
築50年の一戸建てでも多くの売買事例があります。しかし築50年ともなると、耐震性や建物躯体、付属設備、外壁などにさまざまな問題を抱えている住宅があるものです。この記事では、築50年の一戸建ての売買相場や、売却方法、売却時の注意点について解説します。少しでも安心して高く売却したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
1. 築50年一戸建ての売却相場
住宅の価値は、基礎や躯体がしっかりしていても、外壁や建材、設備機器の劣化とともに下落していきます。築年数と価格の関係を、新築一戸建てとの比較データから確認しておきましょう。築古の一戸建ての売却相場のデータとしては、「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2024年 レインズデータ)」が参考になります。築50年の一戸建てを含む「築41年以上」の一戸建て・マンションのデータをみてみましょう。
1-1.新築一戸建て住宅との売却相場の違い
データによると、首都圏における築41年以上の一戸建ての平均売却価格は、2,105万円です。これは、築0~5年の一戸建ての平均売却価格の約41%ですので、一戸建て住宅の価値は、築41年以上で半分以下になることが分かります。
加えて、このデータは、住宅の大きさを考慮しておらず、単純に売却価格を平均した数値です。築41年以上の一戸建ての土地面積の平均は、築0~5年の一戸建ての1.4倍であるため、同じ大きさの住宅ベースでくらべると、下落幅はさらに拡大すると考えられます。
1-2.中古マンションとの売却相場の違い
首都圏における築41年以上の中古マンションの平均売却価格は2,763万円(平米単価53.27万円)です(レインズ調べ)。
一方、築0~5年の一戸建ての平均売却価格は新築時と比較して、約29%となっており、約3分の1に下落しています。単純に比較すると、中古マンションは一戸建て住宅より下落幅が大きくなっていますが、これは、マンションと一戸建ての土地面積が異なるためです。一戸建ての土地面積を、マンションと同程度として計算しなおすと、下落幅はほぼ同じであることが分かります。
1-3.築50年の家の価値
一戸建ての建物の価値は、築20年を超えると限りなく低くなると考えられているのが、これまでの不動産業界の慣行でした。これは、木造一戸建ての住宅の減価償却の耐用年数が22年であることに由来しています。しかし、住宅の傷みは築22年程度ではかなり少ないと考えられるため、実際はまだまだ快適に住める建物が多いといっても良いでしょう。
近年では、歴史的価値やデザインなどが見直されており、築20年以上の住宅でも、一定の価値をもって取引されている例もあります。古い住宅の中には、梁や柱がしっかりしていて、現在ではコスト面からなかなか使われないような建材を使用しているものも少なくありません。
このような古民家は、宿泊やカフェなどを目的としたリノベーションによって生まれ変わる可能性があり、思わぬプラス査定がつくこともあります。こうした要素を考えると、築50年の家の価値を極端に低いと決めつけるのは早計かもしれません。
2. 築50年一戸建ての売却手段
売却は、不動産会社による仲介や買取会社への依頼のほか、地方や郊外の物件では、空き家バンクなど自治体の援助を得ることも可能です。ここからは、築50年の一戸建ての売却手段について解説していきます。
2-1.不動産仲介会社を依頼する
もっとも一般的な売却手段は、不動産会社に売買の仲介を依頼する方法です。仲介手数料は築年数と関わらず一定で、売却価格の3%プラス6万円(税別)が目安です。もっとも、売却価格が800万円以下までの低廉な空き家についての仲介手数料には特例があり、30万円(税別)が上限となっています。
会社によって仲介の得意分野が異なることがあるため、中古一戸建ての売買経験が豊富な不動産仲介会社に依頼するのが良いでしょう。
2-2.買取会社に依頼する
スピーディーな取引が希望であれば、不動産の買取を手がける不動産会社に、買取を依頼するのもおすすめです。不動産会社は、買取後の再販が目的のため、買取価格は相場より若干低めですが、相談から買取まで1カ月程度で完了します。
また、プロとの取引になるため、買取後のトラブルが極めて少ないのは大きなメリットです。ただし、取引事例が少ない田舎や郊外の物件は、買取に応じられない可能性もあるため、注意が必要です。
2-3.空き家バンクを活用する
エリアによっては、国土交通省・自治体が支援する空き家バンクが運営されているところがあります。売却したい物件を空き家バンクに登録して、検討客が現れるのを待ちます。契約時に不動産会社を介さなければ、仲介手数料はかかりません。自治体によっては修繕費用など経費についても、補助金を用意しているところもあります。希望エリアの自治体のホームページから情報を調べてみてください。
2-4.更地にして売却する
立地や建物の老朽化の度合いによっては、建物を解体して更地にした方が売れやすいこともあります。もっとも更地の土地は固都税の軽減税制が適用されないため、住宅として保有しているときよりも、土地として保有している間のほうが、固都税負担が増える点は考慮しておきましょう。
