不動産投資コラム

家賃収入の税金はいくら?計算・経費・節税対策5選などを一気に解説

家賃収入の税金はいくら?計算・経費・節税対策5選などを一気に解説

家賃収入にかかる税金は所得税、住民税、固定資産税など多岐にわたり、その仕組みは複雑です。本記事では、家賃収入にかかる税金の計算フローを体系的に整理。実務上で判断に迷いやすい経費の基準や税金の計算手順、節税対策や確定申告などについても、網羅的に解説します。ぜひ、最後までご覧ください。

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この記事で分かること

  • 家賃収入にかかる税金は所得税と住民税が大部分を占める。5棟10室以上の事業的規模に該当する場合において、その所得が290万円を超えるときはその超えた部分の金額について個人事業税5%が加わる
  • 家賃収入とは毎月の賃料だけでなく、管理費や共益費、駐車場代、礼金、更新料なども含まれる
  • 家賃収入にかかる税負担を軽減するには、減価償却費の最適化、損益通算による課税所得の圧縮、小規模企業共済の活用などがある

目次

家賃収入にかかる税金の仕組みと種類

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家賃収入を得ると、所得税や住民税をはじめとした複数の税金が発生します。ただし、家賃収入の全額に課税されるわけではありません。税金は大きく「家賃収入に直接かかるもの」と「不動産の保有・取得にかかるもの」の2種類に分けられます。最初に、課税対象や課される税金の種類について整理します。

1. 家賃収入に含まれるもの
2. 家賃収入にかかる税金
3. 不動産の所有・運用にかかる税金
4.【参考】消費税やインボイス制度の影響を受けるケース

家賃収入に含まれるもの

家賃収入というと毎月の賃料だけをイメージしがちですが、実際はそれだけではありません。国税庁の定義では管理費や共益費など、不動産の貸付けで受け取る「すべての返還不要な対価」を収入として合算することになっています。計上漏れがあると税務調査で指摘される原因にもなるため、内容をしっかり把握しましょう。

◎家賃収入に含まれる主な項目参考:国税庁「集合住宅の家賃、共益費、管理料等の課税・非課税の判定」
毎月発生 家賃 ● 入居者が毎月支払う基本的な賃料
● 収益の中心となる
管理費 ● 入居者が家賃と合わせて支払う費用
● 物件の維持や管理に充てられる
例:ポストやごみ置き場などの維持、管理人の人件費など
共益費 ● 管理費と同様に入居者が家賃と合わせて支払う費用
● 物件の共用部分の維持や管理に充てられる
例:エレベーター保守、共用部分の清掃など
駐車場代 ● 物件に駐車場が設置されている場合の使用料
契約時・更新時などに発生 礼金 ● 入居時にオーナーに支払う謝礼的な費用
● 退去時に返金されないのが一般的
● 「礼金なし」の物件も近年増えている
更新料 ● 契約更新時に入居者が支払う費用
● 2年ごとに家賃1ヵ月分程度というケースが多い
退去時などに確定 敷金や保証金
※返還しない分
● 入居者が入居時に預ける費用
● 退去時の原状回復などに充当し、返金しなかった部分が該当

注意したいのは「敷金」の取り扱いです。入居者に返す部分は収入に含まれませんが、原状回復費として充当し、返金しなかった部分は収入として計上しなければなりません。

もう一つ押さえておきたいのが、「発生主義」の考え方です。家賃はたとえ入居者が滞納していても、契約上の支払日が属する年に収入として計上するのが原則です。「まだ入金されていないから計上しなくて良い」というわけではありません。見落とすと税務調査で指摘されるリスクがあるため、注意が必要です。

家賃収入にかかる税金

家賃収入を得ると、まず所得税と住民税が課されます。ただし、前述のとおり、家賃収入がそのまま課税されるのではなく、経費を差し引いた「不動産所得」に対して課税される仕組みです。不動産所得の計算方法は「家賃収入にかかる税金の計算手順とシミュレーション」で詳しく解説します。

