【Special Interview】人とロボットの共働が生む生産性向上と働き方改革

【Special Interview】人とロボットの共働が生む生産性向上と働き方改革

野村不動産ソリューションズ株式会社
常務執行役員 原田 真治(左)

建ロボテック株式会社
代表取締役社長 眞部 達也氏(右)

現在、日本の建設業界は、かつてない労働力不足と建築費高騰という複合的な課題に直面しています。こうした中で注目されているのが、建設現場における「ロボット技術の導入」です。建設ロボットは人手不足の解消だけでなく「施工の安全性」や「品質の均一化」、さらには「働き方改革」にもつながる可能性を秘めています。
今回は、鉄筋結束ロボット「トモロボ」など、建設ロボットの開発・実装において国内トップランナーである建ロボテック株式会社の代表取締役・眞部達也氏に話を伺いました。人とテクノロジーが共存する施工現場の実現は、業界にどのような変革をもたらすのでしょうか。

本記事では前編・後編の2回にわたり、建設ロボットがもたらす現場革新の可能性について、野村不動産ソリューションズの原田真治が詳しく聞いていきたいと思います。

※本記事は2025年12月時点の情報をもとに執筆しています。

202601_06_image01.jpg▲建ロボテック開発の「鉄筋結束トモロボ」
外形寸法(幅/奥行/高さ)63~93(可変式)×69×60(脱着式センサーは含まない)cm
重量38.5㎏
202601_06_image02.jpg▲鉄筋結束作業を「結束トモロボ」が自動化

若者が離れる建設現場の危機的現状

202601_06_image03.jpg左:インタビュアーを務めた原田 真治

原田 建設業界は現在、労働力不足や建築費高騰といった複合的な課題に直面しています。特に技能労働者の高齢化が進む一方で、若年層の入職者が減少し、現場の維持すら危ぶまれる状況です。

※アンケート調査:不動産開発・建設全103社 建築コストに関するアンケート ~ディベロッパー・ゼネコンそれぞれの高騰への対策と新築工事費の水準~(2025年3月5日配信)

実際に現場を知る眞部社長から見て、若者が建設業界に入りにくくなっている要因はどこにあるとお考えですか?

眞部 一つに、屋外作業時の環境面の問題があると思います。私も33歳まで鉄筋職人として働いていたためよくわかるのですが、夏の暑さや冬の寒さは想像以上に体にこたえます。先輩方が一生懸命働いている手前、休憩もままなりません。時給に換算して「空調の効いたコンビニエンスストアで働いたほうが割が良い」と感じたこともあります。職業の選択肢が増えた今、若い世代が「厳しいというイメージ」の建設業をあえて選ぶには、ハードルが高いのかもしれません。

原田 ご家族が心配されるケースも増えていると聞きます。

202601_06_image04.jpgインタビューに答える 眞部 達也氏

眞部 おっしゃるとおりです。私たちが経営する鉄筋工事会社でも、ご家族のご心配を理由に実際に内定辞退となるケースがありました。一方で、教育体制が整った大手建設業の求人に、高校生の応募者が殺到した事例もあります。つまり、建設業そのものが敬遠されているわけではないのです。若者が不安を感じているのは、おそらく「自分がその会社に入って、どのように成長していけるか」というキャリアパスが見えにくいことや、体力勝負のイメージではないでしょうか。

原田 今はかなり改善されてきていると聞きますが、かつては休日返上で働かなくてはならない場合もあるなど、そうしたイメージが残ってしまっている面もありますね。

眞部 私は職人時代、子どもの運動会などの行事に、一度も参加できませんでした。また、体への負担も課題です。鉄筋職人として平均2トンの鉄筋を毎日肩に担いで運んでいたため、首や腰に負担がかかりました。私だけではなく、多くの職人さんが同じ悩みを抱えています。ある意味、職業病のようなものかもしれません。このような身体的な負担を軽減し、長く安心して働ける環境を次の世代に届けたいと、強く感じています。

「結束が最も負担が大きい作業だった」トモロボ開発の原点

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原田 眞部社長は、碁盤の目のようにひいた鉄筋を結束する「鉄筋結束トモロボ(以下、トモロボ)」を開発されましたが、そのトモロボの開発に至る背景や、当初の思いをお聞かせください。

