不動産投資コラム

【計算式付き】ホテルのADRとは?収益を最大化する5つの分析手法と戦略を徹底解説

【計算式付き】ホテルのADRとは?収益を最大化する5つの分析手法と戦略を徹底解説

ADR(エーディーアール:客室平均単価)とは、ホテルの価格競争力やブランド力を端的に示す指標です。本記事では、ADRの意味や計算式、RevPARとの違いなどをわかりやすく解説。ADRをホテル投資に活かすための分析手法や単価を向上させて収益を最大化する戦略も具体的に紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

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この記事で分かること

  • ADRとは実際に販売された客室の1室あたりの平均宿泊料金を示す指標で、日本語では「客室平均単価」といい、ホテルのグレードや価格競争力を測る基準となる
  • ADRは「競合との価格競争力の比較」「運営会社の価格設定力の評価」「資産価値への影響試算」など5つの分析手法に活用できる
  • ADRの向上には「アップセル・クロスセル」「直販比率の向上」「ダイナミックプライシング」など5つの戦略がある

目次

ホテルのADR(客室平均単価)とは?

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ADRはホテルの「客室平均単価」を示す指標で、客室1室あたりが1日いくらで売れたかという金額を表します。最初に、ADRの基本的な意味や変動要因、OCC・RevPARとの関係性について解説します。

1. ADRの意味と定義・重要性
2. ADRの変動要因
3. ADRとOCC・RevPARの関係性
4. ADRの推移から読み解けるホテル投資の3つのサイン

ADRの意味と定義・重要性

ADR(エーディーアール)は「Average Daily Rate」の略称で、日本語では「客室平均単価」といい、実際に販売された客室の1室あたりの平均単価を表します。ただし、空室は含まれません。あくまで「1部屋あたりをいくらで販売できたか」という、販売の質を測る指標です。
ADRにはホテルの価格戦略やブランド力が反映されるため、ホテル投資においては収益性や物件の値付け力などを判断する重要な要素となります。

◎ADRが重視される3つの理由

1. 適正な料金コントロールができているかわかる
2. 自ホテルの価格競争力やブランド力を競合と比較できる
3. 投資判断の根拠になる

ADRの具体的な計算方法は、後述の「ADRの基本となる計算式と計算例」をご参照ください。

また、下記の記事では、ホテル投資に必要な考え方や具体的手法などを網羅的に解説しています。興味がある方は、ぜひご覧ください。
関連記事:ホテル投資の魅力と実態!利回りから具体的手法まで投資戦略を徹底解説

ADRの変動要因

ADRは固定値ではなく、日々さまざまな要因で変動します。レジデンス(住居系)の家賃は賃貸借契約で固定されるため、オーナーが自由に変更しにくいのが一般的です。一方、ホテルの宿泊料金は1泊単位の契約のため、当日でも価格を見直せます。投資判断や価格戦略を立てるうえで、ADRが変動する要因の把握は欠かせません。

◎ADRに影響を与える主な変動要因とポイント
要因 具体例 運営管理のポイント
季節・曜日 繁忙期、週末 繁忙期に安く売りすぎていないか
周辺イベント 展示会・ライブ イベントがないときでも同じ水準で稼げるか
インバウンド需要 円安・観光回復 需要が落ちても維持できるか
競合の価格動向 近隣ホテルの値付け 影響されず、適正価格で提供できているか
施設のグレード・口コミ評価 リニューアル・評価改善 値上げしても選ばれる状態になっているか

ホテル投資の魅力の一つは、ADRを自分の手でコントロールできる点にあります。レジデンス(住居系)では空室を埋めることが優先されやすい傾向がありますが、ホテルでは「いくらで埋めるか」という考え方も重要なポイントです。
次節では、この考え方のもとになる、ホテルの収益性を測る3つの要素について説明します。

ADRとOCC・RevPARの関係性

ホテルの収益性、つまり「稼ぐ力」を測る代表的な指標は「ADR」「OCC」「RevPAR」の3つです。それぞれを一言でいうと、ADRは「いくらで売れたか」、OCCは「どれだけ埋まったか」、RevPARは「空室も含めて1室あたりいくら稼いだか」を示す要素といえるでしょう。

