不動産投資コラム

不動産投資は出口戦略で決まる!目的別「利益最大化のコツ」徹底解説

不動産投資は出口戦略で決まる!目的別「利益最大化のコツ」徹底解説

不動産投資の出口戦略は、売却によるキャピタルゲインの確保だけではありません。本記事では多様な出口戦略の説明とともに、利益の最大化やリスクを最小限に抑えるための出口戦略のコツを解説します。成功例や失敗例なども紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

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この記事で分かること

  • 不動産投資の主な出口は、売却、長期保有、買い替え・住み替え、相続・贈与、法人化・事業拡大、土地活用の6つ。
  • 最適な出口戦略は、「どの出口で最終的に何を得たいか」という目的によって異なる。
  • おすすめの売却タイミングは減価償却終了時、デッドクロス発生前、長期譲渡切替時。

不動産投資の「出口戦略」とは?

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不動産投資は、適切な出口戦略を立てることで大きな利益を狙える魅力的な分野です。一方で、戦略を誤れば大きな損失につながるリスクも伴います。ここでは、不動産投資における「出口」と「出口戦略」の考え方について解説します。

1. 不動産投資の出口は「売却」だけではない
2. 不動産投資で「出口戦略」が重要な理由

なお、そもそも「不動産投資のリスク」について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資の7つのリスクと7つの回避術

不動産投資の出口は「売却」だけではない

不動産投資における「出口」とは、いわば「利益の確定の仕方」です。利益というと売却をイメージする方も多いのではないでしょうか。出口戦略を「次の投資フェーズへ移行するための手法」と広義にとらえると、主に6つの手法に分けられます。

1. 売却(キャピタルゲイン) 購入時よりも高く売ることで利益(キャピタルゲイン)を確保する
2. 長期保有(インカムゲイン) 安定的な家賃収入(インカムゲイン)を得ながら、資産の保全を図る
3. リファイナンス(買い替え・住み替え) 保有中の不動産の売却資金や家賃収入を原資に、新たな不動産に投資する
4. 相続・贈与 資産そのものを次世代へ引き継ぐ
5. 法人化・事業拡大 個人から法人へ所有権を移し、損益通算や法人税率の活用、融資条件の有利化を図る
6. 土地の活用 築古物件を解体して更地化、駐車場化するなど、資産をより収益化できる形に整備・開発する

これらの選択肢の最適解は、投資家の資産状況や税務上の問題、市場環境、個人のライフプランなどによって変わります。そのため、投資開始時点から複数の出口を想定しておくことが重要です。状況変化に応じて柔軟に調整できるよう、普段から準備しておきましょう。この準備こそが、出口戦略です。

それぞれの出口戦略について今すぐ知りたい方は、「【目的別】不動産投資の出口戦略」をご覧ください。

不動産投資で「出口戦略」が重要な理由

不動産投資を検討する際、「良い物件はないか」と物件探しから始める方は少なくありません。しかし、「良い物件」の定義は出口によって変わります。もっというと「なぜ不動産投資を始めるのか」の目的意識は、それこそ十人十色の領域です。つまり、自身が不動産投資を始めることでどのような未来を描くのか(ニーズ)が重要であり、そこから逆算し物件選定をするべきなのです。「出口が異なれば最適解も変わる」ということは「ニーズによってそもそもの選ぶべき物件が変わる」とも言い換えられます。このことからも、出口戦略の重要性はご理解いただけることでしょう。

◎出口に求める主な目的の例
主な目的 内容
収益最大化 ●最適な売却時期を逃さず、キャピタルゲインを最大化
●インカムゲインとキャピタルゲインのバランスを最適化
リスク管理・資産保全 ●市場の下落時に損失を最小化
●空室リスクや修繕費増加への対応策を確保
税務・法務上の効率化 ●生前贈与や法人化のタイミングを計画的に組み込み、税率軽減や損益通算を活用
●相続時精算課税などの活用で資産をスムーズに移行