解体費用の相場は建物の延床面積によって定められており、木造一戸建てで坪単価3~6万円です。60坪(200m2程度)の建物ならば、200万円から350万円程度となります。解体はリフォームすることを前提で探している買い手を失うことになるので、不動産会社との十分な相談が欠かせません。
2-5.リフォームして売却する
リフォームした真新しい住宅は買い手の印象が変わります。ただし、間取りや建材には好みがあるため、リフォーム=売れやすくなるとは限りません。また、リフォーム費用を売却価格に上乗せできるかはケースバイケースのため、注意が必要です。売却予定の住宅をリフォームするかは、近隣物件での成功事例を調べ、リフォームしたほうが売れやすくなる傾向があるかを見極めたうえで検討しましょう。
2-6.活用方法を考えてみる
立地や建物の劣化状況、間取りの自由度によっては、古民家宿泊施設やカフェ・レストラン、コワーキングスペースとして活用する方法もあります。仲介の不動産会社に相談してみるほか、このような施設を運営している会社に直接問い合わせ、戸建て住宅を上手に活用できないか検討してみても良いでしょう。
3. 築50年一戸建てを購入する側の不安
築50年の一戸建ての売却を成功させるためには、買主が不安に思っている点を理解しなければなりません。ここでは、買主に受け入れてもらうために必要な売却前の準備と、開示すべき情報について解説していきます。
3-1.耐震性に問題がないか
耐震性は、古い建物を購入するうえでもっとも気がかりな点です。特に、旧耐震基準で建てられた木造一戸建ては耐震性が十分でないとされており、購入後の耐震補強のコストや住宅ローンが通りにくいことなどがネックとなることが少なくありません。
旧耐震・新耐震の違いは、建築確認の確認申請を昭和56年6月1日以降に提出しているかで判断します。確認済証があれば、いずれの基準で建設された建物かが分かりますが、資料が紛失している場合は、不動産会社への相談・調査依頼が必要です。
3-2.契約不適合責任の免責
契約不適合責任とは、土地・建物に不具合があったときに、売主が負う修繕や損害賠償の責任を指します。築50年以上の建物ならば、契約不適合責任が免責になるケースもありますが、買主にとっては不安材料といえるでしょう。買主側では、建物や土地の状況を詳細に調べることはできないため、売主からの情報を頼りにして購入の判断をするしかありません。免責にするのであれば、情報開示を丁寧に行う、免責分を価格に反映させるなど、何らかの対策が必要になるでしょう。
3-3.近隣とのトラブルはないか
築年数が経過するほど、近隣とのトラブルはないかという不安が大きくなります。例えば、地震や大雨による擁壁や壁のゆがみや移動が、境界問題に発展するケースもあります。また、ごみ・騒音・ペットなど、長年住んでいる間の習慣が思わぬ近隣トラブルに発展することもあるようです。築50年の家に住んでいる人が売却を考える際は、こうしたトラブルの種が潜んでいないか、日ごろから注意しておきましょう。
4. 築50年一戸建てを安心して売却するための方策
築50年であれば老朽化は否めません。買主もある程度の住宅の劣化は理解しているでしょう。ここからは、買主に安心して購入してもらうための調査や、必要な事前準備について解説します。
4-1.建物診断サービスを活用する
建物診断サービスとは、建築士をはじめとするの専門家が、老朽化度合い・瑕疵の有無・耐震性などをチェックし、報告書を作成してくれるサービスです。建物診断報告書があれば、不具合も含めた建物の現状がよく分かります。調査項目によりますが、費用はおおよそ5~15万円となっています。築50年の一戸建てを売却するならば必要経費と考えておいても良いかもしれません。
4-2.安心R住宅制度に登録する
「安心R住宅制度」とは、国土交通省が安心できる中古住宅であることを認定する制度です。建物診断を受けたうえで、耐震性や住宅の品質についての一定の基準をクリアすることで認定されます。安心R住宅報告書には、耐震性や既存住宅瑕疵保険の基準の適合性、リフォームの有無、書類の保管状況、建築時の適法性に関する情報などが開示されるため、買主にとって安心材料になるでしょう。
4-3.瑕疵保険に加入する
建物診断とあわせて既存住宅瑕疵保険に加入することで、補修費が保険で支払われる制度があります。加入前の事前検査をクリアしなければ加入できない制度のため、買主にとって一定の安心材料になります。ただし、基本となる保険対象は「構造耐力上主要な部分」および「雨水の浸入を防止する部分」に限定されているため注意が必要です。
4-4.隣地境界を確定させる
隣地境界確定が済んでいない場合、境界を確定させておくほうが近隣トラブルの防止につながります。隣地境界の確定については、土地家屋調査士への依頼が可能です。土地家屋調査士は、境界杭や土地の現況を確認して測量し、隣地の土地所有者と立ち合いのうえ境界を確定します。境界確定済みであっても、近隣の竹木の枝や屋根の庇、ブロック塀や壁が越境していないかを目視でチェックしておきましょう。
4-5.再建築が可能か確認しておく
