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プロに聞く!不動産投資コラム 不動産専門税理士が教えます!知ってて役立つアパート経営ノウハウ 村岡 清樹(むらおか せいき)

第4回 『アパート・マンションオーナーのはじめての確定申告』どんなものが必要経費になるの?

2018年01月29日
年が明けますと、「確定申告」という言葉を目にしたり、耳にしたりする機会が増えてきました。アパート・マンションを個人で経営している人は1月1日から12月31日までの1年間の取引を集計してどれだけ儲かったか、またはどれだけ損をしたかを把握する決算を行い、税金の申告を行います。これが確定申告です。今回は旬のトピックスとして主に初めて不動産所得の申告を行うオーナー様向けに、是非これだけは知っておいていただきたい確定申告に係る内容をまとめました。

アパート・マンション経営を始めると確定申告が必要になる?

「住宅の賃貸を始めましたが、今まで申告したことがない会社員の私でも確定申告をしなければいけないのですか?」

こちらはアパート・マンション経営を始めたばかりのオーナー様よりよく受ける質問のひとつです。会社員の方は確定申告についてなじみがないため、言葉は知っていても内容はよく知らないというのが実際のところではないでしょうか。

個人の方が行う確定申告とは、納税者自らが1月1日~12月31日までの1年間の収入や経費、所得金額を計算し、それに対する税金を支払うための手続きです。翌年の2月16日から3月15日(土日の場合は翌月曜日)までの間に税務署に確定申告書や決算書類などの必要書類を提出して、納税または還付等をうけることにより税金の過不足の清算を行います。

(1) 確定申告の義務者とは

確定申告書の提出が必要な人は税法で定められています。例えば一般的な会社員は、会社からの給与のみが収入源である給与所得者となります。この場合は2か所以上の勤め先から給与の支払いを受けている等の税法で定める要件に合致しない限り、会社が年末調整を行うので確定申告書を提出する必要はありません。また年金受給者でも、1年間の公的年金の収入金額が400万円以下でこの年金収入のみの場合も提出の必要はありません。

一方会社員や年金受給者でアパートの所有をして貸付を行っている場合はどうでしょうか。この場合は例え給与等に係る所得は清算手続きが行われていても、不動産の貸付に係る所得の清算は行われていません。このため国は、給与所得者であれば給与所得及び退職所得以外の所得が20万円を超える場合、年金受給者であればその年の公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円を超える場合には、確定申告書を提出しなければならないと定めています。 

〈給与収入がある人で確定申告が必要なケ-ス〉

  • ・給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
  • ・給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人
  • ・給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える人
  • ※給与所得の収入金額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除及び基礎控除を除く。)を差し引いた金額が150万円以下で、更に各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円以下の人は、申告は不要です。
  • ・同族会社の役員やその親族などで、その同族会社から給与のほかに、貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人 など

つまり冒頭の質問の答えとしては、賃貸に係る所得が20万円を超えている場合には確定申告は義務となり、その追加で得た所得にかかる税金を納付しなくてはなりません。

他方所得が20万円以内であれば、確定申告の義務はありません。ただし、その住宅の賃貸に係る所得が赤字の場合には、個人の国税である所得税には損益通算という制度があり、一部収めた税金が還付されることもあります。

(2) 不動産所得とは何か

さて確定申告をすべき人がわかったところで、その基準となる所得についてもう少し詳しく説明します。

アパート・マンション経営者のその資産の貸付による収入は、税法上では不動産所得となります。気を付けていただきたいのはこの「所得」はイコール「収入」ではないという点です。不動産所得は次の算式でもとめられます。

総収入金額-必要経費=不動産所得の金額

総収入金額には、通常の家賃、地代の他、権利金、更新料、礼金等が含まれます。退出時に返却の必要がある敷金などは預かっているお金なので、含まれません。
必要経費として賃貸している不動産に係る固定資産税、管理費等です。

「所得」は「収入」から「経費」を差し引いたいわゆる「損益」にあたるものです。そのため先ほどの確定申告が必要か否かに話をもどすと、確定申告義務が生じるのは、会社員等であれば家賃収入が20万円を超えた場合ではなく、その損益が黒字で20万円を超えた場合ということなのです。

「では借入金の返済もあるし、今年の賃貸経営は赤字だから確定申告は必要ないのか。」と思われる方もいらっしゃると思いますが、その考えは早とちりです。不動産所得の必要経費には借入金の元本は含まれません。このため、現金収支上では赤字であっても所得は黒字で、確定申告が必要なケースが多々あります。

次はアパート・マンション経営での必要経費についてみていきます。

アパート・マンション経営の必要経費とは?

