
「不動産を売りたいけれど、何から始めればいいのかわからない」「不動産業者はどう選べばいいのか」など、初めての不動産売却には不安がつきものです。
本記事では、不動産会社の選び方から売却の流れ、必要な費用や税金、注意点、よくある失敗例、2026年の市場動向までをわかりやすく解説します。
この記事の要点
●不動産売却の成否は業者選びで大きく変わるため、複数社での比較が必須
●売却の流れは相談から引き渡しまで数か月かかることが多く、事前準備が重要
●仲介手数料や税金など諸費用の内訳を把握で、手取り額の見通しが容易に
●価格設定ミスや書類不足など、よくある失敗例を知りリスク回避
●2026年の市場動向を踏まえた売却戦略がもたらす、有利なタイミングでの売却
1. 不動産売却の基本知識
不動産売却は、目的を明確にして、仲介と買取の違いを理解することから始まります。
1-1.不動産売却とは?
不動産売却とは、所有している土地や建物を第三者に譲り渡し、その対価として金銭を受け取る取引を指します。
言葉にすると単純ですが、実際には「誰に売るか」「どんな方法で売るか」によって進め方が大きく変わってきます。初めて家を売る方の多くが戸惑うのは、この違いではないでしょうか。
不動産の売却方法は、大きく分けて「仲介」と「買取」の2種類があります。仲介は不動産会社に買主探しを依頼し、広告やポータルサイトへの掲載を通じて一般の購入希望者と契約を結ぶ方法です。時間はかかるものの、市場価格に近い金額での成約が期待できます。
一方の買取は、不動産会社自身が直接買い取る方法で、早ければ数日から1週間程度で現金化できるのが特徴です。ただし売却価格は仲介の6〜8割程度になることが一般的で、スピードと価格のどちらを優先するかで選び方が変わってきます。
たとえば、相続した空き家をすぐに手放したい場合は、買取であれば老朽化した建物でもそのままの状態で引き取ってもらえるケースが多く、空き家買取や事故物件買取といった専門サービスを扱う会社も増えています。
反対に、時間に余裕があり少しでも高値で手放したいなら、仲介を選んで複数の購入希望者からの反応を待つほうが有利です。マンション買取や戸建て売却、土地売却など、物件種別によっても異なるため、自分の持ち家がどのカテゴリーに属するのかを整理しておくことで、この先の会社選びや進め方がぐっと考えやすくなります。
1-2.売却の目的とメリット
住み替えのための売却、相続した実家の整理、離婚に伴う財産分与、住宅ローンの返済負担を軽くするための売却など、目的は人によってさまざまですが、最初に目的を明確化することで後の判断のしやすさが変わってきます。目的があいまいなまま動き出すと、価格交渉の場面で判断がぶれたり、値下げに応じるべきかどうか迷ったりしやすくなります。
たとえば住み替えが目的なら、次の住まいの購入資金や引っ越しのタイミングと売却のスケジュールをすり合わせる必要があります。逆に相続した土地を売りたいだけであれば、多少時間がかかっても納得のいく価格を待つという判断もできるはずです。目的を紙に書き出してみるだけでも、優先すべきものが「価格」なのか「スピード」なのかが見えてきます。
不動産を売却する主なメリットは次の3点に整理できます。
● まとまった現金を得られ、住宅ローンの完済や新居購入の頭金に充てられる。
● 固定資産税や都市計画税、維持管理の手間といった保有コストから解放される。特に空き家は放置による劣化や近隣トラブルのリスクもあるため、早めの売却が最終的な負担減につながる。
● 相続や財産分与など、家族間の資産整理をスムーズに進められる。
一方で、仲介による売却では成約時に不動産売却手数料(仲介手数料)が発生する点も押さえておきましょう。法律上の上限は「売却価格×3%+6万円(+消費税)」という速算式で計算され、たとえば3,000万円で売れた場合は105万6、000円 が目安になります[出典9]。
成功報酬であるため、売れなければ支払う必要はありません。目的とメリット、そして発生するコストをあらかじめ把握しておくことが、不動産会社選びを迷わず進めるための土台になります。
