不動産投資コラム

2026年度税制改正で不動産小口化商品はどう変わる?相続税への影響と保有者の4つの選択肢

2026年度税制改正で不動産小口化商品はどう変わる?相続税への影響と保有者の4つの選択肢

2025(令和7)年12月に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」により、不動産小口化商品の相続税評価方法の見直しが図られることになりました。2027年1月以降の相続や贈与による取得分から適用される予定です。
本記事では、改正対象となる不動産小口化商品の考え方や相続税評価額の求め方、相続税額への影響などを解説。すでに保有している方は、今後どのような選択肢が考えられるのか、判断の軸も含めて紹介します。ぜひ、最後までご覧ください。

なお、ノムコム・プロでは不動産購入や売却・査定など、不動産投資に関するご相談を承っております。「相続にあたってアドバイスがほしい」「自分のケースではどのような対策が有効か」など、お気軽にお問い合わせください。

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※以下は2026年8月時点の情報をもとに、税理士の田中裕之が監修しています。

この記事で分かること

  • 改正の対象になるのは一部の不動産小口化商品だけだが、商品名や契約名だけでは判断できない。契約書を確認する必要がある。
  • 改正による影響は、現在の評価額と買取価格の差や保有形態などによって異なる。
  • すでに不動産小口化商品を保有している人は、「保有を継続する」「売却する」「売却後に別の資産へ組み替える」などの選択肢がある。

目次

不動産小口化商品・令和8年度税制改正の要点

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不動産小口化商品とは、複数の投資家が共同で不動産を所有し、その収益を分配する投資商品です。
2027年1月以降の相続や贈与による取得分から、不動産小口化商品の相続税評価が見直されます。閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」に示された要点は、主に次の3点です。

要点1.一定の不動産小口化商品が対象

今回の見直しで対象となるのは、主に次のとおりです。

◎対象となり得る契約と主な類型出典:国土交通省「不動産特定共同事業の許可とは」
金融庁「投資運用業等 登録手続ガイドブック」
対象となる契約
(根拠となる法律)
主な類型 投資家の立場・仕組み
不動産特定共同事業契約
(不動産特定共同事業法)
任意組合型 事業者と投資家が出資し、対象不動産の運用を共同事業として行う
匿名組合型 投資家が事業者の不動産事業へ出資し、その収益の分配を受ける
賃貸委任契約型 投資家が共有する不動産を事業者へ賃貸し、または賃貸を委任する
信託受益権に係る金融商品取引契約
(金融商品取引法)
信託受益権型 信託財産から生じる経済的利益を受ける権利を取得する

ただし、大綱では対象となる契約を「一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産」としており、具体的な要件までは明らかにされていません(2026年9月1日時点)。不動産を直接所有しているかどうかだけでは対象になるか判断できないため、注意が必要です。

保有している商品については、次のような資料で確認しましょう。

  • ● 不動産特定共同事業契約書
  • ● 契約成立前交付書面・契約成立時交付書面
  • ● 重要事項説明書
  • ● 信託契約書や信託受益権に関する資料
  • ● 財産管理報告書・定期報告書
  • ● 事業者から届く税務上の案内

最終的な対象判定は、今後公表される通達等を踏まえて、税理士に確認することをおすすめします。

要点2.通常の取引価額による評価に変更

土地の相続税評価には、路線価方式または倍率方式が用いられます。家屋は原則として、固定資産税評価額と同額で評価する仕組みです。賃貸されている土地や家屋は、借地権割合や借家権割合を反映して評価額が調整されます。

これらの評価額は実際の市場価格そのものではなく、市場価格より低い水準を目安に定められています。そのため、任意組合型や信託受益権型のように裏付け不動産をもとに評価する商品では、購入した金額や市場価格より相続税評価額が低くなるケースがありました。(参考:国税庁「土地家屋の評価」)

今回の見直しでは、一定の商品について、課税時期における「通常の取引価額に相当する金額」で評価する方針が示されています。

項目 見直し前 見直し後
評価の基準 契約形態に応じ、裏付け不動産の相続税評価額などを反映 課税時期における通常の取引価額
参照するもの 路線価、固定資産税評価額、賃貸状況など 処分価格、買取価格、売買実例価額、定期報告書の不動産価格など
市場価格との関係 市場価格との間に差が生じやすい 実際に処分できる価格に近づく
評価額への影響 購入した金額を下回る場合がある 従来より高くなる可能性がある

評価の軸が「路線価など」から「実際に売れる値段」へ変更になるため、現行の相続税評価額と通常の取引価額に差がある商品では、見直しによって評価額が上がる可能性があります。

