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軽井沢の不動産市場2026 ~加熱する投資需要 注目度を増す人気リゾートの現在地~

古くから別荘地・避暑地として親しまれてきた軽井沢は、富裕層の増加や観光需要の拡大を背景に、近年さらに存在感を高めています。加えて、多拠点居住や教育移住への関心の高まりを受け、首都圏を中心に移住者も増加しており、居住地・リゾート地の双方として高い人気を集めています。こうした需要を背景に、軽井沢ではマンション、ホテル、コンドミニアムなど多様な不動産開発が進んでいます。本レポートでは、活況が続く軽井沢の不動産市場について、開発動向や市場の特徴、今後の規制動向等を整理します。
【サマリー】
- ● 軽井沢町では人口の増加が続いており、富裕層の増加や移住・多拠点居住ニーズの高まりを背景に、居住地・別荘地としての人気が一層高まっています。地価についても、主要地点で前年比10%を超える上昇が続いており、軽井沢に対する旺盛な需要と高い注目度がうかがえます。
- ● マンション、ホテル、コンドミニアムの開発は活況で、従来から人気の高い旧軽井沢エリアに加え、中軽井沢エリアや南軽井沢エリアなど幅広いエリアへと波及しています。超高額マンションやホテルコンドミニアムなど商品の多様化も進展しており、軽井沢の不動産市場は新たな成長局面を迎えています。
- ● 一方で、軽井沢町では自然保護対策要綱等の改正が段階的に進められています。旺盛な需要を背景に、引き続き不動産開発が進む見通しですが、今後は自然環境や景観との調和がより重視されると考えられ、規制動向にも注視していく必要があります。
Ⅰ.軽井沢の不動産市場を取り巻く環境
ⅰ.軽井沢エリア概要
軽井沢は、長野県の東端で群馬県境に位置し、東京都心から新幹線を利用して約1時間でアクセス可能な立地です。古くから別荘地・避暑地として親しまれており、圧倒的なブランド力と歴史を兼ね備えたエリアです。
また、自然環境の豊かさに加え、商業施設や宿泊施設がバランスよく整備されている点も特徴です。こうした複合的な魅力が、観光・居住・投資のいずれの観点においても高い評価につながっています。
図表1では、軽井沢における主要な施設をまとめています。

※図中の丸印の色は、オレンジ:商業系施設、緑:教育施設、青:宿泊施設を示しています。
ⅱ.軽井沢不動産市場の成長背景
図表2は、長野県と軽井沢町の人口と世帯数の推移を示しています。長野県全体では、2021年から2026年にかけて約3.7%の人口減少が見られる一方、軽井沢町では約4.3%の増加となっており、移住先としての注目度の高さがうかがえます。
【図表2】長野県及び軽井沢町の人口・世帯数の推移
| 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 2021→2026 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 長野県 | 人口(人) | 2,044,780 | 2,029,541 | 2,016,467 | 2,000,991 | 1,985,513 | 1,969,278 | -3.7% | |
| 世帯数 | 832,072 | 836,049 | 843,633 | 849,996 | 856,286 | 862,162 | 3.6% | ||
| 軽井沢町 | 人口(人) | 20,922 | 21,231 | 21,510 | 21,603 | 21,752 | 21,812 | 4.3% | |
| 世帯数 | 10,292 | 10,466 | 10,729 | 10,889 | 11,097 | 11,291 | 9.7% | ||
出所:「長野県の人口と世帯数」及び「軽井沢町の統計」より当社作成
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近年、軽井沢エリアの注目度が高まる背景には、富裕層の増加、国内外からの観光客の増加等があります。
図表3は、国内富裕層世帯数と純金融資産の推移を示したグラフです。富裕層は年平均で約3%増加しており、2023年には過去最高の約165万世帯となっています。また、富裕層の純金融資産保有額も増加しています。