2. 高く売るための不動産会社選び
不動産売却の成否は会社選びで決まるため、複数社比較と担当者の質の見極めが重要となります。
不動産を高く、しかも安心して売却するためには、どの不動産会社に依頼するかが最初の分かれ道になります。物件の価値そのものは変わらなくても、任せる相手によって成約価格や売却までの期間は大きく変わってきます。ここからは、後悔しない不動産会社選びの重要なポイントを説明していきます。
2-1.信頼できる不動産会社の見極め方
信頼できる不動産会社かどうかは、会社の知名度や企業規模だけでは判断できません。まず確認したいのが、実際に扱っている物件種別と売買仲介の実績です。
賃貸仲介ばかりを得意とする会社に売却を依頼しても、買主探しのノウハウが浅く、時間ばかりかかってしまう可能性があります。免許番号のかっこ内の数字も目安のひとつで、たとえば「東京都知事(3)」のように更新回数が多いほど営業年数が長いことを示しています。[出典1]
さらに重要なのが営業担当者の対応力です。査定を依頼した際、根拠を数字で示してくれるか、質問への返信が1〜2日以内に来るか、といった点は実際にやり取りしてみないと分かりません。査定書に「周辺の成約事例」「路線価」「築年数による減価率」などの具体的な数値の裏付けがあるかを確認してください。「なんとなく高め」の査定額を提示してくる会社は、契約を取るための釣り価格である可能性があります。
物件近くに店舗を構える地域密着型の会社は、そのエリア特有の需要(学区や再開発計画など)に詳しいという強みがあります。一方で、現在は購入希望者の多くが不動産ポータルサイトから物件を探すことが多いので、ネット広告でのアピール力も見極めのポイントになるでしょう。
2-2.大手と中小のメリット・デメリット
大手不動産会社と中小・地域密着型の会社は、それぞれ得意分野が異なります。どちらが優れているという単純な話ではなく、売却したい物件の特性や希望するスピード感によって向き不向きがあると考えてください。
たとえば築30年の戸建てを売却したい場合、地元の地主や購入希望者と直接つながっている中小企業なら、地域の情報網を活かしてターゲットをしぼったアプローチをしてくれることがあります。逆に、都心の駅近マンションのようにポータルサイトでの露出量が成約を左右する物件では、広告予算が潤沢な大手の方が有利に働くケースもあります。
2-3.複数社への査定依頼の重要性
査定は1社だけに任せず、最低でも3社程度に依頼しましょう。査定額は会社ごとの得意分野や販売戦略によって数百万円単位で差が出ることがあり、1社の提示額だけを信じてしまうと、本来より安かったり、高く販売してしまう可能性があるためです 。
複数社に依頼する際は、一括査定サービスを活用すると効率的です。物件情報を一度入力するだけで複数の会社から査定結果が届き、比較の手間を大幅に減らせます。ですが、査定額だけで判断してしまわないよう注意が必要で、例えば最初の段階では相場からかけ離れた高値を提示していても、「専任媒介契約」を取ることが目的で、後から値下げを提案してくる例もあるケースもあります。
査定書を比較する際は、金額だけでなく「販売戦略の具体性」「想定される販売期間」「値下げが必要になった場合の考え方」まで確認しましょう。土地を売りたい、あるいは古家付きの土地を売却したいという場合は、更地渡しと現状渡しそれぞれのケースで査定額に違いが出るか尋ねてみるのも有効です。空き家の買取や事故物件のように通常の仲介では時間がかかりやすい物件は、買取に強い会社を査定先に含めておくと、選択肢の幅が広がります。
| 項目 | 大手不動産会社 | 中小・地域密着型会社 |
| 集客力 | 全国規模の広告網とポータルサイト掲載数が豊富 | エリア内の見込み客リストや地元ネットワークに強み |
| 対応エリアの専門性 | 支店ごとの担当替えがあり地域特性への理解にばらつき | 地元の学区・再開発情報・相場に精通していることが多い |
| 価格交渉力 | マニュアル化された対応で安定感がある | 担当者の裁量が大きく柔軟な交渉が期待できる場合も |
