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収益用不動産の取引実態と利回りの動向(2025年度下期)

~当社取引データに基づく東京・収益用不動産市場の最新トレンド~
国内の収益用不動産市場は、都心部を中心とした安定した需要に支えられ、引き続き底堅く推移しています。これに対し、金利上昇や融資環境の厳格化、建築コストの高騰といった外部環境の変化が、投資環境に影響を及ぼしています。
本レポートでは、当社取引実績(注1)をもとに、2025年度下期における収益用不動産の取引動向および利回りの変化について整理します。
【サマリー】
- ● 2025年度下期の取引数は前年同期比でやや減少したものの、全体としては高水準を維持しています。特にホテルは大きく伸長する一方、オフィスは減少するなどアセット別で差が見られました。
- ● 融資条件の厳格化などにより、一般投資家や中小事業法人では投資判断の慎重化が見られる一方、富裕層は潤沢な自己資金を背景に相対的に安定した投資行動を維持しています。
- ● 都心部を中心とした強い需要に加え、新築供給の制約も重なり、収益用不動産の価格および資産性は引き続き底堅く推移しています。また、建築費高騰や開発難易度の上昇を背景に、都心の好立地における築浅物件の希少性は今後さらに高まると想定されます。
- ● 当社における2025年度下期の収益用不動産の取引利回りは以下の通りとなりました。
-
- ・ 東京都心6区・オフィスのNOI利回りは低下。
- ・ 東京都心6区・賃貸住宅のNOI利回りは上昇。
- ・ 東京城南・賃貸住宅のNOI利回りは上昇。
- ・ 東京城西・城北・賃貸住宅のNOI利回りは概ね横ばい
- ・ 東京城東・賃貸住宅のNOI利回りは横ばい。
1 本稿では当社法人営業本部およびパートナー営業本部ウェルスマネジメント一・二部が取り扱う収益用不動産が対象
Ⅰ.取引数と市場環境
ⅰ.取引数の推移~取引数は高水準、ホテル伸長などアセット別で差が見られる~
図表1は、当社取り扱いの収益用不動産(以下「当社データ」)における取引数を指数化したものです(2019年度上期=100)。
2025年度下期は、4アセット合計で前年同期比約▲2.6%とやや減少したものの、指数は125と高水準を維持しており、全体として底堅く推移しています。一方、アセット別では差が見られ、ホテルは倍増した一方、オフィスは同約▲30%と、減少しました。
出所:当社データ。以下出所の記載がない図表すべて賃貸住宅については、継続的に安定した取引が確認されています。足元では賃料が上昇基調で推移しており、主要エリアを中心に賃料改定や新規募集賃料の引き上げが進んでいる状況です。加えて、住宅需要の底堅さを背景に高い稼働率が維持されており、単身世帯の増加や都市部への人口集積といった構造的な需要が、空室リスクの低さにつながっています。こうした賃料上昇と高稼働を背景に、金利や投資条件に対する慎重な見方が広がる中でも、安定収益が見込める投資対象として選ばれやすい状況にあります。
ホテルはインバウンド需要の拡大を背景に宿泊需要が増加しており、都市部を中心に高稼働が定着するとともに、客室単価の上昇も進んでいます。稼働率は既に高水準に達していることから大幅な上積みは限定的ですが、単価や付加価値による収益性向上が重視される局面にあります。これに加えて、インフレ環境下における価格転嫁力が意識され、投資資金の流入が続き、取引の拡大につながっている状況といえるでしょう。
ⅱ.市場・資金環境~資金調達環境および供給環境の変化が顕在化~
足元の収益用不動産市場は、都心部を中心に取引は引き続き活発であり、安定した需要が維持されています。賃料上昇や高稼働を背景に収益見通しの改善が意識されていることに加え、インフレ環境下における資産保全ニーズの高まりが投資需要を下支えしています。
また、相続対策や資産分散、事業承継を目的とした取得ニーズも継続しており、投資主体の多様化が進んでいます。特に富裕層を中心に、不動産を長期保有可能な資産として位置付ける動きが継続しており、市場全体として一定の底堅さが確認されます。
さらに、用途転換やバリューアップによる収益改善余地を見込んだ投資も見られており、単純な利回り水準のみを重視する投資から、賃料上昇余地や運用力を踏まえた収益最大化を志向する投資へのシフトが進んでいます。このような動きは、特に賃貸住宅やホテルといった賃料成長余地を見込みやすいアセットにおいて顕著に見られます。
一方で資金環境においては、金利上昇を背景に金融機関の融資姿勢が厳格化しておりますが、富裕層向けの融資は依然として堅調といえます。図表2では、顧客ごとの資金調達環境について整理しました。収益用不動産を扱う当社営業社員の生の声を抜粋したもので、足元の資金調達環境を探る上で参考になる資料です。
| 富裕層 |
|
|---|---|
| 一般投資家 |
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| 中小事業法人 |
|
| 不動産業者 |
|
一般投資家や中小事業法人においては、自己資金比率の引き上げや物件評価の厳格化により資金調達条件が厳しくなっており、投資判断の慎重化が進んでいます。また、株式市場の上昇を背景に、投資資金の一部を株式へ振り向ける動きも確認されます。不動産業者は、建築コスト上昇と金利上昇で仕入れや開発の採算性が悪化し、選別と縮小が進んでいます。
これに対し、富裕層については資産運用や承継対策、買換え特例の活用といった多様な目的から投資意欲は引き続き堅調に推移しており、資金環境の変化の影響は限定的です。金融機関の評価厳格化により融資額が減少するケースは一部で見られるものの、自己資金で補完可能であるため、他の投資主体と比較して資金制約を受けにくく、結果として市場における優位性が維持されています。
Ⅱ.利回り推移と取引事例
ⅰ.オフィス(都心6区)~自社利用併用の投資取得ニーズが活況 NOI利回りはやや低下~
図表3は、都心6区(注2)のオフィスについて、当社データにおけるNOI利回り(注3)と築年数の平均値を示したものです。東京都心6区のオフィスは、2021年度に入るとオフィスへの投資需要の回復とともにNOI利回りが低下し、2022年度以降はコロナ禍前よりも低い水準を維持しました。2024年度も低下が続きましたが、2025年度上期は反転しました。
2025年度下期においては、NOI利回りは再度低下し、3%台前半となりました。なお、2025年度上期には平均築年数がやや低下していますが、これは築30年代後半以降の取引が例年と比較してやや少なかったことが理由としてあげられます。
個別の取引をみると、築年40年を超えるビルについてもバリューアップ及び賃料のアップサイドを見込んだとされる不動産業者の取得が見られます。また、一般事業法人による自社利用と中期的な運用を併用した投資も確認できました。特に本社近接エリアでの追加取得が複数件あり、エリアを重視したニーズが顕在化しています。さらに、外資系企業による好立地オフィスの取得も見られ、賃料上昇余地を見込んだ投資と考えられます。
以上を踏まえると、2025年度下期のNOI利回りはやや低下している状況と判断できます。

