不動産売却に必要な書類ガイド【2026年版】

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売主が自分で用意する書類は、思っているほど多くありません。多くは役所や法務局で取り直せますし、仲介会社が代わりに手配してくれるものもあります。

本記事では、売却の各段階で売主が求められる書類を一覧で示し、取得方法とタイミング、確定申告や特例で追加になる書類までまとめました。落とし穴は、再発行できない書類が一部あること。その代替ルートも含めて、順に確認していきましょう。

この記事の要点

  • 売主が用意する書類は、査定・媒介契約・売買契約・残代金決済・引渡しの5段階に分けて準備すると漏れにくい
  • 権利証(登記識別情報)と建築確認済証・検査済証は再発行制度がなく、紛失時は代替手続きが必要になる
  • 検査済証を紛失した場合は、特定行政庁が発行する台帳記載事項証明書で確認できる場合がある(手数料は自治体ごとに異なる)[出典7]
  • 印鑑証明書などは提出先によって求められる発行時期が異なるため、取得タイミングを事前に確認する
  • 3,000万円控除などの特例を使うなら、譲渡所得の内訳書や登記事項証明書など申告用の書類も別途必要になる

目次

1. 不動産売却の基本の必要書類

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まずはどの売却でも共通して必要になる7つの書類を押さえ、そのうえで、戸建て・マンションそれぞれに固有の書類と、条件によって必要になる書類を確認していきましょう。物件の種類や売主の状況によって必要な書類は変わるため、最終的には仲介会社に確認するのが確実です。家を売ろうと決めたとき、多くの方が最初につまずくのが「結局、何を揃えればいいのか分からない」という点です。不動産売却の必要書類は種類が多く、しかも取得先が法務局だったり市区町村役場だったりとバラバラなので、混乱してしまうのも無理はありません。ここでは査定から契約までの土台になる書類を整理してご紹介します。土地・戸建て・マンションのいずれを売却する場合でも、基本となる書類は共通する部分が多いので、まずは全体像をつかんでおきましょう。

1-1.本人確認書類

売主が本人であることを証明するために、運転免許証やマイナンバーカード、パスポートといった顔写真付きの証明書が求められます。不動産売買では大きな金額が動くため、仲介会社や司法書士は、なりすまし防止や不正取引防止のため厳格に本人確認を行います。

法人が売主になる場合は、登記事項証明書など、個人とは異なる書類が必要になる点も覚えておきたいところです。手元にある証明書の有効期限が切れかけていないか、この機会に一度確認しておくと安心です。

運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類をお持ちでない場合は、別の書類の提出を求められることがあります。必要書類は取引内容によって異なるため、事前に仲介会社へ確認しておくと安心です。

1-2.住民票

住民票は、登記簿上の住所と現在の住所が違う場合に、その住所のつながりを証明するために必要になります。結婚や引っ越しで登記時と住所や氏(姓)が変わっている方は特に注意が必要です。

取得先は住民票のある市区町村役場で、窓口のほかコンビニ交付に対応している自治体も増えてきました。マイナンバーカードがあれば早朝や夜間でも取得できるので、平日に役所へ行く時間が取りにくい方には心強い選択肢です。提出先によって求められる有効期間が異なる場合があるため、取得のタイミングは司法書士や仲介会社に確認しながら進めるのが安全です。

1-3.実印・印鑑証明書

登記手続きには実印の押印が必要で、その実印が本物であることを証明するのが印鑑証明書です。実印登録をしていない方は、契約までに市区町村役場で印鑑登録を済ませておく必要があります。

印鑑証明書も住民票と同様、コンビニ交付を利用できる自治体が多く、取得の手間はそれほどかかりません。ただし共有名義の不動産を売却する場合は、名義人全員分の実印と印鑑証明書が必要になる点を見落としがちです。家族間で「誰かが持っていればいい」と思い込んでいると、契約直前になって慌てることになりかねません。早い段階で名義人全員に声をかけておきましょう。また、登記手続きに利用する印鑑証明書は、原則として発行具3か月以内のもの等の制限があるため、住民票と同様、取得のタイミングには注意が必要です。

