
土地売却の失敗は、相場や契約の理解不足・準備不足が原因です。契約後、手続きが進んでいくにつれトラブルの規模も大きくなるため、土地を売買する際に気をつけるべき点をしっかりチェックしておきましょう。
この記事では、土地の売買契約時に確認すべき重要ポイントや典型的な落とし穴、その回避策を不動産のプロ視点で解説します。マナーや近隣配慮、必要書類や費用、信頼できる相談先の選び方まで実務に役立つ内容をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
1. 土地売買でよくある失敗パターン6選
まずは、土地売買でよくある失敗パターンを6つ紹介します。
1-1.相場を調べずに売却価格を設定する
土地の売出価格を相場よりも高く設定すると、成約までに時間がかかるだけでなく、売れ残りのリスクがあります。逆に相場より安く設定すると、損をするかもしれません。相場に見合った適正価格を設定するためには、複数の不動産仲介会社に査定を依頼し、結果を比較する必要があるでしょう。
加えて、地価公示(国土交通省)・基準地価(都道府県)・路線価(国税庁)・固定資産税評価額(自治体)といった公的データの調査も大切です。地価公示や基準地価は、売り急ぎや買い進みなどの事情がない場合の市場流通価格と同程度であることが一般的で、路線価は地価公示の80%程度、固定資産税評価額は地価公示の70%程度といわれています。
1-2.境界や権利関係、面積を曖昧なままにした
以下の状態で契約へ進むのは危険です。
●隣地所有者と越境の認識が不明瞭
●測量時期が古く面積が不正確の可能性がある
●土地に設定された抵当権が残っている
●相続登記が完了していない
●土地共有者の意思が固まっていない
不動産仲介会社が介入すれば、上記を見落としたまま契約することはないため、回避策として以下の手段を講じて後日の紛争を回避します。
●測量と筆界や境界の確定……隣地所有者や土地家屋調査士などの立会いで測量し、境界を確定して書面に残しておく。
●相続土地は相続登記の完了……2024年4月から相続登記は義務化されており、原則として相続時点から3年以内に登記を申請しておく。
●抵当権の有無確認と抹消準備……ローンを完済して抵当権を抹消するために残債の確認と資金調達を行う。
●共有者全員の同意を取る……共有名義の土地の売却は「共有者全員の同意」が原則となる。共有者が身内であっても同意形成に時間がかかるものと考えて不動産仲介会社を介在させ早めに準備をはじめる。
1-3.管理が行き届いておらず印象がよくない
写真や内見時に印象が悪くなると、買い手がなかなか見つからないか、大幅な値下げの口実になるかもしれません。以下の状態に注意しましょう。
●土地に使用していない古い空き家が残っている
●草木の繁茂や構造部分に腐敗やカビが見られる
●所有者の残置物、ゴミの不法投棄などがある
回避策は、内覧前に環境整備(草刈り・ゴミ撤去・簡易清掃)をしたり、売地看板を設置したり、定期巡回を不動産仲介会社に依頼したりして適切に管理された状況に維持することです。管理が行き届いておらず印象が悪い古家は不動産仲介会社へ相談のうえで「解体」もしくは「解体更地渡し」や「現況渡し+価格調整」などを選択できます。
土壌汚染や地下埋設物は、古い地図や文献といった資料を使用して、過去に遡った土地の使途調査が可能です。売主および周辺住民への聞き取りや目視で確認し、問題がありそうなら、地中レーダーやエコー探査なども必要に応じて講じると良いでしょう。
1-4.契約書の内容を理解せずにサイン
引渡し後のトラブルを避けるためにも、契約時は以下の点に注意しましょう。
●法令制限の調査不足
●契約不適合責任に関わる告知漏れ
●解除条項や特約の解釈における齟齬
契約時は、売主から詳細な告知内容を引き出すことに加え、法令制限(都市計画法、建築基準法、条例など)が買主の希望する用途に適しているかもチェックしておきましょう。
1-5.納税や手続きの準備不足
土地を売却して利益や損失が出た場合は確定申告が必要ですが、その際に譲渡所得税の申告漏れや申告手続きの期限遅れ、必要書類不足や申告内容の相違があると、税務署から指摘を受ける場合があります。譲渡所得の計算や控除の適用可否、申告期限の確認など、売却前に必要となる手続きや準備を把握しておきましょう。