こうした富裕層の増加が、軽井沢の不動産市場の成長に寄与しています。
【図表3】国内富裕層世帯数・純金融資産の額


出所:野村総合研究所「純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数の推移」より当社作成
さらに、軽井沢ではインターナショナルスクール等の教育施設の開校が相次いでおり、富裕層等を中心に「教育移住先」としても注目を集めています。図表4は、近年軽井沢で開校した教育施設の一覧です。それぞれの教育施設が、軽井沢の自然環境を最大限に活かした教育施設となっている点が特徴です。
【図表4】軽井沢における教育施設の開校一覧
| 施設名 | UWC ISAK(アイザック) Japan |
軽井沢風越学園 | EtonHouse (イートンハウス) International School Karuizawa |
ポピンズナーサリースクール 軽井沢風越 |
|---|---|---|---|---|
| 種別 | 高等学校 | 幼稚園・小学校・中学校 | 認可外保育所/小学校 | 認可保育所 |
| 開校年 | 2014年 | 2020年 | 2020年/2025年 | 2023年 |
出所:各種公表資料より当社作成
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また、観光地としての魅力も高く、国内外から多くの観光客が訪れ、現在では、年間800万人を超える宿泊者数を記録しています。それに伴い、ホテル等の宿泊施設の開発も活発に行われており、今後も多くのホテル開発が予定されています。加えて、同じ長野県内の有名な観光地である白馬と比べ、インバウンドの観光客数の割合が低いことも特徴であり、国内からの底堅い観光需要がうかがえます。
こうした需要の高まりから、軽井沢では近年の地価の上昇も鮮明です。特に、新型コロナウイルス流行後の上昇幅が大きいことが分かります(図表5)。特に、①、②の地点(注1)においては、2022年から5年連続で前年比10%超えの上昇が続いています。
また、軽井沢駅北口では、2026年3月に商業施設「軽井沢T-SITE」が開業しました。当施設は、温浴施設、宿泊施設、飲食店舗等を備えた滞在型施設です。新たな消費需要の創出とともに、地域のさらなる活性化や賑わいの醸成につながるとみられており、今後もさらなる地価上昇が期待されます。

| 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | |
| ① 地価公示(国) 1低専(30、50) |
292 | 302 | 314 | 331 | 354 | 393 | 440 | 493 | 562 | 645 |
| 前年対比 | ー | 3.51% | 3.93% | 5.15% | 7.00% | 11.21% | 11.76% | 12.03% | 14.09% | 14.71% |
| ② 地価公示(国) 1低専(30、50) |
165 | 171 | 179 | 195 | 215 | 236 | 264 | 299 | 340 | 390 |
| 前年対比 | ー | 3.40% | 4.45% | 9.26% | 10.00% | 10.17% | 11.89% | 13.13% | 13.81% | 14.56% |
| ③ 基準地価(県) 1住居(60、200) |
216 | 218 | 221 | 224 | 235 | 250 | 264 | 281 | 310 | |
| 前年対比 | ー | 1.07% | 1.36% | 1.35% | 5.01% | 6.04% | 5.96% | 6.25% | 10.47% | |
| ④ 基準地価(県) 1住居(60、200) |
131 | 132 | 134 | 136 | 138 | 142 | 152 | 164 | 180 | |
| 前年対比 | ー | 1.27% | 1.25% | 1.23% | 1.46% | 3.37% | 6.98% | 7.61% | 10.10% |
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1 所在は【図表6】に記載
Ⅱ.軽井沢における不動産開発の動向

【図表7】マンションの供給事例
