ホテル投資は、アパートやマンションなどのレジデンス(住居系)投資よりも高い利回りが期待できる魅力的な選択肢です。一方で投資規模の大きさや運営管理の複雑さなど、不動産投資の経験者でも難しい投資判断が求められる場合があります。本記事ではホテル投資の実態として、魅力や利回りの考え方、運営方式別のメリットやデメリットなどを解説します。
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※以下の情報は2025年12月時点の情報をもとに、新築マンションのプランニング・企画会社代表取締役・天内和幸が監修しています。
この記事で分かること
- ホテル投資は高利回りが期待できる半面、インバウンド動向など外部環境の影響を受けやすい
- ホテル投資における主な運営方式は「賃貸(マスターリース)方式」「MC(運営委託)方式」「直営方式」「フランチャイズ(FC)方式」の4種類
- ホテル投資の重要な判断基準として、収益に関わる「ADR」「OCC」「RevPAR」の3つの指標がある
目次
ホテル投資の特徴と実態
ホテル投資を戸建てやアパート、マンションなどのレジデンス(住居系)投資と比較した際、明確な事業特性上の違いがあります。ここでは、ホテル投資の特徴として、他の不動産投資との違いや市場動向などの実態について説明します。
1. ホテル投資とレジデンス(住居系)不動産投資との違い
2. ホテル投資のメリット・デメリット
3. ホテル投資の市場動向
ホテル投資とレジデンス(住居系)投資との違い
ホテル投資とレジデンス(住居系)投資は、収益の性質が根本的に異なります。
| 項目 | ホテル投資 | レジデンス(住居系)投資 |
|---|---|---|
| 収益の源泉 | 「稼働率」×「客室単価」 | 家賃 |
| 価格設定の柔軟性 | 毎日変更可能 需要に応じて即時反映しやすい |
基本的に更新時まで固定 柔軟に設定しにくい |
| 景気変動の影響 | 大きい | 少ない |
| 運営コスト | 高 | 低~中 |
レジデンス(住居系)の家賃は、一度入居が決まれば契約期間中は固定されるのが一般的です。インフレ局面で物価や金利が上昇しても、既存の入居者の家賃に即座に反映するのは難しく、インフレ局面では実質利回りが低下するリスクがあります。
対してホテルは、「変動価格制(ダイナミックプライシング)」により、宿泊料を毎日、あるいは時間単位でも変更可能です。インフレによるコスト増を即座に売価へ転嫁し利益率の低下を防ぐことができるため、極めてインフレ耐性が高い資産といえます。また、ホテルは立地だけでなく「運営(オペレーション)の質」が収益に大きく影響します。経営手腕次第で利回りを大幅に向上させる「アップサイド」が存在するのも、ホテル投資の魅力の一つです。
ホテル投資を不動産投資の代表的な10種類の中で体系的に考えたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資の代表的な10種類!自分にあった選び方も解説
ホテル投資のメリット・デメリット
投資判断を行ううえで、ホテル投資も表面的なメリットだけでなく、デメリットを理解しておく必要があります。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 高利回りが期待できる | ●ノムコム・プロの情報提供サイト内「ホテル・旅館物件」における表面利回りは約4%~約14%(※2025年12月時点) |
| インフレ耐性が高い | ●宿泊料金などの調整が容易 ●効率的なコスト転嫁が可能 |
| 節税効果を得やすい | ●耐用年数が比較的短い建物の付属設備の割合が高いため、早期に減価償却費を計上しやすい ●ローンを使用する場合、利息も経費として計上できるため、支払い初期の利息負担が大きい時期に節税効果を期待しやすい |
| 社会貢献になる | ●地域経済の活性化につながる ●雇用創出効果が期待できる |
