投資用マンション売却後の手残り額を正確に把握するには、税金の理解が欠かせません。本記事では投資用マンション売却時に発生する税金の種類や仕組み、税負担を抑える方法、見落としがちな注意点と対策などを解説します。後悔しない売却のために、ぜひ最後までご覧ください。
なお、ノムコム・プロでは、投資用マンションの売却や査定をはじめとした不動産投資に関するご相談を承っております。「売却にあたってアドバイスがほしい」「自分のケースではどのような対策が有効か」など、お気軽にお問い合わせください。
※以下の情報は2026年2月時点の情報をもとに、税理士の田中裕之が監修しています。
この記事で分かること
- 投資用マンションの売却時に発生する主な税金は「譲渡所得税(所得税+住民税)」「印紙税」「登録免許税」「消費税」の4種類
- 投資用マンションの取得費を証明できない場合は、「概算取得費」として売却価格の5%を計上する
- 投資用マンション売却の税負担を抑えるには、「5年以上保有してから売却する」「デッドクロスを見極めて売却時期を最適化する」「法人化する」など6つの方法がある
目次
投資用マンションの売却時にかかる税金
最初に、投資用マンションの売却時に発生する4つの税金や前提となる条件、税金以外の費用について整理します。売却にともなう支払いの全体像を押さえましょう。
1. 投資用マンションの売却時にかかる4つの税金
2. 投資用マンションの売却時に必要となる税金以外の費用
投資用マンションの売却時にかかる4つの税金
投資用マンションを売却する際に発生する主な税金は、「譲渡所得税(所得税+住民税)」「印紙税」「登録免許税」「消費税」の4種類です。
譲渡所得税(所得税+住民税)
譲渡所得税は、売却によって利益(譲渡所得)が生じた場合に課税されます。所有期間に応じて税率が異なります。
| 区分 | 所有期間 | 税率 | 税率の内訳 |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% | 所得税15%+住民税5%+復興税0.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% | 所得税30%+住民税9%+復興税0.63% |
所有期間は「売却した年の1月1日時点」で判定されるため、注意しましょう。詳細は「方法1.【基本】5年以上所有してから売却する」で説明します。
長期譲渡取得と短期譲渡取得について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産税金ガイド「2.短期譲渡所得、長期譲渡所得」
なおミニマムタックスの対象者(年間所得が3.3億円超の納税者)については、3.3億円控除後の所得に対する所得税額の割合が22.5%を下回る場合、22.5%との差分について追加課税されます。
印紙税
印紙税は、売買契約書に貼付する収入印紙に対する課税です。売却益の有無にかかわらず必ず発生し、売買契約書の記載金額に応じて税額が決まります。
電子契約で締結した場合は印紙税法上の「課税文書」に該当しないため、印紙税は不要です。近年は不動産取引でも電子契約が増えていますが、すべての取引で対応できるわけではないため、事前に税理士などの専門家に確認してください。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率(※) |
|---|---|---|
| 500万円超~1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
| 1,000万円超~5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超~5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
※軽減税率:2014(平成26)年4月1日~2027(令和9)年3月31日までに作成された不動産譲渡契約書に適用
参考:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
登録免許税
