不動産投資コラム

不動産投資は法人化すべき?損益分岐と出口戦略の「後悔しない判断術」とは

本記事では不動産投資の法人化に向け、検討すべきタイミングや判断基準などを損益分岐点と出口戦略の観点からわかりやすく解説します。法人化で後悔しやすいパターンやスキームの選び方なども紹介しますので、法人化すべきかお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。

なお、ノムコム・プロでは、不動産投資における法人化をはじめとした、不動産投資に関するさまざまなご相談を承っております。「法人化すべきかどうか迷っているのでアドバイスがほしい」「自分のケースではどのような対策が有効か」など、お気軽にお問い合わせください。

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この記事で分かること

  • 不動産投資における法人化には、経費計上や家族への所得分散、退職金・共済を活用した資産形成などのメリットがある
  • 不動産投資では「課税所得900万円」をラインに法人のほうが税率が低くなるケースが多くなるが、設立費用や維持費用も発生するため、一概には判断できない
  • 不動産投資の法人化には、「管理委託型」「サブリース型」「所有型」の3種類があり、それぞれで受け取れる利益の割合などが異なる

目次

不動産投資の法人化とは

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不動産投資の法人化とは、個人で実施していた不動産賃貸業を、自ら設立した法人(会社)に切り替えて運営することです。法人化すると、法律上は「独立した事業」として扱われるようになります。
最初に、個人と法人の仕組みの違いと、法人化によるメリット・デメリットを押さえましょう。

1. 不動産投資における個人と法人の課税構造の違い
2. 不動産投資の法人化で得られる6つのメリット
3. 不動産投資の法人化による4つのデメリット

不動産投資における個人と法人の課税構造の違い

個人と法人の大きな違いは、所得に対してかかる「税率の決まり方」にあります。個人の所得に対する税金は「所得税」で、所得が増えるほど税率が上がる累進課税が適用されます。一方、法人に対する税金は「法人税」で、税率は原則として一定です。

出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」国税庁「No.5759 法人税の税率」
個人 ● 累進課税
● 所得税と住民税を合わせると最大で55%
法人
※資本金1億円以下の普通法人の場合
● 実効税率は約30%
● 年800万円以下の所得部分は15%
● 年800万円超の所得部分は23.2%

この構造の違いが、法人化の損益分岐に大きく関係します。損益分岐の詳細は、「不動産投資における法人化の損益分岐点」で説明します。

不動産投資の法人化で得られる6つのメリット

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不動産投資で法人化すると、個人で実施していたときよりも、税務や財務上の選択肢が広がります。代表的なメリットを6つに整理しました。

1. 経費計上の幅が広がる
2. 家族への所得分散ができる
3. 会計上の赤字(欠損金)を10年間繰り越せる
4. 融資の幅が広がる
5. 退職金・共済を活用した資産形成ができる
6. 相続時の税負担を軽減しやすくなる

メリット1. 経費計上の幅が広がる

法人名義で事業として運営する場合、業務との適切な関連性が認められれば経費として計上できる範囲が広がる場合があります。経費として認められる支出が増えると課税所得が抑えられ、結果として税負担の調整につながる可能性があります。

不動産投資の経費について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:不動産投資の確定申告│やり方、経費、節税、電子帳簿保存法など迷うポイントを一気に解説

メリット2. 家族への所得分散ができる

配偶者や家族を役員とし、業務内容に応じた役員報酬を支払うと所得を分散できます。日本の所得税は累進課税のため、世帯内で所得を分けることで、世帯全体の税率が下がる場合があります。
ただし、経理や物件管理など、役員としての適切な実務実態がなければ、税務調査で否認されるリスクがあるため注意しましょう。報酬額も、担当する業務の内容や責任の範囲に見合った水準で設定する必要があります。

メリット3. 会計上の赤字(欠損金)を10年間繰り越せる

不動産投資で赤字(欠損金)が生じた場合、法人は翌期以降10年間にわたって赤字を繰り越せます。個人の不動産所得の場合は、原則として3年です。大規模修繕などで多額の支出が発生した場合でも長期間で回収できるため、税負担の平準化につながりやすい仕組みです。

