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プロに聞く!不動産投資コラム 不動産専門税理士が教えます!知ってて役立つアパート経営ノウハウ 村岡 清樹(むらおか せいき)

第6回 アパート・マンション経営を法人化するメリット・デメリットは?

2018年04月02日

アパート・マンション経営を会社で運営することで得られるメリットはいくつかあります。もちろんデメリットもあります。今回はアパート・マンション経営を法人で運営することの主なメリット・デメリットをそれぞれみていきましょう。

メリット① 所得税が節税できる

アパート・マンション経営を法人化(会社経営)とする最大のメリットは、所得税・住民税の節税が見込めることです。個人でアパート・マンション経営を行う場合、収入金額から必要経費を差し引いた残額が不動産所得となり、これに対して所得税・住民税がかかります。たとえば、収入金額が2,000万円で必要経費が800万円の場合、不動産所得は1,200万円となります。

会社を設立してアパート・マンション経営を行った場合も、利益の計算方法は個人の場合と同様のため、差引1,200万円の所得に対して法人税が課税されます。ただし、この法人の所得1,200万円の金額を社長に役員報酬として支給すると、会社の所得は0円となり法人税が課税されなくなります。

また、社長が受け取る1,200万円には役員報酬として所得税がかかりますが、この所得税を計算する場合には、※給与所得税控除として220万円が差し引かれ、課税対象の給与所得は980万円となります。

個人経営による不動産所得1,200万円にかかる所得税と会社経営による給与所得980万円にかかる所得税を比較すれば、会社経営が税金上有利となります。

また、家族を役員にして役員報酬を分散して支給した場合には、それぞれ※給与所得控除が使えることから、節税効果がさらに大きくなります。たとえば1,200万円の役員報酬を600万円ずつ2人に支給すると、合計で348万円の※給与所得控除が受けられます。

※給与所得控除については改正があります。第5回コラム「平成30年度税制改正大綱発表!アパ-ト・マンションオ-ナ-に関わる税制改正の動向とは?」をご参照ください。

近年、会社にかかる法人税は優遇されてきており、個人の所得税は増税の方向となっています。
下記の個人・会社の税率比較表をご覧ください。所得金額が100万円~2,000万円の場合の個人と会社の税率比較表となります。

【個人と会社の税率比較】

※1 所得税・住民税・事業税(不動産貸付業と仮定)の表面税率(すべての税率をあわせたもの)であり、所得控除は考慮しておりません。
※2 法人税・住民税・事業税の表面税率(すべての税率をあわせたもの)です。住民税・事業税率は地域により若干異なります。
※3 住民税・事業税率は地域により若干異なります。
※4 平成30年4月1日以降に開始する各事業年度で資本金等が1千万円以下の法人かつ従業者数が50人以下の場合。
※5 復興特別所得税・復興特別住民税を含みます。
※6 税率は今後改正の可能性があります。

所得金額の両サイドに個人と会社の税率を掲載しています。資本金1,000万円以下かつ従業員が50人以下の中小会社であれば、所得金額が約600万円を超えてくると会社の税率が個人の税率よりも低くなっていることがわかります。
所得金額はわかりやすくいうと、収入から経費を差し引いた利益です。所得金額が600万円を超えると税率的には会社運営が有利ではありますが、会社を運営するためには、後述します設立費用や会社固有のランニングコストがかかります。これらのコストを考えると一般的には、所得金額が1,000万円以上であれば会社が有利といえるでしょう。

メリット② 相続税も節税になる

個人でアパート・マンション経営を行う場合、毎年家賃収入から経費を差し引いた残額は所得となります。この所得は蓄積されていき、これが相続財産として相続税の課税の対象となります。

会社を設立して、このアパート・マンションの所得を、役員報酬という形で家族に分散することで、親の財産の増加を抑えることができます。また、将来の相続人である子ども世代はこれにより財産が形成できるため、相続税の納税資金などを蓄えることができます。

ただし、この会社の株式を親が所有していると、株式を通じて親がアパート・マンションを所有していることになります。つまり親の財産は株式ということになりますので、会社の株主を次世代の子にしたり、親が株主の場合は生前移転対策をしなければなりませんので注意してください。

メリット③ 経費化の選択肢が多くなる

会社であれば様々な税金対策を活用する事が出来るようになります。たとえば役員の定期保険や医療保険を会社で加入したり、倒産防止共済(掛金は全額経費、40か月以上加入で全額戻ってきます)の加入による費用化などがあります。ただし、これら保険の活用は原則課税の繰り延べですので、後々保険金が入った場合には会社の収益となり、修繕のタイミング等にあわせて解約するなどの対応は必要となります。