しかし、今回の見直しは相続税等の評価方法に関するものであり、分配金や運用期間などの契約条件を直接変更するものではありません。保有を続けるかどうかは、評価額への影響と運用収益の見通しを分けて検討しましょう。

要点3.既存保有分も適用対象

新しい評価方法は、2027(令和9)年1月1日以後に相続や贈与などによって取得する財産の評価に適用される予定です。

取得時期 原則的な取り扱い
2026年12月31日まで 現行の評価方法(路線価や固定資産税評価額をもとに評価)
2027年1月1日以降 一定の商品に新しい評価方法(通常の取引価額)を適用

一定の不動産小口化商品については、裏付けとなる貸付用不動産の取得時期にかかわらず、新しい評価方法の対象となる方針です。購入時期は問われないため、見直し前から保有している商品も対象になり得ます。

ただし、2026年中に相続や贈与があれば、必ず従来の低い評価額を使えるというわけではありません。現行の評価通達に基づく評価が著しく不適当と認められる場合は、国税庁長官の指示を受けて評価し直される恐れがあります。取得時期だけを見て判断せず、保有商品の契約内容と現在の評価額を確認しましょう。(参考:国税庁「財産評価基本通達・第1章総則」)

【シミュレーションつき】改正後の相続税評価額の求め方

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改正後の相続税評価額の求め方について、参照価格がある場合とない場合、それぞれのケースについて説明します。

方法1.処分価格・買取価格等を参照できる場合

大綱では「参照できる価格」として、次の3つを挙げています。

適正な処分価格・買取価格等 出資者等の求めに応じて事業者等が示した価格
適正な売買実例価額 事業者等が把握している取引事例
定期報告書等に記載された不動産の価格等 財産管理報告書などに記載された価格

実際は、これらを参考にした価格となるため、事業者の買取価格がそのまま評価額になるとは限りません。例えば買取価格から大幅な換金手数料が差し引かれている場合、それが「適正な買取価格」に当たるかは、個別に判断することになるでしょう。

相続や贈与に備え、事業者へ次の資料を依頼しておくと、不安の軽減につながります。資料が複数ある場合は、基準日や算定条件をそろえて比較しましょう。

  • ● 課税時期現在の処分価格・買取価格
  • ● 価格の算定日と算定方法
  • ● 過去の売買実例
  • ● 裏付け不動産の評価額
  • ● 出資割合・持分割合
  • ● 借入金や費用の扱い
  • ● 財産管理報告書・定期報告書 など

方法2.参照できる価格がない場合

方法1の価格をいずれも確認できない場合は、一般の貸付用不動産の評価方法に準じます。
一般の貸付用不動産は、課税時期前5年以内に対価をともなう取引で取得または新築した一定の物件を、通常の取引価額に相当する金額で評価します。課税上の弊害がない限り、取得価額を地価の変動等で補正した価額の80%相当額による評価も認められる方針です。

◎一般の貸付用不動産に示された簡便評価のイメージ

「通常の取引価額に相当する金額」=「取得価額を地価の変動等で補正した価額」×80%

ただし、この算式は、不動産小口化商品にそのまま該当するとは限りません。大綱は「取得時期や評価の安全性を考慮して準じる」旨を示しています。どう調整するかは、通達を待つ必要があります。

また、次のような独自の判断は、避けたほうが無難です。

  • ● 当初の出資額へ一律に80%をかける
  • ● 裏付け不動産の純資産価額を出資割合だけで按分する
  • ● 事業者の借入金を自己判断で控除する
  • ● 古い定期報告書の価格をそのまま使う など

価格資料が見つからないときは、資料の有無そのものを事業者に確認したうえで、税理士にご相談ください。

【シミュレーション】改正前後の評価額と相続税額

ここでは、商品の相続税評価額が2,000万円から4,500万円へ上がったと仮定し、相続税の総額を試算します。

※ここでの数値は、あくまでもシミュレーションのための仮定値です。
※実際の評価額を保証するものではありません。

◎前提

  • ● 商品以外の正味財産:1億円
  • ● 法定相続人:子2人
  • ● 財産の取得割合:法定相続分どおり
  • ● 債務・葬式費用、各種税額控除:考慮しない
  • ● 基礎控除:「3,000万円+600万円×2人(法定相続人の数)」=「4,200万円」
  • ● 相続税の総額:
    • ○ 課税遺産総額を法定相続分で分けたと仮定
    • ○ それぞれに税率を適用して算出

