空室の原因は、物件の設備や賃料の問題だけではありません。入居までの導線に課題が隠れているケースも多くみられます。本記事では、入居までの段階を4つに分け、発生する症状ごとに効果的な空室対策を紹介します。課題を特定する4つのステップや物件タイプ別の対策ポイントも説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。
※以下の情報は2026年8月時点の情報をもとに、宅地建物取引士の河原田琢人が監修しています。
この記事で分かること
- 空室対策は「閲覧・問い合わせ」「内見前」「内見後」「申し込み後」などの段階や症状ごとに、効果的な手法が異なる
- 空室対策は募集写真の撮り直し、募集図面の情報追加、掲載媒体を増やすといった比較的コストがかからない方法から取り組むのがおすすめ
- 空室の原因は、閲覧数、問い合わせ数、内見数、申込数、契約数の5つの数字を用いて分析すると効果的
目次
【ケース別】考えられる要因と空室対策
空室対策は数多く存在しますが、思いついた施策をやみくもに実施しても、成果にはつながりにくいものです。空室が埋まらないまま費用ばかりが積み上がるケースも少なくはありません。
最初に、入居までのどの段階で入居希望者が離れているのか、現状を確認しましょう。現象ごとに考えられる要因と対策は、次のとおりです。
| 現象 | 対策 | 費用対効果の目安 |
|---|---|---|
| 1.閲覧・問い合わせが少ない |
|
1.高 2.高 3.高 4.高 |
| 2.問い合わせはあるが内見に至らない |
|
5.高 6.中~高 7.中 |
| 3.内見されても申し込みにならない |
|
8.高 9.高 10.中 11.低 12.低 |
| 4.申し込み後のキャンセルや審査落ちが続く | 13.高 14.中~高 15.中 |
※費用対効果は、各施策が現在の空室原因に合っており、一定の改善効果が見込めることを前提に、15の施策を相対的に比較した目安です。
※費用対効果の目安の「高・中・低」は効果の有無を示すものではありません。実際の費用や効果は、物件の種類・エリア・募集状況などによって異なります。
ケース1.閲覧・問い合わせが少ない場合の空室対策4選
閲覧数や問い合わせ数が少ない場合は、物件そのものよりも「見せ方」や「届け方」に課題がある可能性があります。下記の対策は、比較的コストを抑えやすく、取り組みのハードルも低めなので、おすすめです。
- 1. 募集写真を撮り直す
- 2. 募集図面と紹介文を改善する
- 3. 掲載媒体や仲介会社を広げる
- 4. 賃料を競合や相場と比較する
対策1.募集写真を撮り直す
入居希望者が物件を絞り込むとき、最初の判断材料として重視されやすいのが写真です。「写真が暗い」「なんとなくくすんで見える」「部屋が狭く見える」といった撮り方の問題はもちろん、写真の枚数自体が少ない場合も候補から外れやすくなります。
まずは、現在の掲載写真を次の観点から確認しましょう。すべてにチェックがつくのが理想です。
◎主なチェックポイント
- ● 昼間の自然光が入る時間帯に撮影されているか
- ● 柱や建具が斜めにならず、垂直・水平に撮影されているか
- ● 居室だけでなく、水回りや収納、眺望なども掲載されているか
- ● エントランスや廊下、ゴミ置き場などの共用部も確認できるか
- ● 写真の枚数は掲載媒体の上限近くまで、十分に掲載されているか
- ● 以前の入居者の荷物や古い設備の写真が残ったり、映りこんだりしていないか
広角レンズは室内全体を伝えるのに役立ちますが、過度に広く見せる撮影や加工は避けたほうが無難です。不動産広告には、公正競争規約に基づく表示ルールがあります。無意識でも抵触してしまわないよう、あらかじめ規約を確認しておきましょう。色や明るさを調整する場合も、誤解されない範囲にとどめるのがおすすめです。
対策2.募集図面と紹介文を改善する