1-4.登記済権利証(登記識別情報通知)

いわゆる「権利証」は、その不動産の所有者であることを示す重要な書類です。2005年(平成17年)の不動産登記法改正以降は、紙の権利証ではなく12桁の英数字の「登記識別情報」が記載された「登記識別情報通知」に置き換わっています。この書類は一度発行されると再発行の制度がなく、紛失していても新しいものを取り直すことはできません。もし手元に見当たらない場合でも、事前通知制度や司法書士による本人確認情報の作成といった代替手段で売却を進められるケースが多いので、諦めずに早めに仲介会社や司法書士へ相談することが大切です。売却を思い立ったら、まずこの書類が手元にあるかどうかを確認するところから始めましょう。

1-5.固定資産税納税通知書(または評価証明書)

固定資産税納税通知書は、毎年春頃に自治体から送付される書類で、固定資産税評価額や物件の地積・床面積を確認する際に使います。売買契約における固定資産税の精算計算や、登記手続きの際の登録免許税の算出にも関わってきます。

紛失している場合は、物件所在地の市区町村役場(東京23区は都税事務所)で固定資産評価証明書を取得すれば代用できます。年度が替わると評価額も更新されるため、取得時期によっては最新年度のものを取り直す必要がある点も頭に入れておきましょう。

1-6.物件状況報告書

物件状況報告書は、雨漏りやシロアリ被害、過去の修繕履歴など、物件の状態を売主自身が申告するための書類です。役所や法務局で取得するものではなく、仲介会社が用意した書式に売主が記入して作成します。

ここで事実と異なる記載をしてしまうと、引渡し後にトラブルへ発展しかねません。分からない部分は「不明」と正直に書き、記憶が曖昧な修繕履歴があれば、契約前に一度落ち着いて振り返っておくことをおすすめします。

1-7.設備表

設備表は、エアコンや給湯器、床暖房といった設備の有無と故障状況を一覧にした書類です。物件状況報告書と対になる存在で、こちらも仲介会社の書式に売主が記入する形で作成します。

引渡し後に「聞いていた設備が動かない」といったトラブルを防ぐ役割があるため、設置してから使っていない設備や動作が怪しい機器は、正直に申告しておくと安心です。売却プロセスを通じて、この2つの書類は買主との信頼関係を左右する部分でもあります。

1-8.建築確認証・検査済証(戸建て)

戸建てを売却する際、建物が建築基準法に適合して建てられたことを示すのがこの2つの書類です[出典7]。買主にとっては住宅ローン審査や安心材料として重視されるポイントでもあります。

権利証と同じく、これらの書類も紛失した場合の再発行はできません。ただし特定行政庁が管理する台帳の記載事項を証明する「台帳記載事項証明書」を取得すれば、代わりの証明として使えます[出典7]。交付手数料は自治体ごとに定められています。古い建物では台帳自体が残っておらず証明書を発行できない場合もあるため、見当たらないからといって焦らず、まずは仲介会社や物件所在地の窓口に相談してみるのがよいでしょう。

1-9.管理規約・議事録・長期修繕計画書(マンション)

マンションを売却する場合に限り必要になるのがこの3点です。管理規約はペット飼育やリフォームの制限などのルールを、総会議事録は過去の決議内容を、長期修繕計画書は将来の修繕積立金の見通しを買主に伝えるために使います。

これらは管理組合や管理会社に保管されているのが一般的で、売主自身が原本を持っていない場合は管理会社に写しの発行を依頼する流れになります。修繕積立金の残高や値上げ予定は買主が特に気にする部分なので、早めに最新版を取り寄せておくと、後の売買契約時にスムーズですが、これらの書類は仲介会社が管理会社へ取得依頼を行うことが一般的です。

