
仲介会社から届いた査定書を前に、「この金額は何を根拠にしているのか」「会社ごとに査定価格が違うのはなぜか」と迷う方は少なくありません。不動産査定書は、売却時に見込まれる価格と、その考え方を確かめる資料です。税務上の路線価や固定資産税評価額とは、使われる目的が異なります[出典1]。
複数社の査定結果を比較する際は、査定の前提条件や査定時期をそろえて確認しましょう。査定価格の高低だけで判断せず、価格の根拠や販売戦略に納得できる仲介会社を選ぶことが大切です。
この記事の要点
- 査定書は金額より先に、物件情報の前提と取引事例が合っているかを確認します。
- 査定価格は、合理的な根拠をもとに示される売却価格の目安です。
- 査定書に「流通性比率」が記載されている場合は、どのような市場性や物件条件が反映されているかを確認しましょう。
- 高い査定価格がよいとは限りません。根拠と販売方針の説明まで比べます。
1. 不動産査定書とは?売主が受け取る「価格の根拠」を示す資料
不動産査定書は、金額を比べるだけの資料ではありません。価格の根拠と販売方針まで含めて、依頼先を判断するためにも使います。
1-1.不動産査定書とは:仲介会社が売却検討時に作成する資料
不動産査定書は、仲介会社が売却を検討している方に向けて、想定売却価格とその根拠をまとめた資料です。査定価格だけでなく、周辺の成約事例や市場動向、物件の評価ポイントなどが記載されるため、その価格になった理由を確認できます。複数社の査定書を比較する際も、査定価格の高低だけでなく価格根拠を確認することが重要です。
書式や記載項目は仲介会社によって異なります。記載項目や説明の詳しさも、複数社を比較する際の確認材料になります。
1-2.不動産鑑定評価書との違いと、それぞれが適している場面
査定書と鑑定評価書は、どちらが上位というものではなく、目的の異なる別の資料です。
| 項目 | 不動産査定書 | 不動産鑑定評価書 |
|---|---|---|
| 作成者 | 仲介会社(宅地建物取引業者) | 不動産鑑定士(不動産鑑定業者の業務として作成)[出典2] |
| 費用 | 媒介契約に際して価格について意見を述べるために行う査定は、その費用を依頼者へ請求できないとされています[出典3] | 依頼先の不動産鑑定業者へ事前に確認 |
| 目的 | 売却に向けて想定される価格と、その根拠を確認する | 不動産の経済価値を判定し、価額に表示する[出典2] |
| 適している場面 | 売出価格の検討、依頼先の選定、住み替えの資金計画 | 専門的な評価を求められる場面 |
売却を前提に価格の見込みを知りたい場面には、査定書が適しています。売出価格を検討するとき、媒介を依頼する会社を選ぶとき、住み替えの資金計画を立てるときは、市場でいくらで売れそうかという情報が判断の中心になるためです。相続した不動産の売却を検討する際も、査定書で売却価格の目安を確認できます。ただし、遺産分割や税務申告などに用いる評価については、利用目的に応じて専門家や関係機関へ確認してください。
不動産鑑定評価は、国家資格を有する不動産鑑定士のみが、不動産鑑定業者の業務として行えます[出典2]。鑑定評価が必要かどうかは、提出先や利用目的に応じて個別に確認しましょう。
1-3.机上査定(簡易査定)と訪問査定で、査定書の中身はどう変わるか
机上査定は、所在地や面積、築年数、登記記録、周辺の取引事例、市場動向などから概算価格を算出する方法です。売却を考え始めた段階で、おおまかな価格帯を知りたいときに役立ちます。
訪問査定では、資料だけでは把握しにくい物件の現況を現地で確認し、査定価格に反映します。所有者へのヒアリング内容、現地で確認した状態、手元の書類の内容などが判断材料に加わります。
たとえば、同じ専有面積のマンションでも、階数や方位、眺望、管理状態などは、購入希望者の検討や評価に影響する場合があります。戸建てでは、道路との接し方や境界の状況も価格根拠に関わります。売却を具体化する段階では、訪問後の査定書で、机上査定から更新された項目を担当者に確認してください。
1-4.査定書を受け取るタイミングと、費用がかかるケース・かからないケース