| デメリット | 内容 |
|---|---|
| 運営が複雑 | ●旅館業法の遵守が必須 ●集客、清掃品質管理、顧客クレーム対応、システム運用など、実務の専門性が高い |
| 外部環境の影響を 受けやすい |
●感染症の流行や災害、インバウンド動向など、世相の影響をダイレクトに受けやすい ●短期間で稼働率が急落するリスクがある ●競合ホテルが多い地域では、価格を上げすぎると顧客が流出し、価格転嫁が難しくなる場合もある |
| 固定費が高い | ●ホテルの機能を維持するための人員配置が必要で、稼働率が落ちても人件費は削減しにくい ●競争力を維持するため、FF&E(家具・備品)などのメンテナンスや定期的な更新が発生する |
| 流動性が低い | ●専門的なノウハウが必要となるため、買い手が限定的になりがち ●通常の不動産調査に加え、旅館業法・消防法などへの適合性といった調査項目が多く、売却期間が長期化しやすい |
ホテル投資の市場動向
観光局の発表によると、2024年の訪日外国人客数は約3,687万人。コロナ禍以前で過去最高となった2019年の3,188万人を超える水準で推移しており、政府目標である2030年6,000万人に向けて順調に伸長しています。2025年10月も約389.6万人と、10月の過去最高を58万人以上更新しました。
出典:日本政府観光局「訪日外客統計」※グラフは「2025年10月推計値(2025年11月18日発表)」
一方で、建築資材や人件費の高騰などを理由に、新規ホテルの開発ペースは鈍化の傾向を示しています。国土交通省の公表資料「着工建築物用途別・使途別床面積の推移(民間建築主)」によると、2024年の「宿泊業,飲食サービス業用」の着工床面積は約2,144(千平方メートル)でした。2019年の約3,200(千平方メートル)と比較すると、約33%減少しています。
ここからは、インバウンドの拡大にホテル新築の供給が追いついていない傾向もうかがえます。需要と供給のバランスが、既存ホテルの稼働率と単価を押し上げる要素となり得るといえるでしょう。
ホテル投資の運営方式
ホテル投資における収益やリスクは、運営方式によって異なります。自分がどこまでリスクを負い(ダウンサイドリスク)、どこまでのリターン(アップサイド)を狙うのか、軸を決めなければなりません。ここでは、主要な4つの方式について解説します。
1. 賃貸(マスターリース)方式
2. MC(運営委託)方式
3. 直営方式
4. フランチャイズ(FC)方式
1.賃貸(マスターリース)方式
賃貸(マスターリース)方式はホテルを運営会社に一括で賃貸し、毎月固定の賃料を受け取る方式です。いわば「安定重視」の大家モデルで、マンション投資のサブリースに近い形態です。
| 主なメリット |
●一般的に、ホテルの稼働率に関わらず賃料が固定されるため、収支が安定しやすい |
|---|---|
| 主なデメリット | ●市場が好況でホテルが満室になっても、賃料は変わらないため、アップサイドを享受できない ●運営会社の経営が思わしくない場合は賃料減額を要求されるリスクがある |
| 注意・対策 | ●契約書の解約条項や、保証金を含めたアフターフォローの厚さで慎重に判断する ●運営会社の財務状況を定期的にチェックする |
2.MC(運営委託)方式
MC(Management Contract)方式は、経営主体は自分(所有者)のまま、実際の運営実務を専門の運営会社(オペレーター)に委託する方式です。運営会社への報酬は、契約内容によって異なります。定率で定められている場合もあれば、売上もしくは営業総利益(GOP)に連動するインセンティブフィー(業績連動報酬型)の場合もあります。
| 主なメリット |
●プロの運営力を活用できる |
|---|---|
| 主なデメリット | ●人件費や水道光熱費などの運営経費や、赤字が出た場合の損失は基本的にオーナー負担となる ●運営会社の実力(特に集客力やコスト管理力など)に収益が左右される |