募集図面は、仲介会社の営業担当者が活用する資料です。情報が少なく、見づらい図面は、紹介の優先順位が下がりやすい傾向があります。情報はわかりやすく、端的に記載しましょう。二次元コードを読み込むと物件掲載サイトに遷移して、360度のパノラマ写真で確認できるような仕組みづくりも効果的です。
◎図面に載せておきたい項目
- ● 賃料、管理費、敷金、礼金などの費用
- ● 間取り、専有面積、向き、所在階
- ● エアコンや宅配ボックスなどの設備
- ● 入居可能日と内見可能日
- ● ペット、楽器、事務所利用などの相談可否
- ● 保証会社や連帯保証人に関する条件
- ● 最寄り駅やスーパー、学校などまでの距離
- ● 申込方法と管理会社の連絡先 など
そもそもの取り組みとして、「ターゲットに刺さりやすい条件は何か」「自分の物件の強みや魅力が、わかりやすい言葉で掲載できているか」といった分析も有効です。競合物件の掲載情報なども参考にしながら、良いと思った要素はどんどん取り入れていきましょう。
記載は「静かな環境」のような抽象的な表現より、「◯◯駅まで徒歩7分」のように数字で伝えたほうが検討されやすくなります。ただし、不動産広告における徒歩所要時間は、道路距離80mにつき1分として計算し、1分未満の端数は切り上げるのが基本です。独自の感覚や地図アプリの所要時間をそのまま掲載しないよう、ご注意ください。
参考:不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約」
対策3.掲載媒体や仲介会社を広げる
募集を依頼している仲介会社や掲載媒体が少ないと、入居希望者の目に触れる機会そのものも限られてしまいます。管理を任せている場合でも、実際に何社へどのように依頼しているか、オーナー側でも確認が必要です。
◎確認ポイント
- ● 何社の仲介会社に募集を依頼しているか
- ● どの媒体に登録・掲載しているか
- ● 最終更新日や次回の更新予定
- ● 媒体ごとの閲覧数や問い合わせ数
- ● 問い合わせに対する回答方法や対応時間の想定・実態
- ● 媒体ごとの利用者層と想定する入居者像はマッチしているか など
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律では管理会社に対し、年1回以上はオーナーへ業務状況を報告する義務があると定めています。ただし、その定期報告のなかに、入居者の募集活動レポートが含まれているとは限りません。空室期間中に何をどのような頻度で報告するかは、管理会社と別途取り決めておく必要があります。
対策4.賃料を競合や相場と比較する
賃料を競合や相場と比較するのは、値下げするためではありません。現在の条件が競合物件と比べてどのように見えているかを把握し、反響が少ない原因を切り分けるために実施します。比較する際は賃料だけではなく、可能であれば次の項目もまとめておくと、後で役立つ場合があります。
◎確認ポイント
- ● 敷金、礼金、保証料などの初期費用
- ● 賃料や管理費などを合わせた月額負担
- ● 駅からの距離、周辺環境(スーパー、商業施設、病院、学校、公園など)
- ● 築年数と構造、所在階、向き、日当たり、間取り、専有面積
- ● インターネット無料や宅配ボックスなどの設備
- ● フリーレントの有無
- ● ペットや楽器の可否などの入居条件 など
募集賃料が相場より明らかに高い場合は、価格差を埋められる設備や条件があるかを検討しましょう。相場と大きく変わらないにもかかわらず反響が少ない場合は、写真や掲載状況など、賃料以外の原因を優先して調べましょう。
また、募集賃料と成約賃料には差が生じやすいため、募集賃料よりも実際の成約賃料のほうが判断材料としては有力です。成約時期、フリーレント、礼金、AD、設備・築年数などの条件をそろえて比較しましょう。
ケース2.問い合わせはあるが内見に至らない場合の空室対策3選
問い合わせがあるのに内見へ進まない場合は、仲介会社への情報共有不足や鍵の受け渡しなどの手間が考えられます。次の3つを確認しましょう。
対策5.仲介会社への情報共有を充実させる
仲介会社の営業担当者は、同時に多くの物件を扱っています。資料を見ても強みや条件がわかりにくい物件は記憶からも漏れやすく、入居希望者への提案候補から外れてしまう恐れがあります。