査定は、「売る」と決めた後だけでなく、売却を検討し始めた段階でも活用できます。住み替え資金の計画を立てたいときや、相続した不動産の活用・売却を検討したいとき、将来の売却に備えて資産価値を把握したいときなどに役立ちます。
査定に必要な資料は、物件の種類や査定方法によって異なります。依頼時に、仲介会社へ必要な資料と現地確認の範囲を確認しておきましょう。
仲介会社が媒介契約に際して価格について意見を述べるために行う査定については、その費用を依頼者へ請求できないとされています[出典3]。ただし、測量、建物状況調査、鑑定評価など、査定とは別に依頼する業務は費用が発生する場合があります。作業内容と費用の有無を事前に確認しましょう。
2. 査定書の記載項目を1ページずつ読み解く
2-1.表紙・物件概要:住所・面積・築年数など前提条件にズレがないか確認する
表紙では、作成日、会社名、担当者名、対象物件を確認します。続く物件概要では、住居表示と地番、土地・建物面積、専有面積、築年、構造、権利、交通条件を照合対象にしてください。購入時の売買契約書や重要事項説明書、登記事項証明書などの物件情報を確認できる資料と照らし合わせましょう。
戸建て・土地なら、接道、私道負担、用途地域、建ぺい率・容積率、境界に関する記載も確認の対象です。マンションでは、棟、所在階、方位を見ます。細かな項目に見えても、ここがずれていると4章で扱う各社比較の前提が崩れます。
2-2.査定価格:査定価格・売出価格・成約想定価格の違いを押さえる
査定書には、「査定価格」「売出提案価格」「成約想定価格」など、複数の価格が並ぶ場合があります。用語の定義や価格幅の示し方は、仲介会社によって異なることがあります。
一般に、査定価格は根拠資料から算出された売却価格の目安です。売出価格は、実際に市場へ出すために提案される価格で、査定価格と同額とは限りません。成約想定価格と記されているなら、想定している販売条件を確認しましょう。ほかの価格との違いが整理できます。売出価格をどう決めるかは、5章で扱います。
2-3.査定の根拠:取引事例比較法・原価法・収益還元法のどれが使われているか
根拠欄には、取引事例を中心にした計算や評価コメントがまとめられています。不動産の価格を求める手法には取引事例比較法、原価法、収益還元法があり、物件の種別や用途に応じて使い分けられます。取引事例比較法は、近い条件で取引された物件を基礎に、面積、築年、駅距離、階数、接道などの差を調整する考え方です。原価法は、対象の建物を現時点で新築した場合の費用(再調達原価)を求め、経年や劣化の状況に応じて価値の減少分を差し引く(減価修正)方法です。収益還元法は、賃料などから収益性を見る方法で、賃貸中や投資用の物件の説明に使われることがあります。
査定書を比較する際は、手法名そのものではなく、どのような取引事例や物件条件をもとに査定価格が算出されたのかを確認することが重要です。
2-4.取引事例(事例地情報):物件の類似性と取引時点をチェックする
取引事例は、単に「近所にある」だけでは、査定価格の根拠として十分とは限りません。対象物件と条件が近いほど、査定価格の根拠として参考にしやすくなります。
採用された事例が対象物件とどの程度類似しているかを確認してください。取引時期、立地、面積、築年などに差がある場合は、その事例を選んだ理由や補正の考え方を担当者に確認するとよいでしょう。売り急ぎ・買い急ぎなど特殊な事情があった取引は、相場から離れた価格になることがあります。
土地や戸建てでは、道路の幅や方位、土地の形状、用途地域も価格に影響することがあります。国土交通省の不動産情報ライブラリでは、不動産取引価格情報として取引時期、面積、建築年、前面道路、用途地域などを確認できます[出典4]。査定書に載った事例を補助的に見直す材料として使ってください。
2-5.加点・減点要素と流通性比率:評価コメントの読み取り方
日当たり、眺望、室内の状態、リフォーム履歴、設備の不具合、騒音などは、加点や減点のコメントに表れます。良い点が多く書かれていても、売却の支障になり得る条件まで記載されているかを確認してください。