◎ホテルの収益で重要な3つの指標※販売客室数は、「総客室数×OCC」で求められます。
指標 OCC ADR RevPAR
意味 客室稼働率 客室平均単価 客室1室あたりの収益
計算式 宿泊された客室数÷総客室数 宿泊売上÷販売客室数 1.OCC×ADR
2.宿泊売上合計÷総客室数
示すこと 客室がどれだけ埋まったか 1部屋が平均いくらで売れたか 結果として、どれだけ稼げているか
わかること 集客力・需要の高さ 価格競争力・ブランド力 ホテル全体の収益性(=稼ぐ力)
ポイント 空室が多くないか 安売りしていないか 収益は最大化できているか

これらは、それぞれ見ている角度が異なり、どれか一つだけではホテル収益の全体像がつかめません。ADRが高くても空室が多ければ収益は伸びず、OCCが高くても安売りが続けば利益は残りにくくなります。単価(ADR)と稼働(OCC)のバランスを見るのが、RevPARです。

ADRは空室を計算に含めないため、稼働率が低くても高く見えてしまう点に注意しましょう。ADRとOCC、RevPARの関係性は、下記の記事でも詳しく解説しています。興味のある方は、ぜひご覧ください。
関連記事:RevPAR(レブパー)とは?計算式やADR・OCCとの違い、ホテル投資への活用法などを解説

ADRの推移から読み解けるホテル投資の3つのサイン

ADRの推移を追うことで、ホテルの経営状態を客観的に判断できます。ホテル投資で追うべきADRのサインは、「上昇」「下降」「横ばい」の3パターンです。

◎ADRが上昇傾向
読み取れるサイン ブランド力や需要が強まっている
● ただしOCCが下がっていないかセットで確認が必要
確認ポイント ● ADRが10%上がってもOCCが15%下がっていれば、RevPARは悪化している
● ADRとOCCの両方を並べて評価する
◎ADRが下降傾向
読み取れるサイン ● 競合の増加、施設の老朽化、需要の減退など
● 構造的な問題が発生している恐れもある
確認ポイント ● 原因の特定が必要
● 自ホテルだけが下がっているのか、エリア全体が下がっているのかを見極める
◎ADRが横ばい
読み取れるサイン ● 必ずしも安定を意味するものではない
● エリア全体のADRが上昇しているなかでの横ばいは「現状維持」ではなく「相対的な後退」
確認ポイント ● 市場と乖離していないか競合と比較する
● エリアの平均推移やコスト増加率も加えて判断する

なかでも、特に注意が必要なのが「横ばい」です。数字が安定していると安心しがちですが、周囲が上がっているなかでの横ばいは、実質的なポジションの低下を意味します。一方、ADRが高水準で安定していれば、キャッシュフローの安定性や資産価値の高さを裏付ける一つの根拠となるでしょう。

投資判断では年単位の推移を軸にしつつ、月次・季節要因も併せて確認するのがおすすめです。短期的なブレと構造的な変化を総合的に判断しましょう。
関連記事:初心者でもわかる!キャッシュフローの計算と不動産投資で収益を安定させるコツ

ADRの計算式と目安・読み解き方・注意点

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ADRの意味を理解した後は、「どう計算するか」「その数字をどう読むか」という活用方法を押さえましょう。ここではADRの計算式と具体的な算出例、ADRの目安・読み解き方、実務で見落としやすい注意点を説明します。

1. ADRの基本となる計算式と計算例
2. ADRの目安とデータの読み解き方
3. ADRの計算で見落としがちな「含める売上・除く売上」
4. 【参考】「Net ADR(正味単価)」という考え方

ADRの基本となる計算式と計算例

ADRの計算式は、極めてシンプルです。下記の例をご覧ください。

◎ADRの計算式とシミュレーション
計算式 ADR=宿泊売上÷(総客室数×OCC)
● 総客室数が100室で、OCC(客室稼働率)が75%、1日の宿泊売上合計が1,125,000円の場合
● ADR=1,125,000円÷(100室×0.75)=15,000円
結果 このホテルでは、客室1室あたり平均15,000円で販売できている

OCCが75%ということは、全100室のうち75室しか売れていません。この場合のRevPARは「15,000円×75%=11,250円」です。ADRが同じ15,000円でも、OCCが50%なら、RevPARは7,500円まで下がります。ADRが高くても稼働率が低ければ、ホテル全体の収益力は限定的といえるでしょう。
ADRだけを見て「単価が取れている」と安心するのではなく、OCCとセットで評価するのが重要なポイントです。

ADRの目安とデータの読み解き方

算出したADRの良し悪しは、一概には評価できません。ADRはホテルのグレードやエリア、季節によっても大きく変動するため、「〇〇円なら大丈夫」という絶対的な基準がないのが実情です。計算結果の数値ではなく、「何と比較するか」という視点を重視しましょう。

