性のエビデンスとして、レントロールの提出を求めるケースも増えています。レントロールの内容が悪い物件は、融資が通らないリスクも高くなります。不動産投資で成功するには、レントロールを読み解く力が必要です。

不動産投資の成功率や成功例について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資の成功率を上げる秘訣とは?成功しやすい人の傾向や成功率を高める秘訣も解説
関連記事:不動産投資の成功例11選!成功の秘訣・リスク管理なども徹底解説

レントロールに作成の法的義務はない

レントロールの作成や提出は、法律で義務付けられているわけではありません。売主や管理会社が独自判断で作成するため、物件によっては情報が不足している場合もあります。なかには、不利な情報を隠すために「あえて作成しない」「意図的に一部の情報を記載しない」ケースも含まれます。レントロールがない場合や情報が不十分な場合に備え、代用手段を考えておきましょう。

◎レントロールがない・情報が足りない場合の対応例

● レントロールがない場合は、作成を依頼する
● 売主が作成していない場合は、賃貸借契約書や家賃台帳を求める
● 情報が不完全な場合は、売主や管理会社に追加で確認する

レントロールの主な項目と見方

レントロールの形式は自由ですが、情報の透明性が高い優良なレントロールには必ずといって良いほど含まれる項目があります。ここではレントロールを構成する主要な項目を4つのカテゴリに分類し、それぞれの見方を解説します。

1. 物件の基本情報(号室、面積、間取り、用途など)
2. 契約・入居情報(現況、入居者の属性、契約開始日、更新日など)
3. 家賃・費用情報(賃料、共益費、敷金、保証金など)
4. その他の項目・備考欄

1.物件の基本情報(号室、面積、間取り、用途など)

レントロールの基本となるのが、部屋数や面積などの物件情報です。各部屋の特徴や賃貸条件などが確認できます。

◎物件の基本情報の主な項目
主な項目 主な内容 ポイント
号室 部屋番号(101、102など) ●縁起を担いで「4」号室や「9」号室を意図的に抜いているケースもある
●総戸数の計算ミスの原因につながるため、実際の部屋数を確認
面積 平方メートル、もしくは坪で表示 ●賃料単価(平方メートル単価、坪単価)を計算
●物件ごとの割安感や割高感を客観的に把握できる
間取り 1K、1LDK、2LDKなど ●エリアの賃貸需要と合致しているか確認
●エリアの将来的な発展予測も踏まえて検討が必要
用途 住居、事務所、店舗など ●用途によって消費税の扱いが異なる
●住居の賃料は基本的に非課税だが事務所や店舗は課税のため、収益計算時に要注意

面積と賃料から賃料単価(1平方メートルあたりの家賃)を計算すると、周辺相場と比較しやすくなります。例えば、面積30平方メートルで賃料9万円の場合、賃料単価は1平方メートル3,000円です。間取りがエリアの賃貸需要と合っているかどうかも確認しましょう。単身者が多いエリアで2LDKや3LDKが主流の物件の場合、戦略的に取り組まないと空室リスクが高まる恐れがあります。

なお、マンション等の専有部分の計算方法には「内法面積」と「壁芯面積」があります。

計算方法 ポイント
内法面積 ●壁の内側のラインを基準にした計算方法
●実際に使用できる部分の面積
●登記簿に記載され、税優遇措置を受ける際の基準にもなる
壁芯面積 ●壁や柱の厚みの中心線を基準にした計算方法
●実際に使用できる面積よりも広い数字
●広告や建築確認で使われる

内法面積と壁芯面積は平均して5~8%程度差があります。面積が狭い内法面積で計算した方が、賃料単価(1平方メートルあたりの家賃)は高い数字が出てくるため、どちらの計算方法を用いて算出されたかにも注意が必要です。

不動産投資のリスクや回避術について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資の7つのリスクと7つの回避術

2.契約・入居情報(現況、入居者の属性、契約開始日、更新日など)