次に、具体的な出口戦略を目的別に解説します。

【目的別】不動産投資の出口戦略

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不動産投資の出口戦略は、売却だけではありません。ここでは、目的別の出口戦略について、それぞれ詳しく解説します。

1. 売却(キャピタルゲイン)
2. 長期保有(インカムゲイン)
3. リファイナンス(買い替え・住み替え)
4. 相続・贈与
5. 法人化・事業拡大
6. 土地の活用

目的1.売却(キャピタルゲイン)

不動産投資の出口戦略として一般的であり、多くの人がイメージしやすいのが「売却」です。売却の主な目的は、キャピタルゲイン(売却益)です。これは購入時よりも高い価格で売却することで利益を確定することをイメージされる方が多いと思いますが、必ずしも購入時より高い金額である必要はありません。大切なのは「トータルで得た金額―トータルで使った金額=プラスにする」といった考え方であり、その軸をぶらさずに考えることこそが重要です。

◎売却のメリットとデメリット
メリット ●投資資金を一度に回収できる
●物件管理や入居者対応などの手間を手放せる
●将来の空室リスクや修繕リスク、市場変動リスクを回避できる
デメリット ●譲渡所得税が発生する(5年以下の短期で約39.6%、5年超の長期で約20.3%)
●仲介手数料などの諸費用が発生する
●市場環境によっては、希望価格での売却が困難な場合がある

◎売却が適している例

●市場価格が購入時より大幅に上昇している
●大規模修繕の時期が迫っている
●エリアの将来性に不安がある
●まとまった資金が必要になった
●物件管理や入居者対応などの手間や時間的コストの負担感が大きくなった

なお、売却すべき物件や、その基準について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:売却すべき物件とその基準は?

売却で成功するための出口戦略3選

不動産投資の売却で成功するための出口戦略として、効果的な施策は次のとおりです。

出口戦略 内容
売却しやすい物件を選ぶ ◎将来性が期待できる立地
 例:駅近、再開発エリアなど人口流入が見込まれる地域
◎流動性が高い物件
 例:ワンルームや1LDKなど需要層が厚い物件
◎管理状態が良い物件
 例:修繕履歴が明確、積立金の残高が安定している
収益物件としての魅力を高める ◎適切なメンテナンス
 例:定期的な修繕やリフォームで印象アップ
◎賃貸経営の安定化
 例:高稼働率の維持、適正賃料で収益性を見える化
◎管理記録の整備
 例:修繕履歴、収支記録などを整理して安心感をアピール
最適な売却タイミングを見極める ◎市場動向の把握
 例:金利動向、近隣の不動産価格などを日常的にチェック
◎税務上の節目
 例:長期譲渡所得税率の適用(保有期間5年超)を待つ
◎物件の状況で判断
 例:入居率が高いときなど売却に有利な状態を狙う

「最適な売却タイミングを見極める」に関しては、減価償却やローン残債、市場価格変動も影響します。気になる方は、ノムコム・プロの売却無料査定をご活用ください。まだ売却のご意向がお決まりでない方も、お悩み中の方も、丁寧にお話を伺ったうえで最適なご提案をさせていただきます。

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目的2.長期保有(インカムゲイン)

不動産投資の「長期保有」は物件を売却せずに、比較的長い間保有し続けることで、家賃収入による「インカムゲイン(運用益)」を目的とした戦略です。安定した収益を長期的に確保できるため、老後の年金対策として取り組む方もいます。

◎長期保有のメリットとデメリット
メリット ●安定した家賃収入を継続的に得られる
●インフレヘッジにもなり、実質的な資産価値を維持できる
●物価上昇に伴い家賃も上昇する可能性がある
デメリット ●空室リスクや入居者トラブルが長期間続くおそれがある
●資金が長期間拘束され、流動性が低下する
●修繕・維持管理コストが蓄積し、収益を圧迫するリスクが高まる

