
土地評価額にはさまざまな種類があり、目的に応じた調べ方が必要です。例えば、土地の取引額は一般的に売主と買主で決定されますが、その金額がそのまま「土地評価額」として扱われるわけではありません。売買契約書に記載される「取引金額」と異なるため注意が必要です。この記事では、土地評価額が必要となるケースに加え、土地評価額の種類とその調べ方について詳しくご紹介します。
1. 土地の評価額が必要となるケース
土地の評価額は、土地を売買する際の「土地に関する税金の計算」や、「不動産市況や経済市況の把握」など、さまざまなケースで必要になります。そのため、一口に「土地評価額」と言ってもさまざまな算出方法や指標があり、適切なものを使い分けなければなりません。
1-1.土地の購入・売却をする際の参考価格を調べたい
土地を売買する際の適正価格を知りたいときは、「実際に取引されている価格に近い評価額」(実勢価格)を調べる必要があります。公的機関が公表する資料をもとに評価額を計算すると、実際に取引されている価格(実勢価格)と乖離しているケースもあるので注意が必要です。
実勢価格を調べるには、国土交通省や民間企業が運営する不動産情報サイトに加え、不動産業者に直接問い合わせてみるのが効果的です。
1-2.税金を計算したい
土地に関する税金には、「固定資産税」「都市計画税」「相続税」のほか、「登録免許税」や「不動産取得税」などがあります。これらの税金は土地評価額(課税標準)に税率を乗じて計算されるため、まずは土地評価額を調べなければなりません。
先に挙げた税金のうち、固定資産税・都市計画税、登録免許税や不動産取得税は、「固定資産税評価額」をもとに計算します。一方、相続税は「路線価方式」と「倍率方式」の2つの方式によって評価額を算出します。
1-3.経済環境を不動産市況や把握したい
不動産価格は、経済の好不況に大きく影響されるため、景況感を把握するには土地価格の推移を調べるのが効果的です。経済を刺激する政策や政策金利の変更は、実体経済にどのように影響しているか分かりにくいところがありますが、不動産の取引状況や不動産価格への影響は、公的な指標の価格推移に現れます。
2. 2.5つの土地評価額
土地は「一物四価」とも「一物五価」ともいわれます。これは、公的機関から発表される4つの土地評価額に加え、実際の土地取引から推測する実勢価格があり、それぞれの評価額が異なるためです。
2-1.公示地価
公示地価とは、地価公示法に基づき、国土交通省が毎年3月に発表する、「1月1日時点での標準地価格」です。住宅地、商業地、工業地に分け、1平方メートル当たりの価格が、全国約2万地点で公示されます。公示地価は、実際の土地取引や自治体の土地の収用の参考価格に用いられるほか、地域の景況感を表す指標としてニュースでも大きく取り上げられます。
2-2.基準地価
基準地価とは、毎年9月下旬に都道府県が発表する「7月1日時点での基準地価格」です。基準地価は、国土利用計画法施行令に基づき、都道府県地価調査によって得られた調査結果に基づいています。公示地価と同じく、基準地1m2当たりの価格が公表され、商業地、住宅地のほか、工業地や林地などを含むのが特徴です。都道府県の調査のため、公示地価よりもより地域の実情が反映されたデータになります。
2-3.固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、1月1日時点での土地評価額で、固定資産税課税のために定められるものです。各市町村(東京都は都)が、固定資産税評価基準に基づいて調査し、固定資産税台帳に登録します。また、土地1筆ごとに評価額が登録され、3年ごとの評価替えがあるのも特徴です。
一般に公表されるものではないため、不動産市況の把握や統計には利用できません。その一方で、固定資産税、不動産取得税、相続税(倍率方式の地域)などの税金算出時には欠かせないため、重要な評価額といえます。
2-4.相続税評価額(路線価)
相続税評価額(路線価)とは、相続税や贈与税を算出するときの財産評価に用いられる1m2当たりの評価額です。毎年1月1日時点での土地評価額を国税庁が公表し、土地が接道する道路ごとに評価額のm2単価が記載された地図としても公表されます。
首都圏や地方圏の中心街では、おおむね路線価が付されて公表されますが、郊外や田舎のエリアでは路線価がない地域も少なくありません。路線価のない地域の相続税評価額は、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて決定されます。
2-5.実勢価格
実勢価格とは「実際に取引された不動産の価格」です。実際に公表される価格ではなく、近隣エリアの累積された不動産取引から推測して形成されます。土地ごとに実勢価格があるわけではないため、把握するのは難しいですが、ネット上で得られる取引情報や不動産業者のもつ独自のデータを収集し、実勢価格を読み解くことが可能です。
3. 公示地価・基準地価の調べ方
公示地価・基準地価は、不動産情報ライブラリで簡単に調べることができます。不動産情報ライブラリとは、国土交通省が設けた不動産に関する情報を検索できるWebサービスです。公示地価・基準地価のほか、防災や都市計画、土地取引価格の概況などの公的データが閲覧できます。