募集図面とは別に、物件情報を端的にまとめたA4サイズ1枚程度の資料を共有しておくのも一つの手です。
◎おすすめの記載情報
- ● 物件の強み(競合にない設備、内見時に見てほしい設備や眺望、日当たりなど)
- ● 想定する入居者像
- ● 相談に応じられる条件の範囲(ペット、入居日、法人契約など)
- ● 審査や条件交渉に対する回答窓口 など
営業担当者に対しては、単に「営業を強化してください」というだけではなく、「これを伝えてほしい」と具体的に依頼しましょう。資料や言葉で条件を明確に共有できれば、営業担当者も入居希望者へ伝えやすくなります。ただし、過度な協力依頼は控えましょう。できる範囲で継続的に対応してもらえるような、感謝と配慮が必要です。
対策6.鍵の管理方法と内見方法を改善する
仲介会社が内見の案内をするたびに、離れた管理会社の事務所まで鍵を取りに行かなければならない物件は、案内の負担が大きくなります。「現地にキーボックスを設置する」「暗証番号で解錠できるようにする」など、ハードルを下げる工夫も有効です。
◎対応例
- ● 現地にキーボックスを設置する
- ● 一時的な暗証番号を発行できるスマートロックを導入する
- ● 鍵の受け渡し場所を物件の近くに変更する
- ● 内見可能な曜日や時間帯を広げる
- ● 仲介会社からの当日予約にも対応できる体制を整える
キーボックスやスマートロックを使う場合は、防犯面への配慮も必要です。「暗証番号を定期的に変更する」「案内履歴を記録する」など、管理方法も決めておきましょう。
対策7.AD(広告料)の設定を見直す
ADとは、仲介会社が入居者を決めた際にオーナーが支払う広告料です。ADの水準が周辺物件と比べて明らかに低い場合は、見直しを検討する余地があります。ただし、ADの増額が、必ずしも内見数や契約数の増加に直結するわけではありません。ほかに課題が潜んでいる状態では、費用だけがかさむリスクもあります。まずは、案内や紹介の優先順位がどうなっているか、現状を確認するところから始めましょう。
AD(広告料)という名称は賃貸実務で広く使われていますが、名称だけで宅建業法上の取り扱いが決まるわけではありません。
宅建業者が通常の媒介報酬とは別に受領できる広告費については、「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額」など一定の範囲に限られます。
そのため、ADを設定する際は、何に対する費用なのか、依頼内容、金額、通常の媒介報酬との関係などを事前に確認しておくことが重要です。(参考:宅地建物取引業法46条・宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額)
◎書面で残しておきたい内容
- ● 何の業務や広告に対する費用か
- ● 支払先はどこか
- ● 金額と消費税の扱い
- ● 成約時だけ発生するのか
- ● キャンセル時の扱い
- ● 通常の媒介報酬との関係 など
具体的な契約内容に疑問がある場合は、宅地建物取引士や弁護士などへの相談をおすすめします。
不動産投資の相談先については、下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資のおすすめ相談先6選!選び方や相談時に押さえるべきポイントを紹介
ケース3.内見されても申し込みにならない場合の空室対策5選
内見まで進んでいるにもかかわらず申し込みに至らない場合は、室内や共用部の印象、設備、初期費用などの課題が考えられます。比較的費用を抑えやすい対策から、順に紹介します。
- 8. 専有部と共用部を清掃する
- 9. においや照明、室温などの環境を整える
- 10.ホームステージングを取り入れる
- 11.入居者ニーズの高い設備を追加する
- 12.フリーレントの活用や敷金礼金・入居条件を見直す
対策8.専有部と共用部を清掃する