| 注意・対策 | ●報酬体系を業績連動型にする ●オーナーのコスト監査権限を手放さない ●過去の実績で不況時にも利益を確保できたか客観的な数値で判断する |
3.直営方式
直営方式は自分自身が経営の主体(オーナー)となり、集客からスタッフ採用・教育など、ホテルの運営をすべて担う方式です。ホテル運営に関するノウハウも必須となり、純粋な「投資」というよりは「事業経営」そのものといえます。
| 主なメリット |
●外部への運営委託費が不要なため、利益率を最大化できる |
|---|---|
| 主なデメリット | ●旅館業法など、高度な運営知識やノウハウが必要になる ●すべてのリスクをオーナーである自分が負う |
| 注意・対策 | ●集客に強いOTAコンサルタント、会計や税務に強い専門家などへの外部委託を図り、ノウハウ不足と業務の非効率化を防ぐ ●十分な運転資金を確保する |
4.フランチャイズ(FC)方式
フランチャイズ(FC)方式は既存のブランドの傘下に入り、自分自身もしくは自分が契約した運営会社が経営の主体となる方式です。ブランドが持つネームバリューや運営ノウハウを活用できるのが特徴です。
| 主なメリット |
●ブランドが持つ認知力や集客力を活用できる |
|---|---|
| 主なデメリット | ●フランチャイズ料が発生する(初期加盟金、ロイヤリティ、システム利用料など) ●ブランドが定める基準を遵守する必要があるため、運営に制限がかかる場合もある |
| 注意・対策 | ●費用対効果を分析する ●契約期間や途中解約時の違約金など、契約終了時の条件の柔軟性を確認する |
【個人投資家におすすめ】ホテル投資の種類と戦略例
ホテル投資の市場には、小口資金で始められる金融商品から数億円規模の実物投資まで、多様な投資手法が存在します。ホテル投資の流行りに乗るのではなく、自分自身の資金規模やリスク許容度などに合わせ、現実的な戦略を立てましょう。ここでは、個人投資家が比較的取り組みやすいホテル投資の種類と、具体的な戦略例について説明します。
1. 【一般投資】築古旅館やビジネスホテルの再生戦略
2. 【運営会社との協業】中規模ホテルの「安定+アップサイド」戦略
3. 【不動産小口化商品(任意組合型)】都心プライム物件への共同投資戦略
4. 【ホテル特化型REIT・ファンド】流動性と分散投資の活用戦略
また、実際に今、どのような物件が市場にあるのか興味があるという方は、下記の物件例をご覧ください。
1.【一般投資】築古旅館やビジネスホテルの再生戦略
ここで紹介するのは、地方都市や観光地、あるいは都内の下町エリアにある宿泊施設を割安で購入し、現代のニーズにあわせて付加価値を高め、再生する戦略です。建物全体のスペックを向上させるのではなく、特定のターゲットに特化することで競合との差別化を図ります。
| 課題 | ●駅からバスで20分とアクセスが悪い ●団体客向けの宴会場が無駄に広い ●建物の古さが目立ち、一般客の集客は困難 |
|---|---|
| 戦略 | ●駅からの遠さを強みに、車移動が中心の「ペット連れ富裕層」をターゲットに設定 ●床を滑りにくい素材に変え、宴会場をドッグランに ●「大型犬OK」「ペットと布団で寝られる」など、競合が避けることをあえて許可 |
| 結果・ポイント | ●「犬がいるから旅行できない」と諦めている層のニーズに合致 ●1泊5万円以上の高単価でも連日満室の人気宿へ転換 |
| 課題 | ●日当たりが悪く、昼間でも部屋が薄暗い ●小規模ホテルのため人件費が収益を圧迫し、利益が出にくい構造 |
|---|---|
| 戦略 | ●薄暗さを強みに、さらに遮光性と防音性を強化し、「没入感」を売りにする ●ハイスペックPCや大プロジェクター、高音質スピーカーを完備し、「泊まれるeスポーツ施設」「推し活専用ホテル」としてSNS展開 |