◎家賃収入に直接かかる主な税金参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」
参考:地方税法第72条の49の17(個人の事業税の標準税率等)
税金 税率 概要
所得税 5%~45%
(7段階)
● 不動産所得を含む合計所得に対して課税
● 累進課税のため、所得が増えるほど税率が段階的に上がる
復興特別所得税 所得税額×2.1% ● 所得税額に上乗せして課税
● 2037年まで適用
住民税 10% ● 都道府県民税と市区町村民税の合計
● 税率は一定

個人事業税

5% 事業的規模(5棟10室以上が目安)で不動産貸付を行っている場合に課税
● 事業主控除が年290万円あり、不動産所得が290万円以下なら実質かからないケースもある

家賃収入にかかる税金の大部分を占めるのは所得税と住民税で、両者を合わせると最大55%(所得税45%+住民税10%)に達します。さらに物件規模が5棟10室以上に該当する場合は、個人事業税5%が加わる点にも注意が必要です。想定外の税負担に慌てないためにも、自分がどの基準に当てはまるか事前に確認しておくことが大切です。

不動産の所有・運用にかかる税金

家賃収入に直接かかる税金とは別に、不動産を所有しているだけで発生する税金もあります。代表的なのが固定資産税と都市計画税で、毎年1月1日時点の所有者に課されるものです。これらは家賃収入の有無に関係なく必ず発生するものですが、確定申告時に賃貸経営の経費として計上できるのがポイントです。

◎不動産の所有・取得にかかる主な税金参考:総務省「固定資産税の概要」
参考:参考:地方税法第73条の2(不動産取得税の納税義務者等)
参考:地方税法第702条の4(都市計画税)
税金 タイミング 概要
固定資産税 毎年(1月1日時点の所有者 固定資産税評価額×1.4%(標準税率)
都市計画税 毎年(市街化区域内のみ) 固定資産税評価額×最大0.3%
不動産取得税 購入時に1回 固定資産税評価額×3%(住宅用) または4%
登録免許税 登記時に1回 固定資産税評価額×2%(所有権移転)など
印紙税 契約時に1回 契約金額に応じて200円~48万円

固定資産税と都市計画税は毎年必ず発生するランニングコストのため、忘れずにキャッシュフロー計算に織り込みましょう。不動産取得税や登録免許税、印紙税は購入時の初期費用で、取得年度に一括で経費にできます。いずれも確定申告では「租税公課」として処理できるため、納税通知書や領収書はきちんと保管しておくのがおすすめです。

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【参考】消費税やインボイスの影響を受けるケース

家賃収入には所得税などの利益に対する税金に加え、取引にかかる税金として10%の消費税も発生します。課税対象となるのは事務所や店舗、整備された駐車場など、居住用以外の不動産から得られる賃料です。

◎用途別の消費税の取り扱い参考:国税庁「インボイス制度について」
参考:国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」
用途 消費税 具体例
居住用建物の賃貸 非課税 マンション、アパートの家賃など
事業用建物の賃貸 課税(10%) 事務所、店舗、倉庫の賃料など
土地の賃貸 非課税 更地や借地の地代など
駐車場の賃貸 課税(10%) 整備されている月極駐車場など

消費税の免税事業者であり、居住用物件のみを貸している方は、消費税の影響を受けません。しかし、事務所や店舗などの事業用物件を貸している場合は、テナント(借主)からインボイス(適格請求書)の発行を求められる可能性があります。インボイスに対応するには、「適格請求書発行事業者」への登録が必要です。
これにより、これまで消費税の免税事業者だった方も消費税の課税事業者となり、消費税の申告が必要となります。それにともない、消費税の納付が必要となるケースも少なくありません。