1-10.その他、売却不動産に関する書類

ここまでご紹介した書類は、多くの不動産売却で共通して必要になる基本的なものです。ただし、物件の種類や条件によっては、これら以外の書類が必要になるケースもあります。代表的な例は以下の通りです。

  • 土地の境界確認に関する資料がある場合:確定測量図、境界確認書(境界確定図)
  • 注文住宅や増改築の履歴がある場合:設計図書、工事記録書、建築確認申請書の副本
  • 借地権付きの物件を売却する場合:土地賃貸借契約書、地主の承諾書
  • 長期優良住宅の認定を受けている場合:長期優良住宅認定通知書
  • 旧耐震基準の建物を売却する場合:耐震診断報告書、耐震基準適合証明書
  • 既存住宅売買瑕疵保険に加入している、または加入を検討している場合:保険付保証明書、インスペクション(建物状況調査)報告書
  • 住宅ローンが残っている場合:ローンの残高証明書、返済予定表

こうした書類は、査定の段階ではまだ「必要かどうか」がはっきりしないことも多いため、無理に取捨選択しようとせず、まずはご自身の不動産に関係しそうな書類がどこに・どのような形であるかを整理しておくとよいでしょう。査定時に仲介会社へ共有しておけば、実際に必要な書類かどうかも含めて一緒に確認してもらえます。

2. 書類取得方法と準備のタイミング

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書類は「今すぐ使う分」だけでなく、次の段階で必要になる分も見越して早めに動くと慌てません。

前の章で挙げた書類は、実は売却のどの段階で提出するかによって優先順位が変わってきます。査定・媒介契約・売買契約・残代金決済・引渡しと、進むごとに求められる書類が増えていくイメージを持っておくと、手元にあるものと足りないものの整理がしやすくなるはずです。ここでは、それぞれの段階でいつ・何を用意すればよいのかを具体的に見ていきましょう。

2-1.査定依頼時にあると役立つ書類

  • 1-4 登記済権利証(登記識別情報)
  • 1-5 固定資産税納税通知書(または評価証明書)
  • 1-10 その他(測量図、購入時のパンフレットなど)

査定の段階では、手元に書類がなくても問題ありません。仲介会社は登記情報や周辺相場などをもとに査定を行うため、まずは気軽に相談することができます。

登記済権利証(登記識別情報)や固定資産税納税通知書、土地・戸建ての場合は測量図、マンションの場合は購入時のパンフレットなどがあると査定時に役立つことがありますが、見当たらない場合でも後から準備できるケースがほとんどです。売却を検討し始めた段階では、無理に書類を集めるよりも、まず仲介会社へ相談することをおすすめします。

2-2.媒介契約時に準備すべき書類

  • 1-1 本人確認書類
  • 1-4 登記済権利証(登記識別情報通知)
  • 1-6 物件状況報告書
  • 1-7 設備表
  • 1-8 建築確認済証・検査済証(戸建ての場合)
  • 1-9 管理規約・議事録・長期修繕計画書(マンションの場合)
  • 1-10 その他(測量図、購入時のパンフレットなど)

仲介会社と媒介契約を結ぶ段階になると、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)に加えて、登記済権利証または登記識別情報通知の提示も必要となります。これは所有者本人であることを仲介会社側が確認するための重要な書類で、原本を紛失している可能性がある場合には、この時点で仲介会社や司法書士へ相談しておくと後の手続きがスムーズです。

また、物件状況報告書と設備表の記入も必要になります。これらは売主が物件の現状をありのまま買主に伝えるための書類で、雨漏りやシロアリ被害の有無、給湯器やエアコンなどの有無・動作状況を正直に記載します。ここで実態と異なる内容を書いてしまうと、引渡し後に契約不適合責任を問われるリスクにつながります。