査定書に「流通性比率」が記載されている場合は、どのような市場性や物件条件が反映されているかを担当者に確認しましょう。また、減点項目がある場合には、査定価格への影響、販売時の説明、対策の有無を確認することが大切です。
3. 価格の根拠が妥当かを見極めるチェックポイント
3-1.査定価格の根拠が客観的なデータと事例で示されているか
妥当性を確かめるときは、「いくらか」よりも「なぜその金額なのか」を見ます。採用事例の所在地、取引時期、面積、築年、駅距離を確認し、対象物件との違いを価格にどう織り込んだのかを確かめてください。補正の理由が文章でも示されていれば、質問したい点も絞りやすくなります。
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、取引当事者へのアンケート調査をもとに、個別の売買物件が容易に特定できないよう加工した不動産取引価格情報が提供されています[出典4]。
公的な価格データは相場を把握する参考になりますが、査定価格の妥当性を判断する材料としては十分ではありません。査定書では、対象物件に似た取引事例が採用されているか、その事例との違いが適切に反映されているかを確認することが重要です。
3-2.プラス面だけでなくマイナス面・売却リスクにも触れているか
価格の説明がプラス面だけで終わっている場合は、もう一歩踏み込んでマイナス面も確認しましょう。「駅に近い」というプラス要因だけで価格は決まりません。同じ駅近でも、幹線道路の騒音や日照の制約があれば評価は変わることがあります。立地以外にも、管理費や修繕積立金の負担、土地の境界が未確定であることなども購入希望者の比較材料になります。
不利な条件が書かれているからといって、その会社の評価が低いわけではありません。購入希望者にどう説明するのか、価格へどう反映するのか、不利な条件の対策として事前に用意できる資料はあるのか。そこまで考えられている査定書かどうかを見分ける手掛かりになります。マイナス面を隠す提案よりも、対応策まで示す提案となっているかを確認しましょう。
3-3.売出価格の提案と成約までの期間の目安が示されているか
査定価格の根拠を確認したら、販売開始時の提案にも目を通します。希望価格を優先する案と、売却期限を優先する案では、設定する価格帯や見直しのタイミングが異なります。
販売期間の目安については、査定書に記載された前提条件や担当者の説明を確認しましょう。同じ査定価格でも、短期間での成約を想定している場合と、時間をかけて売却する前提の場合では意味合いが異なります。査定書を受け取ったら、提案された売出価格でどの程度の販売期間を想定しているのかを確認することが大切です。
あわせて「問い合わせが少ない場合、何を見て価格や訴求を調整するのか」も質問しておきましょう。問い合わせ数、内覧時の感想、似た物件の新規売り出しや成約状況など、確認する材料を答えられる担当者であれば、売り出し後の相談も進めやすくなります。
3-4.販売活動のプラン(広告・内見対応・価格見直し)まで書かれているか
査定書は、価格の根拠と販売方針を切り離して読むと判断を誤りやすくなります。広告で伝える物件の強み、購入希望者へ紹介する方法、内覧時に準備すること、活動報告の方法を確認してください。空室か居住中かによって、内覧の組み方も変わります。
価格見直しの考え方まで書かれているかも確認しましょう。どの時点で、何を見て見直すのか。価格の変更だけでなく、写真の差し替えや紹介文の調整、内覧時の整え方まで選択肢が示されていれば、売出後の判断がしやすくなります。物件が指定流通機構(レインズ)に登録された場合は、交付される登録証明書に記載されたURL・ID・パスワードを使い、売主専用画面で登録物件の取引状況を確認できます。取引状況は、「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3区分です[出典5]。登録証明書には売主専用画面へアクセスするための二次元コードも掲載されています[出典5]。