| サポートサービス | 豊富なサポートサービスがある | サポート範囲は限定的 |
| 売却スピード | 顧客多数でマッチング精度が高い | エリア特性には強みがあるが、ターゲット層は限定的 |
3. 不動産売却の流れ
不動産売却は相談から引き渡しまで概ね3〜6ヶ月かかり[出典6,7]、媒介契約選びと事前準備が結果に大きく影響します。
信頼できる不動産会社の候補が絞れたら、いよいよ具体的な売却の流れに入ります。どんなステップを踏むのかあらかじめ全体像をつかんでおくと、途中で「これは普通のことなのか、それとも問題があるのか」と不安になる場面が減るので事前に確認しておきましょう。
3-1.売却相談から引き渡しまでのステップ
不動産売却の流れは、大まかに「査定・相談」「媒介契約」「売却活動」「売買契約」「引き渡し」という5段階で進みます。査定を経て会社を決めたあとは、媒介契約を結び、いよいよ物件情報を市場に出す段階に移ります。ここから買主が見つかるまでには、立地や価格帯にもよりますが平均で3ヶ月前後、場合によっては半年近くかかることもあります。[出典6,7]
買主が見つかると、売買条件をすり合わせて売買契約を締結します。この際に手付金として売却価格の5〜10%程度を受け取るのが一般的な慣行です。契約後は決済・引き渡し日を決め、住宅ローンが残っている場合は抵当権抹消の手続きも並行して進める必要があります[出典10]。引き渡し当日には、鍵の受け渡しと同時に残代金の受領、所有権移転登記の手続きが行われ[出典2]、これでようやく取引が完了します。
急いで現金化したい場合は、買主を探す仲介ではなく、不動産会社が直接物件を買い取る「不動産買取」という選択肢もあります。買取なら早ければ1ヶ月程度で現金化できますが、売却価格は仲介の6~8割程度になる傾向があります。 事故物件や空き家など、通常の仲介では買主が見つかりにくい物件では、買取を検討する売主も少なくありません。
3-2.媒介契約の種類と選び方
媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があり、それぞれ複数社への依頼可否や販売状況の報告義務が異なります[出典5]。どれを選ぶかで、売却活動の進み方や不動産会社の本気度も変わってくるため、内容の違いを理解しておきましょう。
3-3.売却活動の準備と実施
媒介契約を結んだら、実際の売却活動に入ります。まず取り組みたいのが、物件の魅力を伝えるための準備です。室内の写真撮影前には水回りの掃除や不要な家具の片付けを済ませておくと、ポータルサイトに掲載される写真の印象が大きく変わります。実際、写真の質だけで問い合わせ数が2倍近く変わることもあると言われています。
土地を売りたい場合は、境界確定測量が済んでいるかどうかも早めに確認しておきましょう。境界が曖昧なままだと、買主側の住宅ローン審査で引っかかったり、契約直前でトラブルになったりする恐れがあります。測量には数週間から1〜2ヶ月かかる場合もあるため、売却相談の初期段階で不動産会社に確認しておくと安心です。売却活動が始まると、レインズ(指定流通機構)への登録[出典7]、ポータルサイトへの掲載、チラシ配布、内覧対応と、複数のチャネルで並行して買主を探していきます。問い合わせが少ない、内覧はあるのに成約に至らないといった状況が1ヶ月以上続く場合は、価格設定や写真、広告の見せ方に原因がないかを担当者と一緒に見直したほうが良いでしょう。反響が乏しいまま漫然と待ち続けるのではなく、定期的な状況確認を習慣にすることが、結果的に売却期間の短縮につながります。
| 契約の種類 | 複数社への依頼 | 自己発見取引 | 報告義務 | 有効期間 |
| 一般媒介契約 | 可能 | 可能 | 法的義務なし | 定めなし (目安3ヶ月) |
| 専任媒介契約 | 不可 | 可能 | 2週間に1回以上 | 3ヶ月以内 |
| 専属専任媒介契約 | 不可 | 不可 | 1週間に1回以上 | 3ヶ月以内 |
4. 不動産売却にかかる費用
不動産売却でかかる費用は仲介手数料・税金・諸経費の3種類で、控除制度の活用が節税の鍵となります。