マンションの場合は、このタイミングで管理規約・使用細則・総会議事録・長期修繕計画書といった書類もあわせて求められることが多くなります。とはいえ、お手元になくても、これらの書類は仲介会社を通じて取得するケースが一般的のため、媒介契約の時点ですべての書類が揃っていなくても問題ないケースがほとんどです。

2-3.売買契約時の必要書類

  • 1-1 本人確認書類
  • 1-2 住民票(登記簿上の住所と現住所が異なる場合)
  • 1-3 実印・印鑑証明書
  • 1-6 物件状況報告書(2-2で記入したもの)
  • 1-7 設備表(2-2で記入したもの)

売買契約の締結では、実印と印鑑証明書、本人確認書類が必要になります。また、登記簿上の住所と現在の住所が異なる場合は、そのつながりを証明する住民票も必要です。提出先によって求められる有効期間が異なることがあるため、取得のタイミングは司法書士や仲介会社に確認しながら進めましょう。

2-4.引渡し時に必要な書類

  • 1-1 本人確認書類
  • 1-2 住民票(登記簿上の住所と現住所が異なる場合)
  • 1-3 実印・印鑑証明書
  • 1-4 登記済権利証(登記識別情報)の原本
  • 1-5 固定資産税納税通知書

引渡しの日は、所有権移転登記の手続きと残代金決済が同時に進みます。ここでは登記済権利証(登記識別情報)の原本、実印、印鑑証明書、本人確認書類のほか、住宅ローンが残っている場合は抵当権抹消に必要な書類一式が加わります。抵当権抹消書類は金融機関から発行されるもので、完済のタイミングに合わせて金融機関側が準備するケースがほとんどですが、事前に金融機関への連絡が必要になります。仲介会社に必要な手続きを相談しておくと、当日の流れが滞りません。

固定資産税や管理費・修繕積立金は引渡し日を基準に日割り精算するのが一般的なので、その計算に使う固定資産税納税通知書も仲介会社に連携する必要があります。書類が1点でも欠けると当日の決済が完了しないこともあるため、ゆとりを持って司法書士や仲介会社と最終チェックをしておくと安心です。

3. 不動産売却後の確定申告に必要な書類

売却の翌年2月16日から3月15日の間に、譲渡所得の計算書類一式をそろえて申告するのが基本の流れです。

無事に決済・引渡しが終わっても、それで手続きが全部終わったわけではありません。不動産を売って利益(譲渡所得)が出た場合は、原則として確定申告が必要になります[出典1]。引渡しでほっとひと息ついたところに申告書類の話が出てくると、面倒に感じる方も多いはずです。ただ、揃えるべき書類は決まっているので、順番に確認していけば迷うことはありません。ここでは申告時に求められる主な書類を、取得のしやすさも含めて見ていきます。

3-1.確定申告書

確定申告書は税務署の窓口や国税庁のサイトで入手でき、譲渡所得用の申告書は通常の申告書に加えて「譲渡所得の内訳書」の添付が求められます[出典2]。これは売却した不動産の所在地や売却価格、取得費、譲渡費用を記入する書類で、税額計算のベースになる部分です。手書きでも作成できますが、e-Taxを使えば入力した数値がそのまま計算に反映されるため、計算ミスを防ぎやすくなります[出典2]。

3-2.譲渡価格がわかるもの:売却物件の売買契約書(コピー)

売却した不動産の売買契約書は、譲渡所得の計算式における「譲渡価格」を証明する書類であり、確定申告書の作成に欠かせない書類です。売却価格そのものを証明するだけでなく、契約日や引渡し日、特約の内容まで記載されているため、税務署への説明資料としても重要な役割を持ちます。原本は買主とのやり取りや今後のトラブル対応のために手元に残しておき、必須ではありませんが、申告用にはコピーを用意するのが一般的です。もし契約書を紛失してしまった場合は、仲介を依頼した仲介会社に控えが保管されていることが多いので、まずは担当者に相談してみましょう。個人間売買で仲介会社を介さずに契約した場合は、司法書士や取引に立ち会った関係者に確認すると、控えや取引内容がわかる資料を入手できることがあります。契約書は売却後の確定申告だけでなく、将来的に取得費を証明する場面でも使う可能性があるため、申告後もすぐに処分せず保管しておくことをおすすめします。