<取引事例>
本エリアでは、一般事業法人による取得がありました。同社は飲食店を運営する企業であり、既存店舗が再開発に伴い立退きとなったことから、本社近接にて代替物件を検討していました。当該案件は、同社の希望する本社近隣に所在していたことに加え、低層階の店舗部分が空いており移転が可能であった点、さらに上層階の事務所フロアにおいて一部自己利用が可能な空室が確保できる状況であったことから、取得の判断にいたりました。築年数は30年を超えていますが、駅徒歩3分と利便性および視認性に優れた立地であり、資産性も評価されたものと考えられます。取得時のNOI利回り(満室想定)は3%台前半の水準でした。
2 都心6区:千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、文京区/城南:品川区、目黒区、大田区、世田谷区/城東:台東区、墨田区、江東区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区/城西・城北:中野区、杉並区、練馬区、豊島区、北区、板橋区
3 想定利回り
ⅱ.賃貸住宅(東京都区部)
(Ⅰ)都心6区~利回りは上昇、土地面積の小型化が進行~
図表4は、都心6区の賃貸住宅について、当社データにおけるNOI利回りと築年数の平均値を示したものです。都心6区の賃貸住宅のNOI利回りは中長期的に低下基調で推移しており、2024年度には3%台前半、2025年度上期にはさらに2%台後半の水準まで低下しました。
2025年度下期においては、NOI利回りは再び3%台前半の水準までやや上昇しましたが、依然として低い水準にあり、都心の賃貸住宅に対する投資需要の強さは継続している状況です。
個別の取引をみると、新宿区および文京区での取引が目立っており、エリアに偏りが見られます。また、築年別では築30年超の取引が限定的である一方、築10年以内の取引が過半を占めており、築浅物件への選好がさらに強まったといえます。加えて、土地面積の小規模化が見られ、平均値は集計開始以来最も低い水準となりました。30坪未満の取引も確認されており、積算評価が得にくい条件であっても、都心立地を重視する投資行動が一部で見られます。
以上を踏まえると、2025年度下期におけるNOI利回りの動向は上昇と判断されます。

<取引事例>
本エリアでは、相続対策を背景とした取得が確認されました。関西圏に拠点を持つ医療法人の理事長による購入相談であり、拠点周辺または都内23区内において安定収益が見込める物件が求められていました。当該案件は、都心の高級住宅地として人気が高いエリアに所在する築後3年以内の物件でした。土地面積は100坪超と規模を有しており、積算評価も確保されていることから、資産性と収益性が期待できます。取得時のNOI利回りは約3%です。また、同社では今後も同様の条件下での継続的な取得意向も確認されています。
(Ⅱ)城南~利回りは上昇に転じる中、立地および築年条件の良い物件への集中が顕著~
図表5は、城南エリアの賃貸住宅について、当社データにおけるNOI利回りと築年数の平均値を示したものです。城南エリアの賃貸住宅のNOI利回りは中期的に低下基調で推移しており、2025年度上期には3%台前半まで低下しました。
2025年度下期においては、NOI利回りは3%台半ばまで上昇しており、2半期ぶりに上昇に転じています。築年数の動向を見ると、平均築年数は4年台と低水準で、当該期間においては比較的築浅物件の取引が中心となるなど、前期から取引構成に変化が見られます。
個別の取引をみると、築10年以内の取引が大半を占めました。また、駅徒歩5分以内の物件が多数を占めており、立地条件の良い物件に取引が集中しています。エリア別では目黒区の取引がやや多いものの、城南エリア全体で広く取引が確認できました。
以上を踏まえると、2025年度下期の城南エリアにおけるNOI利回りの動向は上昇と判断されます。