| 番号 | 用途 | 名称 | 事業主 | 完成時期 | 総戸数 | 分譲価格 | 専有面積 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ① | マンション | ガーデンテラス軽井沢 | 上丸実業、他 | 2021年5月 | 19戸 | 6,820万円~2億1,590万円 | 82.30㎡~184.83㎡ |
| ② | ロイヤルプリンシパル軽井沢 | ロイヤルコーポレーション | 2021年5月 | 19戸 | 9,680万円~2億7,800万円 | 84.85㎡~199.96㎡ | |
| ③ | オストレジデンス軽井沢 | エスコン、他 | 2021年11月 | 32戸 | 7,680万円~2億2,800万円 | 79.94㎡~169.14㎡ | |
| ④ | デュオヒルズグラン旧軽井沢 | フージャースコーポレーション | 2022年1月 | 19戸 | 平均1億1,868万円 | 90.16㎡~185.00㎡ | |
| ⑤ | 旧軽井沢マエストロの森 | ロイヤルコーポレーション | 2022年6月 | 19戸 | 1億880万円~1億7,800万円 | 90.37㎡~116.18㎡ | |
| ⑥ | グランザグローバル軽井沢 | 田村商店 | 2023年7月 | 43戸 | 1億3,360万円~2億5,970万円 | 81.81㎡~175.25㎡ | |
| ⑦ | アルデバラン軽井沢 | ロイヤルハウジング | 2024年5月 | 16戸 | 1億6,350万円~2億4,160万円 | 103.63㎡~127.60㎡ | |
| ⑧ | RESORTIA軽井沢 | シティインデックス | 2026年6月 | 51戸 | 1億180万円~5億6,980万円 | 76.30㎡~333.73㎡ | |
| ⑨ | ロイヤルインシグニア旧軽井沢 | ロイヤルコーポレーション | 2026年7月予定 | 24戸 | 2億9,800万円~5億1,800万円 | 129.68㎡~196.48㎡ | |
| ⑩ | オストガーデン軽井沢 | エスコン、他 | 2026年9月予定 | 24戸 | ー | 90.02㎡~381.59㎡ | |
| ⑪ | テラス軽井沢フォレスト | 東急不動産、他 | 2026年11月予定 | 57戸 | 9,590万円~4億6,590万円 | 74.65㎡~241.09㎡ | |
| ⑫ | Sampen House of Art | NEW ART HOLDINGS | 2027年5月予定 | 9戸 | 8億7,220万円~14億1,850万円 | ー |
出所:各種公表資料より当社作成
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【図表8】ホテル・コンドミニアムの開発事例
| 番号 | 用途 | 名称 | 運営事業者 | 開業時期 | 客室数 | 分譲価格 | 専有面積 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ① | ホテル | ホテルインディゴ軽井沢 | TCホテルズ&リゾーツ | 2022年2月 | 155室 | ー | ー |
| ② | 軽井沢森四季VILLA | 軽井沢森四季 | 2022年7月 | 3室 | ー | ー | |
| ③ | LONGINGHOUSE 旧軽井沢・諏訪ノ森 | ビジョンクリエイツ | 2023年7月 | 13室 | ー | ー | |
| ④ | ふふ 軽井沢-陽光の風- | カトープレジャーグループ | 2023年12月 | 24室 | ー | ー | |
| ⑤ | ふふ 旧軽井沢-静養の森- | カトープレジャーグループ | 2023年12月 | 20室 | ー | ー | |
| ⑥ | ANAホリデイ・インリゾート軽井沢(リブランド) | IHGホテルズ&リゾーツ | 2025年9月 | 102室 | ー | ー | |
| ⑦ | HACIENDA KARUIZAWA | ハルモニアラボ | 2026年4月 | 9室 | ー | ー | |
| ⑧ | ESSENCE KARUIZAWA | メモリードグループ | 2026年7月予定 | 12室 | ー | ー | |
| ⑨ | リージェント軽井沢 | IHGホテルズ&リゾーツ | 2028年予定 | 58室 | ー | ー | |