清掃で気になるポイントは、人によって異なります。清掃後は時間帯や人を変え、多面的にチェックしましょう。自分では気付かない棚の上や目の届きにくい据え付け設備の陰なども、カバーしやすくなります。
また、エントランスや廊下、ゴミ置き場などの共用部に汚れがあると、建物全体の管理状態に不安を抱かせる恐れもあります。
◎清掃のチェックポイント
- ● キッチン、浴室、洗面台、トイレの水あかやカビ
- ● 窓、網戸、サッシの汚れ
- ● 床や建具の傷、べたつき
- ● エントランスや共用廊下、ゴミ置き場の残置物、汚れ、ゴミ
- ● 集合ポストのチラシ
- ● 駐輪場の放置自転車 など
区分マンションでは、オーナー個人の判断だけで共用部を変更・修繕することはできません。問題を感じた場合は、管理会社や管理組合へ対応を相談しましょう。
対策9.においや照明、室温などの環境を整える
内見時の印象は、内装や広さ、清掃だけで決まるものではありません。ドアを開けた瞬間のにおい、室内の明るさ、暑さ・寒さなどの感じ方も判断材料になり得ます。
においが気になる場合は芳香剤で覆うのではなく、原因を探しましょう。
◎においの原因となり得る要素
- ● 排水口の封水切れ
- ● エアコン内部の結露や漏水によるカビ
- ● 壁紙や床に残ったたばこ・ペット臭
- ● ベランダや共用部のゴミ(風向きによっては周辺環境の影響も考えられる)
- ● 長期間閉め切ったことによる空気の滞留 など
◎照明、室温などの対策
- ● 部屋ごとに照明を設置して暗い箇所がないか確認し、照度を確保する
- ● 事前に全室の点灯確認を実施し、切れている電球があれば交換する
- ● 電球の色温度(電球色・昼白色など)を検討する
- ● 季節に応じ、内見前にエアコンを稼働させておく(※電気契約を要確認)
- ● 暗さ、古さ、室温など、内見の妨げになる状態を解消しておく など
照明が暗い部屋は、実際より狭く古く見えがちです。LEDへの交換は、募集写真の見え方の改善にもつながるため、取り組むオーナーも増えています。
対策10.ホームステージングを取り入れる
ホームステージングとは、家具や小物を配置して、入居後の暮らしをイメージしやすくする方法です。大がかりに家具をそろえなくても、次のような方法があります。
◎ホームステージングの方法
- ● カーテンやラグを配置する
- ● 小型のテーブルや照明を置く
- ● ベッドやソファの大きさを床面に示す
- ● 家具の配置例を間取り図に記載する
- ● 撮影時だけ家具を設置する
- ● バーチャルホームステージングを利用する など
ホームステージングは、個性的な形の居室や広いリビングなど、家具配置を想像しにくい部屋とも相性が良い対策です。一方で、設備の老朽化や清掃不足を隠すために使っても、内見時に差がわかれば逆効果になりかねません。
バーチャルホームステージングや加工画像を利用する際は、実際には家具が設置されていないことや、画像がイメージであることをわかりやすく示しましょう。
対策11.入居者ニーズの高い設備を追加する
設備は人気の有無ではなく、「想定する入居者が抱えている不便を解消できるか」という視点で判断するのがポイントです。
| 入居者の想定 | 考えられる不安・不便 | 設備例 |
|---|---|---|
| 単身者 | 不在時に荷物を受け取れない | 宅配ボックス |
| 在宅勤務の人 | 通信環境を準備する手間がある | インターネット設備 |
| セキュリティ重視 | 来訪者を確認できない | モニター付きインターホン |
| 共働き世帯 | 洗濯物を外に干しにくい | 浴室換気乾燥機 |
| 高齢者 | 段差や温度差が不安 | 手すり、温度差への対策 |
| 短期転勤者 | 家具・家電をそろえるのが負担 | 家具・家電付きプラン |
競合物件に広く備わっている設備が自分の物件にない場合、詳細ページを見られる前に検索結果から外れている恐れがあります。定期的に確認しましょう。
また、高額な設備ほど効果が高いとは限りません。入居者像と費用対効果の確認が必要です。
◎導入前の確認ポイント
- ● 競合物件の設備状況
