建設コストの高騰とその要因について 2026 第2回

建設コストの高騰とその要因について 2026 第2回

~人手不足と資材高騰がもたらす建設コストの上昇~

建設コストは、資材価格の上昇や人手不足を背景に高い水準が続いています。近年は労務費の上昇が継続しているほか、設備機器の長納期化や資材の供給制約も顕在化しており、建設費だけでなく工期にも影響を及ぼしています。
特に2026年に入ってからは、中東情勢の緊迫化による原材料価格や物流コストへの影響に加え、接着剤不足や設備機器の長納期化など、建設資材の調達環境にも新たな変化がみられます。こうした動きは建設コストの上昇要因となるだけでなく、事業計画や工期にも影響を与える可能性があります。
第2回(最終)となる本レポートでは、労務費、資材費、設備工事費の動向に加え、中東情勢が建設資材市場へ与える影響について整理します。


【サマリー】

  • ● 2026年度の公共工事設計労務単価は全国平均で25,834円となり、10年間で約46%上昇しました。建設業就業者数の減少や高齢化が続く中、建設躯体工事従事者の有効求人倍率は約7.5倍と高水準で推移しており、人手不足を背景とした労務費上昇圧力は今後も継続すると考えられます。
  • ● 合板や鋼材は2025年まで続いた価格調整局面から再び上昇に転じつつあります。特に合板では中東情勢の影響を受けた接着剤不足による供給制約が発生しており、鋼材でも原材料価格やエネルギーコストの上昇が価格を押し上げています。生コンクリートも需要が弱含みで推移する中にありながら、セメントや骨材などの原材料価格、燃料費や人件費などの価格転嫁による値上げが続いており、主要建設資材の中で最も強い上昇圧力がみられます。
  • ● 設備工事では、受変電設備や非常用発電機、盤類などを中心に長納期化が常態化しており、設備機器価格も大幅に上昇しています。また、中東情勢の緊迫化により、防水材や塗料、断熱材、樹脂配管など幅広い建築資材で価格改定や納期遅延が発生しています。建設コストの上昇だけでなく、工期や資材調達リスクへの対応もこれまで以上に重要となっています。

Ⅰ.労務費の動向

ⅰ.公共工事設計労務単価~人手不足を背景に労務費は過去最高水準へ~

建設コストを押し上げる大きな要因の一つが労務費の上昇です。2026年度における公共工事設計労務単価の全国全職種平均は、25,834円となり、10年間で約46%上昇しました(図表1)。本単価は2013年以降右肩上がりが続いており、2026年度も過去最高水準を更新しています。

【図表1】公共工事設計労務単価 全国平均推移
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図表2で職種別に見ると、多くの技能職で日額3万円を超える水準となっており、労務単価は全国的に上昇が続いていることが確認できます。また、交通誘導員など現場運営を支える職種においても上昇がみられ、人手不足の影響は幅広い職種に及んでいます。
地域別では、東京が総じて高い水準にあるものの、愛知や大阪でも一部職種で東京を上回る水準となっています。半導体工場やデータセンター、再開発などの大型プロジェクトが各地で進む中、技能労働者の確保競争が全国的に広がっていることがうかがえます。

【図表2】主要12職種平均価格推移・主要都府県別内訳出所:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」より当社作成
職種 全国 東京都 愛知県 大阪府
2026年 前年比 2026年 前年比 2026年 前年比 2026年 前年比
特殊作業員 28,111 4.0% 30,700 2.7% 29,800 2.1% 27,800 1.5%
普通作業員 23,605 2.9% 27,000 0.7% 25,200 1.6% 23,800 2.1%
軽作業員 18,605 2.6% 18,700 1.1% 19,400 1.6% 16,500 1.2%
とび工 30,780 3.5% 33,100 0.6% 32,400 1.6% 29,600 0.7%
鉄筋工 31,267 4.0% 33,800 3.7% 31,000 2.0% 29,000 0.7%
運転手(特殊) 29,442 4.8% 31,100 2.0% 30,600 3.7% 27,900 2.2%
運転手(一般) 25,275 2.7% 25,600 0.8% 27,200 1.9% 24,100 1.7%
型わく工 31,671 4.8% 33,000 4.1% 34,400 6.8% 33,400 6.0%
大工 30,331 4.5% 30,600 0.7% 34,000 1.8% 29,300 0.7%
左官 30,508 3.9% 33,800 2.4% 31,100 6.5% 30,100 5.6%
交通誘導員A 18,911 5.5% 20,500 1.5% 22,400 7.2% 18,200 4.6%
交通誘導員B 16,749 6.3% 18,700 6.3% 17,800 3.5% 15,900 6.0%