また、法人は減価償却費の計上額を一定の範囲内で調整できます。利益が少ない期は経費計上を抑えて黒字決算を維持し、金融機関からの評価を保つなど、戦略を立てやすいのもメリットの一つです。

メリット4. 融資の幅が広がる

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不動産投資ローンは個人の場合、主に年収や勤続年数などの「個人の属性」が審査の基準となるケースが多い傾向です。融資枠の目安も収入がベースとなるため、物件を増やしたくても融資枠が不足する場合も少なくありません。
一方、法人融資では個人の属性に加え、物件の収益力や法人の決算内容も審査対象となり得ます。収益性の高い物件を選定できれば、個人の年収だけに依存しない資金調達も可能です。

設立直後の法人は決算の実績がないため、実際の審査では代表者個人の属性や事業計画書の内容を充実させると良いでしょう。黒字決算を3期程度積み上げると、金融機関からの評価も得やすくなります。プロパー融資(保証協会を利用しない融資)の検討対象に該当すると、金利などの融資条件の交渉余地も広がります。

メリット5. 退職金・共済を活用した資産形成ができる

法人化すると、退職金制度や共済制度を活用した資産形成が可能になるのも、大きな魅力の一つです。代表的な制度は次のとおりです。

◎代表的な制度
小規模企業共済 ● 法人の代表者が加入できる
● 掛金は全額所得控除の対象となる(最大月7万円・年84万円)
役員退職金 ● 法人側は、退職金の全額を損金(経費)に算入できる
● 個人側は退職所得扱いとなり、控除と1/2課税の対象となる

これらの制度を組み合わせると、「事業期間中は、共済の掛金で法人の課税所得を圧縮」「将来の引退時に、退職金や共済の給付として個人に資金を移す」といった長期的な資金計画が立てやすくなります。

ただし、役員退職金の金額は在任年数や役職、功績倍率などをもとに算定されるため、注意が必要です。実態とかけ離れた高額な支給は、税務上否認されるケースが少なくありません。制度を活用する際は、合理的な水準で設計することが重要です。不安な場合は、法人設立の段階から税理士などの専門家に相談しておくことをおすすめします。

メリット6. 相続時の税負担を軽減しやすくなる

個人が不動産を所有している場合、所有者が亡くなるとその不動産自体が相続の対象となり、評価額に応じた相続税が発生します。一方、法人が不動産を所有している場合、相続の対象になるのは不動産ではなく株式です。そのため、不動産の名義を変更する必要はありません。株式は分割しやすいため、生前贈与による相続対策を行いやすいのも法人化のメリットです。

不動産投資における相続税について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:相続税対策のための不動産活用術│仕組みや具体策、リスクを解説

不動産投資の法人化による4つのデメリット

不動産投資の法人化には多くのメリットがありますが、必ずしもすべての投資家に有利に働くとは限りません。事前にデメリットも理解しておきましょう。

1. 設立コストがかかる
2. 赤字でも維持費が発生する
3. 長期譲渡所得の優遇措置を活用できない
4. 法人の資金を自由に引き出せない

デメリット1. 設立コストがかかる

不動産投資の法人設立には、初期費用が必要です。法人化の初年度のみに発生する費用ですが、後述の維持費と合わせると、負担が少ないとは言い切れません。不動産投資の規模が小さい段階で法人化すると、この設立費用の回収に時間がかかる場合があります。法人化のメリットと設立コストの回収バランスを見て、慎重に検討しましょう。

◎株式会社と合同会社の設立費用の一般的な目安
項目 株式会社 合同会社
登録免許税 15万円 6万円
定款認証手数料 約5万円 不要
その他(印紙代・司法書士報酬など) 約5万円 約4万円
合計 約25万円 約10万円

「株式会社」「合同会社」のような権利・義務の主体となれる法律上の資格のことを「法人格」といいます。法人化において、株式会社と合同会社のどちらを選ぶべきかお悩みの方は「法人化で迷いやすい2つのポイント」をご覧ください。