売却活動が進み、いよいよ買い手が見つかった段階で気になるのが「結局いくら手元に残るのか」という点ではないでしょうか。不動産の売却では、仲介手数料や税金、細かな諸経費が差し引かれた残りが実際に手元に残る金額となります。事前にどれくらいの費用がかかるのかを把握しておくことが、資金計画を立てるうえで重要となります。ここでは費用の内訳と、負担を軽くするための控除制度について具体的に見ていきます。
4-1.仲介手数料や税金の詳細
不動産会社に売却を依頼した場合、成約時に支払う仲介手数料が最も大きな費用項目です。宅地建物取引業法では上限額が定められており、売買価格400万円超の部分については「売買価格×3%+6万円」に消費税を加えた金額が上限とされています[出典9]。たとえば3,000万円で売却が成立した場合、仲介手数料の上限は96万円プラス消費税で、税込では105万6,000円 となります[出典9]。契約前に確認しておくと安心です。
税金面では、印紙税と登録免許税、そして譲渡所得にかかる所得税・住民税が発生します[出典3]。印紙税は売買契約書に貼付するもので、契約金額1,000万円超5,000万円以下であれば軽減税率適用時1万円が目安です。
譲渡所得税は売却益に対して課されるもので、所有期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく変わります[出典3]。5年以下の短期譲渡は税率が約39%、5年を超える長期譲渡は約20%とされており、売却のタイミングを検討する際は、この所有期間の区切りも意識しておく必要があります。
4-2.売却時の諸経費とその計算方法
仲介手数料や税金以外にも、見落としがちな諸経費が複数存在します。代表的なものは、住宅ローンが残っている場合の抵当権抹消登記費用で、司法書士への報酬を含めておおむね3万円前後です[出典10]。加えて、引っ越し費用や測量費、建物の解体費用が発生するケースもあります。特に古家付きの土地を売る場合、解体費用は木造住宅で坪あたり4万円から5万円が相場とされ、30坪の家屋なら120万円から150万円ほど見込んでおく必要があります。
こうした諸経費を大まかに計算するには、まず売却価格の5%から7%程度を目安に見積もる方法が実務上よく使われます。3,000万円の売却であれば150万円から210万円程度が諸経費の目安とされています。ここに住宅ローンの残債があれば、その一括返済に伴う繰上返済手数料も加わります[出典8]。金融機関によって数千円から数万円と幅があるため、事前に契約書や窓口で確認しておきましょう。費用の全体感を押さえておくことで、売却後に「思ったより手元に残らなかった」という事態を避けやすくなります。
4-3.特別控除を利用した税金軽減の方法
売却益にかかる税負担を軽くする制度として広く知られているのが、居住用財産を売った場合の3,000万円特別控除です[出典11]。マイホームを売却して得た譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける制度で、この控除を使えば譲渡所得税がゼロになるケースも少なくありません[出典11]。たとえば売却価格3,000万円、取得費や諸経費を差し引いた譲渡益が2,500万円だった場合、この控除を適用すれば課税対象額は0円になります[出典11]。
ただし、適用には要件があります。自分が居住していた家屋であること、売却した年の前年・前々年にこの特例を使っていないことなどが条件とされており、単なる投資用物件や空き家買取のケースでは適用できない場合が多いので注意が必要です[出典11]。また、所有期間が10年を超えるマイホームを売却した際には、軽減税率の特例を併用できる場合もあり、控除後の課税所得に対してさらに低い税率が適用されることがあります[出典11]。
制度の詳細は税制改正により変わることがあるため、売却の年に応じて最新の要件を税務署や税理士に確認しておくのが確実です。控除を正しく活用できるかどうかで、手取り額に数百万円単位の差が生まれることもあるため、申告前の準備は丁寧に進めておきましょう。