| 結果・ポイント | ●外に出る必要がない層、誰にも迷惑をかけることなく大勢で盛り上がりたい層などのニーズに合致 ●宿泊だけでなく、日中の時間貸し需要も取り込み、稼働率が向上 ●ターゲットをスマホ完結を好む層に絞り、スマートロックなどを活用してホテルの無人化・省人化運営を実現 |
この戦略では「現在の法律に適合するか」というコンプライアンスがポイントになります。特に元がマンションやオフィスなど、ホテル以外の用途だった物件や、長期間営業していない休眠物件だった場合は、注意が必要です。用途変更の手続きや消防設備の設置・更新などが義務として発生し、場合によっては数千万円単位の追加コストがかかることも考えられます。
また、古い旅館・ホテルを再生する際は、コンセプト転換だけでなく大規模改修工事や設備更新に要する費用・期間を十分見積もる必要があります。営業停止期間中の無収入リスクも織り込み、資金と工程に余裕を持った計画を立てましょう。場合によっては耐震補強や消防設備増設など想定外の工事が発生し、当初想定を上回るコスト負担となるケースもあります。購入前に、必ず一級建築士や不動産会社などの専門家に相談しましょう。
築古のビジネスホテルを再生させた事例に興味がある方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:~事例紹介(9)~ 築古のビジネスホテルを収益物件として捉え直し、売却に成功
2.【運営会社との協業】中規模ホテルの「安定+アップサイド」戦略
ここで紹介するのは、賃貸(マスターリース)方式の安定性と、MC(運営委託)方式の収益性のバランスを考慮した、ハイブリッド型の戦略です。賃料が固定されたままでは、市場が好況な場合に恩恵が受けられず、業績連動型では不況時のリスクが高くなります。ベースに最低保証を設定し、そこにインセンティブフィーを組み合わせることで、リスクをコントロールしながら収益の最大化を図ります。
| 課題 | ●インバウンド需要が復活し、客室の単価平均が1.5倍になっても賃貸(マスターリース)契約で、オーナーに入る賃料は固定のまま ●物価上昇による修繕費や保険料が負担となり、実質的な手残りが減るインフレ負けの状態 |
|---|---|
| 戦略 | ●固定部分を、ローン返済などをカバーする最低額の月額150万円に設定 ●月間売上が800万円を超えた場合、超過分の30%をオーナーに還元する形で再契約 |
| 結果・ポイント | ●リスクを回避しつつ、インフレなどの影響による客室単価上昇が、ダイレクトにオーナーの追加収益となった ●運営会社にとっても固定費の負担が減少するため、長期的な視点で合意を得られた |
この戦略では、金額や歩合の算出基準を明確にすることが重要です。言葉の定義や条件などは詳細まで確認し、明文化しておきましょう。会計基準の違いなどで月次や項目が合わず、トラブルに発展するケースもあります。事前に突合表やサンプルなどを作成し、共有しておくことをおすすめします。
3.【不動産小口化商品(任意組合型)】都心プライム物件への共同投資戦略
ここで紹介するのは、個人では購入が難しい都心の一等地や有名観光地の大型ラグジュアリーホテルに、1口単位で出資する戦略です。「不動産小口化商品(任意組合型)」は、実物不動産の共有持分を持つ法的な性質があるため、不動産所得としての損益通算や、相続税評価額の低減効果も期待できます。
| 課題 | ●手元に現金が1億円あるが、そのまま相続させると額面通り100%の評価額で課税されるため負担が重い ●都心や有名観光地のホテルは購入したいが、予算的に手が届かない |
|---|---|
| 戦略 | ●現金をそのまま保有せず、1口1,000万円の小口化商品を10口(1億円相当)取得 ●出資者が実物オーナーとしての持分を保つ「任意組合型」を選択 |
| 結果・ポイント | ●資産価値を現金から不動産に組み替えることにより、相続税評価額のみを抑制する ●ホテルの運営は専門会社が担うため、出資者には管理の手間がかからない ●ブランドホテルのオーナーの一人になれるというステータスも持てる |