また、売却スケジュールに書類の準備や税務申告手続きを組み込み、準備期間もしっかり確保しておけば、トラブルを未然に防げます。
1-6.不動産仲介会社に丸投げ
不動産仲介会社へ売却を任せきりにすると、必要な活動が適時適切に行われず、売却時期を逃したり不必要な値下げに応じたりするリスクがあります。こうしたトラブルを避けるためにも、販売戦略や価格の見直し基準などをすり合わせながら、売主も販売活動に参加することが大切です。小まめな活動報告を依頼し、不動産仲介会社が売却活動を前向きに進められるよう促すことも大切です。
ネームバリューがある大手不動産仲介会社ならすべて任せて安心というわけではありません。ときには、地元で信頼を得ている中小の不動産仲介会社への相談や、複数社が競い合う形の売却活動を必要とする状況もあります。
2. 契約時に気をつけること
売買契約時は、売買契約書や重要事項説明書の内容を正しく理解することが大切です。まず、契約書に記載されている以下の点を注意深く確認してください。
売買価格:売主・買主が合意した価格で、支払い方法や時期も明記されます。
引渡日:所有権が移転し、土地を実際に使用できる日です。遅延はトラブルの原因になります。
違約金:契約不履行があった場合に発生する損害賠償額です。解除条件と併せて確認が必要になります。
特約事項:境界確認や建築条件など、個別の取り決めです。将来の争いを避けるためも、慎重に確認しましょう。
「売買価格」は、土地代金の合意額だけでなく、支払い方法や手付金・残代金の期日も確認しましょう。曖昧にすると支払い遅延やトラブルにつながります。
「引渡日」は、所有権が移り実際に利用できる日であり、住宅ローン実行のタイミングとも関係します。遅延が起きると引越しや建築計画に支障が出るため注意が必要です。
「違約金」は、契約解除や履行遅滞が発生した際のペナルティで、売主・買主いずれにも適用されます。金額や条件が妥当かを確認しておくと安心です。
「特約事項」は個別に取り決めるルールのことで、境界確認や建築条件、設備の撤去有無など多岐にわたります。後日紛争にならないよう、曖昧なまま署名押印しないことが大切です。
加えて、以下の内容をチェックリストにして、土地の売買でトラブルが行いよう気をつけておきましょう。
1. 法令制限(都市計画法・建築基準法・条例・地区協定)
2. 境界ポイント・面積・越境・土壌汚染・地中埋設物・ハザードマップなどの現状把握
3. 権利関係(抵当権・借地権・地上権・通行権・共有関係・相続登記)
4. インフラ敷設状況(電気・ガス・水道・インターネットキャリア)
5. 契約不適合責任に関わる告知事項
6. 手付や違約解除の内容
7. 引渡条件(測量・境界画定・建物解体・整地・残置物撤去)
8. 必要書類の準備
9. 確定申告・譲渡所得納税の手続き
3. 土地売買におけるマナーと近隣配慮
土地の売買取引を成功させるには、現地対応マナーや周囲への配慮が欠かせません。どのような対応や行動が必要かを解説していきます。
3-1.内覧時の現地対応で気をつけるポイント
敷地全体や周囲、越境状況、境界標の位置、ライフラインの引き込み、側溝、排水枡、傾斜や高低差などを見られるよう、草刈りや残置物の移動をしておきましょう。また、前面道路の種別や幅員、セットバック要否、建物の斜線制限を現地で示せると、買主側は安心して購入を検討できます。日照・交通量・そのほかそこでの生活が想像できるような近隣情報を内覧者へ共有できればなお良いでしょう。
3-2.売主としての基本的な礼儀や説明責任
売主に虚偽の情報告知や重要な事実の不告知があった場合、取引の信頼を損ねるだけでなく、契約不適合責任の追及や損害賠償に直結します。分からない事項は「未確認」と明示し、後日行った調査の結果を報告し、覚書や合意書として書面化しておきましょう。重要事項説明書や売買契約書にも記載しておけば、トラブルを予防できます。
3-3.契約から引渡しまでの流れと社会的マナー
