建築
建設コストの高騰とその要因について 2026 第1回

~建設需要と市場動向から読み解く建設市場の現状~
建設市場は堅調な拡大が続いています。2025年度の建設投資額は75兆円を超え、受注高や手持ち工事高も過去最高水準となるなど、旺盛な建設需要が継続しています。一方で、建設費の高騰や施工体制の確保難を背景に、再開発計画の見直しや入札不調、工期延長といった事例も全国で増加しています。建設市場が拡大を続ける一方で、建設コストの上昇と施工体制の逼迫が、事業収支や開発スケジュールに大きな影響を及ぼしており、これらの動向を把握することがますます重要になっています。
今回は全2回にわたって建設コストの動向を中心に、建設市場全般について分析・考察します。本レポートでは第1回として、建設投資額や受注高、建築費指数、ゼネコンおよびサブコンの動向などから、足元の建設市場全体の状況を整理します。建設需要の拡大と施工体制の逼迫がどの程度進んでいるのかを確認します。
【サマリー】
- ● 2025年度は建設投資額、ゼネコンの受注高や手持ち工事高がいずれも高水準となり、半導体工場やデータセンター、再開発などを中心に旺盛な建設需要が顕在化しています。一方で、ゼネコン・サブコンともに受注残高が積み上がっており、建設各社の選別受注の姿勢が強まる中、発注者サイドとしては施工会社の確保がこれまで以上に重要な課題となっています。
- ● 建築費指数は過去最高水準を更新していますが、現場では労務費や資材費の上昇、工期長期化などを背景に、実際の建設費は指数以上に上昇しているとの見方もあります。こうしたコスト上昇は、再開発計画の見直しや入札不調の一因となっており、不動産市場にも大きな影響を及ぼしています。
- ● リフォーム・リニューアル市場も過去最高水準まで拡大しており、既存建物の有効活用を目的とした工事需要も高まっています。建設コストの上昇や施工体制の確保難を背景に、発注者サイドからすると新築だけでなくリニューアルやコンバージョンも有力な選択肢となっています。
Ⅰ.建設市場の動向
ⅰ.建設投資額~建設投資は80兆円時代へ、民間投資が市場を牽引~
建設投資額の推移を見ると(図表1)、足元では増加基調が継続しており、2026年度には約83兆円、2027年度には86兆円を超える見通しとなっています。特に2023年以降は増加基調が鮮明となっており、過去最高水準を更新し続けています。
2025年度の民間建設投資の内訳を見ると(図表2)、民間住宅が約22%と最も大きな割合を占めています。民間非住宅では、オフィスや物流施設、データセンターなどを中心とした企業の設備投資需要が市場を支えています。また、民間建築補修は民間非住宅を上回る規模となっており、既存建物の長寿命化や設備更新、用途変更などへの需要の高まりがうかがえます。建設コストの上昇を背景に、発注者サイドとしては、新築だけでなく既存建物の活用を前提とした投資も重要性を増していると考えられます。


出所:国土交通省「令和7年度(2025年度)建設投資額見通し」、(一財)建設経済研究所「建設経済モデルによる建設投資の見通し(2026年4月)」より当社作成
図表3において2025年度のエリア別建設投資額を見ると、関東が27.2兆円と全国最大の市場となっており、2023年度の25.1兆円から2年間で約2.1兆円増加しています。首都圏では大規模再開発やインフラ整備が継続しており、引き続き全国の建設需要を牽引しています。関東に次ぐ規模となる近畿も、2023年度の10.2兆円から2025年度には10.8兆円へ増加しています。大阪・関西万博関連事業に加え、うめきたエリアなどの大型再開発が投資拡大を支えているとみられます。また、中部も8.3兆円から8.8兆円へ増加しているほか、北海道や九州でも高い伸びがみられます。特に北海道や九州では半導体関連投資の集積が進んでおり、工場建設や関連インフラ整備が建設需要を押し上げています。

ⅱ.維持・修繕の動向~新築から既存ストック活用へ、リニューアル市場が拡大~
図表4の通り、建築物リフォーム・リニューアル調査によると、2025年度の受注高は約18.7兆円となり、前年度比19%増と大幅に増加しました。2016年度以降で最高水準となっており、リフォーム・リニューアル市場の拡大が続いています。内訳を見ると、住宅は約7.2兆円、非住宅建築物は約11.5兆円となっており、特に非住宅分野が市場全体を牽引しています。用途別では、事務所、生産施設、宿泊施設などで高い受注額を記録しており、老朽化対策に加え、省エネ化や設備更新、競争力向上を目的とした投資が活発化している状況がうかがえます。
建設コストの上昇や環境性能向上への対応が求められる中、既存建物の価値を維持・向上させながら活用する動きは重要性を増すと考えられます。建替えや新築だけではなく、リニューアルやコンバージョンを通じた既存建物の有効活用に対する需要は今後も拡大すると考えられます。