| ⑩ | ANANTARA KARUIZAWA RETREAT | ロイヤルマイナーホテルズ、他 | 2030年予定 | 51室 | ー | ー | |
| ① | コンドミニアム | グランディスタイル旧軽井沢ホテル&リゾート | 東急不動産、他 | 2025年8月 | 65室 | 約2億2,000万円 | 51.84㎡~118.17㎡ |
| ② | 軽井沢リトリート muro | リストデベロップメント | 2027年予定 | 17室 | ー | 70.97㎡~161.83㎡ |
出所:各種公表資料より当社作成
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※ホテル⑥「ANAホリデイ・インリゾート軽井沢」は地図の都合上、図表6には記載していないが、北軽井沢エリアに位置している。
※ホテル⑨「リージェント軽井沢」は現時点で住所を非公開としているため、図表6には記載していない。
※ホテル⑩「ANANTARA KARUIZAWA RETREAT」は地図の都合上、図表6には記載していないが、南軽井沢エリアに開業を予定している。
ⅰ.供給の現状と今後の見通し
(Ⅰ)マンション
図表7は、直近の主な分譲マンションの供給事例(完成予定を含む)一覧です。旧軽井沢エリアを中心に、多くの分譲マンションが開発されていることが分かります。また、軽井沢で開発される分譲マンションの特徴として、1戸当たりの専有面積の大きさが挙げられ、2025年に軽井沢町で販売された分譲マンションの平均専有面積(注2)は122.5㎡となっています。これは、富裕層をターゲットとしている軽井沢エリアの不動産開発の特徴です。
また、完成時期が2026年以降の事例(⑧~⑫)について、図表6で位置を確認すると、⑨、⑫が旧軽井沢エリアに位置する一方、⑧、⑩、⑪は南ヶ丘・南原エリアから中軽井沢エリア、南軽井沢エリアにかけて位置しており、マンション供給が旧軽井沢エリア以外にも広がっていることが分かります。
⑫「Sampen House of Art」は販売価格が最高で14億円を超えており、軽井沢でも屈指の価格帯となる超高額マンションです。近年の軽井沢では富裕層や超富裕層によるセカンドハウス需要が拡大しており、本物件のような超高額帯商品の供給は、軽井沢のマンション市場が新たなステージに入ったことを示す事例として注目されます。
今後は、旧軽井沢エリアのブランド力を背景とした高額物件の供給が続く一方、南軽井沢エリアや中軽井沢エリアにおいても新規開発が進み、エリアごとの特色を活かしたマンション供給が一層活発になると考えられます。

図表9(注3)は、軽井沢町における分譲マンションの平均坪単価・平均価格の推移です。平均坪単価については、新築マンションが600万円/坪を超え、中古マンションは360万円/坪程度です。分譲が南軽井沢エリアに限定された2024年以外においては、2019年以降、価格上昇が続いています。
中古マンションについても、新築マンションの価格高騰の影響で、年々上昇傾向にあります。
(Ⅱ)ホテル・コンドミニアム
図表8は、直近の主なホテル・コンドミニアムの開発事例(開業予定を含む)一覧です。開発エリアを見ると、従来から人気の高い旧軽井沢エリアに加え、中軽井沢エリアや南軽井沢エリアなど幅広いエリアで供給が行われており、軽井沢全域で宿泊施設の供給が拡大していることが分かります。利便性やブランド力を重視した旧軽井沢エリア、自然環境やリゾート性に優れた南軽井沢エリアなど、それぞれの立地特性を活かした開発が進められています。
また、宿泊施設の形態も多様化しています。①「ホテルインディゴ軽井沢」のような客室数100室を超える比較的大規模なホテルに加え、②「軽井沢森四季VILLA」のような小規模な宿泊施設も供給されており、さまざまな滞在ニーズに対応した開発が行われています。さらに、軽井沢初の新築分譲型ホテルコンドミニアムである①「グランディスタイル旧軽井沢ホテル&リゾート」が誕生するなど、新たな商品形態も登場しています。同施設は、所有者が自ら滞在を楽しむだけでなく、不在時にはホテルの客室として運用することが可能であり、「所有」と「運用」を両立できる点が特徴です。従来の別荘や分譲マンションとは異なり、維持管理の負担を抑えながら軽井沢での滞在を享受できることから、近年増加する富裕層のセカンドハウス需要や多拠点居住ニーズとの親和性が高い商品として注目を集めています。