- ● 仲介会社から寄せられた入居希望者の声
- ● 導入費と工事費、月額利用料、保守費用
- ● 故障時の交換費用
- ● 賃料に反映できる金額
- ● 区分マンションの管理規約
- ● 退去時や売却時の扱い など
対策12.フリーレントの活用や敷金礼金・入居条件を見直す
内見時の印象に問題がない場合は、申込時の負担や募集条件がハードルになっていないか確認しましょう。
◎見直しの例
- ● 一定期間の賃料を無料にするフリーレント
- ● 敷金・礼金の減額や廃止
- ● 鍵交換費用など、オーナー負担の範囲拡大
- ● ペット、楽器、事務所利用などの相談受け入れ
- ● 入居日や契約開始日の調整
- ● 家具・家電付きプランの追加 など
フリーレントは入居後の一定期間の賃料を無料にするなどの施策で、初期費用の負担感を下げつつ、月々の賃料水準を維持できます。ただし、無料期間中や直後に解約された場合の扱いを、あらかじめ決めておかなければなりません。短期解約に関する条項を設ける場合は、内容を契約書に明記し、入居者へ説明します。
敷金を減額する場合は、原状回復費の回収リスクとあわせて検討しましょう。ペット可にする場合は、原状回復の特約や敷金の追加などの条件をセットで設計すると、トラブル時の負担軽減につながります。
参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
ケース4.申し込み後のキャンセルや審査落ちが続く場合の空室対策3選
申し込みまで進んでいる場合、物件や募集条件はある程度評価されていると考えられます。契約に至らない原因を特定しましょう。
対策13.保証会社の選択肢を広げる
利用できる保証会社が1社だけの場合、その会社の審査に通らなかった段階で、申し込みが流れてしまうケースがあります。審査基準や保証内容が異なる複数の保証会社に対応しておくことで、状況が改善した例もあります。
ただし、保証会社を増やす目的は単純に審査通過率を高めることではありません。滞納保証の範囲、原状回復費、訴訟費用、残置物処理、孤独死対応など、保証範囲によってオーナーのリスクは大きく異なります。入居率だけでなく、滞納・退去時の損失まで含めて比較する必要があります。
◎保証会社の比較・確認項目
- ● 保証される賃料や原状回復費の範囲
- ● 免責期間や立替払いの条件
- ● 入居者が支払う初回・更新保証料
- ● 滞納発生時の連絡方法
- ● 高齢者や外国人などへの対応
- ● 退去や残置物への対応範囲 など
高齢者や外国人などの受け入れを広げる場合は、住宅セーフティネット制度なども活用できる可能性があります。各種条件を確認し、慎重に判断しましょう。
対策14.申し込みから契約までの対応を早める
入居希望者は複数の物件を同時に検討しているケースも少なくありません。申し込み後の連絡や審査が滞れば、より早く手続きを進められる別の物件へ移ることも考えられます。
◎時間を要しやすい項目
- ● 申込書の受領、不足書類の確認
- ● 保証会社への審査依頼、オーナー審査、審査結果の連絡
- ● 契約条件の確定、重要事項説明、契約書の締結
- ● 初期費用の入金
- ● 鍵の引き渡し
電子契約やIT重説を利用できる場合は、書類の郵送や来店にかかる時間を短縮できる可能性があります。ただし、電子化への承諾取得など、必要な手続きを守ることが前提です。
対策15.初期費用の内訳や支払時期、負担方法を調整する
申込者が契約に迷っている場合、金銭面の詳細な条件がわからず不安を感じ、決めかねているケースもあります。この場合、成約の妨げになっている項目の確認と、納得できる具体的かつ合理的な説明が必要です。
◎調整の検討項目
- ● 入居日を調整して日割り賃料を抑えられるか
- ● 礼金やオーナー側の契約事務費用を見直せるか
- ● 鍵交換費用などをオーナー負担にできるか
- ● 支払時期を分割できるか
- ● 不要な付帯サービスが含まれていないか、外せるか など
空室の原因が入居までのどの段階にあるか見極める4ステップ