Ⅱ.建築費の動向
ⅰ.建築費指数~過去最高水準、実勢価格との乖離も拡大~
図表5を見ると、建築費指数は2016年以降一貫して上昇基調で推移しています。特に2021年以降は上昇ペースが加速しており、資材価格の高騰や労務費の上昇、人手不足などを背景に建設コストは大幅に上昇しました。
直近では前年同月比では各都市とも5~6%程度の上昇となっており、上昇ペースはやや緩やかになりつつも、建設費は引き続き切り上がりが続いている状況です。特に大阪は東京・名古屋を上回る水準で推移しており、大型再開発や旺盛な建設需要の影響がうかがえます。

出所:(一財)建設物価調査会「建設物価 建築費指数」より当社作成なお、現場では実際の新築工事費は建築費指数以上に上昇しているとの見方もあります。2025年12月に当社が実施した建築費に関するアンケートでは、この1年間でオフィスは13%、住宅(マンション)は14%上昇したとの回答が得られています(注1)。一方、建築費指数において2025年12月と2024年12月を比較すると、事務所、集合住宅ともに上昇率は5%台にとどまっており、実勢価格との間には8~9ポイント程度の乖離がみられます。
また、大規模案件では建設費の上昇や工期の長期化に伴う追加コストにより、総事業費が当初計画の1.5~2倍規模まで増加する事例もみられます。図表6の通り、近年は再開発計画の見直しや延期、入札不調に加え、計画中止や白紙撤回に至る事例も発生しており、建設コストの上昇は事業収支や開発スケジュールに影響を及ぼしています。
| プロジェクト | 延期、見送りの内容 |
|---|---|
| JR九州博多駅「空中都市計画」 | 当初435億円と見込んでいた建設費が2倍弱に膨らみ、計画が中止となった |
| 名鉄名古屋駅再開発 | 当初から総事業費が約2倍の8880億円に膨らんだ上、施工会社が確保できないことから開業時期を未定とし、計画見直し中 |
| さいたま市の大型公共工事(次世代型スポーツ施設、大型小中一貫校、義務教育学校整備事業、等) | 次世代スポーツ施設では事業費が当初52億円から132億円に膨れ入札手続きが中止に。 大型小中一貫校は、開校時期を2030年へ延期。義務教育学校の整備事業は工事入札が3回連続で不調 |
| 中野サンプラザ | 事業費が当初の2639億円から900億円増となり、施工認可申請が取り下げられ事実上の白紙撤回となった |
1 本サイト『高騰する建築費の実態と今後の見通し~当社など独自調査「建築費に関するアンケート」』2026年1月30日配信
ⅱ.建設単価~建設単価は高止まり、一部地域では東京を上回る水準も~
図表7では、「建築着工統計」より、建物種類別の単価を算出しました。各都道府県へ提出された工事予定額の合計を、工事予定床面積の合計で除したものです(注2)。
【図表7】2025年度建物種類別 予定平均面積(坪)、予定平均単価(坪/単価:万円)
| 【事務所】 | ||||||
| S造 | RC造 | SRC造 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 都道府県 | 平均面積 | 平均単価 | 平均面積 | 平均単価 | 平均面積 | 平均単価 |
| 東京 | 1,947 | 270 | 2,001 | 252 | 904 | 293 |
| 大阪 | 822 | 188 | 758 | 138 | 5,906 | 232 |
| 愛知 | 883 | 163 | 1,210 | 154 | 317 | 157 |
| 北海道 | 440 | 151 | 2,440 | 198 | 98 | 235 |
| 宮城 | 742 | 190 | 1,592 | 163 | 439 | 104 |
| 広島 | 635 | 160 | 1,730 | 128 | - | - |
| 福岡 | 1,114 | 171 | 2,389 | 170 | 100 | 172 |
| 【住宅】 | ||||||
| S造 | RC造 | SRC造 | ||||
| 都道府県 | 平均面積 | 平均単価 | 平均面積 | 平均単価 | 平均面積 | 平均単価 |
| 東京 | 249 | 136 | 1,369 | 152 | 1,219 | 130 |
| 大阪 | 233 | 111 | 3,146 | 126 | 2,025 | 103 |
| 愛知 | 161 | 113 | 2,419 | 109 | 255 | 104 |
| 北海道 | 113 | 93 | 1,322 | 103 | 386 | 78 |
| 宮城 | 169 | 96 | 3,603 | 139 | 1,168 | 158 |
| 広島 | 200 | 110 | 2,628 | 106 | 666 | 110 |
| 福岡 | 186 | 108 | 2,128 | 100 | 38 | 35 |
