札幌オフィス市場および賃貸マンション市場の現況と展望(2026年)

札幌オフィス市場および賃貸マンション市場の現況と展望(2026年)

札幌のオフィス市場では、大規模ビルの竣工に伴い高水準の新規供給が続く一方、立地改善や設備のグレードアップを目的としたオフィス需要は底堅く、空室率は概ね横ばいで推移し、成約賃料は上昇基調にある。本稿では、札幌のオフィス市況を概観した上で、2030年までの賃料予測を行う。
また、札幌の賃貸マンション市場では、コロナウイルス感染拡大に伴い空室が増加し、一時期改善に向かったものの、足元では再び空室が増えている。本稿では、賃貸マンション市場を取り巻く需給環境を確認した後、賃貸マンション指標(空室率・平均支払賃料・EGI(Effective Gross Income))の現況および今後の展望について概観する。


【サマリー】

オフィス市場

  • ● 北海道の「雇用環境」は人手不足感が一貫して強く、企業の採用意欲も高まっている。一方、「企業の経営環境」は一進一退の動きが続き、足元では弱含んでいる。また、札幌市の生産年齢人口は今後も減少が続く見通しである。以上を勘案すると、札幌市のオフィスワーカー数の増加は力強さに欠けることが予想される。
  • ● 札幌ではハイブリッドワークの拡大に伴い、多様な働き方に対応したオフィス利用や拠点配置を検討する企業の増加が見込まれ、サードプレイスオフィス市場の拡大が期待される。さらに、半導体関連投資の拡大などに伴う地域経済の活性化は、オフィス需要の拡大につながることが期待される。また、行政による支援などを背景に、スタートアップ企業が増加し、新たなオフィス需要の担い手となる可能性もある。
  • ● 供給面では、札幌駅周辺や大通駅周辺を中心に複数の大規模開発計画が進行している。2026年の新規供給面積は約1.3万坪となる見通しである。2027年は供給が一旦落ち着くものの、2028年は約1.9万坪と、2006年に次ぐ高水準となる見通しである。
  • ● 札幌市の成約賃料は当面横ばいで推移した後、新規供給の増加に伴う需給緩和を受けて、2028年以降は弱含みで推移する見通しである。2025年の賃料を100 とした場合、2026年は100、2027年は100、2030年は97となると予想する。ただし、2024年の賃料水準を上回り、大幅な賃料下落には至らない見通しである。

賃貸マンション市場

  • ● 札幌の賃貸マンション市場では、賃貸面積「50㎡以上」の EGI が上昇基調で推移する一方、「30㎡以上 50㎡未満」と「30㎡未満」の EGI はコロナ禍前の水準を下回っている。
  • ● 札幌市では、転入超過による人口増加が継続する一方、賃貸共同住宅の着工戸数は建築コスト高を背景に抑制され、大幅な増加は見込まれない。足元で高水準にある空室率は改善基調に転じ、低迷が続いていた「30㎡以上50㎡未満」および「30㎡未満」の EGI も緩やかな回復が予想される。

Ⅰ.札幌オフィス市場の現況と展望

ⅰ.札幌オフィス市場の現況

三幸エステートによると、札幌市の空室率(2026年9月時点)は3.4%(前年同月比+0.1ppt)となった(図表1)。複数の大規模ビルが竣工した一方、人材確保や従業員満足度の向上などを目的に、立地改善や建物設備のグレードアップを図るオフィス需要は底堅く、空室率は概ね横ばいで推移している。
札幌市の空室率を規模(注1)別にみると、「大型4.4%(前年同月比+0.8ppt)」と「大規模3.7%(同+0.1ppt)」が上昇した一方、「中型3.1%(同▲0.5ppt)」と「小型2.3%(同▲0.7ppt)」は低下した(図表1)。2025年の空室率と成約賃料の動き(前年比)を主要都市で比較すると、空室率は東京都心5区、大阪市、名古屋市、仙台市で低下した一方、札幌市と福岡市はやや上昇となった。また、成約賃料はすべての都市で上昇した(図表2)。
賃料と空室率の関係を表した札幌市の賃料サイクル(注2)は、2013年下期を起点として「空室率低下・賃料上昇」の局面が続いていたが、足元では「空室率上昇・賃料上昇」の局面へ移行しつつある(図表3)。

【図表1】札幌オフィスの規模別空室率
202610_05_image01.jpg(出所)三幸エステートのデータをもとにニッセイ基礎研究所作成
【図表2】主要都市のオフィス成約賃料 (東京都心5区除く)(オフィスレント・インデックス)
202610_05_image02.jpg(出所)三幸エステート・ニッセイ基礎研究所「オフィスレント・インデックス」
【図表3】札幌オフィス市場の賃料サイクル
202610_05_image03.jpg(出所)空室率:三鬼商事、賃料:三幸エステート・ニッセイ基礎研究所

1 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
2 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、①空室率低下・賃料上昇→②空室率上昇・賃料上昇→③空室率上昇・賃料下落→④空室率低下・賃料下落、と時計回りに動く。