| 契約金額 | 印紙税率 | 軽減後の税額(目安) |
| 500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5千円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
5. 売却時の注意点
売却価格は相場より高く設定せず、内覧対応と確定申告の準備を早めに整えることが成功の鍵となります。
5-1.売却価格の設定と市場調査の重要性
費用や税金の計算が済むと、いよいよ気になるのが「いくらで売り出すか」という価格設定ではないでしょうか。ここで気を付けたいのが、周辺相場を考慮せずに希望額だけで売り出してしまうというケースです。周辺相場と乖離した金額設定にしてしまうと内覧の申し込みすら入らないまま数ヶ月が過ぎてしまうことがあります。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」[出典4]や、レインズマーケットインフォメーション[出典7]といった公的データで直近の成約事例を確認し、まずは市場の相場を把握しましょう。同じ地域・同じ築年数・同じ面積帯の物件がどの価格帯で売れているかを見れば、おおよその適正価格帯が見えてきます。あわせて複数の不動産会社に査定を依頼すれば、査定額の幅から相場観をより正確に把握できます。
注意したいのは、査定額がそのまま売却価格になるわけではないという点です。査定額はあくまで目安であり、実際の売り出し価格は売主の事情や市場の反応を見ながら調整します。売り出し当初は相場よりやや高めに設定し、反響を見て2〜3ヶ月ごとに見直すという柔軟な戦略が、持ち家売却では現実的な進め方といえます。
5-2.内覧時のポイントと注意事項
内覧は購入希望者が実際に家の中を見て、住む姿を思い描く大切な機会です。この場での印象が、成約に至るかどうかを大きく左右します。まず意識したいのは清掃と整理整頓で、水回りの水垢やカビ、玄関の靴の乱れなど、細部の汚れは想像以上に目につきます。プロのハウスクリーニングを利用する場合、費用は水回り一式でおおむね5万〜10万円程度が相場となります。
採光や風通しも印象を左右する要素です。内覧の予約が入ったら、可能な限りカーテンを開け、室内の電気をすべて点灯させておきましょう。部屋が明るく見えるだけで、購入希望者の心理的なハードルが下がります。また、収納の中まで見られることが多いため、押し入れやクローゼットも整理しておくと好印象につながります。
注意点として、内覧中は売主が同席しすぎないことも挙げられます。営業担当者に案内を任せ、質問があれば簡潔に答える程度にとどめると、購入希望者が率直な感想を話しやすくなります。逆に、家の思い出話や過度なアピールを続けると、かえって冷静な判断を妨げてしまうこともあるので注意しましょう。ペットやにおいの対策、近隣への配慮も忘れず、内覧予定が入るたびに一つずつ準備を整えていく姿勢が売却成功への近道になります。
5-3.売却後の確定申告について
不動産売却が完了した後、忘れてはいけないのが確定申告です[出典12]。売却によって利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年の2月16日から3月15日までの期間に申告する義務が生じます[出典12]。譲渡所得は「売却価格−(取得費+譲渡費用)」で計算し、所有期間が5年を超える長期譲渡か、5年以下の短期譲渡かによって税率が大きく異なる点は、前章で触れた費用計算とあわせて押さえておきましょう。[出典3]
申告の際には、売買契約書や領収書、登記事項証明書といった書類が必要になります[出典12]。これらを紛失していると取得費の証明が難しくなり、結果として譲渡所得が実際より多く算出されてしまうこともあるため注意が必要です。特にマイホームを売却した場合に使える3,000万円の特別控除を適用するには、確定申告そのものが必須条件になっています[出典11、12]。控除を受けられる要件を満たしていても、申告を忘れると特例が適用されず、余計な税負担を負う可能性があります。