メリット④ 入居者からの信用度が増す

これまで「個人の大家さん」だった人が、「会社の社長」になれるのです。いわば一国一城の主です。法人化(会社経営)は、一般的に金融機関や取引先への信用度が増すほか、入居者にも「しっかりとしたアパート(マンション)経営をしているな」という印象を与えることもあるでしょう。

従来の株式会社の設立は、「資本金が1,000万円以上」「発起人7名以上」などといった条件がそろっていなければなりませんでした。しかし、平成18年の新しい会社法のスタートによって資本金が1円でも会社設立は可能となり、さらに電子申請などの利用で設立費用も抑えられるようになりました。また有限会社制度が廃止された代わりに、手続きが簡単で組織も簡易な合同会社という形態も新設されました。
これによって、アパート・マンション経営も、個人経営から会社経営にすることが容易になりました。


ここまで法人化のメリットについて解説してきましたが、物事にはいいことばかりではなく、面倒なことや費用負担などのマイナス面も存在します。ここからは、法人化のデメリットについて説明していきましょう。

デメリット① 会社設立費用がかかる

会社を設立する場合には、費用がかかります。会社設立の手順ですが、最初に会社の目的や商号、本店所在地などを記載した「定款」と呼ばれるものを作成しなければなりません。株式会社の定款は公証人役場で公証人の認証が必要なため、手数料がかかります。さらに、定款認証後には、設立登記をする必要があります。その際、資本金の額に応じた登録免許税のほか、登記の手続きを司法書士などに依頼する場合には、その手数料がかかります。会社の種類については説明を省略いたしますが、司法書士の先生にお願いするのであれば、株式会社で25万円~30万円程度の費用、合同会社で10万円~15万円程度の費用がかかります。
なお、個人で新規に不動産賃貸業を開始する場合には、税務署等へ事業開始への届出等を提出するだけなので、特別な設立費用などは生じません。

デメリット② 運営費用がかかる

個人による不動産賃貸業の場合も、会社による不動産賃貸業の場合も、帳簿を付けることが義務づけられています。とりわけ税金の申告時には、その帳簿をもとに所得と税金を計算して税務署等へ申告しなければなりません。

個人による不動産賃貸業の場合、所得は「※白色申告」か「※青色申告」により確定申告をする必要があります。
※「白色申告」「青色申告」については第3回コラム「税金を「まけてもらえる」お得な制度!? アパート・マンション経営でおトクな青色申告とは?」をご参照ください。

白色申告の場合は、記帳するにあたって、1つひとつの取引ごとではなく、日々の合計金額をまとめるなど簡易な方法でもよいことになっています。
青色申告の場合は、原則、複式簿記による帳簿(①現金出納帳、②売掛金、③買掛金、④経費明細書、⑤固定資産台帳)の記帳が必要となります。

白色申告のほうが簡易ですが、青色申告は帳簿をつけるわずらわしさがある一方、特別控除が10万円まで控除できる魅力があります。ただし、いわゆる「5棟10室基準」(貸家の場合5棟以上、貸室の場合10室以上を「事業的規模」といい、税務上有利になる)を満たすオーナーであれば「複式簿記」のルールに基づいて帳簿をつけ、「賃借対照表」および「損益計算書」を確定申告書に添付する義務があります。この場合、特別控除が65万円になるなどの特典があります。これらの所得と税金の申告は自分で計算することになっていますが、手数料を支払って税理士等へ依頼することも可能です。

一方で会社による不動産賃貸業の場合についても、「青色申告」か「白色申告」により法人税を申告することは、個人の所得税申告と変わりません。個人と違うのは、必要な帳簿の記載事項が多く、その帳簿の内容も個人より詳細なものが要求されることです。そこで会社の場合には、税理士等へ依頼する必要性がさらに増すことになるでしょう。

また会社は、その資本金等の規模により、後述します「均等割」という地方税が課税されます。東京都の場合は最低7万円で、赤字企業で所得がなくても課税されます。運営費用、均等割という税金の負担により、場合によっては、会社のほうが個人より費用負担が多くなるでしょう。

デメリット③ 相続開始前3年以内に会社が取得した不動産は時価評価になる

個人所有の不動産は、土地については路線価(地域の道路に面する標準的な宅地1㎡当たりの土地評価額のこと)、路線価がない地域については固定資産税評価額×倍率で、家屋については固定資産税評価額で評価することになっています。路線価は地価公示価格の8割程度、固定資産税評価額は7割程度となっていることから、これらと時価との差額について財産の価額を圧縮することができます。