◎ADRを読み解くときのポイント
比較する対象 比較方法
同エリア・同タイプの競合 同じエリア・同等グレードのホテルのADRと並べる
自ホテルの過去実績 前月比・前年同月比の推移でトレンドを把握する
季節変動 繁忙期・閑散期など、前年の同時期のデータで比較する
業界の公開データ 公的データをベンチマークとして活用する

活用できる公的データには、観光庁の「宿泊旅行統計調査」などがあります。ADRの直接的な数値は開示されていないケースが大半ですが、都道府県別・施設タイプ別の客室稼働率などは把握できます。宿泊者数や売上の推移から傾向を探り、自ホテルと比較するのがおすすめです。

ホテル市場動向の詳細に興味がある方は、下記のマーケットレポートもご一読ください。
関連記事:旅行需要の回復とホテル市場 第2回 〜稼働率、ADRおよびホテル不動産市場の動向〜

ADRの計算で見落としがちな「含める売上・除く売上」

ADRの計算式自体はシンプルですが、「宿泊売上」に何を含めるかで数値が変わります。計算の定義を間違えると、自ホテルと競合の比較や過去データとの整合性がとれなくなるため、注意が必要です。

◎含める売上・除く売上の代表例
項目 含めるかどうか 理由・補足
室料
(宿泊料金)
含める ● ADR計算の基本
● 純粋な客室販売の対価
サービス料 含めるケースが多い ● ホテルによっては室料に含まれている場合がある
● 計算ルールを統一することが重要
朝食代・
食事付きプラン
除くケースが多い ● 宿泊の対価ではなく飲食の対価
● ただし、一体型プランの場合は按分が必要
消費税 除く ● 税抜きベースで算出するのが標準的
キャンセル料 除く ● 実際の宿泊が発生していないため

朝食付きプランには、特に注意が必要です。室料と朝食代が一体化した料金設定の場合、朝食分を差し引かないと、ADRが実態より高く算出されてしまいます。
ADRの計算ルールは自ホテル内だけの統一でなく、競合比較の際も算出基準が一致しているか確認しましょう。

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【参考】「Net ADR(正味単価)」という考え方

ADRは「額面の客室単価」を示しますが、実際にホテル側の手元に残る金額は、それよりも少なくなるケースがあります。OTA(予約サイト)経由の予約には手数料が発生するのが一般的で、そのぶんだけ実質的な単価が下がるからです。

この「手数料を差し引いた後の実質単価」は、「Net ADR(正味単価)」ともいわれます。ただし、Net ADRには業界で統一された定義がないため、あくまで一つの参考としてご確認ください。

◎ADRとNet ADRの違い(例)
項目 直接予約の場合 OTA経由の場合
ADR 15,000円 15,000円
OTA手数料(15%想定) 0円 2,250円
Net ADR(手元に残る金額) 15,000円 12,750円

上表を見ると、ADRは同じ15,000円でも、OTA経由のNet ADRは12,750円であることがわかります。OTA依存度が高いホテルほどADRとNet ADRの乖離が大きくなるため、投資判断においてはADRだけでなく、Net ADRでの評価も重要です。OTA比率が高い物件を検討する際は、手数料負担が利益をどの程度圧迫しているか確認することをおすすめします。

ADRをホテルの投資判断に活かす5つの分析手法

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ADRの計算と読み解き方を理解した後は、「どう使うか」を考えましょう。ここでは、ホテル投資や経営判断にADRを活かすための5つの分析手法を紹介します。

1. 競合との価格競争力を測る
2. 潜在需要を見つける
3. 価格戦略を設計する
4. 運営会社(オペレーター)の価格設定力を評価する
5. 資産価値(キャップレート)に与える影響を試算する

手法1.競合との価格競争力を測る

競合ホテルとADRを比較することで、自ホテルの市場における立ち位置を客観的に評価できます。このとき有効なのが、「ADRインデックス(ARI)」という考え方です。ARISTR(CoStar Group傘下)が提供する競合比較指標として、多くのホテルで活用されています。

ARI(ADRインデックス)=「自ホテルのADR」÷「競合ホテル群の平均ADR」

◎ARIの読み解き方
ARIの数値 意味 判断
100超 競合平均よりADRが高い ● 価格競争力がある
ブランド力や立地の優位性が反映されている
100 競合平均と同水準 ● 市場相場並み
特徴に乏しい恐れがあり、差別化の余地が残る
100未満 競合平均よりADRが低い 値付け力が弱い
● 施設や立地に課題を抱えている場合もある

