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マイホームを売ったときに税金はどれくらいかかるの?~知っておきたいマイホーム売却時の税金の特例と注意点~

2026年07月01日

転勤や転職、家族構成の変化など、さまざまな理由でマイホームを売却するケースがあります。その際、多くの人が気になるのが「税金」ではないでしょうか。

近年は全国的に住宅価格が上昇しているため、「マイホームを売却したときに高額の税金がかかるのでは」と心配している人も多いでしょう。確かに、不動産を売却して利益(譲渡所得)が生じた場合には、一般的には所得税や住民税が課税されます。

しかし、マイホームの売却については税金の特例があり、税負担が大幅に軽減されたり、ゼロになったりする仕組みがあります。また、マイホームが値下がりして損失が出た場合にも、税負担を軽減するための救済措置が設けられています。

不動産を売却したときの譲渡所得の基本と、マイホームを売却した際の5つの特例について解説します。

不動産の譲渡所得とは

不動産を売却した際に利益(譲渡所得)が生じた場合には、その譲渡所得に対して税金がかかります。譲渡所得は、次の計算式で計算します。

 譲渡所得=売却代金-(取得費+譲渡費用)

「取得費」は、「不動産の取得に要した金額」から「建物や設備の減価償却相当額」を差し引いた金額です。「不動産の取得に要した金額」には、購入価格、建築費、取得時の仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、印紙代などがあります。また、取得後にキッチンやユニットバスなど設備の入れ替えを行った場合、その費用も取得費に含むことができる場合があります。

ただし、建物や設備は年数が経過すると古くなり価値も減少するため、その減少分を「建物・設備の減価償却相当額」として差し引く必要があります。減価償却相当額は、建物の構造や設備の種類によって計算方法も異なるため、計算する際には税務署や税理士に相談することをおすすめします。

なお、相続した不動産の場合や、購入時の契約書を紛失するなどして取得費が分からない場合は、売却代金の5%を「概算取得費」とすることができます。

「譲渡費用」とは、不動産を譲渡する際にかかる費用のことで、売却時の仲介手数料、印紙税、測量費、解体費用などが含まれます。

計算の結果、譲渡所得がプラスになると課税の対象になります。一方、譲渡所得がマイナスになった場合には税金は課税されません。

譲渡所得税は、給与所得など他の所得と合算して計算する「総合課税」ではなく、譲渡所得単独で税金を計算する「分離課税」が採用されています。

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に分けられます。図表1の通り、所有期間5年以下で売却すると、5年を超える場合の約2倍の税率が課せられます。

図表1:譲渡所得の税率loan_20260701_01.jpg

マイホームを売却した際の税金の特例

不動産を売却して利益が出ると、利益額に応じて税金が課せられますが、マイホームを売却した場合は特例によって税金の負担を大きく軽減することができます。

マイホーム売却の特例が設けられている理由は、マイホームは投資用不動産とは異なり生活の基盤となる資産だからです。転勤や家族構成の変化など、生活上の理由に伴う住みかえを円滑に行えるよう税金の負担を軽減し、国民の住生活の安定を図ることが主な目的です。また、住みかえがしやすくなることで、中古住宅市場の活性化につながることも理由の1つになっています。

マイホーム売却に関する税金の特例は、全部で5つあります。その内訳は、マイホームを売却して利益が出た場合の特例が3つ、損失が出た場合の特例が2つです。つまり、マイホームについては、売却したときに得をしても損をしても一定の要件を満たせば税金の優遇措置を受けられる仕組みになっています。

マイホームを売却して利益が出た場合の3つの特例

(1)マイホームの3,000万円特別控除の特例
マイホームを売却して利益が出た場合には、所有期間に関わらず、利益から最大3,000万円を差し引くことができます。

譲渡所得=売却代金-(取得費+譲渡費用)-特別控除3,000万円※
 ※売却代金-(取得費+譲渡費用)<3,000万円の場合はその金額

この特例により、譲渡所得が3,000万円以下であれば譲渡所得はゼロになり、税金はかかりません。

主な要件は以下の通りです。
 ・住まなくなってから3年目の年の12月31日までに売却すること
 ・売主と買主の関係が、親子や夫婦など「特別な親族関係」でないこと
 ・売却する年、前年、前々年に、この特例や他のマイホームの特例を受けていないこと

(2)マイホームの軽減税率の特例
売却したマイホームの所有期間が10年を超えている場合、「3,000万円特別控除の特例」を使っても譲渡所得が残っているときは、そのうち6,000万円以下の部分については通常の長期譲渡所得の税率よりも低い軽減税率が適用されます。

なお、適用要件は3,000万円特別控除の特例と同じです。

図表2:マイホームの軽減税率loan_20260701_02.jpg

この特例の大きなメリットは、3,000万円特別控除と併用できる点にあります。例えば、マイホームの売却代金が1億5,000万円、取得費と譲渡費用が合わせて5,000万円の場合、譲渡所得と税金は以下の手順で計算します。

売却代金1億5,000万円-取得費・譲渡費用5,000万円-特別控除3,000万円=7,000万円

特別控除の3,000万円を差し引いても7,000万円が残ります。このときに軽減税率の特例を適用すると、税金は以下のようになります。

7,000万円のうち、
(A)6,000万円以下の部分
   6,000万円×14.21%(軽減税率)=852.6万円
(B)6,000万円を超える部分
   1,000万円×20.315%(長期譲渡所得の税率)=203.15万円
(A)+(B)=1055.75万円
7,000万円全てに長期譲渡の税率が適用された場合(約1,422万円)と比べると、約366万円税金が安くなります。