販売活動を任せるなら、こうした確認方法を担当者が分かりやすく案内できるかも見ておきたいところです。売主が状況を確認できる仕組みを知っておくと、報告内容も受け止めやすくなります。
3-5.信頼できる査定書の特徴:どこを読めば判断できるか
枚数が多いことだけでは、査定の良し悪しは決まりません。確認したいのは、対象物件の条件、取引事例との違い、売却時に想定される論点がつながっているかです。住所や面積の転記だけで終わらず、物件固有の事情に触れている資料は、検討の土台になります。
マンションでは、管理規約、総会議事録、長期修繕計画、修繕積立金の状況まで確認が必要になる場合があります。戸建てでは、建物の状態、境界、接道、増改築の履歴が論点になり得ます。査定書に記載がなくても、売却に影響しそうな事情を担当者が質問してくるかを見てください。
不動産価格は、物件の個別条件や周辺市場など、さまざまな要素を踏まえて検討されます。査定書では、対象物件と取引事例の条件差がどのように価格へ反映されているかを確認することが重要です。
4. 複数社の査定書を比較して依頼先を選ぶ手順
複数社を比べる際は、査定価格を並べる前に、各社が同じ物件情報と希望条件で評価している状態をつくります。
4-1.比較の前提を揃える:同じ物件情報・同じ査定方法で依頼する
比較を始める前に、各社へ渡す情報をそろえましょう。所在地、面積、築年、間取り、リフォーム履歴、設備の不具合、賃貸中かどうか、売却希望時期などを同じ内容で伝えると、査定条件の違いを減らせます。
購入時の重要事項説明書、建築確認関係の書類、マンションの管理資料、測量図など手元にある資料も、各社に条件をそろえて提示すると比較しやすくなります。不具合や越境の心配など、査定条件に関わる事項も同じ内容を伝え、各社の査定根拠の違いを比べましょう。
4-2.4つの軸で並べる:査定価格/根拠/売出価格の提案/販売戦略
情報を頭の中だけで比べると、高い査定価格だけが印象に残りやすくなります。メモや表に整理すれば、確認したい点が見えてきます。査定価格が近くても、参考にした事例や売り出し方が異なるケースは少なくありません。
| 比較する軸 | 確認する内容 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 査定価格 | 一点か幅か、価格の定義 | 同じ前提で算出されているか |
| 根拠 | 採用事例、補正理由、減点要因 | 対象物件との違いを説明できるか |
| 売出価格の提案 | 開始価格、見直し条件 | 売却期限と合っているか |
| 販売戦略 | 広告、紹介、内覧、報告 | 実行内容が具体的か |
担当者の応答も同じ表に書き留めておくと便利です。質問への回答が資料と矛盾していないか、分からない点を持ち帰って確認する姿勢があるかも、依頼後のやり取りを左右します。
4-3.査定価格に差が出る理由を「根拠の違い」から読み解く
価格差が出たときは、価格だけで判断せず、採用事例を見比べます。一方は同じマンション内の成約を重視し、もう一方は近隣の新しい物件を参考にしているかもしれません。戸建てでは、土地と建物の評価方法が異なる場合もあります。また、2-5で触れた流通性比率の設定が査定価格に影響する場合もあります。
「この事例を選んだ理由」「対象物件との違いを金額にどう反映したか」を聞くと、価格差の中身が見えてきます。答えが曖昧な場合は、面積、築年、階数、道路、管理状態などの違いを一つずつ確認する聞き方に変えてください。
周辺の取引価格情報を確認したい場合は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」を利用できます[出典4]。指定流通機構(レインズ)が保有する成約価格情報については、戸建てと中古マンション等を検索できます。土地単体の成約価格情報は対象外ですが、不動産取引価格情報では土地を含む取引情報も確認できます[出典4]。
4-4.査定価格の高さだけで選ばない:受け取ったあとに確認したい質問リスト
依頼先を絞る前に、各社へ同じ質問をして回答を比べましょう。査定価格の高さだけで判断せず、その価格を導いた根拠を確認することが重要です。