デメリット2. 赤字でも維持費が発生する

法人は、設立した後も毎年一定の維持コストがかかります。代表的なものが法人住民税の均等割です。均等割は利益の有無に関係なく課税される税金で、資本金1,000万円以下の中小企業でも年に最低7万円程度が発生します。決算書の作成や法人税申告を税理士に依頼する場合は、別途顧問料がかかることも珍しくありません。

法人化を検討する際は、こういった維持費を差し引いたうえでも利益が発生するか、シミュレーションしておくことをおすすめします。

デメリット3. 長期譲渡所得の優遇措置を活用できない

個人が不動産を売却した場合、所有期間に応じて「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に区分され、それぞれ異なる税率が適用されます。一方、法人にはこの区分自体が存在しません。売却益はすべて法人の所得に合算のうえ、課税されます。

◎ 個人と法人の売却益にかかる税率の比較参考:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」
国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」
項目 個人 法人
所有期間5年以下
(短期譲渡)
39.63%
(所得税+住民税+復興税)
約30~34%
(実効税率)
所有期間5年超
(長期譲渡)
20.315%
(所得税+住民税+復興税)

表を見てわかるとおり、所有期間5年以内の売却では法人のほうが低い税率です。しかし、5年超の長期譲渡や売却益が大きい場合は、個人のほうが有利になるケースもあります。個人と法人のどちらが有利とは、一概には言えません。所有期間や売却のタイミングによって異なることを、あらかじめ理解しておきましょう。出口ごとの違いについては「法人化で成功する5つの出口戦略」で詳しく解説します。

デメリット4. 法人の資金を自由に引き出せない

法人で得た利益は会社の資産となるため、たとえ代表取締役であっても、個人のお金のように自由に使うことはできません。オーナーが生活費などとして利用する際は、役員報酬や配当として受け取ります。役員報酬は原則として期中に自由に変更できず、期中に変更すると損金算入が認められなくなるリスクがあります。配当には二重課税が生じる場合もあるため、注意が必要です。

◎個人と法人のお金の扱いの違い
項目 個人 法人
利益の帰属先 事業主の個人 法人
個人がお金を受け取る方法 自由に引き出せる 役員報酬・配当
受け取る金額の変更 制限なし 役員報酬は原則として期中の変更ができない

法人化の際は個人のキャッシュフローの自由度が下がるため、事前の準備が欠かせません。毎月の生活費や突発的な支出にも対応できるよう、余裕を持った資金計画を立てましょう。

不動産投資で法人化すべき場合とタイミング

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法人化を検討すべき目安として「課税所得900万円」というラインを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、数字だけで判断すると、かえって不利になるケースも存在します。ここでは、不動産投資における法人化の損益分岐点や、判断手順などについて説明します。

1. 不動産投資における法人化の損益分岐点
2. 不動産投資の法人化を判断する5つのステップ
3. 不動産投資の法人化は最初から?途中から?

不動産投資における法人化の損益分岐点

法人化を検討する際の一つの目安として、「個人の課税所得900万円ライン」がよく挙げられます。理由は主に「この所得帯で、個人の所得税率が跳ね上がる」「個人よりも法人のほうが有利になるケースが発生し始める」という2点です。

◎個人所得税率と法人税率の違い
所得帯 個人
(所得税+住民税)
法人 実効税率(※)
195万円以下 15% 資本金1億円以下の普通法人年800万円以下の部分 約23%
195~330万円 20%
330~695万円 30%
695~900万円 33%
 
上記以外の普通法人 約30~34%
900~1,800万円 43%
1,800~4,000万円 50%
4,000万円~ 55%

※実効税率とは

実効税率とは、実質的な負担率のことです。法人税には「法人税」「住民税」「法人事業税」など、複数の種類があります。一般に「法人税23.2%」などというときの「法人税」は、国に支払うぶんのみを指します。実際には地方自治体などにも支払うため、ルールに基づいて算出した総合的な税率のことを「実効税率」といいます。