(3)マイホームの買換えの特例
今まで住んでいたマイホームを新たなマイホームに買い換えた場合、本来は売却時にかかる税金を、買い換えたマイホームを将来売却するときまで先送りできる制度です。税金は、売却するマイホームと新たに購入するマイホームの価格によって次のように扱われます。

■売却額≦購入額(高いマイホームへの買換え)
譲渡所得はゼロとして税金は課税されません。

■売却額>購入額(安いマイホームへの買換え)
その差額のみを収入金額として譲渡所得を計算するため、税額が大幅に軽減されます。

この特例の大きなメリットは、マイホームを売却して3,000万円を大きく超える利益が出た場合でも、手元の資金を減らさずに次のマイホームの購入にあてることができる点にあります。

ただし、買換えの特例は、あくまで税金を将来に先送りすることができるだけで、免除されるわけではありません。今回の売却では税金を払わなくても、将来マイホームを売る時には、今回の分の利益もまとめて税金を納めることになるという「税金の猶予」であるため、注意が必要です。

買換えの特例には、売却したマイホーム、購入したマイホームそれぞれに要件があります。

■売却したマイホームの要件
 ・売却代金が1億円以下
 ・売却した年1月1日時点で所有期間が10年を超えている
 ・居住期間が、通算で10年以上(途中、転勤などで住まない期間があっても良い)

■購入したマイホームの要件
 ・床面積50m2以上、敷地面積500m2以下
 ・築年数25年以内、または一定の耐震性が証明されている
 ・一定の省エネ基準を満たしている(2024年以降に建築確認を受けた建物などの場合)
 ・一定の災害危険区域等内にない(2028年以降に居住開始の場合)

なお、買換えの特例は、3,000万円特別控除や軽減税率との併用はできません。3,000万円特別控除では「税金そのものの免除」であるのに対し、買換えの特例は「税金の先送り」であることも考慮しながら、どちらのメリットが大きいかを慎重に判断する必要があります。

また、これらの3つの特例を利用した場合、新たなマイホームでは一定期間、住宅ローン控除が受けられなくなります。そのため、マイホーム売却時の特例による節税額と、新居での住宅ローン控除による節税額とを比較して、トータルでどちらが得になるかを比較することも重要です。

loan_20260701_03.jpg

マイホームを売却して損失が出た場合の2つの特例

不動産の譲渡所得税は通常「分離課税」により譲渡所得単独で税額を計算するため、損失が生じても他の所得から差し引くことはできません。しかし、マイホームに限っては、売却して損失が出た場合、その損失を給与所得など他の所得から差し引くことができます。これを「損益通算」といいます。

さらに、損失が大きく、その年だけでは他の所得から引ききれなかった場合、売却した年に加え、翌年以降最長3年間は損失を繰り越すことができます。これを「繰越控除」といいます。これにより、売却した年から最長4年間にわたり、所得税や住民税がゼロになったり大幅に安くなったりするというメリットがあります。

マイホームを売却して損失が出た場合の特例には次の2つがあります。

(1)マイホームの買換えに伴う譲渡損失の特例
新しいマイホームに買い換えた場合に適用できます。この特例を受けるには、新たなマイホームの取得にあたり返済期間10年以上の住宅ローンを利用すること、新たなマイホームの床面積が50m2以上であることなどの要件を満たす必要があります。また、マイホームを売却した年の前年1月1日から翌年12月31日までに新たなマイホームを取得するという要件もあります。

(2)マイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除
マイホームを買い換えなくても、売却したマイホームに住宅ローンが残っている場合にこの特例が利用できます。この特例を利用する場合、譲渡損失の金額は、次のいずれか少ないほうが限度となります。
 ・売却したマイホームの住宅ローン残高-売却代金
 ・実際の譲渡損失の金額

(1)、(2)の共通の要件として、売却するマイホームの所有期間が売却した年の1月1日時点で5年を超えていること、適用を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であることなどがあります。

まとめ

マイホームの売却時には、利益が出た場合に3つ、損失が出た場合に2つ、全部で5つの特例が用意されています。

ただし、それぞれの特例には「所有期間」「居住期間」「住宅ローンの有無」などの要件や、他の特例・住宅ローン控除との重複利用ができるかといった複雑な基準があります。そのため、事前に詳細を確認せずにマイホームの売却を進めてしまうと、「使えると思っていた特例が使えなかった」「住宅ローン控除が受けられなくなった」などの事態になりかねません。

マイホームの売却を具体的に考え始めたら、まずは不動産の売却査定を依頼すると同時に、不動産会社や税理士などの専門家に「自分のケースではどの特例が使えそうか」「住宅ローン控除とどちらが有利か」などを相談し、事前の準備をしっかり行うことをおすすめします。賢い税金対策が、満足度の高いマイホーム売却への第1歩となります。

執筆者:橋本秋人(はしもとあきと)

ファイナンシャル・プランナー(CFP®、1級FP技能士)、終活アドバイザー、不動産コンサルタント

1961年東京都出身  早稲田大学商学部卒業後、大手住宅メーカーに入社。30年以上、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当、その後独立 。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続・終活などを中心に相談、コンサルティング、セミナー、執筆などを行っている。

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