ホテル投資の検討時には、対象物件のARIを算出しましょう。対象物件がエリア内でどのような価格ポジションを築いているか、把握するのもポイントの一つです。

手法2.潜在需要を見つける

ADRを曜日・シーズンごとに分解して分析すると、取りこぼしている需要を見つけやすくなります。単に忙しさで判断するのではなく、需要に対して適正価格を提示できているか検証しましょう。
過去の稼働データや周辺イベント情報、競合の価格動向などと組み合わせると、分析の精度はより向上します。

◎曜日別の示唆の例
曜日 ADR OCC 判断
月~木 18,000円 95% ● ほぼ満室
● ADRをさらに上げても稼働が落ちにくい可能性がある
金~日 10,000円 55% ● 稼働に余裕がある
● ビジネス客向けプランなどで底上げの余地がある
◎シーズン別の分析観点の例
シーズン ポイント
繁忙期 GW・お盆・年末年始など ● ADRを最大化する時期
● 需要が強いため強気の値付けが通りやすい
閑散期 1~2月の平日など ● OCCを優先しつつ、ADRの下げ幅を最小限に抑える時期
イベント期間 ライブ、国際会議など ● 一時的な需要増でADRを大きく引き上げられる時期

これらは、投資判断における収益改善余地としても評価できます。運営改善により将来的なアップサイドを期待できるか、判断材料の一つとしてとらえましょう。

手法3.価格戦略を設計する

ADRとOCCはトレードオフの関係にあり、一方を上げるともう一方が下がりやすい傾向があります。このバランスをどう取るかが、ホテル投資の収益を左右します。

◎価格戦略の違いによる収益の比較(全100室のホテル)の例
Aホテル Bホテル Cホテル
戦略 稼働率重視(安売り) 単価重視(高価格) バランス
ADR 7,500円 13,000円 10,500円
OCC 92% 60% 78%
1日の売上 690,000円 780,000円 819,000円
RevPAR 6,900円 7,800円 8,190円

表を見ると、Cホテル(バランス型)はADRが中間に位置しながらもRevPARが最も高く、売上も最大であることがわかります。Aホテルは稼働率が9割を超えていますが、ADRが低いために売上はCにおよびません。稼働率が高ければ清掃やリネン交換などの運営コストも増加しやすく、利益面ではさらに不利になる恐れがあります。

レジデンス(住居系)投資では「空室=損失」と考えるのが一般的です。しかし、ホテル投資においては、安く埋めすぎることも損失になり得る点に注意しましょう。

手法4.運営会社(オペレーター)の価格設定力を評価する

MC(運営委託)方式でホテル投資を行う場合、運営会社の実力が収益に大きく影響します。同じ立地・同じ規模のホテルでも、運営会社の違いでADRに大きな差が生じるケースは珍しくありません。運営会社が手がける複数のホテルでADRが高水準を維持できていれば、運営力の再現性が高いと判断できるでしょう。
投資判断の際は、運営会社の過去実績をADRの視点で確認するのがおすすめです。

◎運営会社の価格設定力を見極めるチェックリスト(例)
チェック項目 ポイント
ADRの実績 ● 競合平均を上回っているか
価格を維持できる営業力がわかる
ADRの推移 ● 数値は上昇傾向もしくは安定しているか
継続的に価格を守れる運営力がわかる
ADRとOCCのバランス ● 安売りに頼らず、両方のバランスが取れているか
ブランド価値を毀損しない収益管理能力がわかる
市場変化への対応力 ● コロナ禍などの外部環境変化時にADRをどう回復させたか
不測の事態に強い危機管理力がわかる

手法5.資産価値(キャップレート)に与える影響を試算する

ADRの改善は、宿泊売上だけでなく物件の資産価値にも影響を与えます。ホテル投資では、資産価値を「NOI(営業純利益)÷キャップレート(還元利回り)」で試算するのが一般的です。ADRの上昇によって売上が増加すると、結果的にNOIも押し上げられ、資産価値の向上につながります。

