【Special Interview】建設本来の魅力を若者に届ける次世代のロボット建設DX

【Special Interview】建設本来の魅力を若者に届ける次世代のロボット建設DX

野村不動産ソリューションズ株式会社
常務執行役員 原田 真治(左)

建ロボテック株式会社
代表取締役社長 眞部 達也氏(右)

建設ロボットとの「共働」がもたらす建設DXの変化と可能性について語る対談の後編です。深刻な人手不足と高齢化という構造的な課題に直面する建設業界で、「世界一ひとにやさしい現場」の実現に挑む建ロボテック株式会社。元・鉄筋職人として現場の改革を進める眞部達也社長は、建設業界の未来をどのように描いているのでしょうか。野村不動産ソリューションズ 常務執行役員の原田真治が、次世代の建設業に迫っていきます。

※本記事は2025年12月時点の情報をもとに執筆しています

海外でも証明された「鉄筋結束トモロボ」の実力

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原田 日本の建設現場と比較して、海外でのロボット導入の状況はいかがでしょうか?

眞部 海外では、日本以上に積極的にロボットを受け入れてくれます。「鉄筋結束トモロボ」はシンガポールやアメリカ、スペインに導入されており、韓国にも1月に導入を開始する予定です。彼らにとってロボットなどの新たな技術は「メリットがあるなら使わない手はない」という合理的な判断が浸透している印象です。

202602_03_image02.jpg▲「鉄筋結束トモロボ」鉄筋結束作業を自動化する

原田 具体的には、日本よりも海外で導入されやすい要因は何があるのでしょうか。

眞部 まず、人件費の違いが大きいですね。オーストラリアの場合、人件費は日本の3倍です。一方で生産性は5分の1程度と言われており、単純計算で15倍近いコスト差があります。日本人って、すごいんですよ。トモロボは、「世界一丁寧で速い」と評価されている日本の職人をベンチマークに開発しています。トモロボは約8時間で約1万500ヵ所を結束するのですが、日本だとだいたい熟練の職人と同程度のスピードなので、インパクトがありません。ところが、シンガポールでは「すごい!人間の5倍の速さじゃないか!」と驚かれました。それが現地作業員の年間人件費と同程度で導入できるので、喜んでいただけるわけですよね。

原田 日本の職人の技術力が、ロボット開発の基準になっているのですね。日本の職人の技術レベルが高すぎるがゆえに、国内ではロボットのすごさが伝わりにくいという側面があるのかもしれませんね。

眞部 一方で、「設計の合理性」という面では、海外のほうが進んでいる部分もあります。例えば、ロボット導入のボトルネックとなりやすい床の段差。日本では水回りの勾配を作るため、コンクリート床に180mmほどの段差を設けることが多いのですが、この段差がロボットの走行を妨げます。対してシンガポールでは躯体をフラットに作り、配管スペースは床上で調整する方式が採用されています。段差がなくなるだけで、ロボットがスムーズに動き回れる環境が整うのです。
日本との違いは、その意思決定のプロセスにあるのではないでしょうか。海外は自社の研究開発にとどまらず、さまざまな地域の技術を積極的に探索し、柔軟に取り入れる企業が多い印象です。技術単体ではなく、その活用方法も含めた工程全体を研究対象とする姿勢が顕著で、手順の見直しも迅速です。こうした背景から、やはり現状では海外のほうが比較的ロボットの導入や資金投入をしやすい環境にあると感じます。必要なソリューションさえそろえば、海外のロボット化は一気に進む可能性があります。

原田 「技術の導入に合わせて柔軟に手順を見直す」というのは、合理的なアプローチですね。そのような海外の柔軟性やスピード感は、日本においても一つのヒントとなるように感じます。では、なぜ、日本と海外ではこのような違いが生まれるのでしょうか。

眞部 市場環境の違いが大きいと思います。海外の建設市場にはさまざまな国のゼネコンが参入し、競争が激化しています。日本市場は建設業法をはじめとした独自のルールや高い品質基準があり、海外企業にとって参入障壁が高いのが現状です。日本の品質を高水準で保つためには重要な施策ですが、外からの競争原理が働きにくいという側面は否めません。この環境が変化にどう影響していくのか、これからのあり方を考える時期が来ているのかもしれません。

結束から運搬へ、数百の構想が広げる建設ロボットの可能性

202602_03_image03.jpg▲建ロボテック開発の「運搬トモロボ TMT-A1」
外形寸法(幅/奥行/高さ)61×76(脱着式接触センサー除く)×38(パトライト含む)cm 重量28㎏(1台)

原田 先ほど、「ソリューションがそろえば、海外のロボット化が一気に進む可能性がある」とおっしゃっていました。日本も同じだと思っています。建ロボテックでは結束ロボット以外にも、「運搬トモロボ『T-BOX』」「DOG」「MINI TANK」など、多様なソリューションを開発されていますね。

眞部 やれることは、いくらでもあります。もはや、新たな技術による合理化は可能性しかありません。結束ロボットも確かに画期的なのですが、例えばビル一棟を建設する場合、トモロボが貢献する結束作業は建設全体の1%にも満たないのです。それだけでは満足できません。そこで着目したのが「運搬」です。資材を運ぶ作業は職種に関係なく、すべての現場作業員が行っています。このインタビュー会場にあるモニターやドア、照明器具なども最後は全部、人の手で運ばざるを得ません。この運搬を機械化できれば、全職種に貢献できます。ただ、運搬といっても求められる要素は多種多様です。現在展開しているのは、比較的整地された床向けの運搬用トモロボ「T-BOX」、悪路に強い「DOG」、エレベーターに乗せられるサイズの「MINI TANK」。現場ごとに最適な形が異なります。今、私の頭の中には数百種類の新たな技術による合理化構想があります。建設現場のあらゆる「しんどい」を解決できる可能性は、無限に広がっています。