登録免許税は、売却にあたり抵当権を抹消する際にかかる税金で、不動産1件あたり1,000円に固定されています。例えば区分マンションは、土地(敷地権)と建物で不動産2件とカウントされるため、合計2,000円が一般的です。
印紙税同様、売却益の有無にかかわらず必ず発生するため、注意しておきましょう。
消費税
投資用マンションの売却では、消費税が発生するケースもあります。課税対象は投資用物件の建物部分の売却価格のみで、税率は10%です。すべての売却に該当するわけではないため、事前の確認が必要です。売却価格の「税込・税別」によっても、手元に残る金額や買主との精算方法が異なります。少しでも不安なときは、税理士などの専門家への相談をおすすめします。(参考:国税庁「No.3240 個人が事業用建物等を譲渡した場合の消費税」)
◎消費税が発生する代表的なケース
● 法人名義で投資用マンションを所有しており、前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えている
● インボイス発行事業者として登録し、課税事業者を選択している
なお、投資用マンションの売却では、マイホーム売却時に使える「3,000万円の特別控除」(租税特別措置法第35条)や「10年超所有の軽減税率の特例」は原則適用ができません。これらは「居住用財産」を対象とする制度であり、投資用として第三者に賃貸していた物件は要件を満たさないためです。
基本的に、免税事業者には消費税は発生しません。ただし、売却時点で免税事業者であっても、建物の売却価格が1,000万円を超えた場合は、翌々年に課税事業者となる可能性があります。この「2年後に生じる影響」については、「投資用マンション売却後の注意点と対策3選」で詳しく解説します。
投資用マンションの売却時に必要となる税金以外の費用
投資用マンションの売却時には、税金以外にも下記の費用が発生する場合があります。売却後に手元に残る金額を正確に見積もるには、これらも含めた総費用の把握が重要です。
| 費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売買価格×3%+6万円+消費税 | 本則として、売買価格が400万円を超える場合の上限(※) |
| 司法書士報酬 | 5,000~2万円+消費税 | 抵当権抹消登記の代行費用 |
| ローン一括繰上 返済手数料 |
3,000~5万円+消費税 | 金融機関により異なる (ネット銀行では無料の場合も) |
※売買価額が800万円以下の場合は、あらかじめ依頼者に説明・了承が得られれば、仲介手数料を30万円+消費税とできる」という特例もあります。(参考:国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」)
また、仲介手数料は、譲渡所得の計算上では「譲渡費用」に計上できるため、課税対象となる譲渡所得を圧縮する効果があります。
◎譲渡費用として認められる場合があるその他の費用
● 売買契約にともなう印紙税
● 売却のために実施した測量費
● 更地にして売却した場合の建物取り壊し費用
● 入居者に退去を依頼した場合の立退料
領収書の紛失により譲渡費用として計上できないケースが散見されるため、売却関連の領収書の保管には注意を払いましょう。確定申告が終了するまで、確実に保管してください。
不動産投資の確定申告の具体的な方法や必要書類、節税対策などについて詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資の確定申告│やり方、経費、節税、電子帳簿保存法など迷うポイントを一気に解説
投資用マンション譲渡所得税の計算方法とポイント
投資用マンションの売却において、「負担が大きい」と感じる方が多いのが譲渡所得税です。ここでは具体的なシミュレーションを交え、譲渡所得税の計算方法や見落としやすい減価償却の考え方、概算取得費の5%ルールなどについて解説します。
1. 【シミュレーション付き】譲渡所得の計算方法
2. 減価償却費の考え方と仕組み
3. 取得費がわからない場合の対処法
【シミュレーション付き】譲渡所得の計算方法
譲渡所得税の計算は、次の3ステップで行います。
1. 譲渡所得を算出する