- 最も近い取引事例はどれで、対象物件と何が違いますか。
- 査定価格は、どの程度の販売期間や販売条件を前提に算出していますか。
- 購入希望者が気にしそうな減点要因と、説明・対策は何ですか。
- 問い合わせが伸びないとき、何を基準に価格や訴求を見直しますか。
- 想定する購入者は誰で、どのように物件を紹介しますか。
- 活動状況は、どの方法で、どの内容を報告しますか。
質問に対して、分からない点をそのままにせず、調べる範囲と回答時期を示してくれるかも確認してください。説明の分かりやすさは、価格交渉や契約条件を相談するときにも役立ちます。
4-5.不明点は担当者に確認する:説明を受けるときの聞き方
「なぜ高いのですか」と聞くより、「この事例との差を、どのように価格へ反映しましたか」と尋ねる方が、具体的な答えを得やすくなります。査定書のページを指しながら聞けば、担当者とも前提を共有しやすいでしょう。
聞き方に迷ったら、査定価格そのものではなく、その査定価格を導いた根拠や過程について尋ねると答えが具体的になります。どの資料を見たのか、何と比べたのか、どこで判断が分かれたのか。この3点を押さえておけば、担当者の説明を比較しやすくなります。
5. 査定書を売出価格の決定に活かす
5-1.査定価格をそのまま売出価格にしない理由
査定価格は、取引事例などから導かれる目安です。売出価格には、いつまでに売りたいか、譲れない条件は何か、購入希望者との交渉余地をどう見るかといった売主の事情も加わります。そのため、査定価格と同額で売り出す案もあれば、別の価格帯を提案される場合もあります。
価格を上乗せして売り出すなら、その根拠と見直し条件をあわせて決めておきます。根拠のない上乗せは、内覧につながらない状況が続いた際に判断を遅らせかねません。特に売却期限が決まっている場合は、売却期限内での成約を目指すための価格設定も検討することが大切です。
5-2.売却の期限や住み替え時期から逆算して価格帯を決める
価格帯を決める前に、引渡し希望日、住宅ローン残債、次の住まいの契約・入居予定、売却代金の最低ラインを整理します。住み替えでは、売却と購入の時期がずれると必要な資金の準備も変わるため、両方の予定を並べて確認してください。査定書は、担当者と相談する際のメモとして活用するとよいでしょう。
「いつまでに、いくら必要か」が明確になると、価格を維持する期間や見直す時期を決めやすくなります。手取り額を考える際は、仲介手数料、抵当権抹消、引っ越し、測量など、物件ごとに発生し得る費用も分けて整理してください。
5-3.売り出し後の価格見直しの考え方
売り出し後は、問い合わせや内覧の数だけで結論を急がず、購入希望者からの感想、競合物件の動き、近い条件の成約事例を確認します。あらかじめ決めた時点で、価格、写真、紹介文、内覧時の整え方のうち、どこを変えるかを担当者と話し合います。
価格を下げるか維持するかは、売却期限と根拠の両方から判断します。問い合わせが多いのに内覧後の評価が伸びない場合は、価格以外にも室内の印象や説明資料が影響しているかもしれません。査定書の減点項目に立ち返ると、見直す箇所を探しやすくなります。
売出価格で成約しなかった場合の次の案も、あらかじめ聞いておきましょう。価格変更だけでなく、写真の差し替え、内覧の準備、訴求点の見直し、購入希望者への紹介方法まで答えられる提案であれば、売り出し後の判断がしやすくなります。
5-4.媒介契約の種類と、査定書の販売戦略との関係を確認する
媒介契約には、一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3類型があります。法令上の義務と標準媒介契約約款の主な内容は次のとおりです[出典6]。
| 項目 | 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 |
|---|---|---|---|
| 他社への重複依頼 | できる | できない | できない |
| 自分で見つけた相手との契約 | できる | できる | できない |