ⅱ.札幌オフィス市場の需要見通し

(Ⅰ)オフィスワーカー数の見通し

住民基本台帳人口移動報告によると、2025年の札幌市の転入超過数は+10,835人(前年比+0.05%)となり、転入超過が継続している(図表4)。また、一方、2025年の北海道の就業者数は264.1万人(前年比▲0.6万人)となり、3年ぶりに減少した(図表5)。また、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」によると、2025年の札幌市の生産年齢人口は119.2万人(前年比▲0.1%)となり、減少が続いている(図表6)。国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」によると、札幌市の生産年齢人口は今後も減少が続き、2030年は115.5万人(2025年比▲3.1%)、2035年は110.2万人(同▲7.5%)となる見通しである。

【図表4】主要都市の転入超過数
202610_05_image04.jpg(出所)総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」をもとにニッセイ基礎研究所作成
【図表5】北海道の就業者数
202610_05_image05.jpg(出所)総務省「労働力調査」をもとにニッセイ基礎研究所作成
【図表6】札幌市の生産年齢人口
202610_05_image06.jpg(出所)総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」 をもとにニッセイ基礎研究所作成

以下では、札幌のオフィスワーカー数を見通すうえで重要となる「北海道」の「企業の経営環境」と「雇用環境」について確認したい。
内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」によれば、「企業の景況判断BSI(注3)」(北海道財務局)は、コロナ禍を受けて2020年第2四半期に「▲41.8」と一気に悪化した。その後は、回復と悪化を繰り返しながら推移し、2026年第2四半期は「▲7.8」となった(図表7)。
また、「従業員数判断BSI(注4)」(北海道財務局)は、人手不足を示す「+36.1」(2020 年第1四半期)から「+12.3」(同第2四半期)へ低下した後、上昇に転じており、2026年第2四半期は「+37.5」となり、過去最高水準を更新した。全国平均(+25.7)と比較して、北海道では一貫して人手不足の状況が継続している(図表8)。
こうした人手不足を背景に、企業の採用意欲は高まっている。帝国データバンク「北海道・2026年度の雇用動向に関する企業の意識調査」によれば、正社員の採用を予定している道内企業の割合は63.8%と前年比+5.3ポイント上昇した。

【図表7】企業の景況判断BSI(全産業)
202610_05_image07.jpg(出所)内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」をもとにニッセイ基礎研究所作成
【図表8】従業員数判断BSI(全産業)
202610_05_image08.jpg(出所)内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」をもとにニッセイ基礎研究所作成

「北海道」の「雇用環境」は、人手不足感が一貫して強く、企業の採用意欲も高まっている。一方、「企業の経営環境」は一進一退の動きが続き、足元では弱含んでいる。また、札幌市の生産年齢人口は今後も減少が続く見通しであり、その動向を引き続き注視する必要がある。以上を勘案すると、札幌市のオフィスワーカー数の増加は力強さに欠けることが予想される。

(Ⅱ)テレワークの普及がオフィス需要に及ぼす影響

総務省「通信利用動向調査」(企業編)によれば、北海道に所在する企業にテレワークの導入状況を尋ねたところ、「導入している」と回答した企業の割合は、2019年の16%から2022年の47%へ大幅に上昇した(図表9)。その後は4割程度で推移しており、北海道においてテレワークが一定程度定着していることがうかがえる。

【図表9】テレワークの導入状況(北海道)
202610_05_image09.jpg(出所)総務省「通信利用動向調査」(企業編)をもとにニッセイ基礎研究所作成

札幌市では、テレワークを取り入れた柔軟な働き方(ハイブリッドワーク)が徐々に広がるなか、多様な働き方に対応したオフィス利用や拠点配置を検討する企業が増えている。勤務場所の多様化に伴い、「シェアオフィス」や「コワーキングスペース」等のサードプレイスオフィスが増加している。ザイマックス総研の調査によれば、2025年12月時点の札幌市の「フレキシブルオフィス(注5)」は前年比6拠点増の「64拠点」となった。
図表10に、札幌市内の主なサードプレイスオフィスとその入居ビルを示した。サードプレイスオフィスは札幌駅前などの大規模ビルへの入居が多く、札幌のオフィス需要を下支えする一因となっている。
今後、札幌市では、育児や介護などにより就業時間や勤務地に制約のある人材への支援や、BCP対応の観点から、テレワークの活用がさらに進むと考えられる。ワークプレイスの見直しやサードプレイスオフィスの活用拡大が見込まれることから、今後もオフィス需要への影響を注視したい。

【図表10】札幌の主なサードプレイスオフィスと入居ビル(出所)各社公表資料等をもとにニッセイ基礎研究所作成
サードプレイスオフィス名 ビル名 サードプレイスオフィス名 ビル名
WeWork THE VILLAGE SAPPORO 札幌北2条ビル さっぽろRオフィス大通西 岩渕ビル
リージャス札幌大通 桂和大通ビル50 TREEBASE 木NINARU BLDG.
リージャス札幌駅前通 MMS札幌駅前ビル さっぽろRオフィス札幌駅前 第2山崎ビル
オープンオフィス札幌南 第37桂和ビル ARATANI BASE 全国ビルニューオリンピア
billage札幌 ばらと北一条ビル ワークスタイリング 札幌 札幌三井JPビルディング
さっぽろRオフィス大通 大光ビル JOBUIE 複合施設サーモン
リージャス札幌北ビル 札幌北ビル NewWork 札幌 北海道ビル
ビズコンフォート札幌すすきの CONNECT SAPPORO Creative Lounge SHARE TOWORK サンマウンテンビル
Signature札幌ダイビル 札幌ダイビル H¹T札幌 日本生命札幌ビル
スペラボ札幌大通東 米澤ビル H¹T札幌 THE GARDEN JRタワーオフィスプラザ
さっぽろ
simplace 札幌 J1札幌北⼝ビル AD.connect プラス 新北海道ビル
札幌シェアオフィスBYYARD BYYARD ドリノキ 日之出ビル