ただし、法人化には設立費用や維持費用も発生します。税率差だけを見て判断すると、コストのほうが大きくなり、結果的に節税効果が小さくなる場合もあります。

◎法人化の際に発生する可能性がある主なコスト
法人住民税の均等割 年約7万円(赤字でも毎年発生)
税理士費用 年40~80万円程度(顧問料+決算申告)
社会保険料の会社負担分 役員報酬額の約15%
設立費用 約10~25万円(初年度のみ)
◎個人にだけ認められている制度
青色申告特別控除 一定の条件下で最大65万円
欠損金の繰戻還付 3年間の繰越控除

法人化の損益分岐点は、単純に年収だけでは判断できません。「900万円を超えたから法人化すべき」ではなく、固定コストや社会保険料、個人の控除などをすべて含めたシミュレーションが必要です。最終的な判断は、税理士などの専門家に相談するのも効果的です。普段から信頼できる相談相手を探し、些細なことでも聞ける関係を構築しておきましょう。

不動産投資の相談先の探し方でお悩みの方は、下記の記事をぜひご覧ください。
関連記事:不動産投資のおすすめ相談先6選!選び方や相談時に押さえるべきポイントを紹介

不動産投資の法人化を判断する5つのステップ

不動産投資の法人化を検討する際は、次のような手順で整理すると判断しやすくなります。

◎法人化を判断する5つのステップ
ステップ1.
現状を数字で把握する
● 給与所得と不動産所得の合算課税所得を算出する
● 所得税の税率が高いほど、法人化による税率差のメリットが出やすくなる
ステップ2.
不動産所得の年間キャッシュフローを試算する
● 法人化による税負担の変化を確認する
● 所得税・住民税・社会保険料の合計を、個人と法人それぞれで試算する
● 社会保険料と青色申告特別控除65万円を忘れずに含める
ステップ3.
今後の投資計画を整理する
● 所有予定年数や今後の投資計画を検討する
● 5年超の長期所有なら、法人のデメリットは限定的
● 物件を増やす予定がある場合は、法人のほうが資金管理の面で有利な場合もある
ステップ4.
出口を想定する
売却、M&A、承継、清算などの戦略を検討する
● 売却益が見込める場合は、個人が有利な場合もある
● 法人は不動産を株式で承継できるため、遺産分割や生前贈与などを行いやすい
ステップ5.
コストを差し引いて最終判定する
● 節税額から設立費用・維持費を差し引き、年間の手取り増加額を計算する
● 年間収支がプラス、かつ納得できる金額かどうか確認する

不動産投資の法人化は最初から?途中から?

不動産投資の法人化には、「最初から法人名義で物件を取得する」方法と「途中で個人から法人に切り替える」方法という2つのタイミングがあります。

◎法人化のタイミング
項目 最初から法人 途中で法人化
移転コスト なし 不動産取得税や登録免許税などが発生する
融資 最初から法人名義で受けられる 既存ローンの借り換え交渉が必要になる場合がある
向いているケース 5年以内に2棟目以降の購入を計画している 不動産所得がまだ少なく、まずは個人で実績を積みたい

◎途中で法人化する場合に発生する可能性がある費用

● 不動産取得税(固定資産税評価額の3~4%)
● 登録免許税(所有権移転登記2%)
● 司法書士報酬
● 印紙税

これらは、個人で物件を購入した際にも一度支払った費用です。途中で法人化する場合は、同種の費用を二重に負担することになります。このコストを、法人化による税率差の節税額で何年で回収できるかも、一つの判断の分かれ目です。

【不動産投資の法人化】利益の割合から選べる3つの方式

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法人化を決めたとしても、すべての物件を法人名義にしなければならないわけではありません。物件の規模や投資の段階によって最適な方式が変わるため、自分の状況に合ったものを選ぶことが大切です。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

項目 管理委託型 サブリース型 所有型
物件の名義 個人 個人 法人
一般的な収益の目安 家賃の5%程度 家賃の10~20%程度 家賃の100%
移転コスト なし なし 取得税+登録免許税
期待できる節税効果
空室リスクの負担 個人 法人 法人
比較的向いている段階 小規模・初期段階 中規模・拡大期 大規模・長期所有