| 【店舗】 | ||||||
| S造 | RC造 | |||||
| 都道府県 | 平均面積 | 平均単価 | 平均面積 | 平均単価 | ||
| 東京 | 777 | 200 | 526 | 193 | ||
| 大阪 | 887 | 143 | 864 | 117 | ||
| 愛知 | 731 | 78 | 474 | 137 | ||
| 北海道 | 389 | 93 | 4,381 | 187 | ||
| 宮城 | 554 | 78 | - | - | ||
| 広島 | 761 | 80 | 1,349 | 132 | ||
| 福岡 | 1,649 | 90 | 923 | 146 | ||
| 【倉庫】 | ||||||
| S造 | RC造 | |||||
| 都道府県 | 平均面積 | 平均単価 | 平均面積 | 平均単価 | ||
| 東京 | 312 | 90 | 1,578 | 95 | ||
| 大阪 | 923 | 84 | 245 | 153 | ||
| 愛知 | 795 | 64 | 78 | 302 | ||
| 北海道 | 480 | 103 | 1,236 | 62 | ||
| 宮城 | 891 | 99 | 6,272 | 89 | ||
| 広島 | 633 | 68 | 10,842 | 92 | ||
| 福岡 | 1,120 | 65 | 11,105 | 77 | ||
| 【工場・作業場】 | ||||||
| S造 | ||||||
| 都道府県 | 平均面積 | 平均単価 | ||||
| 東京 | 1,111 | 149 | ||||
| 大阪 | 1,844 | 137 | ||||
| 愛知 | 2,056 | 123 | ||||
| 北海道 | 929 | 150 | ||||
| 宮城 | 2,118 | 186 | ||||
| 広島 | 2,363 | 104 | ||||
| 福岡 | 1,495 | 130 | ||||
建設単価を見ると、ほとんどの用途・構造において東京が最も高い水準となっており、首都圏を中心とした旺盛な建設需要や高い仕様水準が建設コストを押し上げていることがうかがえます。一方で、一部の用途では東京を上回る地域もみられます。工場・作業場(S造)では、宮城が坪186万円、北海道が坪150万円となり、東京の坪149万円を上回りました。特に北海道は2023年度以降、3年連続で東京を上回る水準となっています。背景には、ラピダスをはじめとする半導体関連投資の拡大による人手不足や、資材・設備の搬入コスト上昇などがあると考えられます。また、倉庫では愛知や大阪の単価が高い水準となっています。RC造では大阪が坪153万円となり、東京の坪95万円を上回りました。特に大阪では大型物流施設や冷蔵・冷凍倉庫の建設需要が継続していることが要因と考えられます。
2 建築着工統計は、建築基準法第15 条第一項に基づき、建築主より各建築主事へ届出がされた内容について、床面積10 ㎡超の着工工事の内容が集約・集計されたもの。都府県内の着工工事の単純平均である点に留意する必要があるほか、工事予定額の合計であるため、実際の工事費とは差異が生じている点に注意。
Ⅲ.建設業の動向
ⅰ.受注高推移~受注高は過去最高水準へ、物流・インフラ関連投資も拡大~
受注高(建築)を工事種別ごとに見ると(図表8)、2025年度は全体で約14.7兆円と、2019年度以降で最も高い水準となっています。前年度からは約17%増加しており、建設需要が一段と拡大している状況が確認できます。種別では、事務所・庁舎が約4兆円と最も大きく、前年から大幅に増加しています。都心部の再開発や庁舎等の公共施設整備が受注高を押し上げているとみられます。次いで、工場・発電所も約2.5兆円と高水準を維持しており、製造業の設備投資や半導体関連投資などが建設需要を支えていると考えられます。
また、住宅も2兆円を超え、2021年度以降の拡大基調が続いています。加えて、宿泊施設や倉庫・流通施設も前年から増加しており、インバウンド需要の回復や物流需要の底堅さが反映されているとみられます。

発注者別(民間・建築)に見ると(図表9)、2025年度は幅広い業種からの受注高が増加しました。特に運輸業が前年比169%増、電気・ガス・熱供給・水道業が同148%増、金融・保険業が同116%増と高い伸びを示しています。金額面では、不動産業が約4.2兆円(同21%増)と最も大きく、再開発や大型複合開発などが受注高を支えています。また、製造業は約3.4兆円(同16%増)、サービス業は約3兆円(同33%増)となっており、工場や研究開発施設、宿泊施設などを含む投資需要の拡大がうかがえます。一方で、農林漁業のみが前年比55%減となりましたが、市場全体に占める割合は小さく影響は限定的です。