この戦略では、流動性の低さを理解しておく必要があります。中途解約には制限があるケースも多く、急に現金が必要になっても即座に換金できないというリスクがあります。また、収益構造が業績連動型の場合、感染症や災害などで稼働が落ちると、分配金が減少する場合もあります。節税メリットだけにとらわれず、ホテルの事業性を見極めましょう。
4.【ホテル特化型REIT・ファンド】流動性と分散投資の活用戦略
ここで紹介するのは、証券市場や不動産クラウドファンディングを通じて、間接的にホテルへ投資する戦略です。実物投資とは異なり、少額から始められるのが特徴です。
| 課題 | ●次の物件を購入するまでの待機資金が預金として眠っている ●インフレ対策をしたいが、特定のホテルを1棟買いするのには抵抗がある ●現金、もしくはすぐに現金化できる資産を残しておきたい |
|---|---|
| 戦略 | ●手元の待機資金の一部を、「ホテル特化型J-REIT」や「公募型ファンド」に配分 ●全国のホテルに分散投資されている銘柄を選ぶことで、地域集中的な災害リスクを回避する |
| 結果・ポイント | ●気になるホテルに出会った際に、購入資金の頭金として現金化しやすい ●エリアやタイプの異なる多数のホテルへの間接的な投資が可能になる |
この戦略では、不動産でありながら価格は株式市場の影響を受けるため、元本割れを起こすリスクがあります。実物投資のように融資を活用したレバレッジも効かせられないため、「自己資金の効率的な運用先」という認識が必要です。
ホテル投資における利回りの考え方と数字の読み方
ホテル投資における「利回り」は、レジデンス(住居系)不動産と前提条件が異なります。ホテル独特のコスト構造を読み解き、投資判断の精度を高めましょう。
1. ホテル投資における「表面利回り」と「実質利回り」
2. ホテル投資で重要な3つの指標「ADR」「OCC」「RevPAR」
3. 損益分岐点(BEP)の見極め方
ホテル投資における「表面利回り」と「実質利回り」
一般的に、ホテル投資は表面利回りが高くなる傾向があります。しかし、ホテルはレジデンス(住居系)よりも売り上げに対する経費率が高く、表面利回りを鵜呑みにするのは危険です。レジデンス(住居系)の経費は、管理費、修繕費、税金などが中心で比較的限定的です。対してホテル運営には、例えば下記のようなランニングコストが発生します。その結果、ホテルの経費率はレジデンス(住居系)の経費率と比較して3~4倍高くなる傾向があります。
| OTA手数料 | トラベルエージェントなどを経由した予約に対する手数料 |
|---|---|
| リネン・清掃費 | 客室のシーツやタオル、ユニフォームのクリーニング代など |
| 消耗品費 | アメニティ、シャンプー・トリートメント、トイレットペーパーなど |
| 仕入原価 | レストランやバー、朝食を提供する際などの食材費 |
| 人件費 | フロント、警備、客室清掃員など |
| FF&E | 家具や什器、備品などの定期的な交換・更新費用 |
| システム維持費 | 予約システムや宿泊管理システムなどの運用・保守費用 |
| 本部管理費 | MC(運営委託)方式やフランチャイズ(FC)方式などの本部機能に対して発生する費用 |
上記で挙げた経費の他にも、ホテルの立地や契約形態によって発生する経費があります。これらすべてのコストを把握しなければ、正確なキャッシュフローは判断できません。経費のすべてを洗い出し、しっかり差し引いた純収益ベースの「実質利回り」で投資判断を行うことが重要です。
ホテル投資で重要な3つの指標「ADR」「OCC」「RevPAR」
ホテルの「実質利回り」のベースとなる収益は、ホテルの「稼ぐ力」に左右されます。この「稼ぐ力」の判断に活用されるのが、下記3つの指標です。
| 指標 | 意味 | 内容 |