ただし、インボイスへの登録は必須ではありません。テナントが免税事業者の場合や2026年9月までの経過措置(仕入税額控除の80%特例)もあるため、ご自身の状況に合わせて判断すると良いでしょう。

【家賃収入にかかる税金】経費にできるもの・できないもの

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家賃収入にかかる税金は、漏れなく正しく計上する必要があります。経費にならないものを計上すると税務調査で否認され、追徴課税の対象になりかねません。ここでは、経費に計上できる項目とできない項目を一覧で整理し、迷いやすい修繕費と資本的支出の判断基準について解説します。

1. 経費として認められる主な項目
2. 経費として認められない主な項目
3. 【参考】「修繕費」と「資本的支出」の判断基準

経費として認められる主な項目

不動産賃貸経営にかかる費用のうち、業務に直接関係するものは、一般的に経費として認められます。経費として計上できる主な費用は、下記のとおりです。

◎経費として認められている主な例参考:国税庁「No.2210 必要経費の知識」
減価償却費 建物や設備の取得費用を、耐用年数に応じて毎年按分して計上
ローンの利息部分 元本部分は対象外
管理委託費 不動産管理会社に支払う手数料(相場は家賃の5%前後)
修繕費 原状回復のための修繕や小規模な修理にかかる費用
修繕積立金 マンションの管理組合に毎月支払う積立金(※賃貸用の場合)
損害保険料 火災保険料、地震保険料など
租税公課 固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税、印紙税など
税理士・司法書士への報酬 確定申告の代行や登記手続きにかかる費用
交通費 物件の管理や打ち合わせのための移動費(事業按分が必要)
通信費 賃貸経営に関する電話代、インターネット代など(事業按分が必要)
広告宣伝費 入居者募集のための広告費用
青色専従者給与 青色申告で事業的規模の場合、家族従業員への給与

なかでも、減価償却費は「実際の支払いが発生しない経費」として、大きな節税効果があります。活用方法の詳細は「対策2. 減価償却費を最適化する」をご覧ください。

経費として認められない主な項目

不動産賃貸経営に直接関連しない費用は、経費として計上できません。主な項目は下記のとおりです。

◎経費として認められない主な例参考:国税庁「No.2210 必要経費の知識」
ローンの元本返済部分 借入金の返済は「費用」ではなく「負債の減少」にあたるため
所得税・住民税 個人にかかる税金のため
私的な支出 自宅の修繕費、プライベートの交通費・飲食費など
事業按分できない部分 自宅兼事務所のプライベート使用分の通信費・光熱費など
生活費全般 個人の生活費は不動産賃貸業とは無関係

特に見落としやすいのが、ローンの元本返済部分です。毎月の返済額のうち、経費に計上できるのは利息部分のみとしっかり押さえておきましょう。事業按分も同様です。交通費や通信費などをプライベートでも使用している場合、全額計上はできません。賃貸経営で使った割合のみが経費として認められます。

【参考】「修繕費」と「資本的支出」の判断基準

物件のリフォーム費用は金額が大きくなるため、経費として計上可能かどうかで税金が大きく変わります。確定申告時に多くの人が迷いやすいのが、「修繕費」と「資本的支出」の違いではないでしょうか。

◎修繕費と資本的支出の違い参考:国税庁「No.5402 修繕費とならないものの判定」
区分 修繕費 資本的支出
概要 原状回復・維持管理のための支出 価値を高める・耐用年数を延ばすための支出
税務処理 その年の経費として全額計上する 資産として計上し、減価償却する
具体例 壊れた設備の修理、雨漏りの補修、退去後のクロス張り替えなど 間取り変更、耐震補強、エレベーターの新設など

退去後のリフォームの例でいうと、クロスの張り替えや畳の交換は原則として原状回復に該当するため、修繕費として処理できます。一方、間取りの変更やシステムキッチンへのグレードアップは、資本的支出に分類されやすい傾向があります。