空室の原因がどの段階なのか特定しにくい場合は、段階を追って確認しましょう。4つのステップで紹介します。
- 1. 【競合との比較】募集条件に見劣りがないか確認する
- 2. 【掲載状況・閲覧数】物件情報が見られているか確認する
- 3. 【問い合わせ・内見数】導線を確認する
- 4. 【内見数・申込数】入居先として選ばれない理由を調べる
ステップ1.【競合との比較】募集条件に見劣りがないか確認する
最初に、自分の物件が入居希望者からどのように見えているかを確認します。同じ駅、間取り、築年数、専有面積など、条件の近い物件を10件程度選び、次の項目を並べましょう。
- ● 賃料、管理費、敷金・礼金、初期費用の概算
- ● フリーレント
- ● 駅からの距離、主要設備
- ● 写真の枚数と質
- ● 入居可能日、ペット可否などの条件
自分の物件だけが高い、設備が少ない、初期費用が大きいといった点が見つかれば、対策の優先順位を決める材料になります。
ただし、競合が値下げしているからといって、すぐ同じ条件にする必要はありません。価格差に見合う強みがあるか、ほかの方法で初期負担を軽減できないかを先に検討しましょう。
ステップ2.【掲載状況・閲覧数】物件情報が見られているか確認する
次に、物件情報が入居希望者へ届いているか確認します。物件の閲覧数自体が少ない場合は、掲載媒体、登録カテゴリ、検索条件、情報の更新頻度などに問題がある恐れがあります。「対策3.掲載媒体や仲介会社を広げる」を中心に、露出の増やし方を検討しましょう。
閲覧されているのに問い合わせが少ない場合は、次の要因が考えられます。
- ● 写真で魅力が伝わっていない
- ● 賃料や初期費用が高く見える
- ● 募集図面に必要な情報がない
- ● 設備や条件が検索ニーズと合っていない
- ● 入居可能日が遅い
- ● 古い募集情報が残っている
この場合は、下記の対策が効果的です。
- 対策1. 募集写真を撮り直す
- 対策2. 募集図面と紹介文を改善する
- 対策4. 賃料を競合や相場と比較する
- 対策11.入居者ニーズの高い設備を追加する
- 対策12.フリーレントの活用や敷金礼金・入居条件を見直す
ステップ3.【問い合わせ・内見数】導線を確認する
問い合わせがあるのに内見が少ない場合は、物件の魅力だけでなく、仲介会社が案内しやすい状態か確認します。主な確認項目は次のとおりです。
- ● 空室確認への回答に時間がかかっていないか
- ● 仲介会社が鍵を受け取りやすいか
- ● 当日や土日でも内見できるか
- ● 募集条件への質問に即答できるか
- ● 入居可能日が明確か
- ● 仲介会社へ物件の強みが共有されているか
- ● ADなどの募集条件が周辺と大きく異ならないか
問い合わせ数に対する内見数の記録や分析を継続すると、下記の対策を実施したあとに導線が改善したか確認できます。
- 対策5. 仲介会社への情報共有を充実させる
- 対策6. 鍵の管理方法と内見方法を改善する
- 対策7. AD(広告料)の設定を見直す
ステップ4.【内見数・申込数】入居先として選ばれない理由を調べる
内見はあるのに申し込みが入らない場合は、内見後の感想を仲介会社に聞いて分析しましょう。単に「ほかの物件に決まった」と聞くだけでは、次の対策を選べません。可能な範囲で、原因を探ります。
- ● 賃料や初期費用
- ● 部屋の広さや間取り、水回り、設備
- ● 室内・共用部の清潔感、におい、騒音
- ● 日当たりや眺望、周辺環境
- ● 入居条件、契約開始日 など
内見数に対する申込数が少ない場合は、下記の対策が中心になります。
- 対策8. 専有部と共用部を清掃する
- 対策9. においや照明、室温などの環境を整える
- 対策10.ホームステージングを取り入れる
- 対策11.入居者ニーズの高い設備を追加する
- 対策12.フリーレントの活用や敷金礼金・入居条件を見直す
申し込みは入るものの契約に至らない場合は、キャンセルと審査落ちを分けて集計します。キャンセル理由、審査結果が出るまでの日数、必要書類の不足などを確認し、下記の対策につなげましょう。