先ほど、借入金の元本の返済は経費にならないと述べました。これ以外にもアパート・マンション経営にあたっては、経費に計上する際に様々な注意点があります。
まず一般的な必要経費を挙げていきます。

  • ・賃貸物件についての固定資産税・都市計画税
  • ・賃貸物件の取得にかかる借入金の利息
    ※不動産所得が赤字になってしまう場合には注意が必要です。不動産所得が赤字の場合は、赤字のうち土地等を取得するために要した借入金利子部分は必要経費には算入できません。このため、まず不動産所得が黒字であるか赤字であるか所得金額を計算しなければなりませんので、原則どおり全額を必要経費に算入し、不動産所得の金額を計算して確認してください。
  • ・賃貸物件の修繕にかかった費用
  • ・賃貸物件にかかる損害保険料
  • ・理会社への集金手数料
  • ・管理会社への清掃代、修繕費等の管理費
  • ・入居者募集のための広告宣伝の費用
  • ・税理士等への報酬
  • ・立退き料
  • ・減価償却費(所有している固定資産を、長年にわたって少しずつ計上する経費)
  • ・その他の雑費(町会費・消耗品代等)

(1) 満期返戻金のある保険の支払は全額経費にできません
保険期間が10年や20年といった長期間の火災保険については、払込保険料の一部又は全部が満期返戻金として契約者に支払われるものがあるため、支払った保険料全額を経費にすることができません。保険料のうち、このような積立保険料部分を除いた部分を、且つ保険期間に按分して必要経費に算入していきます。

(2) 同居するご家族への支払は原則経費にはできません
同居しているご家族は、通常「生計を一」にしている親族です。「生計を一」とは同じ財布で生活している、生活費のやりとりがある間柄という意味です。基本的には、同じ財布の中でお金が動いただけなので、必要経費としては認めてはもらえません。※  
※第3回コラムでご紹介した「青色事業専従者」として税務署に届け出ることで必要経費に入れる方法はあります。

(3) 減価償却費の計上をマスターしましょう
続いて「減価償却費」に関する質問もよく受けますので、概要も含め少し詳しくご説明いたします。

アパート・マンションのような建物、電気設備等の建物付属設備、不動産経営をするために用意したパソコンやコピー機、プリンター等の器具備品、車両運搬具などの資産は、時の経過等に伴いその価値が減少していきます。このような資産を減価償却資産と言います。

減価償却資産は取得時に要した金額を一時に費用処理はできません。その代わりその資産の使用可能期間に応じて一定の計算方法により費用化していきます。

使用可能期間は資産ごとに法律で定められています。これを耐用年数と言います。
また費用化されたものを減価償却費と言い、アパート・マンション経営の際の必要経費としては金額的に大きなウェートを占めるケースも多いようです。新築の不動産の貸付の場合、建物の減価償却費を計上すると赤字になる場合もあります。実際にその年には現金で支出していない経費ですが、毎年この計上を忘れずに行いましょう。

また、初めて不動産所得の申告を行う人は減価償却資産の取得時に要した金額を、適正に計上する必要があります。一度計上した金額はその資産の貸付け等を継続している期間中は常に使い続けます。この金額が間違っていると費用化できる金額が少なくなる可能性もありますので、慎重に行いましょう。

建物の減価償却費がポイントになりますが、その基になる建物価格の出し方は、原則、※売買契約書に建物価格の記載があればその建物価格を基にしますが、記載がない場合は、土地・建物の固定資産税評価額の比率で案分する等で建物価格を計算する必要があります。ご自分で算出が難しい場合には、減価償却資産に関する部分のみでも専門家である税理士にお願いして算出してもらうのもよいでしょう。
※売買契約書に消費税の記載があれば、消費税は建物にかかるため下記の算式で計算できます。
建物価格=(消費税÷8%(平成26年4月1日以降の取得))+消費税

(4) 修繕費は全てを今年の経費にできないものもある
アパ-ト・マンション経営をしていくと必然的に生じてくる修繕費についても簡単に注意点をお話します。修繕費は不動産所得を算出するにあたって大きくは以下の2つに分類され、必要経費の計上の仕方が変わってきます。内容によってはその年の経費に全額入れることができないものがありますので注意が必要です。

①「修繕費」
アパート・マンション等の「事業用建物」や「その付属設備」、「構築物」「その他の資産の修繕費」のうち通常の維持管理や災害により毀損した場合の原状回復のための支出を指します。これらはその年の必要経費として全額を一括計上することができます。たとえば、次に掲げるような金額は、原則として「修繕費」に該当します。
・壊れたガラスの取替え
・雨漏りの修理
・床の毀損部分の取り替え
・外壁ひび埋め工事

②「資本的支出」
固定資産の修理や改良のための支出のうち、固定資産の価値が増加したり、耐久性が増したりする場合には、その支出(「資本的支出」といいます。)をその年だけの経費とすることは妥当ではなく、翌年以後の年分にも配分しなければなりません。「資本的支出」はその資産の取得価額に加算され、③で説明した減価償却資産を構成し、減価償却費として長期間にわたり費用化されます。