出典:国税庁「相続税の計算」・「相続税の税率」

◎シミュレーション結果
計算項目 見直し前 見直し後
商品の評価額 2,000万円 4,500万円
正味の遺産額 1億2,000万円 1億4,500万円
基礎控除 4,200万円 4,200万円
課税遺産総額 7,800万円 1億300万円
子1人当たりの法定相続分 3,900万円 5,150万円
適用される税率 20% 30%
子1人当たりの算出税額 580万円 845万円
相続税の総額 1,160万円 1,690万円

シミュレーションでは、評価額が2,500万円上がった結果、相続税の総額は530万円増えました。注目したいのは、税率が20%から30%へ上がっている点です。相続税は課税遺産総額が増えると、法定相続分に応ずる取得金額が上がり、より高い税率区分に入る場合があります。評価額の増加分に元の税率をかけるだけでは、増加する税額を見積もれません。

実際の税額は、法定相続人の数や財産の総額、債務、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例によっても変わります。正確に把握したい場合は、税理士に試算を依頼しましょう。

税制改正の影響を見極める3つのポイント

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2026年度の税制改正は、不動産小口化商品の相続税評価に大きな影響を与えます。具体的には、評価方法の変更、5年ルールの適用の違い、法人保有に関する特例の確認が必要です。これらのポイントを詳しく解説します。

ポイント1.貸付用不動産の「5年ルール」との違い

大綱では、一般の貸付用不動産と小口化商品で扱いが分かれています。

比較項目 一般の貸付用不動産 一定の不動産小口化商品
対象 課税時期前5年以内に取得・新築した一定の物件 一定の契約の裏付けとなる貸付用不動産
取得時期 5年を超えれば対象外 取得時期を問わない
評価基準 通常の取引価額に相当する金額 通常の取引価額に相当する金額
参考価格 取得価額を補正した価額の80%など 処分価格、買取価格、売買実例価額など
経過措置 通達に定める日までに、その日の5年前から所有する土地へ新築した家屋には適用しない 大綱に定めなし
適用開始 2027年1月1日以後の相続等 2027年1月1日以後の相続等

一般の貸付用不動産は、取得から5年を超えれば従来の評価方法に戻りますが、一定の不動産小口化商品には、この出口がありません。一方、不動産小口化商品を売却して実物不動産へ組み替えた場合は、その実物で新たに5年のカウントが始まると考えられます。

保有期間を引き継ぐ仕組みではないため、組み替えた直後の相続には注意が必要です。実物不動産も通常の取引価額で評価される可能性があります。

ポイント2.現行評価額と取引価額の差による影響

影響の大きさは、現在の相続税評価額と、事業者が示す処分価格・買取価格等との差に注目してみましょう。

「評価額の見込み」=「見直し後の評価額」-「現行の評価額」

◎確認の手順

  • ● 現行ルールによる相続税評価額を税理士に確認する
  • ● 事業者から処分価格・買取価格等を取り寄せる
  • ● 見直し後の想定評価額を試算する
  • ● ほかの財産と合算して相続税額を計算する
  • ● 納税資金を確保できるか確認する

見直し後の想定評価額を試算したあとは、ほかの財産と合算して相続税額を計算することが大切です。相続税は、課税遺産総額が大きいほど税率も上がるため、同じ2,000万円の増加でも、遺産総額によって増える税額が異なります。

◎影響の大きさを左右する要素
影響が大きくなりやすい 影響が限定的になりやすい
現行評価額と処分価格等の差が大きい 現行評価額と処分価格等の差が小さい
遺産総額が大きく、適用税率が高い 評価額が増えても基礎控除の範囲に収まる
納税資金を別に確保していない 現預金などで納税資金を確保している

ポイント3.法人保有・各種特例は個別確認が必要

個人で直接保有している場合と資産管理会社を通じて保有している場合では、相続財産そのものが異なります。

保有形態 相続財産になるもの
個人による直接保有 小口化商品に関する権利
法人を通じた保有 法人の株式
出典:国税庁「取引相場のない株式の評価」
◎法人を通じて保有している場合
非上場株式は、会社規模や株主の区分に応じて、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式などで評価します。このうち純資産価額方式は、法人の資産を相続税評価額に替えて計算する仕組みです。そのため、法人が持つ小口化商品の評価額が上がれば、株価にも影響する可能性があります。
ただし、すべての法人で同じように株価が上がるわけではありません。会社規模や評価方式、負債の状況、株主の立場などによって結果は変わります。
なお、非上場株式(取引相場のない株式)の相続税・贈与税評価について、大きな見直しが検討されており、令和9年度(2027年度)税制改正の重要論点になっています。
出典:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
◎小規模宅地等の特例
同特例は、相続や遺贈で取得した一定の宅地等や、土地の上に存する権利を対象とし、利用状況や取得者などの要件があります。小口化商品を持っていれば自動的に使える制度ではありません。
見直し後の商品に適用できるかも、現時点では明らかになっていません。