◎長期保有が適している例

●安定した家賃収入が見込める優良物件を所有している
●ローン完済後で、純収益が高い
●立地が良く、長期的な需要が見込める

なお、不動産投資の長期保有の例として、マンションの家賃収入や賃貸経営について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:家賃収入で暮らすための具体的な7ステップ!必要な金額や成功事例も紹介
関連記事:マンションの家賃収入で暮らせる?手取りや税金などをやさしく解説

長期保有で成功するための出口戦略3選

不動産投資の長期保有で成功するための出口戦略として、効果的な施策は次のとおりです。

出口戦略 内容
賃貸需要が安定した物件を選ぶ ◎人口動態が安定したエリア
 例:大企業の本社周辺、主要駅徒歩5分圏内など
◎高入居需要エリア
 例:人気学区内、地価上昇エリア
◎管理体制が整った物件
 例:管理履歴や修繕積立金が適正かつ明瞭
収益性を維持・向上させる ◎計画的な修繕の実施
 例:問題が起こる前の予防的メンテナンス
◎賃料の適正化
 例:市場調査による賃料の見直し、付加価値の向上
◎空室期間の最小化
 例:ターゲット層の明確化、退去前からの募集開始
キャッシュフローを安定させる ◎キャッシュフローの管理
 例:修繕積立、空室時の資金確保
◎税務対策の活用
 例:青色申告、法人化による節税
◎定期的な戦略見直し
 例:5年ごとに売却などとの比較検討、相続対策

キャッシュフローについて知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:初心者でもわかる!キャッシュフローの計算と不動産投資で収益を安定させるコツ

目的3.リファイナンス(買い替え・住み替え)

不動産投資の「リファイナンス」(買い替え・住み替え)は、より収益性の高い物件や立地条件の良い物件に買い替える戦略です。投資用物件から自宅への住み替えも含まれます。資産の組み替えにより投資効率の向上が見込めるほか、生活スタイルの変化にも対応しやすいのが特徴です。

◎リファイナンス(買い替え・住み替え)のメリットとデメリット
メリット ●より高収益・好立地への物件へステップアップできる
●古い物件の維持コストや修繕リスクを回避できる
●ライフスタイルの変化に合わせた資産組み換えが可能
デメリット ●売却と購入のタイミング調整が難しい
●売却時と購入時で諸費用が二重に発生する
●一時的にキャッシュフローが不安定になる

◎リファイナンス(買い替え・住み替え)が適している例

●保有物件の収益性が低下してきた
●立地などの条件がより良い物件を見つけた
●家族構成の変化や通勤環境改善ニーズが高まった
●物件規模を拡大、もしくは縮小したい
●投資用から自宅用に転換したい(またはその逆)

収益物件について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:収益物件とは?メリット・デメリットや購入時のポイント、 運用などを解説

リファイナンス(買い替え・住み替え)で成功するための出口戦略3選

不動産のリファイナンス(買い替え・住み替え)で成功するための出口戦略として、効果的な施策は次のとおりです。

出口戦略 内容
タイミングの最適化を図る ◎市場サイクルの活用
 例:売り時と買い時の見極め、金利動向の把握
◎税務上の特例活用
 例:事業用資産の買換え特例(10年超保有)
◎資金計画の精緻化
 例:つなぎ融資の活用、売却先行型か購入先行型かの選択
買い替え先を厳選する ◎収益性の向上
 例:利回り改善、空室リスクの低い物件選定
◎エリアの将来性
 例:人口動態、開発計画、交通インフラの確認
◎物件タイプの最適化
 例:新築タワマン、管理しやすい物件数や規模への調整
スムーズな移行をめざす ◎並行進行の管理
 例:家族住まいの場合は学区調整、売却と物件探しの同時進行
◎引き継ぎ準備
 例:賃借人への通知、管理会社の選定
◎リスクヘッジ
 例:売却が決まらない場合の代替案、資金ショートの回避策

リファイナンス(買い替え・住み替え)について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:オーナーチェンジ物件とは?不動産投資初心者に人気の理由、注意点を解説!