◎ADR改善が資産価値に与える影響の例
(年間365日稼働・100室の場合の簡易シミュレーション)
※シミュレーションは一例であり、実際の数値はホテルの規模やコスト構造によって異なります
※客室単価向上にともなう稼働率の低下が起こらない、理想的なバリューアップを想定しています
※増収分にともなう変動費(清掃費等)の増加はないものとして算出しています
項目 改善前 改善後
ADR 12,000円 13,000円(+1,000円)
OCC 75% 75%(変化なし)
全100室の年間宿泊売上 約3.29億円 約3.56億円(+約2,700万円)
NOI(営業純利益)
売上の20~30%想定
約6,570万~約9,860万円 約7,120万~約1億680万円
(+約550万~約820万円)
資産価値
キャップレート5%想定
約13.1億~約19.7億円 約14.2億~約21.4億円
(+約1.1億~約1.7億円)

利回りの考え方について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:表面利回りとは?実質利回りとの違いや計算方法をわかりやすく解説
関連記事:不動産投資における利回りの最低ラインとは?改善する4つのポイントも解説

ADRを向上させる5つの戦略と具体例

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ADRを向上させるには、価格を上げるだけでなく、価格を上げても選ばれる理由をつくることが大切です。ここでは、ADRを引き上げて営業利益(GOP)を伸ばすための具体的な戦略を5つ紹介します。

1. アップセル・クロスセルで単価を引き上げる
2. 直販比率(公式サイト予約)を上げる
3. ダイナミックプライシングで需要に応じた価格調整を行う
4. 客室タイプ・宿泊人数の組み合わせでADRを底上げする
5. 口コミ(レビュー)評価の改善でブランド力を強化する

戦略1.アップセル・クロスセルで単価を引き上げる

アップセルやクロスセルは、顧客のニーズに応える形で単価を高める手法です。アップセルでは、顧客自身の選択よりも上位の客室やプランへの変更を促します。クロスセルでは、宿泊に関連する別のサービスの追加購入を提案します。どちらも顧客満足度を高めながらもADRを底上げしやすく、1予約あたりの総売上を引き上げる効果が期待できる戦略です。

◎アップセルの例

1. 上位の客室タイプへのアップグレード
2. 素泊まりから朝食付きプランへの変更
3. アーリーチェックイン・レイトチェックアウトの有償提供

◎クロスセルの例

1. 食事やスパなどの付帯サービスをセット販売
2. 観光施設やアクティビティなど、周辺体験プランの追加販売
3. 夜食や追加アメニティなど、滞在中のルームサービス強化

アップセルやクロスセルは設備投資と異なり、比較的低コストで始めやすい点も魅力です。スタッフへのトレーニングや予約確認メール・チェックイン時の案内文の工夫など、運営改善の範囲で取り組めるものも多くあります。
「この価格なら納得」と感じてもらえる体験や価値を提供できれば、OCCを大きく落とさずにADRを引き上げることも期待できるでしょう。

戦略2.直販比率(公式サイト予約)を上げる

OTA(予約サイト)経由の予約には、手数料が発生するのが一般的です。公式サイトからの直接予約を増やせばこのコストを軽減できるため、同じADRでも手元に残る利益が高められます。結果的に、Net ADRおよび利益率の改善も期待できます。

◎直販比率を上げるための施策例
施策 具体例 期待できる効果
ベストレート保証 公式サイトでの予約が最安値であることを明示する OTAからの流入を公式サイトに誘導
会員限定特典 公式サイト予約者限定のレイトチェックアウト、アメニティ追加など リピーターの公式サイト利用促進
メールマガジン・
SNS活用
過去宿泊者への限定プラン案内、SNSでの直接予約誘導 OTAを介さない予約経路の確立

ただし、集客のすべてを公式サイトに切り替えるなどの極端な運用は、逆効果になりかねません。OTAには新規顧客へのリーチという強みがあります。「新規顧客はOTAで獲得し、リピーターは公式サイトに誘導する」など、コストと集客バランスの最適化がポイントです。

戦略3.ダイナミックプライシングで需要に応じた価格調整を行う

ダイナミックプライシングとは、需要の変動に応じて宿泊料金を柔軟に変える価格戦略です。需要が集中する繁忙期やイベント開催日にはADRを引き上げ、収益の最大化を図ります。閑散期や平日は戦略的にADRを下げてOCCを確保し、売上機会の取りこぼし防止に努めます。このような調整を毎日でも実施できるのが、ホテル投資ならではの魅力といえるでしょう。

◎需要予測にデータを活用した例

1. 前年同時期の稼働率・単価をベースに価格ラインを設定する
2. コンサートや学会などの開催日を把握し、需要が集中する日を特定する
3. OTA上で競合の価格や残室状況をチェックし、価格調整の参考にする
4. 観光庁の統計データなどを参照し、特定の国からの旅行者が増える時期を予測する