不動産情報ライブラリでは、地域ごとに住宅地・商業地などの用途を指定して公示地価、基準地価を検索することができるほか、データ元でもある不動産鑑定士の鑑定評価についてもダウンロード可能です。
4. 固定資産税評価額の調べ方
固定資産税に関する情報は、市町村の固定資産税課・税務課などで管理されています。窓口での固定資産税評価証明書の取得や台帳の閲覧は、原則として所有者本人しかできません。特別に相続人として認められている者以外が行う場合は、委任状が必要です。
4-1.固定資産税評価証明書を取得する
固定資産税評価証明書は、固定資産税を取り扱う市区町村の窓口にて取得します。評価証明書の内容は、所在・地目・地積などの土地の情報、固定資産税評価額、所有者などです。これらは、「1月1日時点での土地の評価を証明するもの」であるため、1月1日以降に分筆・合筆があった土地の評価証明は翌年度にならなければ取得できません。
4-2.固定資産税課税明細書を確認する
固定資産税課税明細書は、市町村から所有者に毎年4~5月ごろに市町村から所有者へ送られる納税通知書に付随している明細書です。所有土地の一筆ごとの固定資産税評価額・課税標準額・税額が記載されています。「価格」の欄に表示されている中で、もっとも大きな数字が固定資産税評価額です。その評価額に、負担水準や用途による調整が入り、課税標準額が算出されます。
4-3.固定資産税課税台帳を閲覧する
固定資産税課税台帳とは、土地ごとの固定資産税評価額や課税標準が記載された帳簿です。市町村の固定資産税窓口に請求することで閲覧できます。東京都では、閲覧用と付した台帳の写しが交付されます。また、所有者ごとに所有している土地・家屋の評価額をまとめた「名寄帳」があります。ただし、台帳自体や台帳の写し自体に証明効力はないため、登記で使用する際には、「評価証明書」や「課税明細書」が必要です。
4-4.固定資産税評価額の簡易的な算出方法
固定資産税評価額は「公示地価の70%程度」とされているため、公示地価から固定資産税評価額を簡易的に推測できます。対象土地の近くの標準値の地価から推測できますが、正確なものではありません。
5. 相続税評価額の調べ方
土地の相続税評価額の算出方法には、「路線価方式」と「倍率方式」があります。地方圏や郊外、山林など、路線価が付されていない土地には倍率方式を用いて評価額を算出します。
5-1.路線価方式
路線価が付されているエリアの土地の相続税評価額は「路線価×地積(m2)」で算出します。路線価の情報が掲載されているのは、国税庁のWebサイト「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」です。路線価図のページごとにエリアごとの地図が掲載されており、対象土地のエリアの地図を参照し、接道している道路の路線価をチェックできます。
例えば、路線価が「175D」である場合、接道する土地の1m2当たりの評価額は175,000円です。「D」は借地権を評価するときの割合で、借地権割合60%を意味します。加えて、地積が150m2ならば、評価額は150×175,000=2,625万円です。
5-2.倍率方式
路線価がない地域の評価額は、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価額を算出します。路線価図の地図には大きく「倍率地域」と表示されていますので、まずは路線価図でどちらの方式を使うエリアか確認すると良いでしょう。倍率表には、所在・適用地域・借地権割合・用途ごとの倍率などが記載されています。適用地域に「一部」と記載されている場合は、そのエリアの一部に路線価が付されているということです。
宅地の場合、倍率表には「路線」もしくは数字が記載されており、「路線」は路線価方式の地域、数字は倍率方式の倍率を表しています。ほかの用途については、数字は倍率、「比準」「市比準」などの記載は宅地と同等の評価を表しています。
5-3.相続税税評価額の簡易的な算出方法
相続税評価額は「時価(実勢価格)の80%ほど」であるため、実勢価格から大まかに推測することが可能です。簡易的に相続税を計算するときには役に立つものの、エリアによってかなりの開きがあるため、通常は一般の方式で計算するほうが良いでしょう。
6. 実勢価格の調べ方
実勢価格そのものは公表されていないため、いくつかの情報から推測する必要があります。不動産取引のデータが分かるWebサイトから情報を得るか、不動産業者に査定を依頼するのが良いでしょう。
6-1.不動産ポータルサイトで調べる
不動産の取引価格は不動産ポータルサイトにて公表されています。公的なサイトでは、国土交通省の不動産情報ライブラリが便利です。土地取引価格の概況や実際の成約価格情報を閲覧・ダウンロードできる、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」が便利です。