目的4.相続・贈与

不動産投資の「相続・贈与」は、不動産を売却せずに次世代へ引き継ぐ戦略です。適切な税務対策を講じることで、財産を効率的に承継しやすくなります。資産形成や節税対策を目的に取り組む方もいます。

◎相続・贈与のメリットとデメリット
メリット ●小規模宅地等の特例など、各種税制優遇を活用できるケースがある
●収益物件の場合、家賃収入を次世代に引き継げる
●家族間で管理責任やリスクを分散できる
デメリット ●基礎控除を超える場合、相続税や贈与税の負担が発生する
●相続争いなど家族間トラブルの火種になり得る
●流動性が低く、相続人が現金化を望む場合は困難となりがち

◎相続・贈与が適している例

●優良な収益物件を保有しており、長期的な家賃収入が見込める
●相続人が不動産投資に理解があり、承継の意思がある
●相続税の基礎控除内に収まる、または特例適用による節税効果が大きい
●家族の資産形成や老後の生活資金確保を支援したい
●相続争いを避けるため、生前に資産配分を明確にしたい

なお、不動産投資の節税について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資でサラリーマンは節税可能?仕組み&税金シミュレーション

相続・贈与で成功するための出口戦略3選

相続・贈与で成功するための出口戦略として効果的な施策は、次のとおりです。

出口戦略 内容
事前の税務対策と評価額の最適化を図る ◎相続税評価額の引き下げ
 例:貸家建付地の活用、小規模宅地等の特例適用
◎生前贈与の計画的実行
 例:暦年贈与(年110万円)、相続時精算課税制度の活用
税制特例をフル活用する ◎相続人との事前協議
 例:承継意思の確認、管理方法の引き継ぎ
◎遺言書・家族信託の活用
 例:分割方法の明確化、必要書類の整備
事前承継計画を策定する ◎納税資金の確保
 例:物件の一部売却計画
◎共有回避の工夫
 例:代償分割、換価分割の検討

不動産の価値について知りたい方や計算してみたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:積算価格とは?実勢価格との違い・計算方法・用途をわかりやすく解説

目的5.法人化・事業拡大

不動産投資の「法人化・事業拡大」は不動産投資を個人から法人に移行し、より確実な事業展開をめざす戦略です。税制面での優遇措置や信用力の向上により、資金調達力を強化しやすくなるのが特徴です。

◎法人化・事業拡大のメリットとデメリット
メリット ●税制面での優遇措置など、節税効果が期待できるケースがある
●金融機関からの融資や投資家からの資金調達が容易になりやすい
●組織として永続的な事業運営が見込める
デメリット ●設立費用や税理士報酬など、継続的な運営コストが発生する
●法人税申告や決算書類作成などの管理業務が複雑化する
●従業員を雇用する場合、より責任が重くなる

◎法人化・事業拡大が適している例

●従業員を多数雇用し、組織的な事業運営を行いたい
●高所得帯で個人税率が高く、法人税率で節税を図りたい
●銀行からの融資枠拡大を狙い、信用力を高めたい
●退職金制度や役員報酬でオーナー収入を設計し、所得コントロールを行いたい
●複数の物件を保有し、本格的な賃貸事業として展開したい

不動産投資の法人化について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資でサラリーマンは節税可能?仕組み&税金シミュレーション

法人化・事業拡大で成功するための出口戦略3選

不動産投資の法人化・事業拡大で成功するための出口戦略として、効果的な施策は次のとおりです。

出口戦略 内容
段階的な法人移行を図る ◎個人から法人への資産移転
 例:現物出資、売買による移転、賃貸借による移転
◎税務上の特例活用
 例:現物出資の特例、小規模企業共済等掛金控除
事業規模の拡大をめざす 資金調達力の強化
 例:金融機関との取引拡大、投資家からの出資受入
◎効率的な組織運営
 例:専門人材の確保、業務システムの導入
継続的な成長を実現 ◎経営基盤の強化
 例:内部統制の整備、リスク管理体制の構築
◎出口戦略の多様化
 例:IPO準備、M&Aによる事業売却、MBO実施