2. 所有期間を判定する
3. 課税譲渡所得税額を算出する
ステップ1.譲渡所得を算出する
譲渡所得は、次の計算式で求められます。所有期間が長いほど減価償却費累計額が膨らみ、取得費が目減りするため、譲渡所得は大きくなります。
◎譲渡所得=売却価格-(取得費-減価償却費累計額)-譲渡費用
| 売却価格 | 売買契約書の記載金額(固定資産税清算金を含む) |
|---|---|
| 取得費 | 購入価格+購入時の諸費用(仲介手数料・登録免許税等) |
| 減価償却費累計額 | 所有中に計上した建物の減価償却費の合計(取得費から差し引く) |
| 譲渡費用 | 売却時の仲介手数料、印紙税、測量費など |
ステップ2.所有期間を判定する
売却した年の1月1日時点の所有期間で、税率が決まります。詳細は「譲渡所得税(所得税+住民税)」でご確認ください。
ステップ3.課税譲渡所得税額を算出する
ステップ1で算出した譲渡所得に、ステップ2で判定した税率をかけて税額を求めます。
◎課税譲渡所得税額=譲渡所得×税率(長期20.315% or 短期39.63%)
投資用マンションの譲渡所得は分離課税のため、給与所得や不動産所得(家賃収入)とは合算できません。上記の税率が単独で適用されます。そのため、給与所得の高低とは関係なく、譲渡所得税の税率自体は一定です。
シミュレーション
ステップ1からステップ3までの計算例を、具体例を用いて説明します。
※減価償却の考え方については、「減価償却費の考え方と仕組み」をご確認ください。
◎前提条件
● 購入価格3,000万円(建物1,800万円/土地1,200万円)
● 構造RC造、15年間所有
● 3,500万円で売却し、120万円(仲介手数料+印紙税等)で譲渡
● 減価償却費(※)累計額は1,800万円×0.022×15年=534.6万円
| ステップ | 結果 | 計算式・考え方 |
|---|---|---|
| 1.譲渡所得を算出する | 914.6万円 | 売却価格3,500万円-(取得費3,000万円-償却累計534.6万円)-譲渡費用120万円 |
| 2.所有期間を判定する | 長期譲渡所得 | 15年所有(1月1日時点で5年を超える所有) |
| 3.課税譲渡所得税額を算出する | 約185.8万円 | 914.6万円×20.315% |
同じ前提で、短期譲渡所得の課税譲渡所得を見てみましょう。この場合の課税譲渡所得は「914.6万円×39.63%=約362.4万円」となり、約176.6万円の差額が発生します。たとえわずかな違いであっても、所有期間が5年を超えるかどうかで、大きく費用が異なります。所有期間には慎重な判断が必要です。
譲渡所得税の計算の仕方は、下記の記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
関連記事:不動産税金ガイド「2.譲渡所得税の計算の仕方」
減価償却費の考え方と仕組み
減価償却の活用は、キャッシュフローを維持しながら課税所得が圧縮できるのが最大のメリットです。投資用マンションは所有中に経費計上で税金を抑えたぶん、帳簿上の資産価値が減少します。投資用マンションを所有している間の税率と売却時の税率の差を利用して、トータル的な利益を得るというのが、減価償却を活用した節税の仕組みです。
年間の償却額は、築古物件ほど大きくなります。減価償却の耐用年数は、新築物件よりも築古物件のほうが短くなります。これは、すでに経過した年数ぶんだけ、残りの使用可能期間が短いためです。そのため中古資産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく、事業の用に供した時点から見積もった使用可能期間によることができます。
所有中の節税効果は高い一方で売却時の譲渡所得も膨らむため、購入時点から売却時の税負担を見据えたシミュレーションを繰り返しておくと良いでしょう。
関連記事:国税局「No.5404 中古資産の耐用年数」
計算をより正確に行い、手残りを最大化するためには、次の2点に注意が必要です。
1.建物と建物附属設備の区分