保有者がとり得る4つの選択肢と判断軸

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保有者が検討できる選択肢は、大きく4つあります。どの選択肢が有利かは、相続税額だけでは決まりません。税金や手数料を差し引いた資産額、運用収益、換金性、相続人の希望まで含めて比較しましょう。

選択肢 主な目的 最初に確認すること
1.保有を継続する 分配収入や満期償還を優先 見直し後の相続税額
納税資金
2.売却して現金化する 流動性と納税資金を確保 売却・解約の可否
手取り額
3.2026年中に生前贈与する 現行の評価方法での取得 贈与税、取得時期、
契約上の手続き
4.別の資産へ組み替える 税務・収益・流動性を再調整 売却後に再投資できる金額

1.保有を継続する

相続税評価額が上がる可能性があっても、すぐに売却する必要はありません。分配金や満期時の償還見込み、裏付け不動産の将来性に問題がなければ、保有し続ける選択肢もあります。保有を続ける場合は、次の項目を見直しましょう。

  • ● 見直し後の想定相続税評価額
  • ● 遺産全体の相続税額
  • ● 相続人ごとの財産配分
  • ● 相続税を支払うための現預金
  • ● 分配金と満期償還額の見込み
  • ● 裏付け不動産の稼働率や修繕計画
  • ● 事業者の財務状況
  • ● 中途換金や相続時の名義変更手続き

この場合、相続税評価額の圧縮効果が小さくなっても、「資産を複数人へ分散しやすい」「管理を事業者へ任せられる」といったメリットは残ります。一方、納税資金の不足が考えられる場合は、現預金や生命保険を含めた資産の再設計が必要です。商品単体ではなく、資産全体のなかで役割を決め直しましょう。

2.売却して現金化する

売却を検討するときは、価格より先に「実際に売却可能かどうか」を確認します。不動産小口化商品は、上場株式のように市場でいつでも売れるとは限りません。契約期間中の譲渡・解約の条件は、商品ごとに異なります。

◎売却前に確認しておくと良い項目

  • ● 契約期間中に解約できるか
  • ● 譲受人の条件や事業者の承諾が必要か
  • ● 買取制度や買取義務があるか
  • ● 算定方法と価格の有効期限
  • ● 解約・譲渡・名義変更などの費用
  • ● 申し込みから現金化までの期間 など

国土交通省はモデル約款を公表していますが、実際の契約内容は商品ごとに違います。必ず自分が結んだ契約書をご確認ください。

また、売却できた場合も、出資額がそのまま手元に残るわけではありません。

「売却後の手取り額」
=「売却・買取代金」-「税金」-「譲渡・解約手数料」-「その他の精算費用」

課税関係は契約形態や換金方法によって変わり、通常の不動産売却と同じ申告分離課税(譲渡所得)になる場合もあれば、総合課税として扱われる可能性もあります。一律に不動産の譲渡所得税で済むとは限らないため、事前に税理士へ確認しておきましょう。
税引き後の手取り額を試算し、持ち続けた場合の分配金や償還見込みと比較することをおすすめします。

3.2026年中の生前贈与を検討する

新しい評価方法は、2027年1月1日以後の贈与にも適用される予定です。そのため、2026年中に家族へ贈与する選択肢も検討の対象になります。
ただし、年内に契約書を作れば必ず間に合うというわけではありません。書面による贈与の場合、贈与財産の取得時期は、契約の効力が発生したときが原則です。不動産小口化商品では事業者の承諾や名義変更が必要な場合もあるため、手続きの時間は長めに見積もっておきましょう。

◎進め方

  • 1. 契約上、贈与による譲渡が認められているか確認する
  • 2. 事業者の承諾条件と必要書類を確認する
  • 3. 税理士に贈与時の評価額と課税方式を相談する
  • 4. 贈与契約書を作成し、名義変更や届出を行う
  • 5. 贈与税の申告・納税に備える

贈与税には、暦年課税と相続時精算課税があります。

出典:国税庁「贈与税がかかる場合」、「相続時精算課税の選択」
比較項目 暦年課税 相続時精算課税
年間の基礎控除 受贈者1人につき110万円 年間110万円(同一年に複数の特定贈与者がいる場合は贈与額で按分)
特別控除 なし 累計2,500万円
税率 超過累進税率 特別控除後の金額に一律20%
相続財産への加算 一定期間内の贈与のみ 期間を問わず加算
制度の変更 条件に応じて選択 一度選ぶと同じ贈与者について
暦年課税へ戻せない