3-3.取得費がわかるもの:購入時の売買契約書(コピー)

譲渡所得は「売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて」計算するため、購入時の契約書は取得費を証明する土台になります[出典1]。取得費が分からないと、売却価格の5%を概算取得費として計算せざるを得なくなり、結果的に税負担が重くなるケースが少なくありません。数十年前に購入した実家を相続して売却するような場合、契約書が見当たらないという相談も珍しくないのが実情です。心当たりのある書棚や実家の書類箱を探しても見つからないときは、購入時に利用した仲介会社や、住宅ローンを組んだ金融機関に記録が残っていないか問い合わせてみる方法があります。購入時の契約書が見つからない場合でも、住宅ローン関係書類や各種領収書など、購入時の資料が残っていないか確認してみましょう。取得費を証明できる資料が増えることで、計算に役立つ場合があります。

契約書そのものが見つからなくても諦めずに周辺資料を集めてみてください。

3-4.譲渡費用がわかるもの:仲介手数料や印紙税の領収書

仲介手数料や印紙税の領収書は、譲渡所得を計算するうえでの「譲渡費用」を証明する書類です[出典1]。仲介手数料は仲介会社から発行される領収書を、印紙税は売買契約書に貼付した収入印紙そのものが証明になります。ほかにも、測量費用や解体費用、印紙税以外の手数料など、売却のために直接支払った費用の領収書は捨てずに残しておきましょう。これらをまとめて保管しておけば、譲渡費用の集計で慌てることがなくなります。

4. 特殊なケースにおける必要書類

相続・後見・海外居住・法人名義など特殊な事情では、通常の書類に加えて追加の証明資料が必要です。

4-1.相続した不動産を売却する場合

相続した不動産は、残代金決済・引渡しまでに名義を被相続人から相続人へ変更する相続登記を済ませておく必要があります。相続登記は、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があり、令和6年4月1日より前に発生していた相続についても義務化の対象で、期限は最短で令和9年3月31日までとされています[出典5]。この登記を後回しにすると、いざ買主が見つかっても売買契約に進めず、話が流れてしまう恐れがあるので注意が必要です。

4-2.成年後見人が売却する場合

成年後見人が代わりに売却する場合は、家庭裁判所の許可を得ることが欠かせません。居住用不動産の処分にあたるときは、許可のない売却は無効になってしまうため、この手続きを飛ばすことはできないのです[出典6]。申立てができるのは成年後見人や保佐人、補助人で、申立先は後見開始の審判をした家庭裁判所になります[出典6]。

申立てには申立書のほか、なぜその不動産を売る必要があるのかを説明する資料、対象不動産の登記事項証明書などが求められます[出典6]。申立手数料は収入印紙800円分で、これとは別に裁判所ごとに定められた郵便料もかかります。

4-3.海外在住者が売却する場合

日本国内に住民票を残していない海外在住の方が不動産を売る場合、印鑑証明書や住民票をそのまま取得できないという壁にぶつかります。国内に住所がないと市区町村での発行ができないため、代わりに在留する国の日本大使館・領事館で発行してもらうサイン証明書(署名証明書)と在留証明書を用意するのが一般的な対応です。これらは実印や印鑑証明書、住民票の代替として扱われることが多い書類です。

大使館・領事館での手続きは予約制のところも多く、日本国内の役所のように即日発行とはいかない場合があります。書類が整わなければ契約や決済そのものを進めることができないため、まずは大使館・領事館の予約状況を確認し、書類の取得にかかる期間を見込んだうえで、契約や決済の日程を調整するようにしましょう。