契約や入居情報からは、入居者の安定性や物件の稼働状況を読み取ることができます。

◎契約・入居情報の主な項目
主な項目 主な内容 ポイント
現況 入居中、空室、退去予定 ●空室率の確認
●退去予定がある場合、一時的に家賃収入が途絶えるだけでなく、入居者募集広告などで支出も増える
入居者の属性 個人、法人(社宅など) ●法人契約の場合、企業の実態も把握しておく
●特定の法人に集中している場合、一斉退去のリスクも考慮
契約開始日 現在の入居者が入居した日 ●入居期間の長さで安定性がわかる
●入居期間が長い入居者が多いほど、その物件・管理に満足している可能性が高い
更新日 直近の契約更新日 ●次回更新時期の確認
●契約更新日は家賃交渉や退去リスクが高まる時期でもあるため要注意

入居者の定着率が良い(入居期間が長い)物件は、安定した収益が期待できます。一方で、定着率が悪い(入居期間が短い)物件は、物件自体や周辺環境に問題がある場合もあります。原因を慎重に分析しましょう。法人契約が多い場合は、社宅として利用されている場合もあります。会社の方針変更で一斉退去となるリスクもあるため、特定法人への依存度を確認することをおすすめします。

家賃収入について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:家賃収入で暮らすための具体的な7ステップ!必要な金額や成功事例も紹介
関連記事:マンションの家賃収入で暮らせる?手取りや税金などをやさしく解説

3.家賃・費用情報(賃料、共益費、敷金、保証金など)

お金に関係する情報は、物件の収益性に直結する重要な要素です。投資判断の核となります。

◎家賃・費用情報の主な項目
主な項目 主な内容 ポイント
賃料 毎月の家賃 ●物件の収益の基本
●近隣相場、同エリアの類似物件と比較する
共益費・
管理費
共用部の維持管理費 ●実質的には家賃収入に含まれる
●賃料と合計した総額も、相場との比較が重要
敷金・保証金 預り金 ●収入には該当しない
●購入時に引き継ぐが、将来的には返還が必要
駐車場代
(敷地内)
月額駐車料金 ●物件の敷地内にある場合に該当
●敷地内の駐車場代は追加収入として計上できる

空室の場合、レントロールには実際の家賃とは異なる「想定家賃」が記載されていることがあります。理想ではなく、現状に沿ったリアルな金額が記載されているかどうかチェックしましょう。周辺相場と比べて妥当かどうかの判断も必要です。

敷金・保証金は入居者が滞納なく退去した場合、償却分(保証金の場合)や原状回復費などを差し引いて、返還する必要があります。物件を購入すると、この返還義務も引き継ぐことになります。レントロールに記載された家賃や費用などの収益情報は、単独のみならず合計額でも把握しましょう。

4.その他の項目・備考欄

レントロールの備考欄には、主な項目に含まれない特記事項や特約が記載されています。見落としがちですが、収益やリスクに影響する重要な情報が含まれていることもあるため注意が必要です。

◎その他の項目・備考欄の主な内容
主な項目 主な内容
フリーレント ●契約当初の数ヵ月間、家賃が無料になる特約
●2年契約でフリーレントが2ヵ月の場合、実質的な家賃収入は22ヵ月分となる
定期借家契約 ●契約期間の満了で、確実に契約が終了する形態
●退去時期が明確なので、余裕をもって次の入居者を探せる
告知事項 ●室内での死亡事故など、心理的瑕疵を指す
●大幅に家賃を減額せざるを得ないケースが多い
特約事項 ●ペット飼育可、楽器演奏可などの特別な許可事項
●ケースごとに判断が必要

表中に示したとおり、フリーレントが設定されている場合は、実質的な月額家賃収入が表面上の賃料より低くなる場合があります。告知事項がある部屋も、次の入居者募集時に大幅に家賃を下げざるを得ないケースが多く、将来的な収益予測に影響します。備考欄は必ず確認し、不明な記載があれば売主や管理会社に詳細を確認しましょう。

レントロールで読み解く「危ない物件」を見分けるポイント

レントロールは、ただ項目を眺めるだけでは効果を発揮できません。ここでは、物件の実態のより正確な把握とリスク回避を目的に、レントロールで読み解く「危ない物件」の見分け方を7つ紹介します。

