オーナーチェンジ物件は、すでに入居者がいる状態で売買されるため、購入後すぐに家賃収入が得られるというメリットがあります。しかし、「なぜ売却されるのか?」という理由を見落とすと、購入後に思わぬリスクを背負ってしまったり最適な価格での売却をし損ねたりする可能性も。
本記事では、オーナーチェンジ物件が売られる主な理由や注意すべきケース、確認すべき書類や現地調査のポイント、そして購入前にチェックしておきたい10の項目を解説します。
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※以下の情報は2025年6月時点の情報をもとに、宅地建物取引士の河原田琢人が監修しています。
目次
【なぜ売る?】オーナーチェンジ物件が売却される理由

オーナーチェンジ物件は、すでに入居者がいる状態で売買される不動産です。一見すると家賃収入がすぐに得られる魅力的な物件に思えますが、「なぜ売りに出されたのか」は慎重に見極める必要があります。本章では、オーナーチェンジ物件の代表的な売却理由について、問題のないケースと注意が必要なケースに分けて解説します。
問題のない売却理由
一見「なぜ売るのか?」と疑問に思っても、実はまったく問題のない理由で売却されるケースも多くあります。ここでは、安心して購入を検討しやすい4つの売却理由を見てみましょう。
1. 投資目的での売却(利益確定・資産の入れ替え)
2. 相続による売却
3. 所有期間が長く、税制上のメリットがある
4. ライフスタイルや家庭の事情による売却
・投資目的での売却(利益確定・資産の入れ替え)
投資家が物件を売却する理由のひとつに、計画的な利益確定があります。不動産価格が上がったタイミングで売却し、利益を出すのは、投資戦略として自然な行動です。また、より条件の良い物件に買い替える「資産の入れ替え」も一般的です。このようなケースでは、物件自体に問題があるわけではなく、むしろ運用が順調だった証拠ともいえます。
・相続による売却
不動産を相続した人が、運用の意思や管理のノウハウを持たない場合、そのまま売却することがあります。これは所有者の事情であり、物件に大きな問題がある可能性は低めです。相続による売却は、購入者にとって比較的安心して検討しやすいパターンといえるでしょう。
・所有期間が長く、税制上のメリットがある
物件を5年以上保有して売却すると、「長期譲渡所得」として税率が軽減されます。「短期譲渡税」は39.63%なのに対して、「長期譲渡税」は20.315%と倍近く税率の差があるため、この節税効果を狙って所有5年経過後に売却する人もいます。こうした動きも投資判断の一環であり、物件自体に大きな欠陥がある可能性は低いと考えられます。
・ライフスタイルや家庭の事情による売却
所有者の転勤や引っ越し、病気、家庭の都合など、生活の変化により物件を手放すケースもあります。これは個人的な事情による売却であり、物件そのものの問題とは関係がありません。安心して購入を検討しやすい理由のひとつです。
注意が必要な売却理由
売却理由のなかには、物件にリスクが隠れているケースもあります。続いて、購入後にトラブルや損失を招く恐れがある7つの「注意すべき理由」を見てみましょう。
1. 空室が多く収益性が下がっている
2. 家賃滞納や入居者トラブルがある
3. 大規模修繕や設備更新の費用負担が迫っている
4. 賃貸契約の終了が迫っている
5. 不動産経営が破綻している
6. サクラ入居など不正の可能性がある
7. 売主が管理費修繕積立金を滞納している
・空室が多く収益性が下がっている
物件の立地や築年数、周辺環境などによって、空室が続いて収益が下がっているケースも見受けられます。見た目の利回りは高くても、実際には家賃収入が安定していないことも少なくありません。入居者の回転が早かったり、空室期間が長引いたりする物件では、安定した運用が難しくなる可能性があります。
・家賃滞納や入居者トラブルがある
家賃の滞納が続いていたり、入居者が近隣住民とトラブルを起こしていたりする場合、管理が困難になり、売却されることがあります。これらの問題は賃貸契約ごと引き継がれるため、購入者がトラブルを背負う恐れもあります。そのため事前に契約書や管理記録を確認しておくことが重要です。特に外国籍、学生などは少し注意が必要かもしれません。あくまで傾向であり、断定的な表現はすべき内容ではありませんが、外国籍の入居者の場合、傾向として文化の違いによる騒音トラブルや、部屋を汚されてしまうリスクがあります。学生の入居者に関しては、深夜のトラブル対応など近隣トラブルが多い傾向にあります。
・大規模修繕や設備更新の費用負担が迫っている
屋上防水や外壁塗装、給排水管の交換など、大きな修繕が控えている場合、費用の負担を避けるために売却に踏み切るオーナーもいます。こうした修繕コストは数百万円単位になることもあるため、修繕履歴や今後の予定について確認が必要です。