初期費用ゼロで手軽に始める「管理委託型」

管理委託型は物件を個人名義のまま保有し、法人が管理業務を受託して管理料を受け取る方式です。管理料の相場は家賃収入の5%程度が一般的で、この管理料が法人の収益となります。節税効果は限定的ですが、移転コストがゼロで始められるため、小規模な初期段階の入口としておすすめです。

移転額を増やす「サブリース型」

サブリース型は物件を個人名義のまま所有し、法人が個人から一括で借り上げて入居者に転貸する方式です。法人の取り分は家賃の10~20%程度が一般的で、管理委託型より多くの収益を法人に移せます。

管理委託型と同様に物件の移転が不要なため、初期コストを抑えながらも、法人に移せる利益を増やせる点がメリットです。一方、空室が出た場合でも、法人は個人にサブリース賃料を支払い続けなければなりません。入居率が不安定な物件では、法人の資金繰りに影響する可能性があるため、注意が必要です。物件の入居率が安定しており、管理委託型では節税効果が物足りなくなってきた段階で検討を始めると良いでしょう。

効果の最大化を狙う「所有型」

所有型は、法人が物件を直接所有する方式です。家賃収入がすべて法人に入るため、役員報酬の設定や減価償却の調整、退職金の積立など、法人化のメリットをフルに活用できます。
ただし、すでに個人名義で保有している物件を法人に移す場合は、不動産取得税や登録免許税、司法書士報酬などの移転コストが発生します。新たに取得する物件を最初から法人名義にする場合は、この移転コストは不要です。

5棟以上の規模で長期保有を前提とする場合やこれから物件を新規取得する場合は、所有型を視野に入れるのがおすすめです。

参考:非居住用の物件は所有型で消費税還付を狙うのがおすすめ

法人が所有型で非居住用物件を取得すると、建物取得時に支払った消費税の還付を受けられる可能性があります。また、ホテルや民泊物件では旅館業法上の営業許可が必要ですが、そこでも法人は比較的有利に働きます。営業許可は法人格に紐づくため、代表者が交代しても、新たに申請する必要がありません。

消費税還付スキームの適用要件は、インボイス制度の影響や税制改正により近年厳格化されているため、制度の適用可否については、事前に税理士へ相談することをおすすめします。

不動産投資の法人化で「後悔する人」に共通する3つのパターン

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不動産投資の法人化を準備不足のまま進めると「法人化しなければよかった」という後悔につながる場合があります。ここでは、実際に後悔した声として、よくある3つのパターンとその対策を紹介します。

1. 出口を考えずに法人化する
2. 維持コストと社会保険料の二重負担を見落とす
3. 相続設計なしに法人を持ち続ける

パターン1. 出口を考えずに法人化する

不動産投資の出口は、売却益(キャピタルゲイン)の確保だけではありません。承継する、M&Aで第三者に譲る、法人をたたむなどの多様な終わらせ方があり、それぞれで出口の税負担が異なります。この出口や税の負担を考えずに法人化した結果、本来支払わなくてもよかった税金が発生し後悔したというパターンです。

売却は、個人なら5年超保有で税率約20%のところ、法人では30%程度がかかります。例えば法人化で年50万円の節税ができていても、売却益3,000万円に対する税率差は約420万円。10年間の節税合計500万円の大半が売却時に消え、維持コストまで含めるとトータルで赤字になることもあります。

◎対策

● 法人化の前に「何年後に、どの方法で手放すか」を決め、保有中の節税額と出口の税負担をトータルで比較する
● 売却益が大きくなる見込みの物件は、個人名義のまま保有する選択肢も残す
● 法人名義で持つ場合は、退職金の計上や株式譲渡(M&A)など、法人ならではの出口手段を事前に設計しておく