(Ⅲ)情報通信業(IT関連企業やコールセンター企業)の動向が及ぼすオフィス需要への影響

札幌市では、情報通信業(IT関連企業やコールセンター企業等)における就業者数の増加や新規拠点の開設が、オフィス需要を下支えしてきた。
一般社団法人北海道IT推進協会「北海道ITレポート」によれば、北海道のIT産業の売上高は増加基調で推移しており、2025年度は約6,019億円となり、初めて6千億円を超える見通しである(図表11)。また、2024年度のIT産業従業者数は、前年度比+1.0%増加の23,822人と推計されている。
札幌市は、コールセンターの運営をサポートする各種施策を講じてきたほか、比較的オペレーターを確保しやすい環境にあることから、コールセンターの集積が進んできた。ただし、札幌市の「コールセンターの新設・増設補助制度(注6)」の新規申請受付は、2023年9月末をもって終了した。
リックテレコム「コールセンター立地状況調査」 によれば、2025年の札幌市のコールセンター拠点数は86拠点と、地方都市では最多を維持している。一方、那覇市(前年比+2拠点)や福岡市(同+2拠点)では拠点数が増加したのに対し、札幌市は横ばいで推移している(図表12)。
また、コールセンターにおいてもテレワークの導入が広がっている。一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度コンタクトセンター企業実態調査」によれば、「在宅コミュニケーター」を採用しているとの回答は6割を占めた。導入目的としては(注7)、「働き方の多様化」(85%)が最も多く、次いで「BCP対策」(62%)、「採用が容易である」(39%)となっている。今後は、コールセンターにおいてテレワークの導入やAI等を活用した顧客対応の自動化が進むと見込まれ、拠点戦略の見直しを検討する企業が増加する可能性がある。
以上を踏まえると、札幌のオフィス市場を下支えしてきたコールセンターなどによる新規需要は頭打ちとなる可能性があり、その動向には留意が必要である。

【図表11】北海道における IT産業総売上高の推移
202610_05_image11.jpg(出所)一般社団法人北海道IT推進協会「北海道ITレポート」をもとにニッセイ基礎研究所作成
【図表12】 地方都市におけるコールセンターの拠点数
202610_05_image12.jpg(出所)リックテレコム「コールセンター立地状況調査」をもとにニッセイ基礎研究所作成

(Ⅳ)半導体投資拡大がもたらすオフィス需要への影響

AI技術の進展に伴い半導体市場の拡大が期待されるなか、半導体メーカーのラピダスは、2025年4月に千歳市の工業団地「千歳美々ワールド」で試作ラインの稼働を開始した。同社は2027年度までに回路線幅2ナノメートル品の量産開始を目指しており、価格は半導体大手のTSMCと同等またはそれ以下に設定する方針である(注8)。また、経済産業省はラピダスに対し、6,315億円の追加支援(累計約2.4兆円)を実施すると発表している(注9)。
一般社団法人北海道新産業創造機構の推計(注10)によれば、ラピダスの立地に伴う北海道経済への波及効果は約18.8兆円と試算されている。半導体量産の波及効果を北海道内全域に広げることを目的に、2025年5月に、ラピダスの関連企業や自治体など36団体によって「北海道バレー(注11)ビジョン協議会」が発足した。同協議会は、2050年までに半導体関連企業約340社の誘致、半導体関連企業の総生産額3兆円、就業人口約2万人の実現などを目標に掲げている(注12)。
また、北海道経済連合会は、2026年6月に「2050北海道ビジョン(注13)」の改訂版を公表した。同ビジョンでは、「次世代半導体産業の集積形成と『北海道バレービジョン構想』の推進」を目標に掲げ、2050年度の道内実質総生産は最大25.9兆円(2022年度比+28%)に達すると試算している(注14)。2021年に策定した当初の試算を4.6兆円上回るものであり、札幌のオフィス需要にもプラスの効果が期待されている。
札幌市は、2024年5月から半導体関連の設計・研究・開発を行う企業を対象に、オフィスの新設には最大1億円、増設には最大2,400万円の賃料補助制度を開始した。半導体関連投資の拡大が札幌のオフィス需要に与える影響について、引き続き注視したい。