・賃貸契約の終了が迫っている
現在の入居者がまもなく退去予定だったり、賃貸契約が更新間近だったりする場合、すぐに空室となるリスクがあります。特に入居希望者が少ないエリアでは、空室期間が長期化する恐れもあります。空室になった際に購入時の賃料でも入居付けができるのか、競合となり得る物件の調査をし、レントロールや契約書の内容をしっかり確認することが大切です。
・不動産経営が破綻している
家賃収入よりもローン返済や管理コストが上回り、赤字経営となっているケースもあります。このような物件は、表面利回りだけでは見抜けず、購入後に「思ったより儲からない」と気付くことも。現オーナーの経営状況を把握することが、失敗を防ぐポイントになります。
・サクラ入居など不正の可能性がある
物件の見せかけの利回りを高く見せるため、不動産業者が「サクラ入居者」を入れているケースもまれにあります。数ヵ月で退去されるなど、実際には収益が発生しない恐れもあるため、保証会社や入居者の情報も確認しておきましょう。
・売主が管理費修繕積立金を滞納している
売主が管理費修繕積立金を滞納している場合、滞納分も新所有者に継承されるケースがあります。思わぬトラブルにも発展する恐れもあるため、購入前に重要事項調査報告書をしっかりと熟読し、売主に滞納がないかの確認をしておきましょう。滞納がある場合には、売買契約書にて引き渡し前までに滞納分を売主が支払う旨を特約事項に明記してもらうように心がけましょう。
オーナーチェンジ物件の売却理由の確認方法と注意点
売却理由によっては、将来的なトラブルの兆候をあらかじめ察知できることもあります。そのためには、書類や現地の情報を細かくチェックし、不動産会社に積極的に質問する姿勢が欠かせません。この章では、売却理由を見抜くために有効な確認方法と注意点について紹介します。
資料の請求とチェックポイント
売却理由を正しく見極めるには、物件の資料をしっかり確認することが基本です。下記は、必ず入手しておきたい資料の一例です。
● レントロールで賃貸状況を確認する
● 修繕履歴や管理状況の資料をもらう
● 登記簿や謄本で権利関係を確認する
詳細は、後ほど「オーナーチェンジ物件の購入前に確認すべきチェックポイント10選」で解説します。
現地調査と不動産会社への質問
書類だけではわからない点を把握するためには、現地を実際に見に行き、直接話を聞くことが大切です。ここでは、チェックするポイントと質問すべき内容を紹介します。
1. 現地を見て、写真ではわからない点をチェックする
2. 気になる点は不動産会社に細かく質問する
3. 仲介会社が1社なら、より注意する
・現地を見て、写真ではわからない点をチェックする
外観の劣化具合や共用部の清掃状態、掲示板の内容など、現地に行かなければ気付けない情報は多くあります。購入しようとしている物件に自分自身が住むのであれば、という観点で現地を見に行くことが重要です。近隣の建物や住環境も、入居者の満足度に関わる大事なポイントです。可能であれば昼と夜の2回見に行くのがおすすめです。
・気になる点は不動産会社に細かく質問する
「なぜ売るのか」「どのような修繕が必要なのか」「入居者とのトラブルはあるか」など、気になることは遠慮なく聞くべきです。曖昧な回答や説明が二転三転する場合は、注意が必要です。誠実に答えてくれる不動産業者を選びましょう。
・仲介会社が1社なら、より注意する
売主側と買主側の仲介会社が同じ1社が担当している、いわゆる「両手取引」の場合は、仲介会社が取得する手数料も2倍になるため、都合の悪い情報が伏せられるリスクがあります。その場合は、セカンドオピニオンとして別の不動産会社に相談するのもひとつの手です。
オーナーチェンジ物件の購入前に確認すべきチェックポイント10選
購入後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためには、事前のチェックが非常に重要です。この章では、初心者でも確認しやすい10の具体的なチェックポイントを紹介します。
1. レントロールを確認する
2. 賃貸借契約書の内容を確認する
3. 入居者の属性・居住期間を確認する
4. 修繕履歴・今後の修繕予定を確認する
5. 建物の管理状況(管理会社の対応)を確認する
6. 周辺の家賃相場を確認する
7. 賃貸ニーズの有無(エリアの人気・将来性)を確認する
8. 物件の外観・共用部の状態を確認する
9. 登記簿・抵当権・所有者情報を確認する
10. 売却しやすい物件か(出口戦略の視点)を確認する
1.レントロールを確認する
レントロールは、各部屋の賃貸状況を一覧で確認できる重要な資料です。家賃額や入居開始日、契約期間、滞納の有無などが記載されており、物件の安定性を判断する基準になります。表面利回りだけで安心するのではなく、実際に家賃収入がどれだけ得られているのかを具体的に確認しましょう。空室率が高い場合は、収益性に不安が残るサインです。