1. 同じ間取りで家賃にばらつきがないか
2. 新しい入居者ほど家賃が下がっていないか
3. 空室の想定家賃が相場より高くないか
4. 入居日が最近に集中していないか
5. 特定の法人が複数の部屋を借りていないか
6. 空室率が高い状態が長期間続いていないか
7. 理由なく敷金が少額または未設定ではないか

ポイント1.同じ間取りで家賃にばらつきがないか

面積や間取りが同じ部屋でも、A号室は月12万円、B号室は月9万円といったケースがあります。家賃の差が日当たりやリフォームに由来するなど、納得できる理由によるものであれば、基本的に問題はありません。しかし、もし単に「昔から住んでいる人と最近入った人の差」だけであれば、高い方の家賃も家賃見直しの交渉や入居者の入れ替わりで、いずれ下がる恐れがあります。リスクやメリット・デメリットをよく理解したうえで、物件を判断しましょう。

◎リスク対策

● 部屋ごとの条件の違い(向き、階数、設備)を売主に確認し、家賃の差が正当かどうか判断する
● 同じ条件の部屋で最も低い家賃を想定家賃として収益計算する
● 家賃のばらつきを根拠に価格交渉を行う

不動産投資のメリットやデメリットについて詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資はメリットが多い?デメリットと対策も含め解説

ポイント2.新しい入居者ほど家賃が下がっていないか

家賃相場は周辺環境により上下動しますが、築年数が経っている物件の場合、時間の経過とともに家賃が下落する傾向にあります。しかし、相場以上に下落している場合は、競合物件に勝てず、家賃を下げなければ入居が決まらない状況が懸念されます。将来的に、物件全体の家賃収入が減少し続けるリスクも否定できません。契約開始日と家賃を照らし合わせ、家賃の推移を分析しましょう。

◎リスク対策

● 近隣の類似物件の家賃相場を調査し、エリア全体の傾向かその物件だけなのか判断する
● 家賃下落が続くことを前提に、10年後の収益をシミュレーションする
● リノベーションなどで物件価値を高められる余地があるか検討する

ポイント3.空室の想定家賃が相場より高くないか

物件の「満室想定利回り」を高く見せるため、レントロールでは空室に想定家賃(希望の家賃)が記載されていることがあります。しかし、想定家賃はあくまで希望にすぎず、鵜呑みにして利回りを計算すると購入後も入居が決まらず、大幅な値下げを迫られるリスクがあります。想定家賃が相場より1割以上高い場合は、注意が必要です。

◎リスク対策

● 項目に想定家賃が含まれていないか確認する
● 想定家賃が含まれている場合、レントロール内にある直近で契約した同タイプの家賃と乖離がないか調査して計算しなおす
● 不動産会社への問い合わせや不動産サイトなどで、家賃の現状を調査する

表面利回りや実質利回りなど、利回りについて詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資における利回りの最低ラインとは?改善する4つのポイントも解説
関連記事:表面利回りとは?実質利回りとの違いや計算方法をわかりやすく解説

ポイント4.入居日が最近に集中していないか

契約開始日が物件売却の直前(例:3ヵ月以内)に集中するなど、不自然な傾向を示していないかチェックしましょう。売主が物件を満室として高く売却するために、フリーレントの多用や知人への斡旋で一時的な入居付けを行った可能性もあります。このような経緯の入居者は、物件が売れた後に一斉に退去するリスクが否定できません。

◎リスク対策

● 最近入居した部屋の賃貸借契約書を開示してもらう
● レントロールの記載内容(家賃、敷金、入居日など)と契約書の記載内容が、完全に一致しているか確認する
● 不動産会社へのヒアリングで、本当に需要があるか確認する

ポイント5.特定の法人が複数の部屋を借りていないか

入居者の属性が法人の場合、家賃滞納リスクが低い優良な物件だと考えてしまいがちです。間違ってはいませんが、一方で収益源が集中しているリスクの高い状態でもあります。もし、その法人が経営方針の変更や業績悪化などで契約を解除した場合、全室一斉退去という事態も考えられます。