逆に、売却によって損失が出た場合でも、一定の要件を満たせば損益通算や繰越控除が使える制度があります[出典12]。こうした制度は自動的に適用されるわけではなく、申告して初めて反映される仕組みです。不動産売却は引き渡しで終わりではなく、翌年の申告まで含めて一つの取引と捉えておきましょう。
6. よくある失敗例とその回避策
業者選び・価格設定・書類準備、この3点でつまずかないよう、事前に備えておきましょう。
6-1.業者選びの失敗
不動産会社側の販売活動が不十分で売却の機会を逃してしまうケースがあります。たとえば、自社の利益を優先して他社からの問い合わせを拒否したり、ポータルサイトへの情報掲載が少なく魅力が伝わらなかったりすることで、何か月も買い手がつかない事象もあります。
契約前に「具体的な販売戦略(どの媒体にどう掲載するか)」を確認することが重要です。また、過去の売却実績やレインズへの登録・都度報告、問い合わせに対するレスポンスの早さなどをチェックしましょう。複数社を比較し、広範囲へ精力的にアピールしてくれる販売力・透明性のある会社を選ぶことが成功のカギとなります。
6-2.売却価格の設定ミス
価格を相場より高めに設定し、結果的に売却期間が長引いてしまう例は非常に多く見られます。売り出し価格が相場より1〜2割高いと、内覧の申し込み自体が減り、値下げのタイミングを逃してしまいがちです。反対に、焦って相場より安く設定し、数百万円単位で損をしてしまったというケースもあります。
こうした失敗を防ぐには、周辺の成約事例や公示地価、直近の取引動向を踏まえた価格設定が重要です[出典4]。複数の不動産会社から査定を取り、査定根拠を比較したうえで、売り出し価格と最低希望価格を事前に決めておくとよいでしょう。目安として、売り出しから1〜2か月で反応が薄い場合は、5%程度の価格見直しを検討する不動産会社が多いようです。価格は一度決めたら固定ではなく、市場の反応を見ながら柔軟に調整することが結果的に高値売却につながります。
6-3.必要書類の準備不足
契約直前になって権利証や登記識別情報が見つからず、決済日を延期せざるを得なかったという失敗例もあります。特に相続した不動産や長年住んでいなかった物件では、固定資産税納税通知書や境界確認書類が手元にないケースが目立ちます。書類不備はトラブルのもとになるだけでなく、買主側の住宅ローン審査にも影響し、売却全体のスケジュールを遅らせる原因になりかねません。
媒介契約を結んだ段階で必要書類の一覧を業者に確認し、早めに揃え始めておきましょう。登記識別情報を紛失している場合は司法書士による本人確認情報の作成が必要になることもあり[出典10]、手続きに数週間かかる場合があります。境界が未確定の土地では、隣地所有者との立会いによる境界確定測量が必要になることもあるため、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。書類の不備は些細に見えて売却全体を左右する要素となるため意識しておきましょう。
7. 2026年の不動産市場の動向
2026年は金利動向と価格の二極化が進むため、市場動向を踏まえた時期選びが売却成功につながります。
7-1.市場のトレンドと影響要因
失敗例を避けて準備を整えても、市場そのものが動いていると話が変わります。2026年の不動産市場では、まず目につくのが住宅ローン金利の上昇基調です。日銀の金融政策修正を受けて変動金利にも影響が及び始め、買主側の借入可能額が以前より抑えられる傾向にあります[出典8]。これは売却を考える方にとっても影響があり、買主の予算が縮小すれば、強気の価格設定が通りにくくなる傾向にあります。
一方で、都市部の駅近マンションや利便性の高いエリアの戸建てには、依然として根強い需要があります。東京23区や大阪市中心部などでは、築年数が経過した物件でもリノベーション前提の買取ニーズが高く、不動産買取を専門とする業者の活動も目立ちます。逆に地方や郊外の空き家、駅から距離のある土地は、買い手がつきにくくなっているのが実情です。空き家買取に特化した業者への相談が増えているのも、こうした地域差の表れといえるでしょう。