|---|---|---|
| ADR | ●客室平均単価 | ●「宿泊による売り上げ」÷「販売客室数」 ●1日で実際に売れた1室あたりの金額 ●ホテルのグレードやブランド力を示す |
| OCC | ●客室稼働率 | ●「宿泊された客室数」÷「販売可能な客室数」 ●集客力を示す |
| RevPAR | ●客室1室あたりの収益 | ●「OCC(客室稼働率)」×「ADR(客室平均単価)」 ●空室も含めたホテル全体の「稼ぐ力」を示す |
ここで最も重要なのが、RevPARです。単に稼働率が高くても、安売りしていればRevPARは向上しません。この3つの組み合わせからは、さまざまなことが見えてきます。指標を分解して考えることで、ボトルネックの特定や改善計画も実施しやすくなります。
| ADRは高いがOCCは低い | ●価格が高すぎて機会を損失している恐れがある ●価格調整で改善の余地がある |
|---|---|
| OCCは高いがADRが低い | ●安売りしすぎている、もしくは付加価値が不足している ●単価アップの施策が必要 |
ADRやOCCなどのホテル市場動向の詳細は、下記の記事でもぜひご確認ください。
関連記事:旅行需要の回復とホテル市場 第2回 ~稼働率、ADRおよびホテル不動産市場の動向~
損益分岐点(BEP)の見極め方
ホテル投資では平日や休日、繁忙期・閑散期、インバウンド需要などの要因で、収益は日々上下します。この変動はホテル事業の構造に組み込まれている性質のため、完全に回避することはできません。だからこそ、「何がどうなれば赤字になるか」という「損益分岐点(BEP)」を把握しておくことが重要です。
ホテルの収益性は、客室稼働率に左右されます。観光庁の「宿泊旅行統計調査報告(令和6年1~12月)」によれば、2024年の全国平均客室稼働率は59.6%でした。ただし、ビジネスホテルが73.7%、シティホテルが72.3%、リゾートホテルが54.1%と、業態によって大きく異なります。損益分岐点となる稼働率は、個々のホテルの初期投資額、借入条件、立地、グレード、運営方式などによっても異なるため、一律に示すことはできません。しかし、稼働率が業界平均を大きく下回る場合は、赤字リスクが高まると考えてよいでしょう。一般的に、ビジネスホテルやシティホテルでは、「客室稼働率は60%が一つの目安」と言われています。
また、この稼働率は、設定するADR(客室平均単価)や、業態やコスト構造によっても変動します。
| ADRが高い場合 | 少ない客数でも経費を回収しやすいため、必要な稼働率は下がる |
|---|---|
| ADRを安売りした場合 | 薄利多売となるため、経費を回収するために必要な稼働率は上がる |
自身の投資計画でもADRとOCCをセットに考えた損益分岐点を、多方面からシミュレーションしておくことをおすすめします。
ホテル投資を成功に導く5つのポイント
成功の定義は目的によりさまざまですが、順調に利益を上げている方々には一定の共通事項があります。ここでは、ホテル投資を成功に導く5つのポイントを紹介します。
1. 立地・競合調査
2. コンプライアンス調査
3. 運営会社選定
4. 融資戦略
5. 出口戦略
ポイント1.立地・競合調査
ホテル投資において立地は後から変更できないため、最重要課題の一つです。「駅に近いから」「雰囲気が良いから」などの感覚だけで判断するのは危険です。しかし、「駅から遠い」「周辺に観光名所がない」など一見ネガティブに捉えられる要素も、決して悪いわけではありません。重要なのは競合調査を通じて、その立地に需要と参入余地があるかどうかをデータで検証することです。
ポイント2.コンプライアンス調査
中古ホテルを購入する際は、その建物が現在の法律に適合しているかどうかの確認も重要です。建設当時の法律では適法であっても、現在の基準に当てはまらないケースは少なくありません。このような建物は建築基準法上『既存不適格建築物』と位置付けられ、現状のままでは旅館業の用途に供することができません。耐震補強やスプリンクラー等の防火設備追加設置など、現行法規に適合させるための改修工事が必要になるケースが多い点に注意しましょう。