なお、修繕費の判断基準としては下記の2つが一般的です。実務では境界が曖昧なケースも多いため、判断に自信が持てないときは税理士に相談するのが確実です。

1. おおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良などであるとき、または一つの修理、改良などの金額が20万円未満のとき
2. 一つの修理、改良などの金額のうちに資本的支出か修繕費か明らかでない金額がある場合で、その金額が60万円未満のときまたはその資産の前年末の取得価額のおおむね10%相当額以下であるとき

参考:国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定」

家賃収入にかかる税金の計算手順とシミュレーション

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家賃収入の税金は、受け取った家賃の全額ではなく、総収入から経費を差し引いた利益(所得)に対して課税されます。下記の手順で順を追って計算していきましょう。
一つのモデルとして、シミュレーションもご覧ください。

1. 家賃収入の内訳を把握する
2. 不動産所得を算出する
3. 他の所得と合算して課税所得を出す
4. 家賃収入の税金シミュレーション

手順1. 家賃収入の内訳を把握する

家賃収入は税法上「不動産所得」として、給与所得や事業所得とは別の区分に分類されます。最初に、家賃収入の内訳を正確に把握しましょう。不動産所得を正しく算出するには、月々の家賃だけでなく礼金、更新料、共益費なども漏れなく合算しなければなりません。

家賃収入に関係する費用の詳細は、「家賃収入に含まれるもの」でご確認ください。

手順2. 不動産所得を算出する

総収入金額が把握できたら、そこから必要経費を差し引いて「不動産所得」を算出しましょう。

◎不動産所得を求める計算式
計算式 「不動産所得」=「総収入金額(※1)」-「必要経費(※2)」
※1 総収入金額 ● 家賃、礼金、更新料、管理費、駐車場代、など
● 「家賃収入に含まれるもの」参照
※2 必要経費 ● 減価償却費、ローンの利息部分、管理委託費など
● 「経費として認められる主な項目」参照

青色申告をしている場合は、ここからさらに「青色申告特別控除(最大65万円)」を差し引けます。白色申告ではこの控除がないため、同じ収入・同じ経費でも、青色申告のほうが不動産所得が少なくなり、結果として税金も安くなります。詳細は「青色申告特別控除(最大65万円)を活用する」をご覧ください。

手順3. 他の所得と合算して課税所得を出す

不動産所得は給与所得や事業所得など、ほかの所得と合算して課税されます。合算した所得から所得控除を差し引いた金額が課税所得となり、この課税所得に税率をかけて、最終的な税額が決定する仕組みです。

◎所得税額算出の流れ参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」
ステップ 内容・計算式
1. 合計所得金額を算出する 合計所得金額=不動産所得+給与所得+その他の所得
2. 課税所得を算出する 課税所得=合計所得金額-所得控除
3. 所得税を算出する 所得税額=(課税所得×所得税率)-控除額
4. 復興特別所得税を加算する 最終的な所得税額=所得税額+(所得税額×2.1%)

◎住民税額算出の流れ
所得税額を算出する流れで算出した「課税所得」を使用します。

参考:地方税法38条310条、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律5条~7条
ステップ 内容・計算式
1. 所得割額を算出する 所得割額=課税所得×10%
2. 均等割額(約5,000円※)を加算する 最終的な住民税額=所得割額+均等割(約5,000円)

※均等割額とは、所定の金額に関係なく、一律で課される住民税の定額部分です。金額は自治体により異なりますが、年額5,000円前後が一般的です。
上記の流れで算出した課税所得に応じて、適用される所得税率と控除額は下記のとおりです。

◎所得税の早見表参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」
課税所得金額 税率 控除額
195万円未満 5% 0円
195万円以上~330万円未満 10% 9万7,500円
330万円以上~695万円未満 20% 42万7,500円
695万円以上~900万円未満 23% 63万6,000円
900万円以上~1,800万円未満 33% 153万6,000円
1,800万円以上~4,000万円未満 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