(Ⅴ)スタートアップ企業の動向からみるオフィス需要

2025年に、札幌市および北海道は、内閣府が推進する「第2期スタートアップ・エコシステム拠点都市」において、「グローバル拠点都市」に選定された。
スタートアップ支援の中核を担う「札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会(注15)」は、2029年度末までにスタートアップ300社以上の創出、新規調達額1,000億円以上などを目標とするKPIを設定している。また、重点領域として「一次産業・食」・「宇宙」・「環境・エネルギー」に注力しており、2024年6月に指定された「金融・資産運用特区」を活用し、海外からの投資促進や人材誘致にも取り組む方針である(注16)。
こうした取り組みを背景に、北海道では大学発のスタートアップ企業が増加している。経済産業省「令和7年度大学発ベンチャー実態等調査」によれば、北海道の大学発ベンチャー数は前年比40社増の205社となり、都道府県別では第6位となった。
図表13に、札幌市内の主なスタートアップ企業と入居ビルを示した。北海道大学の関連施設(「北大ビジネス・スプリング」等)やオープンイノベーション施設(「エア・ウォーターの森」、「札幌市エレクトロニクスセンター」等)に入居する企業が多いが、一部の企業は大通や札幌駅周辺のオフィスビルにも入居していることが確認できる。
今後も札幌市ではスタートアップ企業の増加が見込まれ、オフィス需要の新たな担い手となる可能性があり、今後の動向を注視したい。

【図表13】札幌の主なスタートアップ企業と入居ビル(出所)「J-Startup HOKKAIDO」HP および各社公表資料等をもとにニッセイ基礎研究所作成
企業名 ビル名 企業名 ビル名
Aill 北海道新聞ビル GOOD GOOD 東カン札幌駅前ビル
AIQ THE PEAK SAPPORO さくらコミュニティサービス 札幌N40ビル
インターパーク 南大通ビル komham 札幌市エレクトロニクスセンター
インプル 福山南三条ビル ゼロスペック プラチナ札幌ビル
イーベック 札幌市エレクトロニクスセンター 調和技研 ヴィラ・プリンス福粧堂ビル
エヌビィー健康研究所 北海道産学官協働センター ティ・アイ・エル EZOHUB SAPPORO
遠友ファーマ 北海道大学フード&
メディカルイノベーション国際拠点
ネットドア JR GOGOビル
大熊ダイヤモンドデバイス 北大ビジネススプリング BULB エア・ウォーターの森
Auto VR サッポロファクトリー1条館 HILO 北大ビジネス・スプリング
キットアライブ 丸増ビル FLINTZ サンスリービル
五稜化薬 エアリービル マルゴト 春野ビル
MIERUNE F-60 ライラックファーマ 北海道産学官協働センター
未来シェア MMS札幌駅前ビル LA TERRA エア・ウォーターの森
ミルウス 北大ビジネス・スプリング LABバイオテック 北大ビジネス・スプリング
メカノクロス 北大ビジネス・スプリング ランドスキップ 岩佐ビル
Younode 岩佐ビル RAINBOW 北海道大学フード&
メディカルイノベーション国際拠点

3 企業の景況感が前期と比較して「上昇」と回答した割合から「下降」と回答した割合を引いた値。マイナス幅が大きいほど景況感が悪いことを示す。
4 従業員数が「不足気味」と回答した割合から「過剰気味」と回答した割合を引いた値。マイナス幅が大きいほど雇用環境の悪化を示す。
5 一般的なオフィスの賃貸借契約によらず、利用契約・定期建物賃貸借契約などさまざまな契約形態で、事業者が主に法人および個人事業主に提供するワークプレイスサービス。原則、カラオケ・ホテル・飲食店などのテレワークプランなどは調査対象から除外。一人用の個室ボックスを含む。
6 「コールセンター・バックオフィス立地促進補助金」
7 「在宅コミュニケーター」の採用企業が対象。
8 日本経済新聞 「ラピダス受注価格『TSMC以下』」(2026年7月9日)
9 読売新聞 「『最先端半導体』開発のラピダスへの政府支援、累計2.4兆円に…社長『27年度の量産開始を誓いたい』」(2026年4月13日)
10 一般社団法人北海道新産業創造機構「Rapidus 株式会社立地に伴う道内経済への波及効果シミュレーション」(2023年11月21日) ※「IIM-1」と「IIM-2」の2棟の半導体製造工場を建設したケース。2023年度から2036年度までの累計。
11 苫小牧市と石狩市を結ぶ地域。
12 朝日新聞 「(ラピダス始動)バレー構想『340社誘致を』 協議会設立、2050年向け目標案」(2025年5月8日)
13 北海道経済連合会「『2050北海道ビジョン』~『課題解決先進地域』のフロントランナーを目指して~【2026年度改定版】」(2026年6月)
14 日本経済新聞「北海道経済連合会、50年度の道内総生産26兆円試算 最大28%増」(2026年6月9日)
15 札幌市や北海道、道内自治体、大学、民間組織等で構成する協議会
16 札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会「第2期スタートアップ・エコシステム拠点形成計画」

ⅲ. 札幌オフィス市場の新規供給見通し

日本不動産研究所「全国賃貸オフィスストック調査(2026年1月時点)」によれば、札幌市では、新耐震基準以前(1981 年以前)に竣工したオフィスビルの割合は22%となり、大阪市や福岡市と並び、主要都市のなかで最も高い水準にある。
こうした状況を踏まえ、札幌市は都心部を対象とした「都心における開発誘導方針(注17)」等を策定し、容積率緩和やビルの建て替えに対する補助制度を整備している。また、北海道新幹線の全線開通(札幌駅までの延伸)が予定されていることから、札幌中心部では大規模な再開発プロジェクトが複数進行している。以下では、「札幌駅周辺」と「大通駅周辺」におけるオフィス開発計画を概観する。