◎リスク対策

● 全戸数のうち何%をその法人が占めているか、法人ごとに計算する
● 法人の業種や企業実態、業種の安定度合いなどを調査してリスク度合いを量る
● 法人が一斉退去する状況をシミュレーションに組み込み、キャッシュフローを検証する

キャッシュフローの重要性や計算方法について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:初心者でもわかる!キャッシュフローの計算と不動産投資で収益を安定させるコツ

ポイント6.空室率が高い状態が長期間続いていないか

物件全体の現況欄を見て、空室率が長期間(数ヵ月以上など)高いまま続いていないか確認しましょう。周辺の同等の家賃相場の物件と比較して空室率が高い場合、何らかの問題を抱えた物件の可能性が高いといえます。管理状態がよくない場合や、家賃の設定が不適切な場合、購入後に改善の余地があります。一方で、立地や建物の構造の問題である場合、簡単に解決することはできません。

また、建物全体の空室率が高い理由が「極端に長期間空室の部屋がある」といった理由の場合、告知事項のある部屋の可能性もあります。そういった部屋は当面入居者の募集が困難であったり、大幅に家賃を減額する必要があったりと、一つの部屋で物件全体の収益性を下げるだけでなく、「事故物件のある建物」として建物全体のイメージダウンを引き起こしている可能性もあるのです。

いずれにせよ、気になるポイントについては入念に下調べを行い、原因を特定したうえで「自力で解決可能かどうか」を判断することが重要です。

◎リスク対策

● 各空室がいつから発生しているかヒアリングなどで調査する
● 近隣の類似物件の入居率を調査する
● 空室の原因が自分の力でリカバリー可能な問題かどうか見極める
● リカバリー不可能な原因の場合、空室を見込んだうえでシミュレーションを立て、判断する

不動産投資で物件に対する「出口」とは何か、出口戦略について詳しく知りたい方は下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資は出口戦略で決まる!目的別「利益最大化のコツ」徹底解説

ポイント7.理由なく敷金が少額または未設定ではないか

敷金・礼金ゼロは「ゼロゼロ物件」ともいわれ、入居のハードルを下げるための募集戦術として一般的に活用されています。ゼロゼロ物件自体が悪いわけではありません。しかし、家賃滞納や退去時の原状回復トラブルなどのリスクが高まる場合があります。ゼロゼロ物件でも家賃保証会社を通して契約するなどのリスク管理ができているのであれば、トラブル発生の可能性は軽減できます。

◎リスク対策

● ゼロゼロ物件が健全な募集戦略か危険な兆候なのか、家賃保証会社の利用状況などで判断する
● 「保証会社加入必須」などの条件があれば、家賃の滞納リスクは軽減できる
● 保証会社未加入、あるいは個人の連帯保証人のみという場合は慎重に見極める

レントロールに書かれていない重要項目と確認方法

レントロールは有益な資料ですが、すべての情報が記載されているわけではありません。収益やリスクに影響する重要な項目が記載されていないケースも、よくあります。ここでは、基本的にレントロールに記載されないことが多い4つの重要項目と、その確認方法についてを説明します。

1. 家賃滞納の有無
2. 敷地外駐車場や副収入(自販機・基地局など)
3. 水道光熱費やインターネット費用などの負担
4. 修繕履歴や過去のトラブル

1.家賃滞納の有無

レントロールに記載されている「入居中」は、「契約中」という意味で表されます。実際に家賃が支払われているかどうかを保証するものではありません。家賃滞納はキャッシュフローに直接影響するリスクのため、しっかり確認しておきましょう。ただし、滞納者がいる物件は、購入価格の値下げ交渉材料にもなり得るため、一概に悪いとはいえません。ご自身の戦略に合わせた慎重な判断が必要です。

◎滞納がもたらす影響

● 想定していた家賃収入が得られない
● 滞納分の督促や回収に時間とコストがかかる
● 法的措置(明渡し訴訟)が必要になる場合もある

◎確認方法

● 売主または管理会社に過去6ヵ月から1年分の送金明細(通帳のコピーや管理レポート)など」を提出してもらう
● レントロール上の賃料合計額と実際の口座入金額を突合する。差異があれば、そこに滞納や未収金が存在する
● 保証会社への加入状況を調査する