また、2025年12月には中央建設業審議会が「労務費に関する基準」を作成・勧告しました。これにより、著しく低い労務費を前提とした見積りや契約は難しくなり、技能労働者への適正な賃金確保が一段と求められることとなりました。発注者・受注者双方が適正な労務費水準を参照できる環境が整備された(注1)ことで、労務費に関する情報の非対称性は縮小しつつあります。
今後は公共工事だけでなく民間工事においても適正な労務費の確保が進むとみられ、労務費上昇分の価格転嫁も進みやすくなると考えられます。特に型わく工や鉄筋工、とび工、大工などの労働集約的な職種では、労務単価の上昇が建設コストに反映されやすく、建設費全体をさらに押し上げる要因の一つになると考えられます。


1 国土交通省「労務費の基準に関するポータルサイト

ⅱ.人手不足と担い手不足の現状~就業者減少と高齢化が進み、人材確保が課題に~

労務費上昇の背景には、建設業における構造的な人手不足があります。図表3の通り、建設業就業者数は2000年度の647万人から2025年度には480万人となり、実に約26%も減少しました。一方で、55歳以上の割合は25%から38%へ上昇しており、全産業平均を上回る高齢化が進んでいます。
若年層の比率も低水準にとどまっています。建設業における15~29歳の割合は2000年度の20%から2025年度には13%まで低下しており、全産業平均の17%を下回る状況が続いています。今もなお、担い手不足の解消には至っておらず、人材確保は業界共通の長年の課題となっています。
こうした状況は企業の雇用判断にも表れており、グラフ化していませんが、建設業の雇用人員判断DIは2012年以降マイナス圏で推移しています。また、建設躯体工事従事者の有効求人倍率も2026年は約7.5倍という高い水準で推移しています。足元でも深刻な人手不足が続いており、賃金水準の引き上げ圧力は依然として強い状況です。

【図表3】建設業就業者の推移
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ⅲ.外国人労働者の動向~人手不足を支える重要な担い手へ~

人手不足が続く中で、外国人労働者の存在感は年々高まっています。建設業で働く外国人労働者は、2008年の約8千人から2025年には約20万人へ増加し、この17年間で約25倍となりました。図表4の通り、特に2016年以降は増加ペースが加速しており、技能実習制度や特定技能制度などを通じて外国人材の活用が進んでいます。
国籍別に見ると、2025年時点ではベトナムが約7万人と最も多く、建設業における主要な担い手となっています。また、インドネシアは約5万人と前年から大幅に増加しており、フィリピンやミャンマー、ネパールなども増加しています。外国人労働者の供給元はベトナム中心から徐々に多様化しています。今後も外国人材への依存度は高まるとみられますが、他国や他業種との獲得競争も激しさを増しており、人材確保を巡る環境は引き続き厳しい状況が続くと考えられます。外国人労働者の増加は建設現場を支える重要な要素となっているものの、人手不足を根本的に解消するまでには至っておらず、労務需給の逼迫は今後も続く可能性があります。

【図表4】建設業における外国人労働者数
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ⅳ.建設現場の変化と新たな課題~酷暑・働き方改革への対応が求められる時代へ~

近年は猛暑日や酷暑日の増加も現場運営に影響を与えています。これまで以上に熱中症対策など安全確保のための休憩時間の確保や作業時間の調整が必要となることで、施工効率の低下や工期の長期化につながるケースもみられます。また、2024年4月から適用された時間外労働の上限規制もあり、限られた人員で従来と同じ施工能力を維持することは容易ではなくなっています。人手不足に加え、このような施工環境の変化も建設コストを押し上げる要因となっています。
こうした課題への対応として、建設業界ではプレキャスト工法の活用やICT・AIを用いた施工管理、省人化工法の導入など、生産性向上に向けた取り組みが進められています。しかし、これらの取り組みが普及したとしても、短期間で人手不足を解消することは難しく、労務費の上昇圧力は今後も継続する可能性が高いと考えられます。