4-4.法人が不動産を売却する場合

法人名義の不動産を売却する場合は、個人の売却とは違い、その法人が実在し、売却の意思決定が適切な手続きを経ていることを示す書類が加わります。代表的なものが履歴事項全部証明書(登記簿謄本)と代表者印の印鑑証明書で、いずれも法人の登記を管轄する法務局で取得できます。ただし、必要となる書類は法人の種類や規模によって異なります。法人での売却を検討し始めたら、経理担当者や顧問税理士だけでなく、自社の場合どの書類・決議が必要になるのかを、司法書士にも早めに確認しておくと、直前でのつまずきを防ぎやすくなります。

5. 不動産売却時の懸念点と注意事項

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書類は「揃えて終わり」ではなく、有効期限や必要部数を把握し、紛失リスクを管理することでトラブルを防げます。

ここまで、売却の各段階で必要な書類から、確定申告や特殊なケースで求められる書類まで見てきました。ただ、実際の売却でつまずくのは「どの書類が必要か分からない」という場面よりも、揃えたはずの書類が使えなかったという場面です。有効期限が切れていた、共有名義人のうち1人分だけ足りなかった——こうした準備の詰めの甘さは、契約や決済の直前になって発覚しがちです。ここでは、せっかく集めた書類を無駄にしないための注意点を整理していきます。

5-1.書類の有効期限に注意

印鑑証明書や住民票には、提出先ごとに求められる有効期間があります。金融機関の融資関連手続きや登記申請では、発行から一定期間内のものでないと受け付けてもらえないケースが少なくありません。

厄介なのは、この期限の考え方が提出先によって異なる点です。司法書士に依頼して決済当日に登記申請を行う場合と、契約締結時に提示するだけの場合とでは、求められるタイミングが変わってきます。売買契約から引渡しまで数週間から数か月かかることもあるため、契約時に取得した印鑑証明書が決済日には使えなくなっている、という事態も起こり得ます。

対策としては、司法書士や仲介担当者に「いつまでに、どの書類を、何通用意すればよいか」を早めに確認しておくことです。特に残代金決済日が確定した段階で、登記に使う印鑑証明書だけは決済直前に取り直すくらいの心づもりでいると安心です。役所の窓口が混み合う時期は交付に時間がかかることもあるので、余裕を持ったスケジュールを組んでおきましょう。

5-2.権利証の紛失リスク

紛失していても売却自体を諦める必要はありません。司法書士が本人確認情報を作成して代替する方法や、法務局から売主本人へ登記申請の意思確認が届く事前通知制度など、いくつかの代替手段が用意されています。ただし、これらの手続きは通常の登記より時間も費用もかかる傾向があるため、紛失に気づいたらできるだけ早く仲介会社や司法書士に相談することが肝心です。

「実家の権利証がどこにあるか分からない」という相談は決して珍しくありません。焦って自己判断で進めず、専門家に状況を伝えて手順を確認するところから始めれば、大きな遅れにはつながりにくいものです。

5-3.共有名義物件での連携不足

親から相続した実家や夫婦で購入したマイホームが共有名義になっている場合、売却には共有者全員の同意と書類提出が必要です。誰か一人でも印鑑証明書の準備が遅れたり、遠方に住んでいて書類のやり取りに時間がかかったりすると、売却全体のスケジュールに影響します。

特に共有者の一人と連絡が取りにくい状態が続くと、契約直前になって「まだ書類が整っていない」という事態にもなりかねません。共有名義の売却では、誰がいつまでに何を準備するかを早い段階で一覧化し、進捗を共有しておくことがスムーズな売却につながります。仲介担当者に共有者全員の連絡先を伝え、書類のやり取りを一本化してもらうのも有効な手段です。