2.敷地外駐車場や副収入(自販機・基地局など)

レントロールは基本的に、建物本体に関する情報の一覧です。家賃や共益費などの主要な収入は記載されていても、それ以外から得られる副収入については金額だけが記載されていて、詳細やリスクについては触れられていないことがあります。副収入も正確に把握し、契約終了のリスクや維持コストも考慮して収益計算を行いましょう。

◎主な副収入の例と注意点
主な項目 注意点
敷地外駐車場 契約内容(承継可否など)を詳細に確認する
自動販売機 電気代はオーナー負担の場合もある
携帯基地局 契約期間と解約条件を確認する
看板広告 設置許可や撤去費用を確認する
太陽光発電 設備のメンテナンス費用も考慮する

◎確認方法

売主または管理会社に下記の内容を直接問い合わせる
● 契約書の内容(金額、期間、更新条件)
● 契約の引き継ぎが可能か
● 設備の撤去費用は誰が負担するか
● 電気代などのランニングコストの負担者

3.水道光熱費やインターネット費用などの負担

レントロールは基本的に収入に関する資料であるため、物件の運営にかかる支出は記載されていません。オーナー負担の水道光熱費やインターネット費用などのコストは、収益を圧迫する要因となり得ます。あらかじめ把握しておきましょう。

◎オーナー負担になりやすい費用
主な項目 確認ポイント
共用部の光熱費 ●廊下やエントランスの電気代、エレベーターの保守費用など
水道料 ●物件によってはオーナーが全戸の水道料を一括で支払い、入居者から定額(例:2,000円)で徴収するケースがある
●この場合、実際の使用量が徴収額を上回ると赤字
ケーブルテレビ・
インターネット
●入居付けのためにオーナー負担で導入している物件も多い

◎確認方法

● 公共料金の請求書や領収書を開示してもらう
● オーナー負担費用(支出)を正確に把握し、収益を計算する
● インターネット契約などは、契約の引き継ぎや解約条件も確認する

4.修繕履歴や過去のトラブル

レントロールは現在の契約状況が中心となるため、物件の修繕履歴や過去の入居者トラブルは基本的に記載されていません。しかし、これらの情報は将来の出費やリスクを予測するうえで重要です。修繕履歴が不明瞭な物件は、購入後すぐに高額な修繕費が発生するリスクがあります。確認しておきましょう。

◎確認しておくと良いポイント
主な内容 主な確認ポイント
修繕履歴 ●大規模修繕(外壁塗装、屋上防水など)の実施時期
●給排水管の交換履歴
●エレベーターや給湯器などの設備更新履歴
●次回の大規模修繕の予定時期と概算費用
過去のトラブル ●入居者間のトラブル(騒音、ゴミ問題など)
●室内での事故や事件
●家賃滞納や夜逃げの発生履歴
●迷惑住人の有無と対応状況

◎確認方法

● 売主または管理会社に直接確認する
● 修繕履歴書や大規模修繕計画書を提出してもらう
● 可能であれば現地で近隣住民に話を聞く
● 事故情報はインターネットでも確認可能

【雛形つき】レントロールの作り方

レントロールは物件を購入するときだけでなく、オーナーになった後の運営管理や将来の売却時にも重要なツールです。ここでは、自分でレントロールを作成・管理する方法を解説します。

1. レントロールに決められた書式はない
2. エクセルで作成する際の必須項目・おすすめ項目
3. 無料テンプレートの活用方法
4. レントロール作成時の注意点

レントロールに決められた書式はない

レントロールには、書式や記載項目などに決まりはありません。物件の特性や管理方法に合わせて、自由にカスタマイズできます。エクセルやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトで、管理しやすいように作成すれば十分ともいえます。

ただし、一度作成して終了してしまうのでは、効果は発揮できません。入退去や家賃変更、契約更新があるたびに、情報を最新化して保ちましょう。運用を無理なく続けられる書式や方法がおすすめです。