Ⅱ.資材費の動向

ⅰ.資材費指数

(Ⅰ)合板~品不足感の強まりで価格上昇圧力が高まる~

合板価格は、ウッドショックやウクライナ情勢を背景に2022年夏頃にピークを迎えた後、2025年にかけて下落基調で推移してきました。しかし、図表5を見ると、東京・大阪・名古屋ともに2025年前半を底に下落が一服し、2026年に入ると再び上昇に転じています。
価格上昇の背景には、供給制約の強まりがあります。2025年後半まではスギ原木価格の上昇が続く一方、需要低迷から十分な価格転嫁が進まなかったことから、結果としてメーカー在庫は徐々に減少していました。また、輸入合板についても円安や現地コスト上昇を背景に供給余力が縮小していました。
さらに2026年春以降は、中東情勢の影響による接着剤不足が深刻化し、合板メーカーでは減産や受注制限が発生しています。接着剤の入荷量は平常時を20~30%程度下回る状況となり、プレカット工場にも影響が及ぶなど、市場では品不足感が強まっています。加えて、輸入合板も原木不足や物流費上昇の影響を受け、国産・輸入品ともに値上げが進んでいます。今後も接着剤供給や物流コストの動向が市場を左右する要因になるとともに、供給制約が継続した場合には価格上昇圧力が高まる可能性があります。

【図表5】建築資材費指数 合板
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(Ⅱ)鋼材(熱間圧延鋼材) ~需要は弱含みも、価格は上昇に転じる動き~

熱間圧延鋼材価格は、2024年後半から2025年にかけて緩やかな下落基調で推移していましたが、2026年に入ると再び上昇に転じています。図表6を見ると、東京・大阪・名古屋ともに下落局面が一巡し、価格は持ち直しつつあり、長く続いた調整局面からの転換がうかがえます。
一方、市場動向からすると、建築向け鋼材需要は依然として弱含みです。経済産業省の需給見通しによると、建築向け鋼材需要は2025年度後半から減少が続いており、2026年度第1四半期も前年同期比5.0%減となる見通しです。建設コスト上昇や人手不足による工期遅延、計画見直しの影響が続いており、需要環境としてはやや低迷している状況にあります。
それにもかかわらず価格が上昇している背景には、原材料やエネルギーコストの上昇があります。鋼材は鉄鉱石や原料炭など海外資源への依存度が高く、為替動向やエネルギー価格の影響を受けやすい資材です。加えて、中東情勢の緊迫化によるエネルギー価格や海上輸送コストへの影響も懸念されています。また、中国の鋼材需給や米国の通商政策など海外市場の動向も国内価格に影響を与えており、今後も注視が必要といえるでしょう。

【図表6】建築資材費指数 熱間圧延鋼材
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(Ⅲ)生コンクリート ~需要低迷が続く中でも価格上昇が継続~

生コンクリート価格は、主要建設資材の中でも上昇傾向が特に顕著です。図表7を見ると、東京・大阪・名古屋ともに段階的な値上げが続いており、特に大阪では2023年以降に大幅な価格改定が繰り返されています。東京や名古屋においても価格上昇が続いており、生コンクリートは主要建設資材の中でも上昇が目立つ資材となっています。
一方、市場動向からすると、前述した鋼材と同様に、需要環境は厳しい状況が続いています。建設コスト上昇や人手不足による工期遅延、働き方改革に伴う現場作業時間の減少などを背景に、生コンクリート出荷量は減少傾向にあり、生コンクリート需要の回復は限定的です。
それにもかかわらず価格上昇が続いている背景には、セメントや骨材などの原材料価格に加え、燃料費、輸送費、人件費の上昇があります。また、生コンクリートは製造後一定時間内に現場へ搬入する必要があるため供給エリアが限定され、広域からの代替調達が難しいという特徴があります。こうした制約に追い打ちをかけるように、生コンクリート製造工場数の減少や業界再編により供給能力の集約も進んでいます。建設需要が弱含みで推移する中でも価格上昇が続いている点は、生コンクリート市場の大きな特徴といえるでしょう。

【図表7】建築資材費指数 生コンクリート
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ⅱ.設備関連の動向~旺盛な需要を背景に需給逼迫が続く~

設備工事領域では、半導体工場やデータセンター、大規模再開発などの建設が全国的に進んでいることを受け、設備機器や施工会社の需給が逼迫しています。その結果、設備工事費の上昇に加え、機器調達の長期化が常態化しています。特に電気設備では、受変電設備、非常用発電機、盤類、中央監視設備、電力計、電線・ケーブル、LED照明機器などで長納期が続いており、高圧ケーブルでは納期回答が困難なケースもみられます。また、空調設備では空調機や特殊仕様のファン、衛生設備では消火設備や特殊ポンプなどで納期の長期化が目立っています。設備機器価格も大幅に上昇しており、2020年末と比較すると変電設備は126%、自家発電装置は74%、盤類は104%、空調機類は91%上昇しています(図表8)。こうした上昇率は一般的な建設資材価格指数を大きく上回る水準となっています。