多様な出口戦略や成功例などを知りたい方は、ぜひ下記の記事もご覧ください。
関連記事:不動産投資は出口戦略で決まる!目的別「利益最大化のコツ」徹底解説

パターン2. 維持コストと社会保険料の二重負担を見落とす

「法人税率のほうが所得税率より低いから得」と、税率差だけで判断するのも危険です。法人化すると、利益が出ていなくても支払わなくてはならない固定コストがあります。法人住民税の均等割(赤字でも年約7万円)、税理士顧問料(年30~50万円)、社会保険料の会社負担分などで手取りが減るばかりか、赤字になることも珍しくありません。

特に注意が必要なのが、サラリーマン大家の社会保険料です。本業の会社と自社法人の両方で社会保険に加入することになり、保険料が二重に発生します。この点をシミュレーションに含めていないと、「法人化したのに手取りが減った」という後悔に直結しやすくなります。

◎対策

● シミュレーションを行う際は、法人住民税や税理士費用、社会保険料の会社負担などの費用を必ず含める
● 維持コストを差し引いた手取り増加額を算出してから判断する
● サラリーマン大家の場合は配偶者を代表者にして自分は株主にとどめるなどの方法も検討する

サラリーマン大家について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:【会社員必読】サラリーマン大家とは?5つのメリットや始め方を解説

パターン3. 相続設計なしに法人を持ち続ける

相続対策を前提に法人を設立したものの、何の設計もしないまま持ち続けた結果、かえって相続税が増えてしまったケースもあります。

メリット6. 相続時の税負担を軽減しやすくなる」で説明したとおり、法人で不動産を所有した場合、相続の対象は不動産ではなく株式です。株式の評価には「純資産価額方式」や「類似業種比準方式」など複数の方法があり、会社の規模や業種によって適用される方式が異なります。評価方法の違いによって税額が左右されるため、「法人にしておけば自動的に有利になる」とは限りません。設計なしに法人を持ち続けた場合、「個人で不動産を所有していたほうが相続税が安かった」という声も決して少なくはありません。

法人が含み益のある不動産を保有し続けると、そのぶんだけ株式の相続税評価額が上がります。特に注意が必要なのが「3年ルール」です。法人が取得してから3年以内の不動産は、通常の相続税評価(路線価等)ではなく時価で評価されるため、不動産を法人に移しても相続税の圧縮効果は得られません。

◎対策

● 法人化と相続対策はセットで設計する。物件の取得時期から逆算し、3年ルールを考慮した承継スケジュールを組む
● 株式の生前贈与を計画的に進め、毎年110万円の基礎控除を活用する
● 自社株の評価方法や評価額を定期的に税理士と確認し、想定外の評価額上昇が起きていないかチェックする

不動産投資の法人化で成功しやすい5つの出口戦略

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法人化した不動産投資の出口戦略は、「終わらせ方」として法人設立の段階から考えておくと良いテーマです。選択肢は大きく5つあり、それぞれ税負担や手続きが異なります。

1. 法人のまま売却する
2. 個人に戻して売却する
3. 法人ごと第三者に売却する
4. 次世代へ承継する
5. 法人を清算・解散する

出口1. 法人のまま売却する

一般的に選ばれやすいのが、法人名義のまま物件を売却する方法です。この場合、長期譲渡20%の優遇は使えず、約30%の法人実効税率が適用されます。
「売却益と他の損金を同じ事業年度で相殺できる」という法人の強みを活かしましょう。売却する期に合わせて大規模修繕を実施したり、役員退職金を支給したりすることで、課税所得を大幅に圧縮できます。これは個人にはできない方法です。ただし、売却益が1,000万円以下なら、中小法人の軽減税率で個人と大差ない点には注意が必要です。

出口2. 個人に戻して売却する

法人から個人へ物件を移転して個人名義で売却する方法は、特に5年超所有で売却益が大きい場合に向いています。法人から個人への移転時には、3~4%の不動産取得税と2%の登録免許税が発生します。3,000万円の物件ならば、約150~180万円のコストがかかる見込みです。移転コストと税率差を考慮し、損益分岐のシミュレーションを行いましょう。