このように、近年の軽井沢ではホテル・コンドミニアムの供給が活発化するとともに、立地や規模だけでなく、運営形態においても多様化が進んでおり、不動産市場の裾野が広がっていることがうかがえます。また、⑨「リージェント軽井沢」や⑩「ANANTARA KARUIZAWA RETREAT」といった、世界的なラグジュアリーホテルブランドによる新規進出プロジェクトも進行しています。こうした海外高級ホテルチェーンの進出は、軽井沢が国内有数のリゾート地として高く評価されていることの表れと言えるでしょう。
なお、新規開発に加え、軽井沢プリンスホテルでは既存コテージを高付加価値なヴィラへ刷新するリニューアル計画も進められており、軽井沢全体として宿泊施設の魅力向上が図られています。今後も、観光需要の増加や滞在ニーズの多様化を背景に、ホテル・コンドミニアム市場はさらなる成長が期待されます。
2 出所:東京カンテイ「マンションデータナビ」
3 出所:東京カンテイ「マンションデータナビ」に加えて、2024年分譲の「RESORTIA 軽井沢」のデータを当社調べにて追加
ⅱ.軽井沢の別荘市場
(Ⅰ)別荘数の推移

図表10は、軽井沢町での別荘の総数を示したグラフです。富裕層による取得を中心に、直近の10年間で900戸程度増加しており、最新データである令和6年時点においては、16,730戸となっています。
令和2年に行われた国勢調査によると、町民の持ち家数は6,261戸で、別荘の総数は持ち家の約2.7倍の戸数です。
このことからも、富裕層の増加が軽井沢の不動産市場に与える影響の大きさがうかがえます。また、新型コロナウイルス感染症の流行後、多拠点生活やワーケーションのニーズ等が高まったことから、軽井沢は定住地としても注目を集め、首都圏居住者を中心に軽井沢エリアへの移住者が増加しています。
(Ⅱ)エリア別の特徴と注目エリア
軽井沢の別荘市場は、エリアごとのブランド力や住環境、利便性等の違いによって価格が大きく異なります。
軽井沢総合研究所の土屋勇磨(注4)氏によると、鹿島ノ森、南ヶ丘、千ヶ滝西区等は軽井沢を代表する高級別荘地として知られており、特に鹿島ノ森では土地の坪単価が70万~100万円を超える事例も見られるとしています。
近年では、国道18号バイパス沿いで開発が進行しており、今後の動向が注目されます。図表6を見ると、①「ホテルインディゴ軽井沢」や⑪「テラス軽井沢フォレスト」など、バイパス沿線に開発が集中していることが分かります。国道沿いに位置することから交通利便性が高く、軽井沢らしい豊かな自然環境も享受できる点が特徴です。こうした利便性と居住環境のバランスの良さを背景に、近年開発が活発化していると考えられます。
一方で、これらの高級・人気エリア以外の状況はどうでしょうか。前出の土屋氏は、以下のようにコメントしています。
【土屋勇磨氏(軽井沢総合研究所)コメント】
上記エリアに加えて、今後の発展が期待されるエリアとして注目したいのが、南軽井沢です。南軽井沢に位置するレイクニュータウンや八風の郷では、坪単価3万円程度から取得可能な土地も見られ、旧軽井沢などの高級別荘地と比較すると手頃な価格帯が魅力です。南軽井沢は豊かな自然環境に囲まれた静かな住環境を有しており、別荘利用だけでなく、定住や二拠点居住の受け皿としても存在感を高めています。また、風越学園をはじめとする教育施設が充実していることから、近年は子育て世帯を中心とした「教育移住」の候補地としても注目されています。さらに、住宅やホテル等の開発が進んでいることから、今後の発展余地も大きく、将来的な地価上昇も期待されます。比較的取得しやすい価格帯の土地が残されていることに加え、生活環境や教育環境の充実が進んでいる点は、南軽井沢の大きな魅力と言えるでしょう。
4 1978年生まれ、軽井沢出身。幼少の頃より軽井沢の別荘地で育つ。大学卒業後、大手不動産会社やリクルートグループ会社を経て軽井沢新聞社に入社。2015年、軽井沢新聞社を退職して独立して株式会社軽井沢総合研究所を設立、歴史的建造物の保存事業を手がける。現在は、YouTube「豊かな人生を愉しむための軽井沢チャンネル【土屋勇磨】」等で軽井沢の魅力発信を行っている。
ⅲ.不動産開発に影響を与える規制