不動産投資のレバレッジ効果について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資におけるレバレッジとは?効果・目安・リスクを徹底解説

目的6.土地の活用

不動産における「土地の活用」は、更地や未利用地を駐車場、太陽光発電施設、賃貸倉庫などに転用し、土地そのものを収益化する戦略です。開発許可や需要を踏まえた最適プランで安定した収益源の確保を狙います。

◎土地の活用のメリットとデメリット
メリット ●建物維持コストが不要なためランニングコストを抑制しやすい
●駐車場、トランクルームなど、ニーズにあわせて選択できる
●土地の評価額ベースで賃料設定が可能なため、利回りが安定しやすい
デメリット ●初期投資(造成・整地・許認可取得費用)が大きい
●用途変更に伴う開発許可や届出手続きが複雑で時間を要する
●需要変動のリスクがある(駐車場の飽和状態など)

◎土地の活用が適している例

●建物の老朽化など、解体メリットが大きい築古物件を保有している
●駅近や商業地域など立地条件の良い土地を所有している
●更地を有効活用したい
●固定資産税負担を軽減しながら収益を上げたい
●相続税対策として土地の評価額を下げる必要がある

土地の有効活用について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資の代表的な10種類!自分にあった選び方も解説

土地の活用で成功するための出口戦略3選

不動産投資の土地活用で成功するための出口戦略として、効果的な施策は次のとおりです。

出口戦略 内容
土地の特性を最大限活用する ◎用途のニーズを検討
 例:住宅系、商業系、事業系など用途別の収益性を比較
◎法規制の確認
 例:建ぺい率・容積率、高さ制限、セットバック要件
投資規模に応じた活用を選択する ◎低投資型活用
 例:月極駐車場、コインパーキング、資材置場
◎中投資型活用
 例:プレハブ倉庫、コンテナ倉庫、簡易店舗
◎高投資型活用
 例:賃貸住宅、テナントビル、商業施設の建設
将来の土地処分を見据える ◎リスクの考慮
 例:建物解体コスト、原状回復の要・不要
◎市場動向の見極め
 例:市場価格の動向把握、税務上の保有期間調整

高投資型活用として大規模な不動産投資に興味がある方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:マンション一棟買いにはいくら必要?資金計画のポイントをわかりやすく解説

不動産投資の成功者がおすすめする売却のタイミング

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ここでは、損失を回避して利益を最大化するためのコツとして、成功者が意識している3つの売却タイミングを紹介します。

1. 減価償却が終わるとき
2. デッドクロスになりそうなとき
3. 長期譲渡へ切り替わるとき

1. 減価償却が終わるとき

減価償却とは、建物を取得した費用を法定耐用年数にわたって分割し、経費として毎年計上する会計処理のことです。

◎主な法定耐用年数

●木造(店舗用・住宅用):22年
●鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造:47年

出典:国税庁│主な減価償却資産の耐用年数表

上記の減価償却期間が終わると、経費として計上できなくなります。そのため、同じ家賃収入でも帳簿上の利益が増えることになり、所得税や住民税の負担増となるケースが多々あります。この税負担が増加するタイミングで「不動産投資の売却を検討する」という投資家は、少なくありません。

さらに、もう少し税制面の話を掘り下げると、物件によっては「躯体」と「設備」へ減価償却の振り分けを行うことも一般的です。その際はことさら、減価償却期間への注意が必要だと覚えておきましょう。

2. デッドクロスになりそうなとき

不動産投資における「デッドクロス」とは、ローンの元金返済額が減価償却費を超えている状態を表します。デッドクロスが発生すると所得税の支払いが増えるため、資金に影響を及ぼすリスクも否定できません。