ⅱ.ゼネコンの手持ち工事高、月数~工事量は過去最高、ゼネコンの選別受注が進行~
図表10の手持ち工事高(注3)の推移を見ると、2025年度は約29兆円となり、前年度から約16%増加しました。2015年度以降で最も高い水準となっており、建設会社が抱える工事量は一段と積み上がっています。また、手持ち工事月数(注4)も2025年度は19.13か月となり、過去最高水準となりました。受注残高の積み上がりが続いており、施工余力の逼迫がうかがえます。こうした中、ゼネコン各社では採算性や施工条件を重視した受注姿勢を強めています。発注者にとっては、建設費だけでなく、施工会社の選定や事業スケジュールを含めた計画立案がこれまで以上に重要な局面を迎えているといえます。

3 ゼネコンが受注済みで、まだ完成・引渡しが完了していない工事の残高。
4 現在の施工ペースを前提とした場合、手持ち工事を完了するまでに必要な月数。数値が大きいほど工事量が積み上がっている状態を示す。
ⅲ.サブコンの動向~旺盛な設備需要を背景に施工能力が逼迫~
図表11の通り、サブコン(注5)3業種(電気・管・計装)の受注高・手持ち工事高は、いずれも増加傾向が続いています。2025年度の受注高は、電気工事が約2.6兆円(前年度比15%増)、管工事が約2.3兆円(同26%増)、計装工事が約0.5兆円(同17%増)となりました。また、手持ち工事高も電気工事が約2.2兆円(同26%増)、管工事が約2.3兆円(同23%増)、計装工事が約0.3兆円(同9%増)と、いずれも過去最高水準を更新しています。

特に電気設備分野では、半導体工場やデータセンター、大規模再開発などの案件が全国で同時進行していることから、施工余力は極めて逼迫した状況にあります。近年はゼネコンよりも電気設備会社の確保が難しいケースも増えており、サブコン不足を背景に工期延長や着工時期の見直しが発生する事例もみられます。
こうした状況を受け、施工余力そのものを確保する動きも広がっています。2025年には大手住宅メーカーによる大手電気設備会社へのTOBが発表されるなど、旺盛な設備需要に対応するため、専門工事会社をグループ内に取り込む動きがみられます。また、大手建設会社による専門工事会社の買収や子会社化も増加しており、施工体制の確保が重要な経営課題となっています。
サブコン不足は建設市場における大きな制約要因の一つとなっています。サブコン各社も採算性や施工条件を重視した選別受注の傾向を強めており、案件によっては工事費以上に施工体制を確保できるかどうかが事業実現の重要な課題となっています。
5 サブ・コンストラクターの略。ゼネコンから主に設備関連の工事を請け負う企業のこと。電気工事や空調等専門分野の工事を担当。
Ⅳ.まとめ
2025年度の建設市場は、建設投資額、受注高、手持ち工事高のいずれも高水準となっており、建設需要の強さが継続しています。特に半導体関連投資やデータセンター開発、都市部の再開発、物流施設投資などが市場を牽引しており、民間主導で建設市場の拡大が続いています。
建設需要の拡大を背景に、建築費指数は過去最高水準を更新しているほか、実際の新築工事費は指数以上のペースで上昇しているとの見方もあります。さらに、ゼネコンの手持ち工事高や手持ち工事月数は過去最高水準に達しており、施工余力の逼迫が一段と強まっています。特に設備工事を担うサブコンでは、受注高・手持ち工事高ともに大幅な増加が続いています。半導体工場やデータセンターなどを背景に電気設備分野の需給は極めて逼迫しており、設備業者を確保できないことによる工期延長や着工延期も発生しています。大手企業による設備工事会社の買収やグループ化が進んでいることからも、施工体制の確保が建設業界全体の重要課題となっていることがうかがえます。
また、リフォーム・リニューアル市場も過去最高水準まで拡大しており、新築だけでなく既存建物の有効活用に対する需要も高まっています。建設コストの上昇や施工会社の確保難を背景に、建替え以外の選択肢として、リニューアルやコンバージョンを活用した既存ストックの再生は今後さらに重要性を増していくと考えられます。
このように、建設市場は引き続き活況を呈している一方で、建設コストの上昇と施工体制の確保が大きな課題となっています。新築や建替え、売却、活用を検討する際には、建設費だけでなく施工会社の確保や事業スケジュールを含めた総合的な判断がこれまで以上に重要な局面を迎えているといえるでしょう。
第2回では、建設コスト上昇の要因について、労務費と資材費の2つの観点から詳しく確認します。近年の建設費高騰の背景を整理するとともに、今後の建設コストの見通しについて考察します。
提供:リサーチ・コンサルティング部 リサーチ課
長谷山 大樹:宅地建物取引士/不動産証券化協会認定マスター
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