投資用マンションを「建物本体」とエレベーターや給排水設備などの「建物附属設備」に分けて管理している場合は注意が必要です。区分計上を行うと設備部分は建物本体よりも短い耐用年数で償却でき、早期に多くの経費を計上できます。
ただし、区分計上により設備部分の減価償却累計額は早期に膨らむため、売却時の譲渡所得も大きくなります。税負担が増すリスクも考え、所有期間の長さと各種税引き後のリターンのトータルバランスを見て判断すると良いでしょう。
2.事業的規模の判定との関連
事業的規模の「5棟10室基準」を満たしているかどうかによって、青色申告特別控除の上限額や取壊し損失などの資産損失の取り扱いが異なります。
例えば、事業的規模であれば建物の取壊し損失を全額経費にできるため、更地にして売却する場合の手残りに差が生じます。間接的に売却時の最終的な税額にも影響を及ぼすため、事業的規模に該当するかを確認しておきましょう。
参考:国税庁「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」
投資用マンションの減価償却費について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:マンション投資の節税戦略!仕組みや失敗しないためのポイントなどを徹底解説
取得費がわからない場合の対処法
「購入当時の売買契約書を紛失した」「先祖代々の土地で、そもそも契約書が存在しない」など、取得費を証明できないケースも少なくありません。この場合は、「概算取得費」として、売却価格の5%を取得費として計算します。(参考:国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」)
| 項目 | 実額で算出 | 概算取得費5% |
|---|---|---|
| 取得費 | 2,465.4万円 | 175万円 |
| 譲渡費用 | 120万円 | 120万円 |
| 譲渡所得 | 914.6万円 | 3,205万円 |
| 税額(20.315%) | 約185.8万円 | 約651.1万円 |
| 税額の差 | - | 約465.3万円 |
取得費を証明する書類の有無で、大きな差が生じることがわかります。証明する資料がない場合、下記のような根拠が売買契約書の補助的な証拠として認められた裁判事例も少なからず存在します。これらの方法で可能かどうか、お困りの方は税理士への相談をおすすめします。
● 購入時の不動産会社の仲介台帳・取引記録
● 住宅ローンの融資関連書類(金銭消費貸借契約書等)
● 登記簿の抵当権設定額からの逆算
● 購入当時の固定資産税評価額と市場価格の比率からの推計
投資用マンション売却の税負担を抑える6つの方法
投資用マンションの売却において、額面の売却価格以上に重要なのが「税引き後の手残り」です。投資用マンションの譲渡所得税は、戦略的に準備をすることで大幅に抑えられる可能性があります。ここでは、6つの方法を紹介します。
1. 【基本】5年以上所有してから売却する
2. 【基本】特例を活用して課税を繰り延べる
3. 【基本】同一年の不動産売却損益を通算する
4. 【基本】デッドクロスを見極めて売却時期を最適化する
5. 【応用】住居系から商業ビル等へ資産を組み換える
6. 【応用】法人化して税率・損益通算の構造を変える
方法1.【基本】5年以上所有してから売却する
節税の最も基本的かつ効果的な方法は、所有期間による税率の違いを利用することです。5年を超えていれば20.315%、そうでなければ39.63%と、税率は2倍近く変動します。
ここで重要なのは、「所有期間5年」の数え方です。単純に購入日から丸5年経てば良いわけではありません。判定基準が「売却した年の1月1日時点」であることに注意しましょう。実際に、数日の差で短期譲渡とみなされ、数百万円の損をしたケースも報告されています。
◎考え方の例
2021年4月1日に取得した投資用マンションを、2026年5月1日に売却する例で考えます。実際は5年1ヵ月経過していますが、長期譲渡取得は適用になりません。
● 税務上の判定:2026年1月1日時点で5年を超えているか
● 2021年4月1日~2026年1月1日は「4年9ヵ月」
● 5年以下のため、短期譲渡所得の39.63%が適用になる