| 業務処理状況の報告 | 約款上の定めなし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
| 指定流通機構への登録期限 | 法令上の登録義務なし | 媒介契約締結日の翌日から7日以内 | 媒介契約締結日の翌日から5日以内 |
| 契約の有効期間 | 法令上の制限なし | 3か月を超えない | 3か月を超えない |
※登録期限の日数に休業日は含みません。
契約前に、査定書に記載された広告、紹介、報告の計画が、選ぶ媒介契約の内容と合っているかを確認してください。契約期間や報酬、特別な広告費の扱いも、書面で読み合わせておくと安心です。
6. 査定書の依頼から売却相談までの進め方
査定依頼は、物件情報と希望条件を伝え、査定書の根拠を比べたうえで媒介契約を検討する流れで進めます。
6-1.依頼から査定書を受け取るまでの流れと期間の目安
依頼時には、物件の所在地・種別・面積・築年・売却希望時期を伝えます。概算の価格帯を知りたい段階なら机上査定を、売り出しを具体化したい場合は訪問査定を選びましょう。
受領予定日は、依頼したその場で確認しておくと安心です。机上査定か訪問査定か、現地確認や資料確認をどこまで行うのかで、査定書を渡せる時期は変わります。購入時の書類が手元にない、境界や権利関係に不安がある場合は、その確認を査定書の提出前に行うのかも聞いておきましょう。
準備資料には、購入時の売買契約書・重要事項説明書、登記識別情報通知、固定資産税の納税通知書、マンションの管理資料、リフォーム履歴などがあります。必要な資料がすべて手元にない場合は、査定を依頼する仲介会社へ、代替できる資料や追加確認の方法を相談してください。手元にある資料は、早めに共有すると査定を進めやすくなります。
6-2.無料査定の申し込み方法と、ノムコムの査定で確認できること
無料査定は、仲介会社の窓口や査定依頼フォームから申し込みます。物件情報、連絡先を入力してください。複数社の査定結果を比較する場合は、面積や築年、不具合、売却期限などの伝え方をそろえましょう。受け取った資料では、査定価格、取引事例、物件の評価コメント、売出価格の提案、販売方法を確認します。連絡先を入力する前に、個人情報の利用目的と査定後の連絡方法にも目を通しておくと、相談の進め方を選びやすくなります。
ノムコムの不動産無料査定では、各エリアに精通した野村の仲介プラスの営業担当者が査定を行います。机上査定と訪問査定のいずれかを選べ、おおむね3か月以内に売れると想定した査定価格が示されます。机上査定は周辺の取引事例等を基に数日程度で価格が分かり、訪問査定は担当者が現地を確認したうえで、物件固有の条件を踏まえた査定価格と、その根拠をご説明します。
査定では、周辺の売出事例や成約事例、エリア特性、立地条件、市場の動向などが考慮されます。
6-3.査定書を見ても判断に迷うときは売却相談を利用する
判断に迷うときは、査定書を並べた表と質問を書いたメモを持参し、売却相談を利用しましょう。「どこが高いか」だけでなく、「なぜこの事例を使ったのか」「希望する期限なら、どの提案が合うのか」を相談の中心に置くと、回答を比べやすくなります。
相続、共有、離婚、賃貸中、境界未確定など、売却前に整理すべき論点がある場合も早めに伝えてください。登記名義や抵当権などの権利関係は、売却手続きに影響します。事情を伏せて価格だけを比べるより、条件を共有したうえで現実的な提案を受ける方が、契約直前の行き違いを減らせます。
7. まとめ
査定書で見る順番は、金額より先に物件情報の前提をそろえ、取引事例の近さと補正理由を確かめることです。そのうえで、売出価格の案、問い合わせが乏しい場合の見直し条件、広告や内覧を含む販売方針まで比べれば、各社の査定価格に差が生じた理由を比較し、依頼先を選ぶ判断材料にできます。
住み替えの予定や売却期限があり、価格と段取りを一緒に決めたい方には特に役立つ考え方です。資料を手元に置き、気になる根拠や希望条件を整理したら、仲介会社へ問い合わせて具体的な売却の進め方を相談しましょう。まだ依頼先を決めていない段階でも構いません。
8. よくある質問(FAQ)
不動産査定書とは何ですか?