(Ⅰ)「札幌駅周辺」のオフィス開発計画

「札幌駅周辺」では、ヒューリックが、「ヒューリック札幌 NORTH33 ビル」と「ヒューリック札幌ビル」をⅠ期・Ⅱ期に分けて段階的に建て替え、大型複合施設「ヒューリックスクエア札幌」を開発した。Ⅰ期工事は、2022 年8月に地上11階建てのオフィスビル(延床面積約1.1万㎡)が開業した。続くⅡ期工事では、ホテル等が入る複合ビル(地上20階建て・延床面積約2.2万㎡)が2025年9月に竣工した(注18)(図表14 ①)。また、北7条西5丁目では、「MipLa札幌駅前」(地上11階建て・延床面積約0.7万㎡)が2025年9月に竣工した(図表14 ②)。
北2条西3丁目では、いちご地所が「THE VILLAGE SAPPORO」(地上13階建て・延床面積約1.2万㎡)を開発し、2026年5月に竣工した(注19)(図表14 ③)。
また、NTT都市開発は、北1条西5丁目の北海道放送(HBC)本社跡地において、ホテル「ハイアット セントリック 札幌」や商業施設などで構成される地上26階建ての複合高層ビル「アーバンネット札幌リンクタワー」(延床面積約6.1万㎡)を開発し、2026年6月に竣工した(注20)(図表14 ④)。

【図表14】「札幌駅周辺」におけるオフィス開発計画
202610_05_image14.jpg(出所)新聞・雑誌記事、各社公表資料をもとにニッセイ基礎研究所作成

今後も、「札幌駅周辺」では大規模開発が相次ぐ見込みである。
「西武百貨店札幌店」跡地を含む「北4西3地区」では、平和不動産、ヨドバシホールディングス、鹿島建設、ダイビル、中央日本土地建物が、オフィスや店舗を中心とした地上33階建ての大型複合施設(南棟・延床面積約13万㎡・高さ約160m)と地上10階建ての商業施設(北棟・延床面積約8万㎡・高さ約60m)を開発中で、2028年7月の竣工を予定している(注21)(図表14 ⑤)。
また、JR札幌駅の東側に隣接する「北5西1・西2地区」では、JR北海道などが参画する「札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発組合」(注22)が大規模複合ビルの開発を進めていた。しかし、2026年7月に、JR北海道は、資材価格や人件費の高騰を受けて計画の見直しを発表した。見直し案では、西2丁目街区に地上11階建ての低層ビル(2027年度着工・2030年度完成)を先行して整備し、その後、西1丁目街区にオフィスやホテル等で構成される高層複合施設(地上34階建て・高さ最大230m)を開発する計画である(注23)(図表14 ⑥)。

(Ⅱ) 「大通駅周辺」のオフィス開発計画

「大通駅周辺」では、京阪電鉄不動産が南3条西3丁目で「サザンクロス札幌」(地上11 階建て・延床面積約0.7万㎡)を開発し、2025 年2月に竣工した(図表15 ①)。また、鹿島建設は、南1条西4丁目の4丁目プラザ跡地に、「札幌4丁目プレイス」(地上13 階建て・延床面積約1.9万㎡)を開発し、2025 年4月に竣工した(注24)(図表15 ②)。
また、南2条西6丁目に、「サッポロアーチビル」(地上9階建て・延床面積約0.7万㎡)が2025 年12月に竣工した(注25)(図表15 ③)

【図表15】「大通駅周辺」におけるオフィス開発計画
202610_05_image15.jpg(出所)新聞・雑誌記事、各社公表資料をもとにニッセイ基礎研究所作成

今後も、「大通駅周辺」では複数の大規模開発計画が進行している。
北1条西10丁目では、NTT都市開発が「札幌ノーザンビル」(地上8階建て・延床面積0.7万㎡)を開発中で(注26)、2026年10月に竣工予定である(注27)(図表15 ④)。
また、ダイビルは、南2条西4丁目のPIVOT跡地に、「札幌ダイビル」(地上19階建て・延床面積約4.2万㎡)を開発中で、2027 年4月に竣工予定である(注28)(図表15 ⑤)
札幌駅前通と大通が交差する「大通西4南地区」では、平和不動産が、ホテル「パークハイアット札幌」やオフィス等で構成される複合ビル「SAPPORO ONE」(地上36階建て・延床面積約10万㎡・高さ185m)を開発中で、2029年8月の竣工を予定している(注29)(図表15 ⑥)。

(Ⅲ)札幌オフィス市場の供給見通し

2025年は、複数の大規模ビルが竣工し、新規供給面積は前年比+28%増加の約1.3万坪に達した(図表16)。
2026年も、「アーバンネット札幌リンクタワー」等の大規模ビルが竣工し、新規供給面積は前年と同水準の約1.3万坪となる見通しである。2027年は供給が一旦落ち着くものの、2028年は札幌駅周辺の「北4西3地区」などで、大規模複合施設の竣工が予定されており、新規供給面積は約1.9万坪と、2006年に次ぐ高水準となる見通しである。