- 対策13.保証会社の選択肢を広げる
- 対策14.申し込みから契約までの対応を早める
- 対策15.初期費用の内訳や支払時期、負担方法を調整する
物件タイプ・特殊条件別に見る空室対策のポイント4選
同じ空室でも、物件のタイプや特殊条件によって効果的な施策は異なります。ここでは、物件タイプ別におすすめの優先ポイントを紹介します。
- 1. 区分マンション
- 2. 一棟アパート・一棟マンション
- 3. 店舗・事務所
- 4. 用途変更・区画変更・定期借家
区分マンション
区分マンションでオーナー自身が改善できるのは、基本的に室内の専有部分です。エントランスや外壁などの共用部分は、原則として管理組合の管轄になります。
◎優先項目
- ● 室内清掃と原状回復
- ● 募集写真と図面
- ● エアコンやインターホンなど専有部の設備
- ● フリーレントや礼金などの募集条件
- ● 内見しやすい鍵の管理
- ● 管理会社や賃貸仲介会社への情報共有
ペット飼育、事務所利用、床材の変更、配管をともなう設備工事などは、管理規約や使用細則で制限される場合があります。募集条件や工事内容を変更する前の確認が必要です。
共用部の清掃や照明に問題がある場合は、写真を添えて管理会社や管理組合へ相談しましょう。課題は放置せず、改善要望を伝える姿勢が大切です。
区分マンション投資に興味がある方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:区分マンション投資は儲からない?失敗してしまう理由や成功のポイントまで解説
一棟アパート・一棟マンション
一棟物件は専有部だけではなく、エントランスや外壁、ゴミ置き場、駐輪場などもオーナーの判断で改善しやすい点が強みです。
◎優先項目
- ● 建物全体の清掃・照明
- ● 郵便受けや掲示板、ゴミ置き場、駐輪場の状態
- ● 防犯設備、宅配ボックス
- ● インターネット設備
- ● 募集中の各部屋で条件が整合しているか
- ● 既存入居者の不満や退去理由に合った改善
複数の空室がある場合、部屋ごとに別々の設備や内装を導入するよりも、建物全体を整理したほうが効率的なケースがあります。「単身者向けとして防犯・通信設備をそろえる」「ファミリー向けとして駐輪場や宅配設備を改善する」など、共通する不便を解消しましょう。
一方、空室ごとに条件を下げ続けると、同じ建物内で賃料差が広がり、既存入居者から不満が出る恐れがあります。更新時や次回募集時への影響も含め、慎重な判断が必要です。
そもそも、費用を最も抑えやすい空室対策は、空室自体を発生させないことです。
一棟物件なら、更新時の退去率や解約理由、入居期間、クレーム、設備故障頻度、管理会社の対応速度などを分析しましょう。空室になった際の新規募集だけでなく、既存入居者の退去抑制も重要な空室対策です。退去が発生すると、空室損失だけでなく原状回復費や募集費、ADなどが発生します。更新率や平均入居期間、退去理由を継続的に記録し、繰り返し発生する不満を建物全体の改善につなげることで、募集コストそのものを減らせる場合があります。
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下記の記事では、一棟マンション投資について詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
関連記事:マンション一棟買いにはいくら必要?資金計画のポイントをわかりやすく解説
関連記事:新築マンション投資の実態!成功例や失敗例、メリット・デメリットを解説
店舗・事務所
店舗・事務所では、住宅よりもテナントごとの用途や工事内容が大きく異なります。
◎確認項目
- ● 使用できる業種
- ● 営業時間や騒音、臭気に関する制限、電気容量、給排水設備
- ● 看板を設置できる場所
- ● 居抜きかスケルトンか
- ● 造作物の所有権と譲渡、原状回復の範囲
- ● 工事期間中の賃料、フリーレント期間 など