【図表8】設備工事費の上昇率
202608_04_image07.jpg出所:一般社団法人日本建設業連合会「設備工事費上昇等の現状について(2026年春版)」より抜粋

設備工事は、資機材価格の上昇だけでなく、機器調達や施工人員の確保も工期を左右する状況となっています。特に大型案件では設備機器の納期が建設工事全体の工程に影響を及ぼすケースも増えており、仕様決定や機器発注の早期化がこれまで以上に重要となっています。

ⅲ.中東情勢による建築資材への影響~価格上昇と納期遅延が建設現場に波及~

2026年春以降の中東情勢の緊迫化を受け、建築資材市場では価格上昇と納期遅延が広範囲に発生しています。図表9の通り、特にナフサや原油を原料とする石油化学製品への影響が大きく、塩化ビニール樹脂、樹脂配管、塗料、シンナー、防水材、断熱材、接着剤などで大幅な価格改定が相次ぎました。また、一部資材では受注制限や納期遅延も発生しており、ユニットバスや防水シート、構造用合板などでは工事工程への影響も懸念されています。

【図表9】資材等の値上げ・納期遅延一覧出所:各種公表資料より当社作成
資材区分 主な影響 内容
塩化ビニール樹脂(配管・建材・内装材の原料) 値上げ 原料エチレンやナフサ価格上昇により20~40%程度の価格改定
塩ビ管・樹脂配管(給排水設備) 値上げ 原材料高騰に伴う価格改定
建築用塗料(外装、内装仕上げ材) 値上げ 水性・溶剤系ともに15~35%程度の値上げ
シンナー(塗料希釈材) 値上げ 50~80%前後の大幅値上げ
防水材(屋上、バルコニー防水等) 値上げ・納期遅延 ナフサ高騰および供給制約の影響
接着剤(内装、仕上げ工事材) 値上げ・供給不足 石油化学原料不足による調達難
断熱材(省エネ建材) 値上げ ナフサ価格上昇を受け大幅な価格改定
メラミン化粧板用副資材(内装仕上げ材) 値上げ 接着剤・両面テープ等で5~15%超の値上げ
ユニットバス 納期遅延・受注制限 部材不足に伴う供給制約
構造用合板・防水シート(木造鋼材) 納期遅延 一部で調達停止や工事工程への影響
養生資材(現場保護剤) 値上げ・受注制限 原料価格上昇による供給不安

また、日本建設業連合会の調査では、2026年4月時点で価格改定が64品目、納期遅延が52品目、受注制約が48品目確認されており、建設資材の調達環境は不安定な状況が続いています。今後は原油価格や物流動向に加え、中東情勢の行方が建設コストや工期に与える影響についても、引き続き注視する必要があります。

Ⅲ.まとめ

建設コストの上昇は、労務費や資材価格の高騰に加え、人手不足による工期の長期化や設備機器の長納期化など、建設事業全体に影響を及ぼしています。労務費は過去最高水準を更新しており、合板や鋼材は価格調整局面から再び上昇に転じている傾向がみられます。生コンクリートについては引き続き強い上昇基調が続いており、設備工事においても機器価格の上昇や納期長期化が常態化しています。さらに、中東情勢の緊迫化は塗料や防水材、断熱材、接着剤など幅広い建築資材に影響を及ぼしており、建設コストや工期に関する不確実性はますます高まっています。
こうした状況を受けて、第1回でも触れたように、不動産開発業界では、既存建物を活用するリノベーションやコンバージョンへの関心が高まっています(注2)。また、建替えを前提としていた案件においても、既存建物の活用可能性を検討する動きがみられます。
建設コストの高止まりが続く中では、投資家や不動産を保有する事業法人としては、新築と既存建物活用の双方を比較検討し、建物の立地や用途、建物性能に応じた最適な事業手法を選択することが重要になっています。リノベーションやコンバージョンを含めた資産活用の最適な選択が、これまで以上に不動産投資やCRE領域における事業価値を左右する要素になると考えられます。


2 本サイト:『高騰する建築費の実態と今後の見通し ~当社など独自調査「建築費に関するアンケート」』2026年1月30日配信

提供:リサーチ・コンサルティング部 リサーチ課

長谷山 大樹:宅地建物取引士/不動産証券化協会認定マスター

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