表を見てわかるとおり、課税所得900万円を境に、所得税率は23%から33%へ上昇します。税負担が増すこのタイミングで、法人化を検討する方も少なくありません。理由や法人化の検討基準については、「 【参考】法人化する」で説明します。

家賃収入の税金シミュレーション

では、実際にどれくらいの税金が必要になるのでしょうか。家賃収入の規模別に、シミュレーションを行います。ただし、計算はあくまで一例です。実際の税額は所得控除の適用状況や必要経費、物件条件などによって変動するため、一つの参考としてご覧ください。

◎【ケース1. 区分マンション1戸×家賃収入300万円】
給与所得400万円の会社員が、区分マンション1戸から年間300万円の家賃収入を得ている例です。事業的規模を満たしていないため、控除は10万円で算出しています。

項目 金額 備考
家賃収入 300万円 月額25万円×12ヵ月
必要経費 120万円 管理費・固定資産税・修繕など
不動産所得 170万円 青色申告特別控除10万円を適用
合計所得 570万円 給与400万円+不動産170万円
課税所得 422万円 合計所得-所得控除148万円
所得税 約41.6万円 (422万円×20%)-42.75万円
住民税 約42.7万円 (422万円×10%)+均等割(約5,000円)
最終的な税金額 約84.3万円 概算

◎【ケース2. 一棟アパート×家賃収入1,000万円】
給与所得400万円の会社員が、一棟アパートの運営で年間1,000万円の家賃収入を得ている例です。満室稼働かつ経費率30%で試算していますが、実際の不動産所得は、空室率や減価償却費、修繕費、借入金利などにより変動します。

項目 金額 備考
家賃収入 1,000万円 1室あたり月額8.1~8.7万円×10室×12ヵ月
必要経費 300万円 管理費・固定資産税・修繕など(経費率30%)
不動産所得 635万円 青色申告特別控除65万円を適用
合計所得 1,035万円 給与400万円+不動産635万円
課税所得 887万円 合計所得-所得控除148万円
所得税 約140.4万円 (887万円×23%)-63.6万円
住民税 約89.2万円 (887万円×10%)+均等割(約5,000円)
最終的な税金額 約229.6万円 概算

家賃収入にかかる税金の節税対策5選+1

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家賃収入にかかる税金は、制度を正しく活用することで結果的には節税につながります。ここでは、経費計上以外にも節税が期待できる方法を5つ紹介します。あわせて、所得規模が大きくなった場合の「法人化」についても、参考として取り上げます。

1. 青色申告特別控除(最大65万円)を活用する
2. 減価償却費を最適化する
3. 専従者給与を経費にする
4. 損益通算で全体の課税所得を圧縮する
5. 小規模企業共済を活用する
6. 【参考】法人化する

対策1. 青色申告特別控除(最大65万円)を活用する

青色申告をすると、不動産所得から最大65万円を控除できます。白色申告にはこの控除がないため、大きな節税効果が見込めます。ただし、65万円の控除を受けるには条件があるため、注意しましょう。

◎青色申告の判定基準(令和8年分所得税申告まで)
※要件が複数ある場合は、すべてを満たす必要があります。

65万円控除 ● 複式簿記で記帳し、かつ事業的規模を満たしている
● 貸借対照表・損益計算書を添付している
● e-Taxで提出している
55万円控除 ● 複式簿記で記帳し、かつ事業的規模を満たしている
● 貸借対照表・損益計算書を添付している
● e-Taxを利用せず、紙で提出している
10万円控除 ● 簡易簿記で記帳している
● または、事業的規模を満たしていない

令和8年度税制改正大綱により、令和9年分以降は下記のとおりに改正する予定です。

◎令和9年分以降の青色申告特別控除参考:国税庁「No.2070 青色申告制度」国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
75万円控除 複式簿記+優良な電子帳簿保存+e-Tax提出(高度デジタル対応)
65万円控除 複式簿記+e-Tax提出(標準的な電子申告)
55万円控除 廃止予定
10万円控除 紙での申告など

