まもなく確定申告の季節がやってきます。毎年この時期になって、本格的に節税対策を考えられる方も多いでしょう。
しかし、今年申告するのはあくまで去年の内容です。すでに終わったことなので、できる節税対策は限られています。例えば、解約返戻金の高い保険に加入する、事業用に資産や消耗品を購入する、配偶者へお給料を払う...。これらは、残念ながら遡って行うことはできません。こうして、毎年結局、特に節税対策せずに申告し、税金を払っている方もいらっしゃるのではないのでしょうか。
今回はそんな方に必見のテーマです。今年に入ってからでも遅くなく、国が制度として勧める、確実に効果のある節税対策があります。それが「青色申告特別控除」です。
「青色申告特別控除」制度の概要
この制度は、ある一定の条件を満たせば「所得」を65万円控除してくれるという制度で、言い換えると経費が65万円増えると思ってください。節税額でいうと最高で「32万5千円」です。その算定式は以下の通りです。
65万円×税率
税率は、所得税率+住民税率ということになりますので、所得に応じて、「15%~50%」となります。一番税率の低い方でも、約10万円の税金が毎年少なくなるということになります。
制度の適用条件
それでは、どういう条件を満たせば適用できるのか。それは、以下の5つになります。
(1) 青色申告を行う
(2) 複式簿記で帳簿を作成する
(3) 貸借対照表と損益計算書を、法定申告期限内に提出する
(4) 発生主義を採用する
(5) 事業的規模であること
専門用語がたくさん出てきましたね。ひとつ一つ解説していきます。
(1) 青色申告を行う
確定申告の方法は大きく分けて2つあります。白色申告というものと、青色申告というものです。このうち、青色申告を採用していないと65万円の控除を受けられません。
この2つ、どう違うのかというと、イメージとしては、白色申告は「簡易的」、青色申告は「しっかり」でしょう。このようなイメージが先行しているため、青色申告にするとすべてをさらけ出すような印象を受け、申告にするのに抵抗を感じられる方が多いようです。
しかし、実際にはそれほど提出資料は変わりません。「貸借対照表」という、資産や負債を記載したものを提出するかどうかの違いです。他にも若干の違いはありますが、それほど大きな違いはありません。
また、青色申告をしたからといって、税務署が納税者のすべてを把握できるわけではありません。白色でも青色でも税務署へ提出する資料は最終結果だけになり、税務署がその内容だけで把握できる情報範囲はとても限られています。ですので、青色申告をされていない方には、ぜひお勧めします。
次に、この青色申告の手続き方法ですが、税務署へ「青色申告承認申請書」という届出書を提出すれば OKです。
ただし、この届出書には提出期限があります。平成26年の申告(平成27年提出分)を青色申告したい場合には、平成26年の3月15日までにこの届出書を提出しなくてはいけません。
ですから、現時点でこの届出書を提出していない方は平成27年3月15日までに手続きすれば、平成27年の申告(平成28年提出分)から青色申告を行うことができます。
この届出書は1回提出すると自分からとり止めをしない限り有効で、毎年提出する必要はありません。また、今年が第1期の場合、その事業開始の日から2ヵ月以内に提出すると間に合います。年末に初めて不動産を購入された方も、まだ間に合うということになります。
(2) 複式簿記で帳簿を作成する
これは少しだけ勉強が必要です。複式簿記というのは、すべての取引を左右に分けて記載することからそう呼ばれています。
しかし、今では会計ソフト(例:弥生会計、会計王、JDLなど)がありますので、複式簿記の知識が完璧でなくても、会計ソフトへの入力さえしっかりできれば問題ありません。
また、帳簿とは「総勘定元帳」と呼ばれるものなどを指しますが、これらは会計ソフトへ入力すれば自動で作成されます。
(3) 貸借対照表と損益計算書を、法定申告期限内に提出する
貸借対照表とは、12月末時点のその事業の資産(現金や建物など)や負債(借入金や敷金など)を記載している資料です。損益計算書とは、1月~12月の利益(売上から経費を差し引く)を計算する資料です。
これらを、法定申告期限(例:平成26年の申告は平成27年3月16日まで。※通常3月15日)までに提出するということになります。
とても面倒な作業に感じられますが、会計ソフトを利用した場合、自動で集計し「貸借対照表」と「損益計算書」を印刷できますので、それほど手間のかかることではありません。
(4) 発生主義を採用する
これも難しい話ではありません。会計の世界では、売上や経費を計上するタイミングについて2つの考え方があります。それが「発生主義」と「現金主義」です。例えば、1月の家賃が2月に入金された場合、1月に計上するのを発生主義、2月の入金のタイミングで計上するのを現金主義といいます。
つまり、お金の流れとは関係なく、本来のサービスを提供した月で計上することを発生主義といいます。
(5) 事業的規模であること
最後に、不動産投資の場合、その不動産が事業的規模であるかどうか、つまりある程度大きいかどうかがポイントとなります。その基準が「5棟10室」です。一戸建てなどの独立した家屋の場合、5棟。アパートなどの共同住宅の場合10室を満たせば事業的規模とみなしてくれます。
ですので、区分所有を中心に投資されている場合、この条件を満たさない可能性があります。
なお、1戸建ては1棟=2室として換算してくれますので、マンション1棟(6室)と1戸建てを2棟持っている場合であれば、6室+2棟×2室=10室となりますので条件を満たすことになります。
そのほか、駐車場は5つで1室換算してもらえるなどのルールもあります。ただし、地域によってこのルールは異なりますので、所轄の税務署にお尋ねください。
「青色申告特別控除」制度のまとめ
以上、5つの条件を満たせば、所得から65万円を控除してもらえます。しかも、毎年です。ちなみに(2)~(5)のいずれかを満たさない場合、控除額は10万円となります。不動産の規模が小さい場合は、とりあえず青色申告するだけでも10万円の控除を受けられるので、(1)だけでも実行するようにしてください。
平成25年までは、白色申告の場合、事業所得や不動産所得の合計が300万円を超えなければ、帳簿を作成する必要はなかったのですが、平成26年からはすべての事業所得・不動産所得の方が帳簿を作成しなくてはなりません。結局、白色申告でも青色申告でもそれほど手間は変わらなくなりました。しかし、メリットは青色申告のほうがあります。ぜひ、青色申告をお勧めします。