価格調整は、データに基づくことで精度が向上します。まずは扱いやすい前年実績や競合チェックから始め、徐々に参照範囲を広げていくのがおすすめです。

戦略4.客室タイプ・宿泊人数の組み合わせでADRを底上げする

「客室の価値をどう伝えるか」という見せ方の工夫で、ADRを底上げできるケースも少なくありません。客室タイプや宿泊人数の組み合わせといった販売方法の見直しは設備投資が不要な場合が多く、比較的取り組みやすいのも特徴です。

◎具体的な見直し例
具体例 期待できる効果
ツインルームを「トリプル利用可」として販売し、1室あたりの売上を増やす 追加ベッド代分のADR上乗せ
2名利用と1名利用で料金差をつけ、2名利用を促進する 1室あたりの平均単価向上
スイートや角部屋など高単価な客室の露出を増やし、予約を促進する ホテル全体のADR底上げ

限られた客室数のなかで新たな固定費をかけずにADRを向上させられるのが、この戦略の強みといえるでしょう。

戦略5.口コミ(レビュー)評価の改善でブランド力を強化する

OTA(予約サイト)やGoogleなどの口コミ評価は、宿泊客がホテルを選ぶ際に大きく影響する要素の一つです。評価が高ければ強気の価格設定に取り組みやすい一方で、低評価を放置すると値下げを検討せざるを得なくなります。

口コミ改善は短期でADRを守る施策であると同時に、ブランド力を長期で積み上げる施策である点にも注目しましょう。接客や清掃など改善可能な指摘には迅速に対応し、信頼の回復に努める姿勢が求められます。

◎レビュー改善の優先度
レビュー 優先度 対応方法(例)
接客態度への不満 スタッフへの共有、指導・研修実施
清掃の不備 清掃フローの見直し・チェック体制の強化
アメニティへの要望 顧客ニーズと費用対効果を検討し、導入を判断
設備の老朽化 低~中 部分補修、またはリニューアル計画へ反映
立地・周辺環境への不満 対応困難 情報発信を工夫し、来館前の期待値を調整する

設備面の課題は、将来のリニューアル投資の判断材料として蓄積しておくのがおすすめです。施策への取り組みは、短期収益と長期ブランドのバランスを意識すると良いでしょう。

ADRを使いこなし、ホテル投資の判断力を高めよう

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ADRは、ホテルの収益力を左右する中心的な指標です。本記事では、ADRの基本的な意味や計算式から投資判断への活用法、実践的な改善戦略を解説しました。アップセル・クロスセルや客室の売り方の見直し、口コミ改善など、取り組みやすい施策から始めるだけでも、ADRの底上げは十分に狙えます。また、知識を実践に活かすには、最新の物件情報や市場動向を継続的にチェックするのがおすすめです。

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よくある質問

Q:ADRとは何ですか?

A:ADRは「客室平均単価」といい、実際に販売された客室の1室あたりの平均宿泊料金を表します。ホテルのグレードや価格競争力を把握する際の基本的な指標として、広く活用されています。

Q:ADRとRevPARの違いは何ですか?

A:ADRとRevPARでは、算出のベースとなる「客室数」の定義が異なります。ADRは「実際に売れた客室」のみを対象とするため、空室状況は加味されません。対してRevPARは「販売可能な全客室」をベースにするため、ホテル全体の真の収益力を示します。ADRが高くても空室が多ければRevPARは低くなるため、収益性を総合的に判断するにはRevPARも合わせて確認することが大切です。

Q:ADRで何がわかるのですか?

A:ADRを分析すると、客室の販売力や価格戦略の妥当性がわかります。競合他社との比較では自ホテルの立ち位置が明確になり、過去の推移を追えば価格戦略の効果検証などに活用できます。ただし、投資判断においてはADRだけでは見えない要素も多いため、OCCやRevPARと合わせて総合的に検討するのがおすすめです。

天内 和幸株式会社エフエー代表取締役、マンション企画・プランニングディレクター

建設コンサルタント会社に橋梁設計専門の技術士として18年間勤務した後、自身の不動産投資を契機に不動産業へ転身。2018年に株式会社エフエー代表取締役に就任し、現在は海外富裕層向けコンドミニアムホテルの開発・販売・運営を主事業として展開。
企画・設計・開発から運営までのワンストップソリューションを確立し、高稼働率の運用で海外投資家を中心に利用者から支持を集める。地域の滞在価値を高める新しい宿泊スタイルの確立で、自身が手がけるホテルを通じた地域活性化の可能性を追求している。
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