【図表16】 札幌オフィスビル新規供給見通し
202610_05_image16.jpg(出所)三幸エステートのデータおよび各社公表資料をもとにニッセイ基礎研究所作成

17 開発を誘導する期間は2032年度まで。
18 ヒューリック株式会社 「~札幌の新たなランドマークとなる複合施設~ 『HULIC SQUARE SAPPORO』の竣工について」(2025年9月1日)
19 いちご株式会社 「いちごのオフィスブランド『Village シリーズ』第5弾『THE VILLAGE SAPPORO』のオープニングパーティーおよびメディア向けお披露目イベントを開催」(2025年6月1日)
20 NTT都市開発株式会社 「アーバンネット札幌リンクタワー 竣⼯7/15(水)にスタートアップ⽀援施設『HooK』、9/1(⽕)より⼀部店舗が開業予定」(2026年7月9日)
21 北4西3地区第一種市街地再開発事業 事業計画書
22 [権利者]:北海道旅客鉄道株式会社、札幌駅総合開発株式会社、ジェイ・アール北海道バス株式会社、JR北海道ホテルズ株式会社、札幌市。
[参加組合員]:株式会社朝日新聞社、朝日生命保険相互会社、日本都市ファンド投資法人、芙蓉総合リース株式会社、東宝株式会社、株式会社メディカルシステムネットワーク、札幌ステーションフロント特定目的会社。

23 日本経済新聞 「JR北の札幌駅前再開発、総事業費4000億円超 マリオット進出白紙」(2026年7月15日)
24 鹿島建設株式会社「札幌4丁目プレイスHP」
25 リアルエコノミー「札幌中心部に新規オフィスビル2棟、『サッポロアーチビル』『THE VILLAGE SAPPORO(いちご若草ビル)』」(2026年3月9日)
26 リアルエコノミー「エヌ・ティ・ティ都市開発が札幌・北1西10にオフィスビル計画」(2025年4月13日)
27 三鬼商事HP
28 ダイビル株式会社「札幌ダイビル再開発プロジェクトHP」
29 平和不動産株式会社「札幌都心部における『大通西4南地区第一種市街地再開発事業』 ビル名称を『SAPPORO ONE』に決定」(2026年1月6日)

ⅳ. 札幌のオフィス賃料見通し

前述の新規供給見通しや経済予測、オフィスワーカー数の見通し等を前提に、2030年までの札幌のオフィス賃料を予測した。
需要面では、北海道の「雇用環境」は人手不足感が一貫して強く、企業の採用意欲も高まっている。一方、「企業の経営環境」は一進一退の動きが続き、足元では弱含んでいる。また、札幌市の生産年齢人口は今後も減少が続く見通しである。以上を勘案すると、札幌市のオフィスワーカー数の増加は力強さに欠けることが予想される。
札幌ではハイブリッドワークの拡大に伴い、多様な働き方に対応したオフィス利用や拠点配置を検討する企業の増加が見込まれ、サードプレイスオフィス市場の拡大が期待される。さらに、半導体関連投資の拡大などに伴う地域経済の活性化は、オフィス需要の拡大につながることが期待される。また、行政による支援などを背景に、スタートアップ企業が増加し、新たなオフィス需要の担い手となる可能性もある。
一方で、札幌市のオフィス需要を支えてきたコールセンターについては、新設・増設補助制度が2023年9月末をもって終了した。今後はテレワークの導入やAI等を活用した顧客対応の自動化が進むと見込まれ、新規需要が頭打ちとなる可能性に留意する必要がある。
供給面では、札幌駅周辺や大通駅周辺を中心に複数の大規模開発計画が進行している。2026年の新規供給面積は約1.3万坪となる見通しである。2027年は供給が一旦落ち着くものの、2028年は約1.9万坪と、2006年に次ぐ高水準となる見通しである。
以上を踏まえると、札幌市の成約賃料は当面横ばいで推移した後、新規供給の増加に伴う需給緩和を受けて、2028年以降は弱含みで推移する見通しである。2025年の賃料を100とした場合、2026年は「100」、2027年は「100」、2030年は「97」を予想する(図表17)。ただし、2025年対比では▲3%の下落となるものの、2024年の賃料水準を上回り、大幅な賃料下落には至らない見通しである。

【図表17】札幌のオフィス成約賃料見通し
202610_05_image17.jpg(注)年推計は各年下半期の推計値を掲載。
(出所)実績値は三幸エステート・ニッセイ基礎研究所「オフィスレント・インデックス」
将来見通しは「オフィスレント・インデックス」などをもとにニッセイ基礎研究所作成

Ⅱ.札幌賃貸マンション市場の現況と展望

ⅰ.賃貸マンション市場を取り巻く需給環境

以下では、札幌市の賃貸マンション市場を取り巻く需給環境について、概観したい。具体的には、供給面では、(Ⅰ)総住宅に占める賃貸マンションの割合、(Ⅱ)賃貸マンション着工戸数、(Ⅲ)建築コストの動向を確認する。次に、需要面では、(Ⅳ)人口移動、(Ⅴ)学生数の動向を確認する。