不動産査定書は、仲介会社が売却を検討する物件について、査定価格とその根拠をまとめた資料です。金額だけでなく、物件情報、取引事例、価格を調整した理由、売出価格や販売方針の提案まで確認すると、依頼先を比べやすくなります。査定価格は成約価格を保証するものではありません。
不動産査定書と不動産鑑定評価書は何が違いますか?
査定書は、売却に向けて想定される価格と、その根拠を確認するための資料で、仲介会社が作成します。一方、不動産鑑定評価は、不動産の経済価値を判定して価額で示すもので、不動産鑑定士が不動産鑑定業者の業務として行います[出典2]。どちらが上位ということではなく目的が異なるため、提出先や利用目的に応じて使い分けてください。
査定価格はどのように見ればよいですか?
査定価格の高低よりも、取引事例が対象物件とどれほど類似しているかを確認するのが先です。取引時期、物件種別、面積、築年、駅からの距離に加え、マンションなら階・向き・管理状況、土地や戸建てなら道路・土地形状・用途地域も見ます。売出価格や成約想定価格という表現がある場合は、会社ごとに意味が異なることがあるため、それぞれの定義と価格見直しの条件を担当者に尋ねましょう。
不動産査定を依頼するときは、どのような書類を用意すればよいですか?
購入時の売買契約書、重要事項説明書、登記識別情報または権利証、間取り図、リフォーム履歴などがあれば用意します。マンションでは管理規約・長期修繕計画・管理費や修繕積立金が分かる資料、土地や戸建てでは測量図・境界に関する資料も査定の前提確認に役立ちます。手元にない書類があっても依頼はできますが、資料の有無で確認できる範囲が変わるため、持っているものは各社に同じように渡すのが安全です。
複数社の不動産査定書は、何を比較すればよいですか?
同じ物件情報と売却希望条件を伝えたうえで、「査定価格」「取引事例と補正理由」「売出価格の提案」「販売活動」の4項目を並べます。価格差があれば、採用した事例、加点・減点の内容、問い合わせが少ない場合に見直す条件を確認してください。説明が具体的で、物件の不利な条件と対処案も示す会社は、売却活動を任せるか判断しやすい候補です。
9. 出典
[出典1] No.4602 土地家屋の評価|国税庁
[出典2] 不動産鑑定評価ポータルサイト|国土交通省
[出典3] 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方|国土交通省
[出典4] 不動産情報ライブラリ|国土交通省
[出典5] <消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ|国土交通省
[出典6] 宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款|国土交通省
※ 掲載内容は執筆時点の情報です。最新情報は各自治体・関係機関の公式ホームページをご確認ください。

iYell株式会社 執行役員
2009年 東証プライム(旧東証一部)上場のSBIホールディングス入社。SBIアルヒ株式会社(旧SBIモーゲージ株式会社)に配属。その後、株式会社じげん(旧株式会社アイアンドシー・クルーズ株式会社)での勤務を経験。2017年 iYell株式会社に入社。執行役員及びフィンテック推進室責任者として、銀行及び大手住宅事業者をはじめとする外部企業とのアライアンス領域を担当。2018年 一般社団法人不動産テック協会の理事に就任(現任)。
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