青色申告を始めるには、青色申告をしようとする年の3月15日まで(1月16日以後に新たに事業を開始した場合は開始日から2ヵ月以内)に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署にご提出ください。複式簿記のハードルは、会計ソフトを使用することで、ある程度軽減できます。

このような注意点のほか、青色申告のメリットやデメリットなどについて詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資で節税する裏ワザとは?青色申告のメリットや経費について解説

対策2. 減価償却費を最適化する

減価償却費は「お金が出ていかない経費」であり、元のキャッシュを減らさずに帳簿上の利益を圧縮できます。物件購入時の取得価額を「建物本体」と「建物附属設備」に分けて計上すると、さらに有利に働く場合があります。
建物附属設備(電気設備、給排水設備など)は建物本体よりも法定耐用年数が短いため、1年あたりの減価償却費が大きくなるのもポイントです。

◎耐用年数の比較例参考:東京都主税局「減価償却資産の耐用年数表」
区分 法定耐用年数
建物本体(RC造・住宅用) 47年
エレベーター 17年
給排水・衛生設備 15年
自動ドア 12年

また、減価償却を考えるうえで押さえておきたいのが、ローンの元本返済額が減価償却費を上回る「デッドクロス」の状態です。デッドクロスでは、帳簿上は黒字なのにキャッシュが足りなくなるという事態が発生します。木造アパートなど法定耐用年数が短い物件では、購入後10~15年で発生しやすい傾向があります。

◎デッドクロス対策

● 購入前に減価償却の終了タイミングとローン返済のバランスをシミュレーションしておく
● 繰り上げ返済で残債を減らす
● デッドクロスが深刻化する前に売却して、資産を組み替える

対策3. 専従者給与を経費にする

不動産貸付が「事業的規模」と認められると、生計を一にする配偶者や家族への給与を経費にできます。事業的規模の目安は一戸建てなら5棟以上、マンション・アパートなら10室以上です。

◎事業的規模で得られる主なメリット

● 複式簿記+e-Taxで最大65万円の控除が受けられる
● 「青色事業専従者給与」で、家族への給与を経費にできる
● 貸倒損失で回収できなくなった家賃を全額経費にできる
● 災害等で建物が損壊した場合の損失を全額経費にできる

専従者給与を経費にするには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しなければなりません。給与額は「労務の対価として相当な金額であること」が条件で、不相当に高額な場合は否認のリスクが高まります。また、専従者給与を支払うと、その家族への配偶者控除や扶養控除が適用から外れるので注意が必要です。
控除を使う場合と専従者給与を使う場合のどちらが税額を抑えられるか比較して、慎重に判断しましょう。

対策4. 損益通算で全体の課税所得を圧縮する

不動産所得が赤字になった場合、その赤字を給与所得などほかの所得と相殺できる仕組みが「損益通算」です。物件購入の初年度は、不動産取得税や登記費用などの初期費用がかさみ、赤字になりやすい傾向があります。この赤字を給与所得と通算すれば、所得税と住民税の還付が期待できます。

ただし、土地取得のために要した借入金の利子に相当する部分は、損益通算の対象外です。不動産所得の赤字のうち、土地購入のローン利息に該当する金額は、ほかの所得と相殺できません

損益通算は、あくまで結果として赤字となった場合に適用されるものです。意図的に赤字を継続していると、事業性を疑われかねません。適正に活用しましょう。
参考:国税庁「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」

対策5. 小規模企業共済を活用する

不動産所得の経費だけでなく、「個人の所得控除」を増やすことで全体の課税所得を圧縮する方法もあります。小規模企業共済は掛金の全額が所得控除になるため、節税しながら将来の退職金を積み立てられる制度です。