ざっくりと地価の推移を調べたいときは、土地取引価格の年ごとの平均単価(主要都市のみ)が掲載されている「土地取引価格の概要」を参考にできます。そのほか、土地の売出価格が調べられる民間の不動産ポータルサイトも、実勢価格の調査に役立ちます。
6-2.価格査定を依頼する
実際に所有する土地を売買したい場合は、不動産業者への価格査定依頼がおすすめです。価格査定には、現地で土地建物の現況を目視で調査する「訪問調査」と、資料からの情報で査定する「机上調査」があります。目的によって使い分けると良いでしょう。
また、「一括査定サービス」などを利用しながら、複数の業者に査定を依頼し、価格を比較検討すれば、「値付けの理由」をより深く理解できます。
6-3.公示地価・基準地価から予測する
実勢価格は公示地価・基準地価の1.1~1.2倍とされているため、公示地価・基準地価からざっくりと実勢価格を予測できます。一方、実勢価格と乖離した公示地価・基準地価が付されているエリアもあるため、参考程度にしておきましょう。
6-4.固定資産税評価額・相続税評価額から予測する
固定資産税評価額は「公示地価の70%程度」とされているため、「固定資産税評価額÷0.7×1.1~1.2」という計算式で実勢価格を大まかに予測できます。また、先述の通り相続税評価額は、実勢価格の80%ほどと考えられていることから「相続税評価額」から「実勢価格」の推測も可能です。
7. 実際の取引額に影響を与えるもの
これまでご紹介したさまざまな土地評価額から実際の取引価格を予測する際は、土地の個性によって取引価格が変化することに注意しましょう。エリアによって大まかな不動産相場は存在するものの、実際の取引価格は「土地の特徴」や「周辺環境」が影響します。
7-1.土地の個性によるもの
土地の個性とは、地形(じがた)・接道・狭小地・広大地・傾斜地・がけ地・隣地の越境などを差し、それぞれの特徴は取引価格に大きな影響を与えます。例えば、地形(土地のかたち)が特殊な形状だったり、傾斜地、がけ地だったりする場合は、土地の一部が利用できない可能性があるためマイナスに影響します。加えて、土地の利用のために整地や擁壁工事といった追加費用が掛かることもあるでしょう。
また、接道状況は建築基準法上、建物が建てられるかを左右する大きな要因となります。接道条件を満たさない土地は建築不可としてかなりの評価減となります。
7-2.周辺環境によるもの
周辺環境とは、周囲の建物や看板による日当たり・通風への影響・駅や商業施設・公共施設からの距離・幹線道路や鉄道の影響(騒音・排気)などを差し、取引価格に少なからず影響を与えます。影響に関する基準はありませんが、買い手を検討する客が現れにくい要因があれば、最終的には価格を下げて募集することもあるでしょう。
8. 土地評価額を調べるときの注意点
土地評価額にはいろいろな算定方法があり、目的によって使い分けることが重要です。また、評価額がそのまま取引価格や、税額を求める際の課税標準になるわけではないため注意しましょう。
8-1.目的に合わせた土地評価額を用いる
全体的な不動産市況を把握したい場合は、数年間における公示地価・基準地価の推移を調べてみてください。公示地価・基準地価は、調査地点が多く、おおむね毎年同じ地点の地価を公表しているため、全体的な不動産の状況を把握するのに最適です。
「相続税・贈与税」と「固定資産税」では、用いる評価額が異なります。税額を算出するときは適切な評価額を用いるよう注意してください。
8-2.実勢価格=売買価格ではない
周辺の取引価格のデータから求めた実勢価格は、物件の売出価格を決めるうえでの参考にはなります、一方、実勢価格はあくまで目安の価格です。実際の売買価格は物件の特徴が考慮されるほか、買主との交渉で決まるため、実勢価格をもとに安易な資金計画を立てるのは控えるほうが良いでしょう。
8-3.税金を計算するときは評価減の特例や軽減税率に注意
固定資産税や相続税には、居住用か事業用かなどによっても、さまざまな評価減の特例や軽減税率が適用されます。単純に評価額に税率を掛けたものが税額になるわけではありません。正確な税額を知りたいときには、固定資産税を扱う市役所の窓口や、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
9. まとめ
土地の価格は、一物四価・一物五価と言われるように、さまざまな基準によって評価されその評価額もまちまちです。目的によってどの評価額を参照するかが違ってくるため、調査目的に合った評価額を選ぶことが重要になってきます。
特に税金を計算するときには、評価額がそのまま用いられることはなく、さまざまな補正をいれたり軽減税制を考慮したりする必要があります。不安なときには、税理士などの専門家に相談するのが良いでしょう。

宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験をもち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。
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