接道要件を満たさない、用途地域が変更されたなどの理由で、現在の建物が解体されると再び建物が建てられない物件もあります。これらの建物は、建築当時は適法であったものの、その後の法改正などによって再建築できなくなったものです。買主にとって重要な情報ですので、事前に確認しておく必要があります。
5. 築50年一戸建てを売却するときの注意点
築50年の一戸建ては、一般の物件にくらべて売れにくい面があります。気がかりな情報はしっかりと開示し、物件周りの清掃や不用品の片付けなど、買主に好印象を与えるための準備を怠らないようにしましょう。
5-1.むやみに解体・リフォームをしない
築50年の一戸建ての解体・リフォームが、買い手のつきやすさにどう影響するかは、物件ごとに異なります。買い手によっては、自分でリフォーム計画を立てるのを楽しみにしていることもあるため、解体やリフォームをするかは、不動産仲介会社ときちんと相談したうえで決めることをおすすめします。
5-2.不具合や気がかりな点を隠さない
築50年経過している住宅に、ある程度の不具合があるのは自然なことです。不具合を修繕せずにおいている個所や、軋み、シミ、建付けのゆがみなど、気がかりな点についてはしっかりと開示しておきましょう。大きな買い物である住宅に、後からトラブルが発覚すれば、訴訟問題になることも多いため、気になる点は正直に伝えておくほうが賢明です。
5-3.残置物をそのままにしておかない
車庫や庭に放置してある残置物は、売り出しの際には片付けておくのが無難です。ごみや不要物が放置してあると、買主の印象が悪くなります。容易に片付けられないものがあれば、引渡しまでに片付けるか、そのままにするかを明確にして、買主に開示するのが良いでしょう。
5-4.余裕をもった売却スケジュールにする
築50年の一戸建ては、売却にかなりの時間を要することもあり、結局売れないケースも少なくありません。売買事例が少ない郊外や田舎の住宅であればなおさらです。売却までのスケジュールには余裕をもって対処しておきましょう。
6. 築50年一戸建てを売却したときの税金
不動産の売却益が発生した場合は、所得税を収めたり、軽減税制を適用したりするために確定申告が必要です。ここからは、一戸建て住宅に関係する税金について解説していきます。
6-1.譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税は、譲渡所得に税率を掛けて計算します。この場合の譲渡所得とは、売却価格から取得時の費用と譲渡にかかった費用を差し引いたいわゆる譲渡益のことです。安い価格で譲渡した場合など、譲渡所得がマイナスになる場合には譲渡所得税はかかりません。また、税率は売却した年の1月1日の時点において所有期間が5年以内か、5年超かで異なります。
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| 短期譲渡所得(所有期間が5年以下) | 20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税含む) |
| 長期譲渡所得(所有期間が5年超) | 39.63%(所得税・住民税・復興特別所得税含む) |
6-2.居住用不動産の場合の特別控除
実際に住んでいたことがあるマイホームや相続で取得した空き家を売却したときには、一定の条件を満たすことで3000万円の特別控除があります。併用する場合には、合計で3000万円が上限です。譲渡所得の価額から控除が受けられますので、譲渡所得3000万円までは税金がかかりません。
6-3.10年超所有の居住用不動産の場合の軽減税制
10年を超える期間所有していたマイホームを売却する場合には、3000万円の特別控除に加えて課税譲渡所得6000万円以下の部分について、14.21%の軽減税率が用意されています。6000万円を超える部分については長期譲渡所得の20.315%が適用されます。
6-4.相続財産の取得費加算の特例
取得費加算の特例とは、相続税を課せられた者が相続財産を譲渡した場合、所定の要件を満たすことで相続税のうち一定の割合を取得費に加算することができる制度です。取得費に相続税のうちの一定割合が加算されることで、譲渡所得が抑えられます。3000万円の特別控除などの特例と併用できますので、大幅な譲渡所得税の減額が見込めます。
7. まとめ
築50年の一戸建ては、一般的には建物の価値がほとんど認められず、土地の価値の売買となるのが一般的です。とはいえ、買主にとってはこれからの住まいとなる大切な住宅です。買主の不安を取り除くためにも、住宅に関する調査や情報開示などの準備はきちんとしておきましょう。
売買の際には、契約事項などの法的な検討事項のほか、税金の問題もあります。仲介会社の担当者のほか、税理士をはじめとする専門家の助けを借りながら、慎重に手続きを進めていきましょう。

宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験をもち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。
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