長期譲渡所得を狙って売却するのであれば、「6回目のお正月を過ぎてから売る」と覚えておくのがおすすめです。
方法2.【基本】特例を活用して課税を繰り延べる
特定の条件を満たすことで、売却益への課税を将来に先送り(繰り延べ)できる特例を活用するのも有効な方法です。
◎事業用資産の買換え特例(租税特別措置法第37条)
● 所有期間10年を超える物件を売却し、一定期間内に新たな事業用物件を購入した場合、売却益の最大80%に対する課税を次に購入する物件の取得費に引き継げる
● 税金が免除されるわけではない
● 手元のキャッシュを減らさずに、資産規模を維持・拡大できる
相続した投資用マンションの売却であれば、相続税の取得費加算の特例も検討の対象となります。3年以内という厳格なルールがあるため、相続の可能性が発生した段階で、売却の検討を始めることをおすすめします。
◎相続税の取得費加算の特例(租税特別措置法第39条)
● 相続税の申告期限から3年以内に売却した場合に限り、支払い済みの相続税の一部を取得費に上乗せできる
● 譲渡所得を圧縮できる
不動産投資の相続税対策について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:相続税対策のための不動産活用術│仕組みや具体策、リスクを解説
方法3.【基本】同一年の不動産売却損益を通算する
複数の投資用不動産を所有している場合、利益が出る物件と損失が出る物件を同時に売却するのも有効です。不動産の譲渡所得同士を通算し、課税額が抑えられます。
| 通算の例 | ● 物件A(利益):+800万円 ● 物件B(損失):△500万円 ● 通算後の課税対象:300万円 |
|---|---|
| 通算しない場合 | ● 物件A(800万円)に対してのみ課税 ● 税額:800万円×20.315%=約162.5万円 |
| 通算した場合 | ● 通算後の300万円に対して課税 ● 税額:300万円×20.315%=約60.9万円 |
| 節税効果 | ● 約101.6万円 |
ただし、不動産の譲渡損失は、不動産の譲渡所得同士でしか相殺できない点には注意が必要です。投資用物件の売却で出た赤字を、個人の給与所得と相殺して所得税の還付を受けることはできません。また、通算の対象は、同一年(1月1日~12月31日)の譲渡に限られます。物件ごとの利益だけではなく、ポートフォリオ全体の譲渡損益を意図的にコントロールし、課税額の最小化を図りましょう。
◎含み損物件を手放す際の判断ポイント
● その物件の賃料収入がなくなっても資金繰りに問題はないか
● 売却価格でローンの残債を完済できるか(残債割れの場合、持ち出しが発生)
● 含み損物件を手放すことで、全体の空室率や収益バランスが崩れないか
方法4.【基本】デッドクロスを見極めて売却時期を最適化する
デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態です。投資用マンションの所有初期は減価償却費が大きいため、帳簿上の利益が圧縮されて税負担が軽減されやすい状態にあります。時間の経過とともに減価償却が進むと、経費にできる金額が減少するため、帳簿上の利益が膨らんで税負担が増加します。この減価償却が切れるタイミングを見極めましょう。長期譲渡税率に切り替わる時期と比較して「税引き後のキャッシュフローが最大化される時期」で売却を判断するのも効果的です。
| 確認ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1.償却の残存年数を確認 | ● あと何年で減価償却費が0になる? |
| 2.デッドクロス到達時期を特定 | ● 元金返済額が減価償却費を上回る年度は? |
| 3.税引き後のキャッシュフローの推移を試算 | ● デッドクロス後にキャッシュフローはどこまで悪化する? |
| 4.売却した場合の手残りと比較 | ● 所有し続けた場合と売却では、どちらが有利? |
◎売却が有利になりやすいケース
● 減価償却が終了し、帳簿上の利益に対して実際のキャッシュフローが追いついていない
● ローン残債が売却想定価格を下回っており、売却代金で完済できる
● 市場価格が上昇傾向で、今後の投資用マンションの価格上昇が見込みにくい