ポイント3.運営会社選定
MC(運営委託)方式や賃貸(マスターリース)方式などの場合、運営会社の見極めが必要になります。利回りの高さや運営母体のブランドだけを信じて契約すると、想定しなかったトラブルに巻き込まれるリスクも高まります。売上だけでなく、オーナーの手元に利益をしっかり残せているか、似たような条件の具体的な運営実績で確認しましょう。運営会社の与信管理も重要です。運営会社の撤退・倒産など万が一の事態に備え、すぐに引き継げる代替の運営会社も検討しておくのも有効です。
ポイント4.融資戦略
ホテル投資は、他の不動産投資と比較すると融資審査がより厳格になる傾向があります。外部環境の影響を受けやすく、短期間で稼働率が急落するリスクがあるホテル運営では、物件の担保価値よりも事業性が重視されるからです。金融機関ごとの特徴を押さえ、説得力のある事業計画書を完成させ、融資審査に臨みましょう。
◎説得力のある事業計画書の作成ポイント
●独自性やニーズとのマッチング性があるか
●市場調査や競合調査が徹底されているか
●収支・返済計画に根拠や説得力があるか
●想定されるリスクは網羅され、現実的な対策が講じられているか など
融資戦略について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産購入のための融資戦略
ポイント5.出口戦略
「出口からの逆算」は不動産投資の鉄則ですが、ホテル投資においてはその重要度が格段に高まります。ホテルは他の不動産投資と比較して流動性が低いため、具体的な戦略がないと資金を動かせない状態が想定よりも長期間に及ぶ恐れがあります。ホテルは転用が難しく、初期費用の金額も高額になることから、買い手が限定的になりがちです。市場に出してもすぐに反応があるとは限りません。どのようなタイミングで出口に向けて動くのか、そのときにどのような状態であれば評価されやすいのか、普段から意識しておきましょう。
「ホテル投資」という新たな選択肢を増やそう
ホテル投資は適切な戦略と運営で、高い利回りと達成感が期待できる魅力的な選択肢です。ご自身のポートフォリオの一部に「ホテル投資」という新たなジャンルの設置を検討してみてはいかがでしょうか。まずはご自身の資産状況とリスク許容度を整理し、市場に出ているホテルの情報の分析から始めることをおすすめします。
なお、ノムコム・プロを運営する野村不動産ソリューションズでは、投資用物件のご紹介をはじめ、資金調達や税務のご相談など不動産の購入または売却に幅広く対応しております。
「多様な情報ルート」と「経験豊富なスタッフ」を持つ野村不動産ソリューションズへは、下記のフォームからお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q:ホテルに投資するメリットは何ですか?
A:レジデンス(住居系)投資と比較して高利回りが期待できること、インフレ耐性が強いこと、節税効果を得やすいことなどが挙げられます。
Q:ホテル投資の利回りはどのくらいですか?
A:物件によりさまざまです。2025年12月時点でノムコム・プロが取り扱っているホテル・旅館物件の表面利回りは約4%~約14%です。ノムコム・プロの情報提供サイト内「ホテル・旅館物件」で、最新情報をご確認ください。
Q:ホテル投資に向いているのは、どのような人ですか?
A:ある程度の不動産投資経験があり、基本知識を有している方に向いています。ホテル投資は「単なる不動産投資」よりも「事業経営」に近い側面があるため、より慎重で深い判断が求められます。事業や運営に関心があり、データや数値を客観的に読み解いて意思決定できる方、市場動向や世相などの最新情報を常にキャッチできる方にも向いているといえます。










