実際の取引事例における路線価倍率(2025年)~賃貸住宅編~

実際の取引事例における路線価倍率(2025年)~賃貸住宅編~

不動産の売買価格の検討・査定において、相続税路線価は一つの基準として参考にされることが多くあります。一般的に、相続税路線価は地価公示・都道府県地価調査の8掛け水準と言われるためですが、もちろん「地価公示・都道府県地価調査=時価」ではなく、また常に「地価公示・都道府県地価調査×0.8=相続税路線価」でもありません。 2025年4月に掲載したレポートに続き、2025年のREITの取引事例を追加して、前面相続税路線価に対する実際の取引価格の倍率(以下、「路線価倍率」)を調査しました。


【サマリー】

  • 各エリアの路線価格帯別の路線価倍率は、以下の通りとなった。
    エリア 路線価 路線価倍率
    東京 都心6区 1,000千円/㎡以上 3倍半ば
    500~1,000千円/㎡ 3倍後半
    東京 城南エリア 500~1,000千円/㎡ 3倍前半
    300~500千円/㎡ 2倍後半
    東京 城東エリア 500~1,000千円/㎡ 4倍前半
    300~500千円/㎡ 4倍半ば
    東京 城西・城北エリア 500~1,000千円/㎡ 3倍半ば
    300~500千円/㎡ 3倍前半~半ば
    大阪 500~1,000千円/㎡ 4倍前後
    300~500千円/㎡ 4倍前半
    300千円/㎡以下 4倍前半
    名古屋 300千円/㎡以下 3倍半ば~後半

Ⅰ.調査方法

本調査は、前回と同様にREITのプレスリリースを用いて行いました。具体的な手順は以下の通りです。

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  • ① REITの取引事例(プレスリリース「資産の取得に関するお知らせ」など)より、各物件の取引価格、土地比率を抽出する。
  • ② 取引価格に土地比率を乗じ、土地価格を算出する。
  • ③ ②を土地面積で除し、土地単価を算出する。
  • ④ ③を取引年の相続税路線価(以下、「路線価」)で除し、路線価倍率を算出する。
  • (例)プライムアーバン西日暮里の場合
  • 取得価格9.81億円、土地比率94.2%、地積416.52㎡、路線価650千円/㎡
  • ⇒ 土地価格 = 9.81億円 × 94.2% = 9億2,410万円
  • ⇒ 土地単価(㎡)= 9億2,410万円 ÷ 416.52㎡ ≒ 2,218,626円/㎡
  • ⇒ 路線価倍率 = 2,218,626円/㎡ ÷650,000円/㎡ ≒ 3.41倍

Ⅱ.路線価倍率の検討

東京、大阪、名古屋、札幌、仙台、京都、福岡の7都市における2025年のREIT取引事例について、路線価倍率を算出します(今回札幌と仙台は検討条件に該当する取引なし)。

事例がない若しくは極端に少ない都市の路線価格帯については傾向を分析することが難しいため、本レポートでは、都心6区の1,000千円/㎡以上・500~1,000千円/㎡、城南、城東、城西・城北の500~1,000千円/㎡・300~500千円/㎡、大阪の500~1,000千円/㎡・300~500千円/㎡・300千円/㎡未満、名古屋の300千円/㎡未満の価格帯について、過年度数値等1 も踏まえた直近の路線価倍率を分析しました。


1 本サイト「CRE=NAVI:実際の取引事例における路線価倍率(2024年)~賃貸住宅編~」参照。

ⅰ.東京

(Ⅰ)都心6区

1,000千円/㎡以上の価格帯の路線価倍率は、3倍半ばであることがわかりました。過去からの推移をみると、2022年は下落したものの、2023年以降、路線価倍率は上昇傾向にあります。

次に、500~1,000千円/㎡の価格帯の推移をみると、2022・2023年は連続で上昇しています。2023年は、路線価が低い大通り背後の通り沿いの事例が複数含まれ、大通りの路線価水準に補正した路線価倍率をみると、中央値は3.97倍となりました。2024・2025年はほぼ横ばいで、2025年の中央値は3.69倍となりました。以上を踏まえ、都心6区の500~1,000千円/㎡の価格帯の路線価倍率は3倍後半であると言えそうです。

【図表1】東京 都心6区の路線価倍率(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、文京区)カッコ内は取引事例数、以下同じ
路線価 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
1,000千円/㎡~ 2.62(3) 2.45(2) 2.92(4) 3.26(7) 3.58(4)
500~1,000千円/㎡ 3.07(5) 3.42(3) 4.70(4) 3.75(3) 3.69(1)
300~500千円/㎡ - - - - -