出口3. 法人ごと第三者に売却する

不動産そのものを動かさず、法人の株式を第三者に譲渡する方法もあります。不動産取得税や登録免許税がかからないため、買い手側の取得コストが下がるぶん、売却価格の交渉で有利に働くケースもあります。
一方、売り手は表明保証や財務・法務調査への対応が求められる場合があります。簿外債務や未払税金がないことを証明できるよう、法人の帳簿や契約書類を日頃から整備しておきましょう。

出口4. 次世代へ承継する

法人の株式を家族に生前贈与するなど、事業を承継する場合は、毎年110万円の基礎控除の活用が有効です。計算上では、10年間で1,100万円分の株式を非課税で承継できる見込みです。ただし、「パターン3. 相続設計なしに法人を持ち続ける」で説明したとおり、不動産取得後3年以内は株式の評価が路線価ではなく時価になるため、圧縮効果が得られません。承継のスケジュールは、法人化と物件取得のタイミングから逆算して設計するのがおすすめです。

出口5. 法人を清算・解散する

物件を売却した後、法人を維持する理由がなくなった場合は、清算・解散の道を選択するのも一つの方法です。法人が存続する限り、赤字であっても年間約7万円の均等割や税理士顧問料などは発生し続けます。事業を終了するのは、ある意味で合理的な判断といえるでしょう。
清算時には、残余財産を株主に分配する際に「みなし配当課税」が発生する場合があります。この場合、清算前に役員退職金として資金を支給し、退職所得控除や1/2課税の活用が有効です。これらの税制優遇の恩恵により、手残りを最大化できる可能性があります。

不動産投資における法人化の手順と迷いやすいポイント

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不動産投資の法人化は「節税できるかどうか」だけでなく、実際の手続きや設立後の運用まで理解して進めることが重要です。ここでは、不動産投資で法人を設立する際の標準的な手順と実務で迷いやすいポイントを解説します。

1. 不動産投資の法人化の標準的な手順と提出書類一覧
2. 不動産投資の法人化で迷いやすい2つのポイント

不動産投資の法人化の標準的な手順と提出書類一覧

法人の設立自体は、さほど難しいものではありません。ただし、提出期限のある書類や金融機関の手続きなど、事前に流れを把握しておかないとスムーズにいかない場合があります。特に法人口座の開設や融資審査には時間がかかるため、物件購入のスケジュールから逆算して準備を進めましょう。

◎不動産投資における一般的な法人設立の流れ
手順 目安 内容
1. 事前準備 数日~数ヵ月 商号、目的(不動産売買・管理等)、資本金、決算期の決定など
2. 定款作成・登記 1~2週間 公証役場での認証(株式会社のみ)、法務局への登記申請
3. 税務・労務届出 設立後2ヵ月以内 税務署などへ「青色申告」などの各種届出書を提出
4. 口座開設 1~4週間 審査に時間がかかるため早めに実行
5. 融資申込・審査 1~2ヵ月 本審査
6. 決済・物件取得 金銭消費貸借契約を結び、融資実行・所有権移転
◎法人設立後に提出する主な書類
書類 届け出先 期限 内容
1. 法人設立届出書 税務署
自治体
設立後2ヵ月以内 会社の基本情報を知らせる書類
2. 青色申告の承認申請書 税務署 設立後3ヵ月以内 欠損金の繰越(10年)に必須
3. 給与支払事務所等の開設届出書 設立後1ヵ月以内 役員報酬(自分への給料)を払う場合も必要(※)
4. 源泉所得税の納期の特例申請書 随時 従業員10人未満なら、源泉徴収の納付を年2回に集約可

※不動産所得を役員報酬として受け取る場合は、下記も原則必要となります。
書類 届け出先 目安 内容
5. 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 管轄の年金事務所 設立後5日以内 役員一人の会社でも加入義務が発生
6. 新規適用事業所現況届 同上 会社の運営実態を報告する書類