(Ⅰ)総住宅に占める賃貸マンションの割合

総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、札幌市の総住宅に占める賃貸マンションの割合は35%となっている。区別にみると、中央区(50%)では賃貸マンションが半数を占めている(図表18)。札幌市都心部の住宅市場において、賃貸マンションの存在感は際立っている。

【図表18】札幌市 総住宅に占める賃貸マンションの割合
202610_05_image18.jpg(出所)総務省「令和5年住宅・土地統計調査」をもとにニッセイ基礎研究所作成

(Ⅱ)賃貸マンション着工戸数の動向

次に、賃貸マンション着工戸数(注30)の動向を確認する。国土交通省「建築着工統計調査」によれば、札幌市の賃貸マンション着工戸数は、年間平均約9千戸の水準で推移していたが、2025年は、前年比▲22%減の約7千戸となった。
面積帯別にみると、札幌市では、「50㎡以上」の住戸は、コロナ禍以降、増加傾向にあり、足元では約4千戸で推移している(図表19)。
在宅勤務等のリモートワークを取り入れたハイブリッドワークが普及したことで、住居に「広さ」を求める動きがみられる(注31)。また、分譲マンション価格の高騰等に伴い、ファミリー層が賃貸マンション市場に流入しているとの指摘もあり(注32)、面積の広い住戸の供給増加の一因となっている可能性がある。

【図表19】札幌市 賃貸マンション着工戸数(面積帯別)
202610_05_image19.jpg(出所)国土交通省「建築着工統計調査」をもとにニッセイ基礎研究所作成 ※12か月累積値

(Ⅲ)建築コストの動向

続いて、賃貸マンションの供給戸数等に影響を及ぼす建築コストの動向を確認する。
建設物価調査会「建築費指数」によれば、札幌の「集合住宅(RC造)」の建築費は長期的に上昇基調で推移している。2026年7月は前年比+5%上昇の「150.0」となり、2020年1月対比で39%上昇した(図表20)。札幌においても、全国平均を上回る建築費の高騰が続いている(注33)。
建築費は大きく資材価格と人件費で構成される。
建設物価調査会「建設資材価格指数」によれば、札幌の「住宅(SRC造、RC造)」の建設資材価格指数は、2021年から2023年にかけて上昇幅が一段と拡大した。2026年7月には前年比+9%上昇の「161.0」となり、2020年1月対比で+53%上昇している(図表21)。足元では、中東情勢の緊迫化を背景とした原油価格の高騰が、建設資材価格に与える影響が懸念されている(注34)。
また、国土交通省「建設労働需給調査」によれば、建設業の労働需給を示す「建設技能労働者過不足率(全国)」は、コロナ禍後、概ねプラス(人手不足)で推移しており、2026年7月は「+1.2」となった(図表22)。建設業は他産業と比較して若年層の割合が低く、高齢化が進行している(注35)。週休2日制の定着をはじめとする「働き方改革」の取組みが進むなか、建設業における人手不足は今後も継続する可能性が高いと考えられる。構造的な人手不足を背景とした建築コストの高騰は、賃貸マンションの供給抑制をもたらす可能性があり、引き続き注視が必要である。

【図表20】「集合住宅(RC造)」建築費
202610_05_image20.jpg(出所)建設物価調査会「建築費指数」をもとにニッセイ基礎研究所作成
※ 2015年=100
【図表21】「住宅(SRC、RC)」建設資材価格
202610_05_image21.jpg(出所)建設物価調査会「建設資材価格指数」をもとにニッセイ基礎研究所作成
※ 2015年=100
【図表22】建設技能労働者過不足率(全国)
202610_05_image22.jpg(出所)国土交通省「建設労働需給調査」をもとにニッセイ基礎研究所作成 ※8職種計

(Ⅳ)人口移動の動向

以下では、賃貸マンションの需要に影響を及ぼす人口移動の動向を確認する(図表23)。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によれば、コロナ禍以前は6.5万人前後で推移していたが、コロナ禍以降は減少傾向にある。一方、転出者数(12か月累積)もコロナ禍以前は5.5万人前後で推移していたが、コロナ禍以降は減少傾向にある。その結果、転入超過数はプラスを維持している。
2025年(年間)の札幌の転入者数は約5.9万人(前年比▲1%減少)、転出者数は約4.9万人(同▲2%減少)、転入超過数は約+1.1万人(前年比±0%)となった。

【図表23】転入者数および転出者数(札幌市)
202610_05_image23.jpg(出所)総務省「住民基本台帳人口移動報告」をもとにニッセイ基礎研究所作成 ※12か月累積値

(Ⅴ)学生数の動向

最後に、賃貸マンション需要の一角を形成する学生数の動向を確認する(図表24)。札幌市における人口に占める学生数(注36)の割合は2.7%となり、全国平均(2.4%)をやや上回っている。文部科学省「学校基本調査」によれば、札幌市の学生数はコロナ禍以降順調に回復しており、2025年には前年比+1%増加の約5.2万人となった(図表25)。