◎小規模企業共済の概要
対象者 個人事業主、会社役員など
(不動産貸付が事業的規模の場合に加入可能)
掛金 月額1,000円~7万円(年間最大84万円)で自由に設定可能
所得控除 掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として控除される
受取時 退職所得控除または公的年金等控除の対象になる

例えば、月7万円(年84万円)を拠出すると、課税所得が84万円圧縮されます。所得税率20%の方であれば、所得税だけで約16万8,000円の節税になる計算です。

小規模企業共済は将来の退職金代わりにもなるため、節税と資産形成を同時に進められる点がメリットです。ただし、加入期間が短い状態で解約すると元本割れするリスクがあるため、掛金は無理のない範囲で設定しましょう。

【参考】法人化する

事業の拡大で不動産所得が増えた結果、法人化を視野に入れる方も少なくありません。個人から法人へ切り替えると、税率の構造そのものを変えられます。
個人の所得税は10%の住民税を加えて最大55%ですが、法人税の実効税率はおおむね23~34%です。課税所得が900万円を超えるあたりから、法人のほうが税負担が軽くなるケースが散見されます。

◎個人と法人の税率比較(概算を表化)
課税所得 個人の所得税+住民税の最高税率 法人税の実効税率
500万円 約30% 25%前後
900万円 約33% 25%前後
1,800万円 約43~45% 34%前後

◎法人化の主なメリット

● 累進課税から法人税率への切り替えで税負担を抑えられる場合がある
● 配偶者や家族を役員にし、役員報酬で所得を分散できる
● 法人名義の生命保険、社用車、退職金積立など、経費の幅が広がる
法人の株式として財産を承継できるため、相続税対策にもなる

一方、法人化には20~30万円の設立費用が必要になるほか、法人住民税の均等割などのコストが発生します。所得によってはコスト負けするリスクがあるため、法人化は慎重に検討しましょう。まずは個人と法人のシミュレーションを行い、どちらが手残りで有利かを比較してから判断するのがおすすめです。
税金は複雑な問題もあるため、税務署や税理士などの専門家への相談を視野に入れておくと安心です。

不動産投資における法人化について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
関連記事:不動産投資は法人化すべき?損益分岐と出口戦略の「後悔しない判断術」とは

家賃収入に確定申告は必要?不要?

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家賃収入がある場合は原則として確定申告が必要ですが、一定の条件下では確定申告が不要になるケースもあります。ここでは、申告の要否の判断基準とペナルティについて解説します。

1. 確定申告が必要なケース
2. 確定申告が不要なケース
3. 無申告・過少申告時のペナルティ

確定申告が必要なケース

下記のいずれかに該当する場合は、確定申告が必要です。

◎確定申告が必要になる主なケース

給与所得者で不動産所得が年間20万円を超える場合
● 年金受給者で、不動産所得が年間20万円を超える場合
● 不動産所得が基礎控除等を超える場合
● 不動産所得が赤字で、損益通算により所得税の還付を受けたい場合

参考:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」

不動産投資で確定申告が必要なラインや判定基準については、下記の記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
関連記事:不動産投資の確定申告│やり方、経費、節税、電子帳簿保存法など迷うポイントを一気に解説

確定申告が不要なケース

下記のようなケースでは、基本的に所得税の確定申告は不要です。

◎確定申告が不要になる主なケース

● 給与所得者で不動産所得が年間20万円以下の場合
● 公的年金等の収入が400万円以下で、かつ不動産所得が年間20万円以下の場合

参考:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」

不動産所得が赤字の場合、一般的には確定申告の必要がありません。ただし、「対策4. 損益通算で全体の課税所得を圧縮する」で解説したとおり、確定申告時に損益通算することにより、所得税の一部が還付される可能性があります。確定申告は不要と安易に判断せず、還付の余地がないかご確認ください。