一方、親族経営の未上場同族会社の株式所有者が亡くなった場合、その同族会社株式が相続財産になります。株式の評価方法については、本来相続する土地建物について相続税評価額(通常の取引額の70~80%)で評価してよいはずですが、会社が株式所有者の相続開始前3年以内に取得した土地・家屋などの不動産については、いわゆる時価(取得価格等)により評価しなければなりません。これに対して個人の場合は、不動産を取得したときに相続税評価額で評価できることになっているため、会社が不動産を取得後まもなく相続が発生すると不利になります。

デメリット④ 不動産を移転するときは、不動産取得税などの負担がある

新たに会社を設立して、現在個人で所有しているアパート、マンションやその敷地を、新会社に移転する場合には、不動産取得税や所有権移転登記をする際の登録免許税がかかります。
不動産取得税は、不動産を取得するときに1回だけ都道府県が課税する地方税です。税額の計算は下記【1】のように計算します。

【1】不動産取得税 税額=※固定資産税評価額×税率
<税率>

※宅地の場合は固定資産税評価額×1/2×税率です。

また、登録免許税の税額の計算は下記【2】を参照してください。
【2】登録免許税 税額=課税標準×税率

※平成31年3月31日までの税率です。平成31年4月1日以降は、20/1,000の税率です。このほか司法書士に登記を依頼する場合には別途手数料がかかります。

このほか、個人と会社の間で不動産売買契約書を取り交わす場合には、そこに記載された金額に応じた印紙を貼る必要があります(下記【3】参照)。

【3】印紙税(不動産売買契約書)

記載金額 印紙税額
1万円未満のもの 非課税
50万円以下のも 200円
100万円以下のもの 500円
500万円以下のもの 1,000円
1,000万円以下のもの 5,000円
5,000万円以下のもの 10,000円
1億円以下のもの 30,000円
5億円以下のもの 60,000円
10億円以下のもの 160,000円
50億円以下のもの 320,000円
50億円超のもの 480,000円
記載金額のないもの 200円

デメリット⑤ 法人所得がなくても住民税の均等割がかかる

会社の所得に対しては国税である法人税が課税されます。同様に地方税は法人税額に応じて課税されるしくみになっています。そのため会社の所得がなければ地方税はかからないのが原則です。しかし、地方税には法人所得に応じた所得割という税金の他、所得の有無にかかわらず、会社が存在するということに対して課税される「均等割」という税金があります。法人所得が赤字の年度でも毎俊必ず一定の税額を納めなければならないということです。

均等割は、次の3つの税目について定められています。

①都道府県民税・・・資本金等の金額に応じて決まります。
②市町村民税・・・資本金等の金額と従業員数に応じて決まります。
③東京都特別区の都民税・・・東京都の特別区(23区)にのみ事業所等を有する会社については、都道府県民税と市町村民税の合計額となります。

ちなみに、東京都の特別区民に会社を設立し、資本金が1,000万円以下で従業員数が50人以下の場合の均等割額は年間で7万円となっています。

法人住民税の「均等割」

※市町村民税は標準税率を記載しています。対象となる市区町村に確認してください。

デメリット⑥ 税務署の調査率が高い

所得税や法人税の申告をすると、その内容について税務調査が行われる場合はあります。
黒字の場合ほど調査が行われる頻度が高く、法人であればおおむね3~5年に一度、個人であれば7~10年に一度のサイクルで行われるようです。つまり、法人の方が調査率か高いということです。

また、近年は個人の不動産オーナーに対して税務署から「お尋ね」と称する文書を送っている例が見受けられます。これは申告した内容のうち、賃貸料や修繕費、借入金利子などの特定の項目について詳細を回答する様式になっています。

デメリット⑦ 給与を払うと社会保険の加入が必要になる

会社の場合、社長1人であっても役員報酬を支払えば社会保険に強制加入となります。支払った役員報酬の約30%(会社と役員又は従業員で折半)が社会保険料なりますので、負担は大きなものとなります。会社から役員報酬を支払う場合は、この社会保険料の負担も踏まえて節税効果があるか検討する必要があります。

会社で運営するメリットとしては個人に比べて「税率が安い」ところや将来の「相続税対策になる」ことが大きなポイントなります。ただし、ランニングコストなどを考慮すると個人運営に比べて50万円程度の節税効果がでてこないと会社化のメリットは薄いといえます。まずは、しっかりと専門家と相談しながら将来のシミュレ-ションを行ったうえで、会社設立をするかどうか検討しましょう。

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