原田 数百種類も!なるほど、それが順次、製品化されていくわけですね。もう少し早く普及、市場に浸透していれば、若者の建設離れに歯止めをかけられたかもしれませんね。

眞部 おっしゃるように、「もっと早く普及していれば」と考えたこともないわけではありません。しかし、今からでも十分に間に合います。「若者を建設業界に呼び戻せる」と、私は確信しています。

ロボットオペレーターという職業と若者の未来

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原田 力強いお言葉です。「若者を建設業界に呼び戻せる」という確信に到る具体策をもう少し教えてください。

眞部 「楽しさ」の導入ですね。最近、あるゼネコンと共同で、ラジコン操作による運搬作業の実証を行いました。ラジコンにはゲーム性があるじゃないですか。今まで手で運んでいたものが、ラジコンだと操作一つで目の前を軽快に走り抜けていく。あえてスピードを上げて、競技性を持たせました。これを突き詰めていくと、「ロボットオペレーター」という職種が生まれます。1日中ロボットを操作して高い生産性を上げ、それに見合った対価をもらうという立派な職業です。
現在、建設業法の専門工事業種は29種類です。私たちは今、ここに「ロボットオペレーター」を新たな業種として認めてもらえるよう、国に働きかけています。現状では、ロボットオペレーターを現場に派遣しようとしても、既存の業種に当てはまらないため派遣法違反になってしまうのです。

原田 制度が追いついていない現状に一石を投じ、専門職としての確立と新たな雇用の創出を目指すのですね。

眞部 そうです。ラジコンやゲームが好きなデジタルネイティブ世代が、「面白そうだから」という理由で建設業に入ってくる。そんな新しい入口を作りたいのです。ラジコンによる施工の速さを競う「建ロボ杯」や「野村不動産ソリューションズ杯」も、ぜひ開催してみたいですね。将来的には、「時差を活用した24時間施工」も視野に入れています。海外のオペレーターが自国の日中に、遠隔操作で日本の夜間工事を行うという働き方も可能になるのではないでしょうか。建設業の就労人数の減少は、確かに危惧すべき事態です。しかし、見方を変えれば、新しい働き方を生み出すチャンスでもあると考えています。

新たな技術による合理化で描く建設業のキャリアデザイン

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原田 ロボットをはじめとした新たな技術による合理化は単なる道具ではなく、若者を惹きつける「新しいキャリア」になるわけですね。最後に、眞部社長が描く建設業界の未来像をお聞かせください。

眞部 「トモロボ」という名前には、「共に働く」という意味を込めています。朝、職人が「さあ行くぞ」と相棒のようにロボットを現場に連れて行き、一緒に働いて今までの130%の生産性を達成する。仕事が終わったら「ありがとうな」と体を拭いて帰る。そんな温かいパートナー関係が当たり前の風景になればいいと思います。そして、現在「職人」と呼ばれている人たちが、テクノロジーを操る「エンジニア」へと進化する世界を作りたいのです。

原田 まさに、ロボットとの「共働」ですね。職人のあり方がエンジニアへと変化すると、働き方はどう変わるのでしょうか。

眞部 従来の建設現場はどうしても体力勝負の側面が強く、年齢による体力の低下とともに、収入の維持が難しくなる傾向がありました。しかし、ロボットなどの新しい技術を使えば、年齢に関係なく経験や技術を活かして高い生産性を生み出すことができます。若者たちに伝えたいのは、「現場でしんどいと感じる作業は、全部私たちに相談してほしい。必ず解決に導くから」という信念です。私も現場で働いていたとはいえ、まだ知らない「大変な作業」や「隠れた苦労」はたくさんあるはずです。だからこそ現場の声をしっかり聞いて、一つひとつ解決していきたい。ロボットという新しいテクノロジーを駆使して現場の負担を減らし、働く人たちが右肩上がりのキャリアプランを描けるようにする。それが私の使命だと考えています。

原田 「しんどい作業は全部相談してほしい」、その言葉に建設業界への愛情を感じます。私も根本的にものづくりが好きで不動産業界に入りましたので、よくわかります。やはり自分の手でものを作り上げるというのは、特別な喜びやワクワク感がありますよね。

眞部 おっしゃるとおりです。大きなものが自分の手でできあがっていく過程は、とても楽しい仕事です。その楽しさを、つらさで曇らせたくありません。若者にはぜひ、希望を持ってこの業界に入ってきてほしいです。

原田 ものづくり本来の楽しさに「働きやすさ」と「将来性」が加われば、若者が戻ってくる大きな力になると思います。眞部社長の取り組みに、大いに期待しております。本日はありがとうございました。

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前編と後編にわたり、建ロボテック・眞部社長との対談をお届けしました。建設業界にはまだ「ロボット化」の参入余地が伸びしろとして残されています。ロボット技術と人の協働が織りなす建設DXの未来に、大きな希望を感じる対談となりました。

提供:リサーチ・コンサルティング部

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