見落としがちなのが、所得税の確定申告が不要でも住民税の申告が必要になるケースです。所得税と住民税は別の仕組みで計算されるため、所得税の「20万円ルール」は住民税には適用されません。住民税の申告が滞ると、無申告として扱われる恐れがあるため、注意が必要です。少しでも不安なときは、税理士などの専門家へ相談するのがおすすめです。

無申告・過少申告時のペナルティ

確定申告は無申告や所得を少なく申告した場合、本来納めるべき税額に加えて「加算税」や「延滞税」が上乗せされるケースがあります。2024年1月以降はさらに高額な無申告に対する税率の引き上げで、ペナルティが強化されました。

◎無申告・過少申告時のペナルティ一覧
ペナルティ 発生するケース
延滞税 納税が期限より遅れたとき(国税庁「延滞税の計算方法」
無申告加算税 期限までに確定申告を行わなかったとき(国税庁「確定申告を忘れたとき」
重加算税 意図的な隠蔽などの悪質なとき(国税庁「確定申告を忘れたとき」
過少申告加算税 申告した税額が本来の税額より少なかったとき(国税庁「確定申告を間違えたとき」

「見つからなければ大丈夫」という考えは、非常に危険です。税務署は不動産の登記情報や金融機関の取引データを把握しているため、家賃収入の無申告は必ず発覚すると考えて良いでしょう。税金にも時効はありますが、安易に期待するのは禁物です。時効を待つ間にも延滞税は日々加算されるため、発覚した場合のダメージがより深刻になります。

たとえ悪意のないうっかりミスであっても、ペナルティという事実は投資家としての信用に深く傷を付けます。間違いに気付いた時点で速やかに申告し、リスクを最小限に抑えることを優先しましょう。

家賃収入にかかる税金は正しく計算し、手残りの利益を最大化しよう

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家賃収入にかかる税金は、賃貸経営の収益率を左右するコストです。経費を正しく計上したうえで、青色申告特別控除や減価償却の最適化、損益通算といった制度を適切に活用し、手残りの利益の最大化を図りましょう。

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よくある質問

Q:家賃収入はいくらまで非課税ですか?

A:「いくらまで非課税」という一律の基準はありません。税金は家賃収入の総額ではなく、経費を差し引いた「利益(不動産所得)」に対してかかるためです。目安として、会社員などは不動産所得が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要です。課税所得が基礎控除(原則48万円)以下、または赤字の場合も所得税はかかりません。ただし、所得税の申告が不要な場合でも、住民税は別途申告が必要になるケースがあるので注意が必要です。

Q:家賃収入は年収に含まれますか?

A:一般的な「給与収入」という意味では、家賃収入は年収に含まれません。「不動産所得」として別に扱われます。ただし、税金の計算やローン審査では、家賃収入から経費を差し引いた「不動産所得(利益)」が、給与所得などと合算されて評価されます。つまり、年収そのものとは別枠ですが、最終的な審査や課税では合算されるため影響するという位置づけです。

Q:家賃収入の税金は何%ですか?

A:家賃収入に適用される税率は一律ではなく、おおむね15~55%の範囲で決まります。家賃収入から経費を差し引いた不動産所得は、給与所得などと合算して総合課税の対象となるため、所得が増えるほど高い税率が適用されます。所得税は5%から45%まで段階的に上がり、これに10%の住民税が加算される仕組みです。2037年までは復興特別所得税として、所得税額の2.1%も上乗せされます。

田中 裕之

税理士(田中裕之税理士事務所代表)、企業役員

ASK税理士法人、辻本郷税理士法人などを経て、現職。「会社にお金を貯めていく」キャッシュフロー経営の提案を重視しており、「売上があっても手元にお金が残らない」という悩みに対する支援に力を入れている。税務・経理だけでなく、資金調達(融資)、経営計画策定、記帳代行・経理体制の構築なども支援対象にしており、経営の"土台づくり"から相談できる。

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