土地の売買契約後に建物の解体や造成、引渡し後に建築を行う場合には、決済前には近隣へのあいさつや施工計画の共有を行って、引渡し後の工事工程が円滑になるよう取り計らいます。自分の土地は自由に使用できますが、そこで暮らす以上は、ご近所との付き合いは避けられません。現地のコミュニティへあとから入っていく者として、事前のあいさつや計画の周知を適宜行うのは、社会的マナーといえるでしょう。
4. 土地を売るときに必ず確認すべきこと
土地を売るときに必ず確認すべきことは以下の4つです。
4-1.隣地との越境問題
敷地内の樹木・工作物・基礎・塀やフェンス、屋根、雨樋などは、たとえ越境度合いが軽微であっても引渡し後のクレームに発展しがちな要素です。特に、筆界(法務局が扱う地番の境)と所有権界(当事者の合意に基づく使用境)は混同しやすいので注意しましょう。万一合意できない事案が発生した場合は、法務局が筆界を判断する「筆界特定制度」の活用すれば、公的な客観性を付与できます。
4-2.インフラ状況(水道・ガス・下水)
前面道路に埋設されているインフラ状況も、購入判断や改善方法に直結します。以下の点をチェックしておきましょう。
●インフラ本管の口径
●敷地内への引き込み有無と口径
●受益者負担金や加入金の要否と金額
●下水種別(浄化槽の有無)
●他人地通過の有無や適法性
もしもインフラ配管が未接続なら、接続費用や期間を見積っておいて土地の売買価格や引渡条件に反映させることも可能です。なおインフラ状況は不動産仲介会社が調査してくれるため、買主自身が役所を回って調べる必要はありません。
4-3.売却に必要な書類の整理
土地を売る際の実務的な注意点としては書類の事前準備と整理を忘れないことです。土地売買に必要な書類は以下の表を参照してください。
| 権利証・登記識別情報 | 売主の本人確認や所有権移転登記申請に使用 |
| 固定資産評価証明書 | 土地を管轄する役所で取得 |
| 本人確認書類 | 免許証・マイナンバーカード・パスポートなど写真付きの公的証明書 |
| 収入印紙 | 契約書・領収書・登記申請書などに貼付して納税 |
| 住民票 | 住所変更登記が必要な場合に売主の書類として使用 |
| 印鑑証明書 | 所有権移転登記で売主の書類として使用 |
| 抵当権抹消書類 | 抹消登記で使用する金融機関が発行した完済証明書などの書類 |
| 固定資産税等納税通知書 | 固定資産税や都市計画税の清算の際に按分計算で使用 |
| 確定測量図 | 土地の境界を法的に確定させた測量図で、土地家屋調査士が隣地所有者全員の立会いを得て境界を確認し、面積・形状を正確に示したもの |
| 筆界確認書 | 隣地所有者と境界(筆界)を確認した記録書面で、署名・実印押印・印鑑証明書添付で法的な証拠性を担保 |
| 越境の覚書など | ほかにも掘削承諾書や地区協定など近隣との約束事を記した書類 |
書類によっては有効期限があるため必要な時期に合わせて準備しましょう。
4-4売却に必要な費用の準備
土地の売却に関する主な費用は以下の表を参照してください。
| 仲介手数料 | 法定上限額:売買価格が400万円超なら 3%+6万円(税別) 事前合意が原則で物件価格に応じた料率が決まっている |
| 印紙税・登録免許税 | 契約書・領収書・登記申請書に貼付して納税 |
| 残置物撤去・解体・造成費 | 必要な場合の実費 |
| 書類取得費 | 住民票・印鑑証明書・固定資産評価証明書などの取得で役所へ支払う |
| 司法書士報酬 | 売主の場合は住所変更・抵当権抹消など(権利証紛失の場合は別途)の登記の委託報酬 |
| 土地家屋調査士報酬 | 測量や境界確定に関する立会いの委託報酬 |
なお、2024年7月1日より売買価格が800万円以下の空き家等(宅地・建物を問わず、使用状態も問わない)については、上記にかかわらず「低廉な空家等の媒介の特例」として消費税込33万円までの仲介手数料を受領できる制度が導入されています。
5. 信頼できる相談先の選び方と比較ポイント
ここからは、信頼できる相談先の選び方や公的な相談先、個人間取引のリスクについて解説します。
5-1.不動産仲介会社選びのチェックポイント
不動産仲介会社選びでぜひ参考にしたい情報として以下のようなものがあります。