<取引事例>
本エリアでは、宅建業者による取得がありました。当該案件は同社の主たる投資エリアではないものの、駅徒歩10分圏内の築浅賃貸住宅を3%台前半の水準で取得しています。足元の収益確保を主目的とするものではなく、賃料改定やリーシング条件の改善といったアップサイドを見込んだ投資といえます。中長期的な保有を前提とした投資行動の一例と位置づけられます。
(Ⅲ)城西・城北~利回りは横ばい圏で推移、城西への集中と平均築年数の高さが特徴~
図表6は、城西・城北エリアの賃貸住宅について、当社データにおけるNOI利回りと築年数の平均値を示したものです。NOI利回りは中期的には低下基調で推移しており、足元では4%前後の水準で推移しています。2025年度上期は4%を下回る水準まで低下しました。
2025年度下期においては、NOI利回りは4%を上回る水準まで上昇しており、2半期ぶりに上昇に転じています。築年数の動向を見ると、平均築年数は20年前後と比較的高い水準で推移しており、都心6区や城南と比べ、築年の経過した物件の取引が目立ちます。
個別の取引をみると、築30年を超える案件が複数確認できました。また、エリア別では城北の取引は限定的であり、多くが城西エリアに集中する傾向が見られます。
以上を踏まえると、2025年度下期の城西・城北エリアにおけるNOI利回りは、横ばいと判断されます。

<取引事例>
本エリアでは、東海圏に居住する個人による取得がありました。自己居住と投資を兼ねた目的であり、進学したお子様の居住用として一定の広さを有する空室住戸を確保しつつ、残りの住戸を賃貸収益として運用する前提での取得です。取得対象は、人気の路線沿いに所在する駅徒歩10分程度の築浅賃貸住宅であり、既に賃貸中の住戸を一定割合含む物件です。満室想定のNOI利回りは3%台前半でした。
(Ⅳ)城東~利回りは横ばい、取引はエリア全体に分散し築年数は二極化~
図表7は、城東エリアの賃貸住宅について、NOI利回りと築年数の推移を示したものです。NOI利回りは中期的には低下傾向で推移しつつも、城南や都心6区と比較してやや高い水準で推移している点が特徴です。2025年度上期には4%まで低下しました。
2025年度下期においては、NOI利回りは4%をやや上回り、2半期ぶりに上昇に転じました。前期は台東区および江東区に取引が集約されていましたが、今期は城東エリア内の各区において幅広く取引が確認されており、特定のエリアに偏らず需要が分散しています。また、築年数の動向を見ると、城東エリアでは築30年超と築10年以内の物件に取引が分かれる傾向が見られ、築年の分布に二極化が確認されます。
以上を踏まえると、2025年度下期の城東エリアにおけるNOI利回りは、横ばいと判断されます。

<取引事例>
本エリアでは、外資系投資会社による取得がありました。同社は従来より日本国内において不動産投資を行っており、特に都心エリアを中心に、民泊やSOHOへの用途転換が可能な物件への投資を進めています。当該取引は、観光客の集積する好立地に所在する築浅の賃貸住宅、NOI利回りは約3%強でした。同社は当該物件を民泊へ転用し、運営する方針です。
Ⅲ.まとめ
以上、2025年度下期の当社収益用不動産取引においては、金利上昇や融資環境の厳格化といった金融要因を背景に、利回りが緩やかな上昇に転じる動きが見られました。特に融資の厳格化により、一般投資家や中小事業法人を中心に投資行動の慎重化が見られます。一方で、富裕層については潤沢な自己資金を背景に相対的に安定した投資活動を維持しており、引き続き市場における主要な買主層として価格の下支え要因となっています。
こうした環境下においても、都心部を中心とした人口集積や資産性の高さを背景に、収益用不動産に対する需要は引き続き高い水準で維持されています。賃料上昇や高稼働を背景とした収益見通しの改善も、投資需要の継続を支える要因となっています。加えて、建築費高騰や不動産業者への融資厳格化などによる開発難易度の上昇を背景に、新築物件の供給は限定的な状況が続いており、今後も供給面での制約が継続することが見込まれます。これにより、特に立地に優れた築浅物件については希少性が一層高まり、資産性の観点から評価が強まっていく可能性があります。
需要の底堅さや供給制約などから、東京都内における収益用不動産の価格および資産性は引き続き堅調に推移するものと考えられます。
提供:リサーチ・コンサルティング部 リサーチ課
長谷山 大樹:宅地建物取引士/不動産証券化協会認定マスター
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