【図表24】人口に占める学生数の割合
202610_05_image24.jpg(出所)総務省「住民基本台帳人口移動報告」、文部科学省「学校基本調査」 をもとにニッセイ基礎研究所作成 ※ 2025年の値
【図表25】札幌市の学生数の推移
202610_05_image25.jpg(出所)文部科学省「学校基本調査」をもとにニッセイ基礎研究所作成

30 共同住宅かつ貸家の着工戸数
31 auじぶん銀行「ビジネスパーソンの住宅事情に関するアンケート」によれば、リモートワークを経験した後、住宅選びの際に意識する項目として「広さ・間取り」(52%)を挙げる回答が最多となった
32 全国賃貸住宅新聞「【賃貸市場エリア別分析】~札幌市編~」(2022年8月24日)
33 北海道建設新聞「道内で工事価格上昇止まらず/札幌の物調指数全国上回る伸び、高止まり続く」(2026年2月16日)
34 静岡朝日テレビ「住宅業界衝撃『見たことない値上げ幅』原油高で建築資材高騰 工務店『5%ほどの値上げ検討』」(2026年4月2日)
35 吉田資『深刻化する建設業の人手不足と外国人労働者への期待』ニッセイ基礎研究所、年金ストラテジー(Vol.271)January 2019
36 大学および大学院の学生

ⅱ.規模別にみた賃貸マンション指標の動向

以下では、札幌市の賃貸マンション指標(空室率・平均支払賃料・EGI(注37))の動向について、賃貸面積「30㎡未満」、「30㎡以上50㎡未満」、「50㎡以上」の3つのカテゴリーに分けて確認する。

(Ⅰ)空室率の動向

日本情報クリエイト株式会社「CRIX(注38)」によれば、札幌市の賃貸マンションの空室率は、いずれの面積帯も、コロナウイルス感染拡大に伴って上昇した後、一時期改善に向かったものの、足元は再び上昇傾向で推移している。
賃貸面積「30㎡未満」の空室率(2026年5月)は13.0%となり、コロナ禍前の水準(2020年1月:6.3%)を大きく上回っている。同様に、賃貸面積「30㎡以上50㎡未満」の空室率は11.2%(同5.1%)、賃貸面積「50㎡以上」の空室率は8.3%(同3.9%)となっており、足元の札幌市の需給環境は悪化している。

【図表26】札幌市の空室率の動向
202610_05_image26.jpg(出所)日本情報クリエイト株式会社「CRIX」をもとにニッセイ基礎研究所作成

(Ⅱ)平均支払賃料の動向

次に、平均支払賃料の動向を概観する。図表27は、札幌市内の賃貸マンションを対象とした平均支払賃料(2020年1月=100)の推移を示したものである。
賃貸面積「30㎡未満」の平均支払賃料は、概ね横ばいで推移するなか、一時期の上昇・下落を経て、2023年後半以降、再び横ばい圏に回帰しており、2026年5月には「100」となった。
一方、賃貸面積「30㎡以上50㎡未満」と「50㎡以上」の平均支払賃料は、横ばいで推移した後、2022年後半より上昇基調で推移している。2026年5月には、賃貸面積「30㎡以上50㎡未満」は「104」、「50㎡以上」は「111」となっている。

【図表27】札幌市の平均支払賃料の動向
202610_05_image27.jpg(出所)日本情報クリエイト株式会社「CRIX」をもとにニッセイ基礎研究所作成

(Ⅲ)EGIの動向

札幌市のEGI(2020年1月=100)は、コロナウイルス感染拡大直後、空室率の上昇とともに、いずれの面積帯においても低下し、100を下回った(図表28)。賃貸面積「50㎡以上」は、感染収束とともに回復基調に転じ、2023年前半に100を上回り、その後も順調に上昇が続いている一方、「30㎡以上50㎡未満」と「30㎡未満」は低迷が続いている。2026年5月には、賃貸面積「50㎡以上」は「106」、「30㎡以上50㎡未満」は「97」、「30㎡未満」は「92」となっている。

【図表28】札幌市のEGIの動向
202610_05_image28.jpg(出所)日本情報クリエイト株式会社「CRIX」をもとにニッセイ基礎研究所作成

37 平均支払賃料と空室率をもとに算出した「実効総収入(Effective Gross Income)」。 EGI=満室想定家賃収入 - 空室損失=平均支払賃料×(1-空室率)EGI-運営費用=NOI(Net Operating Income・純営業収益)
38クリエイト賃貸住宅インデックス(CRIX)(https://www.n-create.co.jp/download/contents/crix/)

ⅲ.札幌の賃貸マンション市場の展望

札幌の賃貸マンション市場では、賃貸面積「50㎡以上」の EGI が上昇基調で推移する一方、「30㎡以上 50㎡未満」と「30㎡未満」の EGI はコロナ禍前の水準を下回っている。
札幌市では、転入超過による人口増加が継続する一方、賃貸共同住宅の着工戸数は建築コスト高を背景に抑制され、大幅な増加は見込まれない。足元で高水準にある空室率は改善基調に転じ、低迷が続いていた「30㎡以上50㎡未満」および「30㎡未満」の EGI も緩やかな回復が予想される。

提供:リサーチ・コンサルティング部
作成:ニッセイ基礎研究所

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