さらに、建築資材や人件費の高騰により新築価格が上昇し続けている点もあります。新築の価格が上がるほど、相対的に中古住宅への注目が集まりやすくなります。築浅の戸建てやマンションを売却する場合、この追い風を意識した価格戦略が有効です。物価上昇と金利上昇が同時進行する局面は珍しく、地域や物件種別によって明暗が分かれやすい年だと捉えておくとよいでしょう。
7-2.今後の見通しと売却戦略
こうした状況を踏まえると、「いつ売るか」の判断がこれまで以上に重要になってきます。金利がさらに上昇する可能性を考えると[出典8]、需要が底堅いうちに動くという選択は十分に理にかなっています。特に築年数が浅く、駅からの距離が近い物件を持つ方は、市場が変化する前に査定を受けておくと良いでしょう。
売却戦略としてまず意識したいのは、地域ごとの温度差を正しく把握することです。同じ都道府県内でも、駅前再開発が進むエリアと人口減少が続くエリアでは、査定額の付き方がまったく異なります。土地を売りたい、家を売るならどのタイミングが良いか迷っている方は、地元の取引事例に詳しい不動産会社に相談し、直近の成約価格を確認することから始めてください[出典4]。
もう一つの選択肢として、仲介による売却が長引きそうな物件では、不動産買取という手段もあります。仲介より価格は下がりやすいものの、売却が難航しがちな物件でも、買取業者なら現況のまま短期間で現金化できるケースが多いです。一括査定サービスを使えば、仲介向けと買取向けの両方の見積もりを同時に比較でき、市場感覚を掴む手間も省けます。市場が流動的な今だからこそ、複数の選択肢を並べて検討することが不動産売却の成功につながります。
8. まとめ
不動産売却を納得のいく形で終える為には、信頼できる業者選びから始まり、売却の流れの理解、費用や税金の把握、注意点と失敗例の確認、そして市場動向を踏まえた戦略まで、段階を踏んで進めていくことが大切です。特に初めての売却で、価格や税金面に不安を抱える方にとって、本記事の内容が次の一手への判断材料として役に立つはずです。実際の売却を検討し始めたら、まずは複数の不動産会社へ相談し、自分の物件に合った進め方を確認してみてください。
9. 出典
出典 1: 国土交通省「宅地建物取引業免許申請の手引き・ガイドライン」
出典 2: 法務省「不動産登記手続」
出典 3: 国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を売ったとき)」
出典 4: 国土交通省「不動産情報ライブラリ(土地総合情報システム)」
出典 5: 国土交通省「宅地建物取引業法における媒介契約制度」
出典 6: 公益財団法人 不動産流通推進センター「不動産業統計集」
出典 7: 東日本不動産流通機構「指定流通機構(レインズ)マーケットインフォメーション」
出典 8: 独立行政法人 住宅金融支援機構「フラット35金利推移・住宅ローン動向調査」
出典 9: 国土交通省「建設産業・不動産業:<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ(不動産取引の仲介手数料について)」
出典 10: 法務局「抵当権の抹消登記に必要な書類と手続き」
出典 11: 国税庁「No.3152 譲渡所得の特別控除(マイホームを売ったとき)」
出典 12: 国税庁「譲渡所得の確定申告の手引き」

iYell株式会社 執行役員
2009年 東証プライム(旧東証一部)上場のSBIホールディングス入社。SBIアルヒ株式会社(旧SBIモーゲージ株式会社)に配属。その後、株式会社じげん(旧株式会社アイアンドシー・クルーズ株式会社)での勤務を経験。2017年 iYell株式会社に入社。執行役員及びフィンテック推進室責任者として、銀行及び大手住宅事業者をはじめとする外部企業とのアライアンス領域を担当。2018年 一般社団法人不動産テック協会の理事に就任(現任)。
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