202601_06_image06.jpg▲「結束トモロボ」作業イメージ

眞部 よく聞かれるのですが、開発の一番の理由は「私にとって一番負担の大きい作業が結束だったから」です(笑)。結束作業は同じ動作の繰り返しで単調なうえに、しゃがむので体勢的にも辛い。1日1万回以上も続けるのは、私にとっては苦行でしかありません。「この作業を人がやり続ける意味はあるのだろうか」という疑問が、常に頭の中にありました。定型的な作業はロボットに任せ、人間は高度な技術や知識、判断が求められる作業に集中したら良いのでは。トモロボは、そういう「人とロボットの共働」を実現するために生まれました。

原田 働き方改革で、労働時間や日数が減ることへの対策もあったのでしょうか。

眞部 確かに休日は増えるのですが、それだけでは解決しない課題もあります。職人の中には日給制や出来高制の方も多く、鉄筋なら「何キロ組んだか」、型枠なら「何平米施工したか」が収入に直結します。休日が増えると、収入が減ってしまう人もいるのです。

原田 生活を考えると手放しでは喜べないということですね。

眞部 そのとおりです。収入が下がれば、離職につながりかねません。だからこそロボットで生産性を上げて、休日が増えても収入を維持・向上できる仕組みを作る必要があります。私は2013年に建ロボテックの前身となる会社を立ち上げ、省力化できる部材や資材の開発を始めました。本格的なロボット開発に乗り出したのは2016年です。「労働力の代替を作らなければ根本的な解決にはならない」という危機感が、強い原動力になりました。

「建設現場は田んぼの端っこ」自動化を阻む課題

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原田 私がよく疑問に思うのは、「なぜ、建設業はイノベーションが進みにくいのか」ということです。農業では田植え機やトラクターが何十年も前から普及していますし、製造業もオートメーション化が進んでいます。

眞部 回答としては、農業でいう「田んぼの端っこ」というたとえがわかりやすいかもしれません。四角く整備された田んぼの中央部分は機械で効率よく作業できますが、「端っこ」にあたる隅のほうには機械が入りにくいのです。建設現場は、この「田んぼの端っこ」が集まったり、段差もあったりと、ロボットを動かすには難度が高い状況もあります。

もう一つ、製造業とも決定的な違いがあります。自動車工場ではボルトの向き一つに至るまで、すべてが全自動化を前提にデザインされています。作業工程から逆算して設計されているのです。一方、建設業界では設計と施工が分かれており、設計者は美しさや顧客満足を、構造設計者は安全性を追求します。「いかに効率的に施工するか」「ロボットが動きやすいか」という視点は、設計段階には組み込まれていません。これは業界の構造的な特性であり、イノベーションを阻んできた要因の一つだと考えています。

バブル崩壊で止まっていた建設イノベーションの再始動

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原田 私が社会人になった1990年頃には、プレキャストコンクリートやロボット化など、工場生産的な動きが注目されていました。しかし、バブル崩壊とともに、その流れが止まってしまった記憶があります。

眞部 バブル崩壊後は建設需要が激減し、コストダウンが最優先課題となりました。その結果、「高い機械を入れるより、人にやらせたほうが安い」という判断が定着してしまった印象があります。当時の自動化技術は莫大なコストがかかる大掛かりなものだったため、「まずは目の前のコストを抑えよう」という判断が優先されたのだと思います。同じ規格のものを量産するならともかく、個別対応が必須の建設現場では、当時の技術では費用対効果が見合わなかったのでしょう。だからこそ私たちは今、個別対応の中でも共通化できる部分を見極め、汎用性のある作業から自動化を進めようとしています。

原田 30数年前に折角進みかけた合理化の流れが、進まなかったのは残念に思いますが、業界特有の慎重さといいますか、変化より前例踏襲のような潮流が関係しているのでしょうか。

眞部 そうですね。建設現場では安全性が最優先ですから、「昨日うまくいった方法を、今日も明日も続ける」という姿勢には合理性があります。ただ、昨年だけでも建設作業員が全国で約8,000人減少している現実を踏まえると、従来の方法だけでは立ち行かなくなるのも事実です。
この1年で、現場の空気は確実に変わってきました。これまでは、確かに効率化への取り組みが広がりにくい面もありました。しかし、今は「楽をして生産性を上げることが、働くみんなの幸せにつながる」という考え方が広まりつつあります。実際に、我々の技術を使って検証してみたいという企業の声も増えてきており、業界全体が前向きに動き出していることを実感しています。

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建設現場の職人を取り巻く過酷な状況と、そこから生まれた「トモロボ」。バブル崩壊後の「失われた30年」を経て、ようやく動き出した建設DXの波は、業界をどう変えていくのでしょうか。後編では、建設ロボットの現状として海外との比較、日本における課題、建設ロボットが導く未来について、さらに深く掘り下げていきます。

提供:法人営業本部 リサーチ・コンサルティング部

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