◎所有を継続するほうが有利になりやすいケース
● 減価償却の残存年数がまだ十分にあり、所有中の節税効果が大きい
● キャッシュフローが安定しており、デッドクロスまでに十分な時間がある
● 市場価格の下落が一時的と予測でき、回復を待つ余地がある
方法5.【応用】住居系から商業ビル等へ資産を組み換える
商業系・オフィス系は景気変動の影響を受けやすい一方、坪単価ベースの収益力は住居系を上回る傾向があります。投資用マンションを売却して商業ビルや店舗ビルに買い換え、課税を繰り延べつつポートフォリオの構成を変えるのも有効な方法です。
| 項目 | 住居系(レジ) | 商業系(オフィス・店舗) |
|---|---|---|
| 空室リスク | 分散しやすい | テナント1件の退去の影響が大きい |
| 賃料単価 | 相場感で上限あり | 相対的に高め |
| 景気への感応 | 比較的受けにくい | 比較的受けやすい |
| 消費税の扱い | 住居用賃料は非課税 | 事業用賃料は課税対象 |
ポートフォリオを商業系物件に組み換えた場合、その賃料収入は課税売上に該当します。組み換え後に課税事業者の判定基準(前々年の課税売上高1,000万円超)を超える可能性があるため、シミュレーションは消費税負担も含めて行いましょう。
方法6.【応用】法人化して税率・損益通算の構造を変える
個人での物件所有に限界を感じた場合は、法人化の検討の余地もあります。個人で投資用マンションを所有・売却する場合、譲渡所得は分離課税となり、給与所得や不動産所得との損益通算ができません。一方、法人で売却した場合は売却益が法人税の課税所得に合算されるため、本業の損失や他の経費と通算できる構造になります。
◎法人化の主なメリット
● 家族を役員にした場合、所得を分散することで世帯全体の税負担を軽減できる
● 不動産の売却益と他の事業損失・経費を通算できる
● 青色申告法人は、赤字を10年間繰り越して将来の黒字と相殺できる など
不動産投資の法人化についてのメリットや戦略、注意点などは、下記の記事で詳しく紹介しています。ぜひ、ご覧ください。
関連記事:不動産投資は法人化すべき?損益分岐と出口戦略の「後悔しない判断術」とは
投資用マンション売却後の注意点と対策3選
投資用マンションの税負担は、売却した年だけに発生するものではありません。売却の翌年以降にも影響があるため、事前に把握しておきましょう。
1. 売却翌年の確定申告への影響
2. 売却翌年の税金や健康保険料への影響
3. 売却2年後の消費税課税事業者への影響
注意1.売却翌年の確定申告への影響
投資用マンションを売却して譲渡所得が発生した場合、売却した翌年の2月16日~3月15日(日曜日の場合は翌16日)に確定申告が必要です。これは、譲渡所得がプラスの場合だけでなく、買換え特例や損益通算の適用を受ける場合にも該当します。
「赤字だから申告は必要ない」「買換え特例の適用で、課税されないから申告は不要」といった思い込みには注意しましょう。同年の他の不動産譲渡益との通算機会を逃すだけでなく、特例自体の否認につながるなど、大きな損失につながりかねません。
計上してきた減価償却費の累計額と売却時の計算に用いる金額が一致しないミスも、よくあるケースです。つじつまが合わないと税務調査で修正申告を求められる恐れがあるため、慎重に判断しましょう。
◎対策
● 過去の確定申告書の控え(減価償却明細を含む)を準備し、累計額の整合性を確認する
● 売却完了時に売買契約書や仲介手数料の領収書、印紙税の領収書など、譲渡費用に該当する書類をまとめてすべて保管しておく
● 累計額の検証、特例適用の可否判断、翌年の確定申告の段取りなどを税理士にまとめて依頼する
注意2.売却翌年の税金や健康保険料への影響
投資用マンションの売却で譲渡所得が発生すると、翌年の住民税と健康保険料(国民健康保険料・場合によっては後期高齢者医療保険料)が上がるケースがあります。売却代金を全額再投資に回してしまうと、翌年の支払いに資金が足りなくなることも考えられます。事前の資金計画が欠かせません。
| 住民税 | ● 売却翌年の6月以降に課税されるため、納税資金の確保が遅れやすい ● 給与所得者の場合は住民税の通知が勤務先に届くため、給与所得以外の所得の発生が勤務先に知られやすい |