(Ⅱ)城南

500~1,000千円/㎡について、各年の個別事例をみると、路線価倍率が4倍以上となる事例も散見されますが、2022年は路線価倍率が4倍以上となる事例はなく、路線価倍率の中央値が例年より低く抑えられたと考えられます。2024年は大通り背後の物件において、7倍後半、8倍弱など極端に倍率の高い事例があり、大通り路線価水準に補正してみると、中央値は3.29倍となりました。2025年は、築年が50年を超えている事例や土地形状が不整形な事例を除くと、中央値は3.19倍となりました。以上を踏まえ、城南エリアの500~1,000千円/㎡の価格帯の路線価倍率は3倍前半と言えそうです。

次に、300~500千円/㎡の価格帯の推移をみると、2022年に大幅に下落、2023年に上昇、2024年に下落しています。各年の個別事例をみると、2021年は大通り背後の物件の事例も多く含まれているため、大通り路線価水準に補正すると、路線価倍率の中央値は3.83倍となりました。2022年においては路線価倍率が極端に低い特殊事情が想定される事例1件のみとなったため、路線価倍率が低くなっていると想定されます。また、2023年は路線価倍率が5倍以上となる事例が含まれており、路線価倍率が例年より高めの水準になったと考えられます。2025年の中央値は2.84倍となり、2024年から2年連続で3倍を下回っています。以上を踏まえ、城南エリアの300~500千円/㎡の価格帯の路線価倍率は2倍後半と言えそうです。

【図表2】東京 城南の路線価倍率(品川区、目黒区、大田区、世田谷区)
路線価 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
1,000千円/㎡~ - 5.48(1) - 3.06(1) 3.93(4)
500~1,000千円/㎡ 2.94(8) 2.62(4) 2.91(7) 3.98(5) 2.74(9)
300~500千円/㎡ 4.31(3) 1.74(1) 3.92(4) 2.43(1) 2.84(2)

(Ⅲ)城東

500~1,000千円/㎡の価格帯をみると、2021年は4倍台、2022年は3倍台、2023年は6倍台、2024年は5倍台と年によって路線価倍率のばらつきがあります。2024年の個別事例をみると、大通り背後の物件において、6倍台や8倍台、10倍台など極端に倍率の高い事例がありました。そこで、大通り背後の物件を大通り路線価水準に補正してみると、中央値は4.37倍となりました。2025年の中央値は4.24倍であり、城東エリアの500~1,000千円/㎡の価格帯の路線価倍率は4倍前半と言えそうです。

300~500千円/㎡についても、年によって路線価倍率のばらつきがありますが、推移をみると、2022年にやや下落、2023年は上昇、2024年は再び下落しています。各年の個別事例をみると、2023年は訪日外国人の増加の影響を受けて実際の取引価格が高騰する一方、路線価の上昇率は緩やかであったため、高い路線価倍率となりました。また、大通り背後の物件の事例も複数含まれています。これらの事例を補正すると、路線価倍率の中央値は4.59倍となります。2025年の中央値は4.60倍であり、城東エリアの300~500千円/㎡の価格帯の路線価倍率は4倍半ばと言えそうです。

【図表3】東京 城東の路線価倍率(台東区、墨田区、江東区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区)
路線価 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
1,000千円/㎡~ 4.06(2) 4.17(2) 2.82(1) - -
500~1,000千円/㎡ 4.53(5) 3.74(1) 6.19(7) 5.14(12) 4.24(7)
300~500千円/㎡ 4.44(8) 4.16(12) 6.62(7) 4.75(10) 4.60(5)
~300千円/㎡ - 4.41(2) 3.89(1) - -

(Ⅳ)城西・城北

500~1,000千円/㎡について、各年の個別事例を確認すると2021年は大通り背後の事例があり、大通りの路線価水準に補正して路線価倍率をみてみると、2021年は3.85倍となりました。2023年は、最適用途が戸建住宅地、指定容積率が低い、高度地区の制限により容積消化率が抑制される事例や築年が30年を超えている事例を除くと、3.21倍となりました。2025年の中央値は3.43倍であり、城西・城北エリアの500~1,000千円/㎡の価格帯の路線価倍率は3倍半ばと言えそうです。

次に、300~500千円/㎡について、個別事例を確認すると、2022年は取引時の築年数が30年以上経過した物件で路線価倍率が低い事例が複数あり、これらを除くと、2022年の路線価倍率の中央値は3.53倍となります。2023年は最適用途が戸建住宅地である事例や大通り背後の事例が含まれており、これらの事例を補正すると、2023年の路線価倍率の中央値は3.86倍となります。2025年の中央値は3.17倍であり、城西・城北エリアの300~500千円/㎡の価格帯の路線価倍率は3倍前半~半ばと言えそうです。