2.賃貸借契約書の内容を確認する
購入後も入居者との契約はそのまま引き継がれるため、契約書の内容確認は必須です。更新期限や退去予告期間、原状回復の範囲など、貸主としての責任範囲を把握しておく必要があります。万が一、契約条件に不利な内容が含まれていても、変更するのは難しいため、事前のチェックでリスクを最小限に抑えましょう。
3.入居者の属性・居住期間を確認する
どのような入居者がどれくらいの期間住んでいるかも、物件の安定性を判断するうえで大切な情報です。長く住んでいる人は退去リスクが低く、安定収入につながります。一方で、入居して間もない場合や短期での入退去が繰り返されている場合は、物件や周辺環境などに問題がある恐れもあります。
敷金礼金など初期費用がゼロになっている物件は、入居者としては初期費用を抑えられるメリットがあります。ただしオーナー目線ですと、支払い能力に不安のある方でも入居がしやすくなるため、支払いの滞納や近隣トラブルにつながる可能性が出てくる点には注意が必要です。
4.修繕履歴・今後の修繕予定を確認する
物件の修繕履歴は、建物の健康状態を知るためのカルテのようなものです。過去に実施された修繕内容と時期を確認することで、どの部分がどれくらい使われているかが見えてきます。また、今後予定されている大規模修繕の時期と費用の見込みも把握しておくことで、購入後の突発的な出費を避けられます。
5.建物の管理状況(管理会社の対応)を確認する
共用部分の清掃が行き届いているか、掲示板やゴミ捨て場が整理されているかなど、管理の質は物件価値に直結します。管理が行き届いていない物件は、将来的に住民の質が下がる恐れがあり、空室リスクや家賃下落にもつながります。管理会社の実績や対応姿勢も確認しておくと安心です。
6.周辺の家賃相場を確認する
購入予定の物件が適正価格で貸し出されているかを判断するには、周辺の家賃相場を調べることが欠かせません。同じエリア、同じ間取り、築年数が近い物件の賃料と比較することで、割高・割安の判断が可能になります。相場より高ければ退去リスクがあり、安すぎる場合は収益性に問題が出ることもあります。
7.賃貸ニーズの有無(エリアの人気・将来性)を確認する
そのエリアに今後も入居者が見込まれるかを把握しておくことは、長期的な収益確保に直結します。大学や病院、大企業の事業所がある地域は賃貸需要が安定している傾向があります。一方、人口減少や再開発の予定がないエリアでは、今後の空室リスクが高まる可能性もあるため注意が必要です。
8.物件の外観・共用部の状態を確認する
建物の第一印象は、入居希望者にも大きな影響を与えます。外壁の汚れやひび割れ、郵便受けやエントランスの状態など、写真ではわからない劣化ポイントも現地でしっかり確認しましょう。共用部がきれいに管理されていれば、入居者の満足度や長期入居にもつながりやすくなります。
9.登記簿・抵当権・所有者情報を確認する
登記簿を確認することで、物件の所有者が誰か、どのような権利関係があるかを明確にできます。特に抵当権の有無や内容は、金融機関との関係性や借入状況を判断する材料になります。複雑な権利関係があると、購入手続きに時間がかかったり、思わぬリスクを背負ったりすることにもなりかねません。
10.売却しやすい物件か(出口戦略の視点)を確認する
購入時に見落としがちなのが、「この物件を将来売れるかどうか」という視点です。立地や間取り、建物の規模や築年数など、資産価値が保たれるかどうかを意識して選ぶことで、出口戦略に強い不動産投資ができます。買う前に「自分が売る側になったとき」のことを考える習慣を持ちましょう。
また、一棟収益ではなく区分収益の購入を検討している場合は、1階の物件にも注意をしてください。傾向として、オートロック付きマンションも1階に所在する物件はセキュリティの観点から賃料が安くなりがちです。このような物件は高利回り(割安)な物件として目にすることが多いのですが、賃貸ニーズ懸念の注意と売却ニーズとしても良いイメージを持たない投資家が多いため、注意が必要です。
売却理由を見極めて、安心して購入しよう
オーナーチェンジ物件は、安定した家賃収入が期待できる魅力的な投資先ですが、売却理由によっては大きなリスクを含む場合もあります。見た目の利回りだけで判断せず、売却理由の確認、現地調査、資料精査を徹底することが重要です。本記事で紹介したチェックポイントを活用すれば、購入後のトラブルを避け、より安全で納得感のある投資判断につながります。気になる物件がある方は、ぜひ一つひとつ確認しながら、失敗しない選択をしていきましょう。
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