実際に、帳簿上の経営は黒字で問題がないにもかかわらず、手持ちの現金が不足して赤字になるというケースがあります。この状態になる前に売却するのも、一つの判断基準です。

3. 長期譲渡へ切り替わるとき

不動産を売却して得た利益(譲渡所得)には、所得税と住民税がかかります。 「売却で成功するための出口戦略3選」で解説したとおり、この税率は、不動産の保有期間によって異なります

◎譲渡所得における税率

●短期譲渡所得(保有期間5年以下):税率 39.63%
●長期譲渡所得(保有期間5年超):税率 20.315%

※保有期間は売却した年の1月1日時点で計算します

出典:国税庁│主な減価償却資産の耐用年数表

税率が約半分になるため、不動産投資の保有期間が5年を超えるタイミングは、売却を検討する大きな節目となります。
また、ここではわかりやすく「保有期間5年」と表記をしていますが、厳密にいうと「売却時は何月に売却が成立したとしても、その年の1月が売却した月となる」というルールを覚えておきましょう。
多くの方が誤認している領域ではありますが、例えば購入時期が2020年2月だった場合、2025年3月に売却しても実はまだ短期譲渡税内です。これが「売却時は何月に売却が成立したとしてもその年の1月が売却した月となる」というルールの落とし穴で、このケースだと2026年1月以降に売却しないと「5年を経過したことにはならない」ので注意が必要です。

次に、不動産投資の出口戦略での成功事例と成功のポイントを紹介します。

出口戦略の成功事例と成功ポイント

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ここでは、不動産投資の出口戦略での成功事例と成功のポイントを紹介します。

1. 長期保有・安定収益(Aさん)
2. 一棟マンションの築浅物件を売却(Bさん)

成功例1.長期保有・安定収益(Aさん)

Aさんは2年前に、地方都市の住宅街にある一棟アパート(2LDK×4戸)を約3,800万円で購入。

購入前には、ファミリー層の需要が安定している小学校区を選定。築18年でメンテナンスが行き届いた物件を、自己資金1,000万円を投入して購入しました。管理会社を地元密着型の不動産会社に依頼し、管理手数料を4%に抑制。共用部の清掃は月2回、植栽の手入れは年2回に限定することで、年間約15万円の管理コスト削減を達成しました。

◎成功のポイント

●平均入居期間が長めな子育てファミリー層を狙い、空室リスクを軽減
良好メンテナンス済の物件を選び、修繕コストを先送り

サラリーマンや公務員が安全に不動産投資を行うためのポイントを知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:公務員が不動産投資を行う4つの利点!失敗しないためのポイントも解説
関連記事:【会社員必読】サラリーマン大家とは?5つのメリットや始め方を解説

成功例2.一棟マンションの築浅物件を売却(Bさん)

Bさんは川崎市の人気エリアで築2年の一棟RCマンション(2億8,000万円)を購入し、4年後に3億3,000万円で売却。短期譲渡所得税を差し引き総額2,000万円超の利益を確保しました。(CFでのプラスや節税還付を含む)

エリア内が再開発計画の対象であること、大型商業施設が開業することを受け、売却の検討を始めました。収益物件としての魅力が最高潮に達したと判断した時期に売却を実行し、期待どおりの利益を確保しています。

◎成功のポイント

再開発エリアでの物件価値上昇を的確にとらえた売却戦略
●築浅RCマンションの修繕コスト優位性を最大限に活用し、売却時の競争力を維持

マンションの「新築プレミアム」や新築物件と築浅物件の違い、成功例などを知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:新築マンション投資の実態!成功例や失敗例、メリット・デメリットを解説

出口戦略の失敗事例とリスク対策

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次に、不動産投資の出口戦略での失敗事例とリスク対策のポイントを紹介します。

1. 表面利回りのみで物件を選定(Cさん)
2. サブリース契約の過信で収支計画が破綻(Dさん)