不動産投資の法人化で迷いやすい2つのポイント

不動産投資の法人化を検討する際に多くの方が迷いやすい「法人格の選択」と「サラリーマン特有のリスク」について、実務的な視点でまとめました。

◎【法人格の選択】株式会社か合同会社か

● 設立費用の概算は、株式会社で約25万円、合同会社が約10万円
● 銀行融資や不動産賃貸業の実務において、どちらが有利というのは基本的にない
● どちらも実態として、決算書の内容が重要
コスト重視なら合同会社、将来的にM&A(株式譲渡での出口)を想定するなら株式会社が合理的

◎【サラリーマンの法人設立】勤務先への影響と就業規則

● 法人設立自体は法律上自由であり、勤務先の就業規則で禁止することはできない
● ただし「役員報酬を受け取る=副業」とみなす企業は多く、就業規則への抵触リスクは確認が必要
● 対策として、配偶者を代表者にして自身は株主(出資者)にとどめる方法がある
● 役員報酬を受け取らなければ社会保険の二重加入も発生しない
● その場合も、実質的な経営者が自分であることが勤務先に判明した場合のリスクは残る
事前に就業規則を確認し、上長へ相談しておくことをおすすめする

不動産投資の法人化は専門家に相談しながら効果的に進めよう

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不動産投資における法人化は、事業拡大を図るうえで魅力的な選択肢の一つです。所得水準や物件規模、融資状況、将来の売却や承継の方針により、最適な形は大きく変わります。
「法人のほうが税率が低いから」といった一面だけで判断すると、後悔につながりかねません。保有中のキャッシュフローや売却時の税負担、相続や承継などの出口を見据え、シミュレーションを繰り返した慎重な判断が必要です。専門家のアドバイスを受けながら進めることで、自分の投資方針に合った法人化を実現しやすくなります。

なお、ノムコム・プロでは、不動産投資における法人化をはじめとした、不動産投資に関するさまざまなご相談を承っております。「法人化すべきかどうか迷っているのでアドバイスがほしい」「自分のケースではどのような対策が有効か」など、お気軽にお問い合わせください。

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▼動画でも解説していますので、是非こちらもご覧ください。

よくある質問

Q:不動産投資で法人化すべき年収の目安は?

A:一般的には「課税所得900万円」が検討の目安とされています。課税所得が900万円を超えると、個人の税率が法人の税率(33%)を上回るケースが増え始めるからです。ただし、法人化には設立費用や維持コスト、社会保険料なども発生します。税率だけで判断するのではなく、家賃収入や物件規模、今後の投資拡大の予定などを含めて総合的に判断することをおすすめします。

Q:不動産投資で法人化するメリットは何ですか?

A:主に「経費計上の幅が広がる」「役員報酬や退職金を活用できる」「赤字を10年間繰り越せる」などが挙げられます。家族への給与支払いなどによって所得を分散できるのも法人の大きなメリットです。金融機関によっては個人よりも法人名義のほうが融資枠を拡大しやすいケースもあり、法人化は事業として不動産投資を拡大したい場合に有効な選択肢となります。

Q:不動産投資で法人化しないほうが良い場合を教えてください

A:「短期間での売却を予定している」「物件の保有規模が小さい」「自由に現金を使いたい」といった場合は、慎重な判断が必要です。法人を設立すると、売却益に法人税が課税されるほか、設立費用や法人住民税の均等割などの維持コストが発生します。法人化を検討する際は、これらのコストをどのくらいの期間で回収できるかシミュレーションで把握するのもおすすめです。

中尾 尚太不動産開発・ホテル集客支援コンサルタント

大手総合デベロッパーにて、都内の大規模複合開発(ホテル・オフィス・商業施設ほか)を担当。用地取得後の事業推進、テナント戦略、収支計画策定など、開発全体を俯瞰する立場でプロジェクトに従事。不動産価値を最大化するための事業設計および実行支援を経験。現在は大手チェーンホテルを中心に、集客支援および既存施設の改善コンサルティングを行う。マーケット分析や販売戦略の見直しを通じた稼働率向上支援に加え、開発時の知見を活かし、動線設計・改装計画などハード面の改善提案も実施。ソフト・ハード両面からの戦略設計を強みとし、ホテル資産の収益最大化を支援している。

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