事業用物件では、入居後すぐに売上が発生するとは限りません。開業準備や内装工事の期間に対するフリーレントが、誘致条件の一つになることがあります。一方で、長期間のフリーレントやオーナー側の工事負担を認める場合は、契約期間中に回収できるか確認しなければなりません。途中解約時の違約金や原状回復条件も含め、契約全体で採算を判断しましょう。
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用途変更・区画変更・定期借家
通常の募集改善では需要を確保しにくい場合、用途や区画、契約方法を見直す選択肢があります。ただし、ハードルが高いのが実情です。
◎選択肢の例
- ● 広い住戸や事務所を複数区画に分ける
- ● 小さな区画を統合する
- ● 住宅から事務所などへ用途を変える
- ● 家具付き・短期滞在向けの運用を検討する
- ● 普通借家から定期借家へ契約方法を変える など
用途変更や区画変更は、募集条件を変えるだけでは実施できません。建築基準法や消防法、都市計画法、管理規約、融資契約などの確認が必要です。工事費も大きくなりやすいため、次の順番で判断しましょう。
- 1. 変更後の需要と想定賃料を調べる
- 2. 法令・規約上実施できるか確認する
- 3. 設計・工事費を見積もる
- 4. 休業・空室期間を見込む
- 5. 変更後のNOIを試算する
- 6. 回収期間と売却への影響を確認する
定期借家契約は柔軟な運用に役立つ一方で、再契約が保証されないぶん、入居希望者に敬遠される恐れがあります。場合によっては、賃料水準を下げなければならないケースも考えられます。いずれも「できるか」だけでなく「採算が合うか」の視点が大切です。専門家と連携し、相談しながら慎重にご判断ください。
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>>>売却中の工場・倉庫を見てみる<<<
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空室対策は数字で原因を見極め、適切な手法を検討しよう
空室対策は思いつく施策をやみくもに実施するのではなく、どこに原因があるのか見極めてから適切な手法を選ぶほうが、成果につながりやすくなります。「閲覧」「問い合わせ」「内見」「申し込み」のどの段階に課題があるか、特定するところからはじめましょう。
対策の際は、費用対効果の試算も重要です。賃料の値下げは取り組みやすく、効果も確認しやすい施策ですが、長期的視点では売却評価に影響しかねません。値下げに頼らない経営をめざし、取り組みの幅を広げましょう。
よくある質問
Q:空室になる原因は何ですか?
A:不動産の空室が発生する原因は、主に「集客(認知)」「条件(価格・スペック)」「物件状態(見た目・環境)」「募集活動・営業力」の4つの観点に集約されます。閲覧数や問い合わせ数、内見数、申込数、契約数の5つの数字を確認し、どの段階で入居希望者が離れているかを特定しましょう。段階を絞って分析することで、より具体的な課題が見えやすくなります。
Q:空室対策は、何から手をつけたら良いですか?
A:空室対策は、単純に費用の小さい順ではなく、「原因との関連性」「改善した場合の収益効果」「実施コスト」「効果が続く期間」の4点から優先順位を決めることが重要です。
低コストの施策から検証する方法は有効ですが、原因が明確な場合には、設備投資やリフォームといった施策を早期に実施したほうが、結果として空室損失を抑えられる場合もあります。設備投資は「初回の募集だけ」で判断するのではなく、設備の耐用期間中に見込まれる空室損失の削減額や賃料維持効果を含めて、総合的に判断することをおすすめします。
Q:やってはいけない空室対策は何ですか?
A:「やってはいけない対策がある」というより、「原因を確かめないまま実施する対策が危ない」とお考えください。特に賃料の値下げは減収が入居中ずっと継続するうえ、次回の募集条件や売却時の評価にも影響が残る場合があります。値下げを検討する際は、ADやフリーレントとの総額を比べたうえで、慎重にご判断ください。