失敗例1.表面利回りのみで物件を選定(Cさん)

Cさんは2年前、地方都市郊外の一棟アパート(1K×8戸)を約2,600万円で購入。

広告の「表面利回り12%」と営業担当者のセールストークを信じ、現地調査などの確認をほぼせずに即決。管理会社は大手フランチャイズを選び、管理手数料8%と高め。購入後に配管から漏水が発生し、外壁にも亀裂が見つかり初年度だけで修繕費120万円を負担。さらに近隣大学のキャンパス縮小で空室が増え、稼働率は60%まで低下。結果、年間キャッシュフローは約80万円の赤字となりました。

◎リスク対策例

●5年以上の賃貸需要をリサーチし、数値で把握
購入前インスペクションを実施

不動産投資の失敗や失敗回避の方法について知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
関連記事:不動産投資で『失敗する人』とは⁉失敗例10選&失敗回避の方法を紹介

失敗例2.サブリース契約の過信で収支計画が破綻(Dさん)

サラリーマンのDさんは、「30年間家賃保証」というサブリース契約に惹かれ、新築ワンルームマンションをフルローンで購入。

営業担当者から「すべてお任せで安定収入が得られます」と説明され、契約内容を深く確認せずに契約しました。しかし、購入から2年後、競合物件が増えたことを理由に管理会社から家賃の減額を要求されました。保証される家賃がローンの返済額を下回り、毎月の持ち出しがかなり大きくなる状態に。結果、想定していた安定収入は得られず、ローンの返済が生活を圧迫しました。

◎リスク対策例

将来的な家賃下落のリスクの想定
余裕を持った資金計画

サブリースの仕組みや注意点、活用するデメリットなどを知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
関連記事:サブリースとは?やばい、安心?不動産投資におけるメリット&注意点

専門家との連携で出口戦略の最適化を図ろう

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不動産投資の成功・失敗を分けるのは、出口戦略であるといっても過言ではありません。どのタイミングで、どのような方法で投資を終了するかという判断が、投資全体の収益性を大きく左右するからです。

本記事では不動産投資の出口戦略を、さまざまな視点から解説しました。しかし、実際の出口戦略では、市場動向の分析、税務上の最適化、法的な手続きなど、多岐にわたる専門知識が必要となります。これらすべてを一人で判断するのは容易ではありません。迷ったときは、専門家への相談がおすすめです。物件選びや融資戦略、市場動向など、あらゆる面で質の高いアドバイスを提供してくれます。

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よくある質問

Q:不動産投資の「出口戦略」とは何ですか?

A:不動産投資における「出口」となる「利益の確定の仕方」を決める戦略のことです。「次の投資フェーズへ移行するための手法」と広義にとらえることもできます。

Q:不動産投資の出口戦略は、売却だけですか?

A:売却以外にも手法はあります。代表的な6種類は①売却(キャピタルゲイン)、②長期保有(インカムゲイン)、③リファイナンス(買い替え・住み替え)、④相続・贈与、⑤法人化・事業拡大、⑥土地の活用です。

Q:一番良い出口戦略の方法を教えてください。

A:何が良いかは、目的によって変わります。投資家の資産状況や税務上の問題、市場環境、個人のライフプランによって最適解が異なりますので、投資開始時点から複数の出口を想定しておくことが重要です。

髙森 塁会社経営、宅地建物取引士

不動産業の他、クリニック、建設、病院食事業を営む会社を経営。また、不動産会社をはじめWEB制作事業やSES事業など多くの会社の顧問、役員を勤める。自身が運営するコミュニティでは医師、歯科医師、弁護士をメインに50名が在籍し「不動産による被害を撲滅するためのセミナー」を2019年より年に2〜4回ほど開催している。顧客には区分マンションを22件保有しているオーナーや、1棟収益物件を30棟保有するオーナーがいるなど、緻密な出口戦略を武器に数多くの「メガ大家」を排出している。
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