どちらも加算されるときは贈与時の価額を活用します。暦年課税は、一定期間を過ぎれば相続財産に含まれません。相続時精算課税は期間を問わず加算されるため、現行の評価額を確実に固定したいなら選択肢は後者になります。

ただし贈与には、贈与税のほかに名義変更手数料、契約書の作成費用、税理士への報酬などの負担も生じます。急いで贈与した結果、これらの負担が相続税の軽減額を上回るケースも少なくありません。贈与しない場合の相続税額と総負担額を比べて判断しましょう。

4.売却後に別の資産へ組み替える

相続税評価額の圧縮を主な目的として購入していた場合、売却して別の資産へ組み替える方法もあります。ただし、そのためには保有商品が実際に売却できることが前提です。中途解約や事業者による買取ができなければ、満期まで待たなければなりません。

◎主な組み替え先と確認しておきたいこと
組み替え先の例 確認しておきたいことの例
現預金
  • ● 納税資金としての使いやすさ
  • ● インフレによる実質価値の低下
実物の賃貸不動産
  • ● 取得後5年以内の評価
  • ● 管理の手間
  • ● 空室・修繕
  • ● 融資条件
J-REITなどの上場商品
  • ● 市場価格の変動
  • ● 分配金
  • ● 売買時の価格・手数料
別の不動産小口化商品
  • ● 見直しの対象に該当するか
  • ● 契約期間
  • ● 換金条件
不動産クラウドファンディング
  • ● 契約形態と見直しの対象の該当性
  • ● 元本割れのリスク
  • ● 運用期間

本人や資産管理会社に借入がある場合は、資産の入れ替えが融資契約の条件に抵触しないか事前の確認が必要です。金融機関との契約には、財務指標や担保の維持を求める条項(コベナンツ)が設定されているケースも少なくありません。

◎確認ポイント

  • ● 既存の借入に財務制限条項が付いていないか
  • ● 資産の売却や取得が、純資産額や担保の要件に影響しないか
  • ● 期限前弁済に手数料や制限がないか

また、売却と購入を同時進行できるとも限りません。一時的に現金で持つ期間や、融資審査にかかる時間も見込んでおくと安心です。

節税効果だけでなく投資価値と流動性で判断しよう

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2026(令和8)年度税制改正により、一定の不動産小口化商品は、通常の取引価額を基準に評価される予定です。既存保有分も対象となり得ますが、影響は商品の契約内容や現行評価額と取引価額の差、保有形態などによって異なります。評価額の上昇だけを理由に売却や贈与を急がず、相続税額、税金・手数料、収益性、換金性を資産全体で比較したうえで、自分に合った対応を選びましょう。

なお、ノムコム・プロでは不動産購入や売却・査定など、不動産投資に関するご相談を承っております。「相続にあたってアドバイスがほしい」「自分のケースではどのような対策が有効か」など、お気軽にお問い合わせください。

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よくある質問

Q:不動産小口化商品の新しい相続税評価方法は、いつから適用されますか?

A:2027(令和9)年1月1日以後に、相続・遺贈・贈与などによって取得する財産の評価に適用される予定です。商品を購入した日ではなく、相続や贈与による取得時期が基準となります。

Q:税制改正後は、すべての不動産小口化商品が新しい評価方法の対象になりますか?

A:すべての商品が一律に対象となるわけではありません。一定の不動産特定共同事業契約や、信託受益権に係る金融商品取引契約に基づく権利が対象です。契約類型だけでは判断できないため、事業者や税理士へ確認してください。

Q:税制改正に備えて、不動産小口化商品を2026年中に売却・贈与したほうが良いですか?

A:一概にはいえません。売却できない商品や、解約・譲渡に高い費用がかかる商品もあります。生前贈与では贈与税や名義変更費用が発生する可能性もあるため、保有を続ける場合を含めた税引き後の資産額で比較しましょう。

田中 裕之

税理士(田中裕之税理士事務所代表)、企業役員

ASK税理士法人、辻本郷税理士法人などを経て、現職。「会社にお金を貯めていく」キャッシュフロー経営の提案を重視しており、「売上があっても手元にお金が残らない」という悩みに対する支援に力を入れている。税務・経理だけでなく、資金調達(融資)、経営計画策定、記帳代行・経理体制の構築なども支援対象にしており、経営の"土台づくり"から相談できる。

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