|---|---|
| 健康保険料 | ● 個人事業主や法人化前のオーナーの場合、譲渡所得が保険料の算定基礎に含まれる ● 所得が上がった結果、翌年の健康保険料も上がるケースがある |
◎対策
● 国民健康保険に加入している場合は、地域の自治体のホームページで公開されている保険料シミュレーターなどで概算額を事前に確認する
● 税理士に翌年の住民税・保険料の試算を依頼し、具体的な金額を把握する
● 住民税と健康保険料の想定される増加分は、翌年6月まで普通預金などの流動性の高い資産で確保しておく
注意3.売却2年後の消費税課税事業者への影響
投資用マンションの売却で見落とされがちなのが、2年後に消費税の課税事業者になる可能性がある点です。投資用マンションの建物部分の売却価格は、消費税の「課税売上」に該当します。売却時点で免税事業者であっても、建物の売却価格が1,000万円を超えると、その年の課税売上高が基準額を超えます。消費税の課税事業者かどうかは前々年の課税売上高で判定されるため、2年後に課税事業者となる仕組みです。
| 年度 | できごと | 状態 |
|---|---|---|
| 2026年 | 建物価格1,500万円で投資用マンションを売却 | 免税事業者 |
| 2027年 | 通常の賃貸経営を継続 | 免税事業者のまま |
| 2028年 | 前々年(2025年)の課税売上高が1,000万円超と判定 | 課税事業者に該当 |
「売却益で潤ったものの、2年後に多額の消費税納付が重なり資金繰りが悪化した」という状況に困らないよう、対策を立てておきましょう。
◎対策
● 翌々年に課税売上が発生しそうか、売却前に収入を洗い出しておく
● 課税売上に該当しそうな場合は、簡易課税制度(※)の届出を検討する
● 複数物件の売却は、年度を分けて実施する
● 売却時期を選べる場合は、7月以降で検討する
※簡易課税制度とは
実際の仕入れにかかった消費税を細かく計算する代わりに、売上に一定の「みなし仕入率(不動産の場合は40%)」をかけて納税額を簡便に算出できる制度。基準期間の課税売上高が5,000万円以下であれば利用でき、届出は適用したい課税期間の開始前日までに提出が必要。
投資用マンション売却にかかる税金は専門家に相談しよう
投資用マンションの売却は、物件の所有状況やオーナー個人の所得、将来の投資ビジョンが複雑に絡み合う高度な意思決定です。本記事で解説した計算方法や節税策はあくまで指針であり、実際の適用には個別の税務判断が欠かせません。
ノムコム・プロでは、投資用マンションの売却や査定をはじめとした不動産投資に関するご相談を承っております。「売却にあたってアドバイスがほしい」「自分のケースではどのような対策が有効か」など、お気軽にお問い合わせください。
よくある質問
Q:投資用マンションを売却した場合、確定申告は必要ですか?
A:譲渡所得が発生した場合は、売却した年の翌年の2月16日~3月15日に確定申告が必要です。譲渡損失が出た場合でも、同年に別の不動産で譲渡益がある方は通算のために申告が必要です。判断に迷うときは税理士に確認してください。
Q:投資用マンションを売却したら会社に知られますか?
A:確定申告時に住民税の徴収方法を「特別徴収(給与天引き)」のままにしていると、翌年の住民税額が変動し、勤務先に通知が届くため知られる可能性があります。確定申告書の「住民税に関する事項」欄で「自分で納付(普通徴収)」を選択すれば通知書は自宅に届きます。自治体によっては普通徴収に切り替えられない場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
Q:投資用マンションの売却に有利なタイミングはいつですか?
A:一概に「この時期がベスト」と断定することはできません。一般的には「売却年の1月1日時点で5年を超えるタイミング」「デッドクロスの到達時期」と言われています。税率だけを理由に売却を先延ばしにした結果、市場価格が下落して手残りが減るケースは少なくありません。最新の情報で市場を見極めつつ、シミュレーションを繰り返してみてください。