6. まとめ

書類の準備は、売却の速さを左右する大切な土台です。手元にあるもの(権利証・購入時の契約書・パンフレット類)を探す作業と、役所や法務局で取り直すものを分けて考えると、やるべきことが一気に整理されます。印鑑証明書のように提出先ごとに求められる発行時期が違うものは、取得のタイミングを仲介会社や司法書士と合わせておくと無駄がありません。特に、相続した実家を売る方、共有名義の物件を扱う方、海外にお住まいの方は、書類集めそのものに時間がかかります。半年後の自分が慌てずに済むよう、今の段階で一度棚卸しをしておきませんか。「これは手元にあるが、あれが見当たらない」という途中経過のご相談でも構いません。売るかどうか決まっていない段階でも、お気軽にお問い合わせください。

7. よくある質問(FAQ)

土地や家を売るとき、売主が用意する書類にはどんなものがありますか?

最低限そろえたいのは、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)、実印と印鑑証明書、住民票、登記済権利証(または登記識別情報通知)、固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書の5点です。建物がある場合は建築確認済証・検査済証、マンションなら管理規約・総会議事録・長期修繕計画書が加わります。媒介契約時には物件状況報告書と設備表も売主が記入して提出します。

必要書類はどのタイミングで取得すればよいですか?

役所で取る印鑑証明書や住民票は、契約・決済の日程が固まってから取得するのが安全です。早く取りすぎると取り直しになることがあるためです。一方、権利証・購入時の売買契約書・建築確認済証など「家にあるはずの書類」は、査定を依頼する前の段階で探し始めてください。見つからない書類があった場合、売却開始前から仲介担当者に相談することで安心して売却活動が進められます。

権利証(登記識別情報)を紛失した場合、再発行できますか?

再発行はできません。ただし紛失していても売却自体は可能で、登記所からの事前通知制度を使う方法や、司法書士など資格者代理人による本人確認情報を作成してもらう方法があります。後者は別途費用と日数がかかるため、決済日を決める前に司法書士へ相談しておくと安心です。建築確認済証・検査済証も同じく再交付されず、こちらは特定行政庁が発行する台帳記載事項証明書で代替します。

相続した不動産を売るとき、追加で必要な書類は何ですか?

相続した不動産は、相続登記が令和6年4月1日から義務化されており、売却の予定があるかどうかに関わらず、早めに手続きを進めておく必要があります。それ以前に発生した相続についても、最短で令和9年3月31日までに申請することとされています[出典5]。正当な理由なく怠ると過料の対象となる可能性もあるため、注意が必要です。

そのうえで、不動産を売却する場合は、残代金決済・引渡しまでに相続登記を済ませ、名義を相続人に移しておく必要があります。手続きには被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書、遺産分割協議書などが必要です。書類集めに数週間から数か月かかることもあるため、売却を考え始めた時点で着手してください。

売却後の確定申告では、どんな書類を添付しますか?

譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)に加え、売却時と購入時の売買契約書の写し、仲介手数料や印紙税などの領収書の写しをそろえます[出典1][出典2]。3,000万円の特別控除や所有期間10年超の軽減税率といった特例を使う場合は、売った家屋・敷地の登記事項証明書などの添付書類が別途求められます[出典3][出典4]。購入時の契約書が見つからないと取得費を証明できず税負担が重くなるおそれがあるため、早めに探しておきましょう。

金子洋平

金子洋平

iYell株式会社 執行役員
2009年 東証プライム(旧東証一部)上場のSBIホールディングス入社。SBIアルヒ株式会社(旧SBIモーゲージ株式会社)に配属。その後、株式会社じげん(旧株式会社アイアンドシー・クルーズ株式会社)での勤務を経験。2017年 iYell株式会社に入社。執行役員及びフィンテック推進室責任者として、銀行及び大手住宅事業者をはじめとする外部企業とのアライアンス領域を担当。2018年 一般社団法人不動産テック協会の理事に就任(現任)。

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