【図表4】東京 城西・城北の路線価倍率(中野区、杉並区、練馬区、豊島区、北区、板橋区)
路線価 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
1,000千円/㎡~ - - - 3.41(1) -
500~1,000千円/㎡ 4.44(3) 3.41(4) 2.11(4) 3.70(4) 3.43(4)
300~500千円/㎡ 3.86(3) 2.67(7) 2.97(3) 3.40(3) 3.17(7)
~300千円/㎡ 3.43(1) - - - -

ⅱ.大阪・名古屋

(Ⅰ)大阪

500~1,000千円/㎡について、価格帯の推移をみると、2022年は上昇、2023年は下落、2024年は再び上昇となりました。2023年の個別事例を確認すると、4件すべてが築後15年を経過している物件のため、路線価倍率が低くなっていると想定されます。2025年の中央値は3.75倍であり、大阪の500~1,000千円/㎡の価格帯の路線価倍率は4倍前後と言えそうです。

300~500千円/㎡の価格帯の推移をみると、2022年は上昇し、2023年は下落していますが、2022年は路線価倍率が極端に高い事例があり、それらを除いた路線価倍率は4.83倍となります。2025年は、大通り背後の物件において7倍台と極端に倍率の高い事例がありました。そこで、大通り背後の物件を大通り路線価水準に補正してみると、中央値は4.01倍となりました。よって、300~500千円/㎡の価格帯の路線価倍率は4倍前半と言えそうです。

300千円/㎡以下の価格帯について、各年の個別事例を確認すると、2023年の取引事例では、大阪市中心部へのアクセスが良く、賃料単価は一定水準以上となるものの、路線価は低く抑えられているため、路線価倍率が高くなりました。2024年は、土地形状が不整形かつ道路付けの良くない事例や、大通り背後の事例があり、大通りの路線価水準に補正すると、中央値は4.63倍となりました。2025年は大通り背後の物件で7倍台の事例があり、大通り路線価水準に補正すると、中央値は3.75倍となりました。内訳は3.11倍と4.39倍の2件で、路線価倍率は低下傾向です。以上を踏まえ、大阪の300千円/㎡以下の価格帯の路線価倍率は4倍前半と言えそうです。

【図表5】大阪の路線価倍率
路線価 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
1,000千円/㎡~ - - 2.84(1) 3.85(1) -
500~1,000千円/㎡ 3.23(1) 4.30(2) 2.79(4) 4.07(1) 3.75(2)
300~500千円/㎡ 4.35(1) 5.60(4) 4.60(1) 4.54(5) 5.85(2)
~300千円/㎡ 5.85(5) 4.77(6) 5.33(2) 6.94(5) 5.15(2)

(Ⅱ)名古屋

300千円/㎡以下の価格帯について、各年の個別事例を確認すると、2023年は最適用途が戸建住宅地である事例と敷地の過半が低容積率である事例が含まれており、これらの事例を除くと路線価倍率の中央値は3.74倍となりました。2024年には大通り背後の事例や、周辺に低層の事務所が立ち並ぶエリアの事例、極端に路線価が低い事例があり、これらの事例を補正すると、路線価倍率の中央値は3.75倍となります。2025年の中央値は3.56倍であり、名古屋の300千円/㎡以下の価格帯の路線価倍率は3倍半ば~後半と言えそうです。

【図表6】名古屋の路線価倍率
路線価 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
1,000千円/㎡~ - - - - 2.12(2)
500~1,000千円/㎡ 2.32(2) 2.70(1) 2.82(4) 3.66(1) -
300~500千円/㎡ 3.48(4) 3.13(2) 1.74(3) 2.15(6) 2.08(1)
~300千円/㎡ 4.10(11) 3.87(4) 2.73(8) 3.47(12) 3.56(11)

ⅲ.その他の都市(参考)

事例が少なく路線価倍率の傾向が読み取れないエリアについては、参考情報として以下表に記載します。

【図表7】札幌の路線価倍率
路線価 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
300~500千円/㎡ 2.00(2) 2.16(2) 0.87(1) - -
~300千円/㎡ 3.70(3) 2.09(7) 2.68(4) - -
【図表8】仙台の路線価倍率
路線価 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
500~1,000千円/㎡ - - - - -
300~500千円/㎡ - - - - -
~300千円/㎡ 1.90(1) - - - -
【図表9】京都の路線価倍率
路線価 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
500~1,000千円/㎡ - - - - 2.71(1)
300~500千円/㎡ - 2.10(3) 2.13(1) - 4.51(1)
~300千円/㎡ 1.98(1) 3.22(2) - 3.34(1) -
【図表10】福岡の路線価倍率
路線価 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
1,000千円/㎡~ - - - - 1.94(1)
500~1,000千円/㎡ 3.28(1) - 2.93(1) - -
300~500千円/㎡ 1.93(1) 1.56(1) 4.12(2) - 2.58(2)
~300千円/㎡ 3.41(6) 4.98(2) 3.43(3) 1.70(1) 3.82(2)

提供:リサーチ・コンサルティング部

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