エクセルで作成する際の必須項目・おすすめ項目

レントロールの目的は、主に「物件全体の収益状況を一目で把握すること」です。細かい情報を詰め込みすぎると、かえって見づらくなります。まずはシンプルな項目から記録を始め、必要に応じて項目を追加していくのがおすすめです。

具体的な項目に関しては、「レントロールの主な項目と見方」の章を参考にしてください。

無料テンプレートの活用方法

レントロールの作成が初めての方は、無料テンプレートを活用するのがおすすめです。国土交通省でも無料の雛形をエクセル形式で配布しているため、ぜひご活用ください。

国土交通省のレントロールの雛形(Excel形式・無料)
▲クリックでダウンロードされます

テンプレートはあくまで参考として活用し、物件に合わせて項目を追加・削除していくのが便利です。特に駐車場の有無や特約事項などの物件特有の情報は、自分で追加する必要があります。一度テンプレートを作成しておけば次回以降は複製して使い回せるため、複数物件を管理する際にも効率的です。運用のしやすさを重視してカスタマイズし、定期的な更新で常に最新の状態を保ちましょう。

レントロール作成時の注意点

オーナーになった際には、これまで解説した「買い手」の視点を意識したレントロールの作成が重要です。優良な買い手と取引をするためには、こちらも誠実な姿勢で臨むことが重要といえるでしょう。

都合の悪い情報の意図的な隠蔽や、取り繕って優良誤認させるような姿勢は、賢い買い手には見抜かれてしまいます。購入検討者が重視するポイントについては、適正な価格でスムーズな取引を実施するためにも、正確にわかりやすい情報を記載したレントロールの作成が重要です。

レントロールで困ったら不動産のプロに相談を!

不動産投資において、物件や運営の情報が詰まったレントロールは重要な資料です。一見、運営順調な物件に見えても、レントロールを読み解くことで、さまざまなリスクが浮かび上がってきます。「危ない物件」を見抜き、安全な投資判断ができるようになります。

しかし、レントロールだけでは判断しきれない要素もあります。物件の立地条件、建物の状態、周辺環境、将来の開発計画など、総合的な視点で物件を評価しましょう。迷う場合は経験豊富な不動産のプロに相談することをおすすめします。

ノムコム・プロでは、会員登録者限定で「4つの特典」をご用意しております。不動産投資を始めたい方や保有物件の運用を見直したい方に向けた、役立つ情報やサポートのご提供です。最新の物件情報をいち早くチェックしたい方は、ぜひ下記リンクよりご登録ください。

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よくある質問

Q:不動産物件のレントロールとは何ですか?

A:レントロールとは、収益物件に入居している各借主の賃貸条件を一覧にまとめた資料のことです。「家賃明細表」や「賃貸条件一覧表」とも呼ばれ、各部屋の家賃や入居状況などが記載されています。主に複数の借主がいる一棟マンションやアパート、テナントビルなどで作成され、物件の収益性を判断するための資料としても活用されています。

Q:レントロールは誰が作るのですか?

A:一般的には、その物件の「売主」または売主から委託を受けた「賃貸管理会社」が作成します。法的な作成義務がないため書式は自由であり、作成者によって記載される情報の内容が異なります。

Q:マンションとアパート、戸建てでレントロールの内容は違うのですか?

A:基本的な項目(賃料、契約期間など)は同じです。ただし、マンションやアパートは部屋数が多いため一覧表の形式が必須となりますが、戸建てなど賃借人が1名のみの場合は、賃貸借契約書そのものがレントロールの代わりとして使われることもあります。

前田 裕太
前田 裕太

前田 裕太企業役員、不動産投資家、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)

上場企業勤務時代にローンを活用して不動産投資を開始。現在は全国に複数の物件を所有する。不動産投資の知識をつけるため、独学で宅建試験に合格。
現在は不動産投資の傍ら、スタートアップ企業の役員として離島振興に従事。不動産の知識・経験や内装事業部とのシナジーも活用し、空き家問題の解決にも取り組んでいる。
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