軽井沢町では、「軽井沢町の自然保護対策要綱」をはじめとした自然環境に関連する規程の見直しを進めており、2025年以降、段階的に改正が実施されています。今回の改正は、自然環境や景観の保全と地域経済の発展の両立を目的とするものであり、自然保護対策要綱だけでなく、土地利用行為に関する条例や関連規程についても見直しが行われています。
不動産開発の観点から注目されるのは、2026年4月1日に施行された「集合住宅等の定義の明確化(分譲ホテルの取扱い)」です。今回の改正では、近年増加する分譲ホテル(ホテルコンドミニアム)の取扱いが明確化され、原則として宿泊施設の基準を適用することとなりました。一方で、将来的に集合住宅等への安易な用途変更を防ぐため、浴室、便所、台所を備えるなど住宅利用が可能な仕様を有する場合には、集合住宅等の基準が適用されます。
さらに、2026年10月1日には「建築物の階数制限」の改正が予定されています。現行制度では地階を除いた階数を基準としていましたが、改正後は一戸建て専用住宅を除く建築物について、地階を含めた総階数で判断されることになります。傾斜地において地階部分が大きく露出し、外観上階数制限を超えた建築物のように見える事例への対応を目的としたものであり、軽井沢らしい低層景観の維持を図る規制強化と言えます。今後のマンションやホテル開発では、自然環境との調和に加え、建築計画や設計面での工夫がこれまで以上に重要になると考えられます。
加えて、2027年4月1日には「集合住宅等の戸当たりの敷地面積」の改正も予定されています。保養地域、居住地域、集落形成地域では、軽井沢の良好な別荘環境の維持や景観保全を目的として、集合住宅等に関する基準の強化が予定されています。今後の集合住宅開発においては、こうした規制動向を踏まえた事業計画の検討が求められるでしょう。
もっとも、足元では高額マンションやラグジュアリーホテル、コンドミニアムの開発が活発に進められており、軽井沢の不動産市場は引き続き活況を呈しています。一方で、自然保護対策要綱等の改正は今後も段階的に実施される予定であり、さらなる規制強化や適用範囲の拡大が行われる可能性もあります。そのため、今後の軽井沢の不動産市場を展望するうえでは、旺盛な開発需要には目が離せませんが、併せて規制動向にも注視していく必要があるでしょう。
また、近年は建築費の高騰に加え、カーボンニュートラルへの対応の重要性も高まっています。こうした環境下では、新規開発のみならず、既存ストックの有効活用やリニューアル、コンバージョンといった選択肢にも改めて注目が集まる可能性があります。今後は自然環境との調和を図りながら、既存物件の価値向上を通じた持続可能な不動産活用についても検討の余地があるのではないでしょうか。
Ⅲ.まとめ
近年の軽井沢では、富裕層の増加や多拠点居住ニーズの高まり、堅調な観光需要を背景に不動産市場の活況が続いています。また、マンション、ホテル、コンドミニアムなど多様なアセットの開発が進み、市場は新たな成長局面を迎えています。一方で、その成長を支えている根源的な価値は、利便性や資産性だけではありません。
前出の土屋氏は著書(注5)の中で、「軽井沢が軽井沢らしさを維持しているベースには、この町を別荘地として開いた宣教師達の『娯楽を人に求めずして自然に求めよ』の精神が生き続けている」と述べています。
四季折々の豊かな自然、美しい景観、長年にわたり培われてきた別荘文化といった、軽井沢ならではの魅力こそが、この地を特別な存在にしています。土屋氏の言葉が示すように、自然との共生を大切にする軽井沢の精神は、今後もこの町の価値の源泉であり続けるでしょう。現在、軽井沢では自然環境や景観の保全に向けた制度改正が段階的に進められており、今後の不動産開発のあり方にも影響を与える可能性があります。
開発と環境保全の調和が一層求められる時代にあっても、軽井沢は「住む」「過ごす」「投資する」価値を兼ね備えた日本有数のリゾート地として、さらなる発展が期待されます。今後も、軽井沢の不動産市場の動向から目が離せません。

5 出所:土屋勇磨(2017年)『豊かな人生を愉しむための「軽井沢ルール」』秀和システム
提供:リサーチ・コンサルティング部 リサーチ課
長谷山 大樹:宅地建物取引士/不動産証券化協会認定マスター
仁井 景太:宅地建物取引士
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