●査定金額と査定の根拠情報
●近隣エリアでの類似物件の成約実績
●販売戦略(売出価格設定・想定される顧客層・広告掲載の方針・値段交渉幅・成約時期の見込みなど)
●宅建業免許の更新回数や宅地建物取引士の常駐体制
●活動報告の頻度
●担当者の印象や相性
上記の点について、複数社を比較し、一社に専任するか、複数社へ平行して依頼して競争させるかを選択します。ただし、依頼する不動産仲介会社が多すぎると、ネット広告の掲載が過剰になり、物件の印象が悪くなったり、不動産仲介会社ごとの対応や管理が煩雑になったりするため、あまり多くの不動産仲介会社に依頼しすぎないにようにしておきましょう。
5-2.公的機関や第三者サービスの活用
不動産仲介会社名で検索し、評判や口コミを客観的な評価の参考にしてみましょう。また、実在する不動産仲介会社かを調べたい場合には「宅地建物取引業者 検索」というサイトがあります。強引な勧誘や営業に困った場合は、独立行政法人国民生活センターの消費者ホットライン「188」や、紛争処理や専門家への相談は国交大臣指定の住まいるダイヤル「03-3556-5147」が便利です。
また、不動産に関する一般的な疑問は、都道府県ごとに設置された「宅地建物取引業免許事務担当窓口」に電話して尋ねてみると良いでしょう。
5-3.土地を売りたい場合はどこに相談すべきか
土地を売りたいと思ったとき、どこへ相談するべきか分からない方もいらっしゃるようです。不動産仲介会社に相談する場合は、中小企業か大手企業かを選択します。それぞれは、以下のような特徴があります。
<中小不動産仲介会社>
地元に密着した小規模な不動産仲介会社が多く、組織が少人数で指示系統が単純なため判断や決断が早く、小回りが利いて機動力にも優れます。
<大手不動産仲介会社>
大手の資金力や人材を活かした広域の顧客網や広告力が特徴で、コンプライアンスに強いのが特徴です。経営基盤が強いため安心感があります。
どちらかが優れているか・劣っているか、ではなく、物件の特性(立地・用途・規模・法令制限)や売主の目的(スピード重視か価格最大化か)で使い分けることができます。もしくは、双方へ平行して依頼することもできます。
5-4.個人間取引は避ける
仲介手数料の出費を節約したいと考える方は少なくありません。しかし、不動産仲介会社を介さずに個人間取引を行った場合、以下のようなトラブルになる可能性があります。
●法令制限の把握や理解不足
●境界確定の未了
●告知や契約条項の抜け漏れ
●公平な判断の欠如
上記が原因によって発生するトラブルは、専門知識のない素人が対応しても、解決に向けて進展しないばかりか問題が大きくなるケースがほとんどです。対象費用はかさみますが、将来へのリスクヘッジや安心料と捉え、不動産仲介会社を活用しましょう。専門的で公平な第三者のチェックが入れば、売買取引がスムーズに進みます。
6. まとめ:土地売却成功のカギは「確認・記録・相談」
土地売買の失敗は、相場・境界・法令・契約条項・税務・書類・マナーのどれかひとつでも落ち度があるときに起こります。土地の売買で気をつけるべきことは、不動産仲介会社の査定と公的データを活用した自己調査で相場を掴むことや、境界や埋設物・権利関係を整理することに加え、できる限り早めに必要書類を揃えることなど、事前の確認・準備作業です。
また、重要事項説明と売買契約書の整合、売主の告知と契約不適合責任、解除や特約などの契約条項の理解を深めて記録し、契約の質や理解度を高めることも欠かせません。そして、信頼できる不動産仲介会社や公的窓口を併用し、週次で進捗とリスクや対策を相談・共有しながら、任せきりにしないことにも注意しましょう。

宅地建物取引士、管理業務主任者
司法書士事務所に2年、大手不動産管理会社に5年、個人顧客を中心に不動産賃貸・売買の仲介営業会社に7年間従事。また、外資系金融機関にも2年間従事し個人顧客へ金融資産形成や相続税の節税アドバイスなどを担当。現在は不動産/金融業界での経験を活かし、記事を執筆にもあたっている。
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