修繕費は個別に区分する必要がありますが、この区分判定が実務上非常に困難な場合にはその支出額が20万円未満であるものやその支出の周期がおおむね3年以内であるものなどは形式的基準により一括で必要経費とすることができます。たとえば、次に掲げるような金額は、原則として「資本的支出」に該当します。
・非常階段の取り付け(物理的に機能を付加)
・壁をモルタルからタイルに張替え(耐久性を増す)

確定申告のための決算書を準備しましょう

続いて確定申告に必要な「不動産所得の決算書」の作成についても簡単にお話しておきます。不動産所得がある場合、※青色申告をしている人は「所得税青色申告決算書(不動産用)」、白色申告をしている人は「収支内訳書(不動産所得用)」を作成して申告書に添付しなければなりません。決算書の用紙は、通常不動産貸付の開業届を提出すると税務署から送付されてきます。国税庁のホームページからの入手や作成も可能です。
※青色申告については第3回コラム「税金を「まけてもらえる」お得な制度!? アパート・マンション経営でおトクな青色申告とは?」をご参照ください。青色申告以外を白色申告といいます。

(1) 決算書に記入する年間の家賃収入と経費を把握しましょう
決算書には1月1日から12月31日の間に入金があった「家賃収入」や「更新料」などの収入金額や、「固定資産税」「管理手数料」等の支出金額を記載していきます。
今回は決算書作成のための主なポイントをまとめました。

■決算書作成のためのポイント■
①契約により翌月分の家賃を当月末に受け取っている場合、来年の1月分の家賃は12月に受け取りますが、この家賃収入は今年の収入にあげるのが原則的取り扱いとなります。この基準によると、個人の場合、12月末に入金された1月分の前払い賃料もその年の収入としなければいけません。しかし、次のいずれにも該当する場合は、その賃料にかかる貸付期間の経過に応じ、その年中の貸付期間に対応する部分の額をその年分の収入金額とすることができます。

  • ・不動産所得を生ずべき事業に係る取引について、帳簿書類をそろえて継続的に記帳しその記帳に基づいて不動産所得を計算していること。
  • ・不動産の賃貸料に係る収入金額について、継続してその年中の貸付期間に対応する金額をその年分の総収入金額に算入する方法により所得金額を計算し、かつ、帳簿上その賃貸料に係る前受収益及び未収収益の経理を行っていること。
  • ・1年を超える期間に係る賃貸料収入については、その前受収益及び未収収益についての明細書を確定申告書に添付していること。

②12月に入金されるべき家賃、更新料等で、12月31日に入金のないものは加算します。入金が
遅れている家賃や滞納家賃もその年の12月までに該当するものは今期の不動産収入金額になり
ます。

③12月31日までに支出があるが1月以降の経費は除外します。火災保険料のうち翌年分に対応
するものは翌年分の不動産必要経費になります。
※前払費用の額で、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った金額を継続適用してその事業年度の必要経費に算入しているときは、その支払時点で必要経費に算入することが認められます。

④12月31日までの経費であるが12月31日までに支出のないものは加算します。1月に支払う1
2月分の電気代は今期の必要経費です。

⑤減価償却費の計上
 
(2) 決算書に記載する項目について
最後に決算書に記載する項目について挙げておきます。用紙が未入手の場合でも事前に記載すべき内容を把握しておけば準備が可能です。青色申告決算書(不動産所得用)を中心に記載致しますが白色申告の場合は収支内訳書(不動産所得用)となりますが、記載内容はほとんど変わりません。

【1ページ目】
損益計算書・・・(1)の決算金額、青色申告特別控除の額を記載します。

【2ページ目】
不動産所得の収入の内訳・・・貸付の状況(ex.貸付不動産の所在地・賃借人名・賃借人)詳細を記載します。サブリース時など管理会社から送付されてきた貸付状況表を別途添付することも可能です。
給与賃金の内訳/専従者給与の内訳・・・従業員及び専従者がいる場合のみ年間の給与・賞与・源泉徴収税額を記載します。

【3ページ目】
減価償却の計算・・・各減価償却資産の減価償却費の計算を記載します。
地代家賃の内訳・・・借りている土地や建物がある場合のみ記載します。
借入金利子の内訳・・・親族からの借入金や会社からの借入金など金融機関以外の借入金の利子がある場合のみ記載します。
税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳・・・今年中に支払が確定した金額を記載します。

【4ページ目】(青色申告特別控除額65万円の適用を受ける場合
貸借対照表・・・年末時点での資産負債の状況を表したものです。青色申告特別控除の65万円を受ける場合には必ず作成しなくてはいけません。青色申告特別控除が10万円の場合は作成の必要はありません。

いかがでしたでしょうか。決算書を初めて作るのは大変かもしれませんが、決算書は1年間のアパート・マンション経営における通信簿です。現状把握のためにも是非内容を一度ご確認いただくことをお勧めいたします。

次回コラムは「平成30年度税制改正大綱発表!アパ-ト・マンションオ-ナ-に関わる税制改正の動向は?」について解説いたします。

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