
親の家を相続したものの活用方法がわからず、そのまま放置していると、固定資産税の負担や管理リスクが積み重なり、あとから思わぬ出費につながることがあります。さらに、火災や倒壊、近隣とのトラブルなど、問題が表面化するケースも少なくありません。この記事では、相続した空き家について最初にやるべき手続きや放置リスク、かかる税金や特例、売却や活用の判断基準などを、初心者の方にもわかりやすく解説します。
1. 空き家を相続したら最初にすべきこと
空き家を相続した際、最初に行うべきことは、以下の5つです。
1)相続登記を行う………2024年4月から相続登記は義務化されました。相続による所有権の取得を知った日から3年以内に手続きをしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。
2)空き家の状態を確認する……老朽化、雨漏り、シロアリ被害、境界や越境の有無は、売却価格や解体費に直結します。
3)火災保険に加入・内容を見直す……無人の家は火災・放火・風災のリスクが高く、居住用のままでは補償外となる場合があります。
4)固定資産税の通知先を確認する……名義変更が反映されているか、送付先住所や納税代表者を必ず確認します。
5)遺品整理の方針を決める……売却・賃貸・解体の方針で、片付けの範囲とタイミングは大きく変わります。
これらを最初に確認しておけば、「今売るべきか」「貸せる状態か」「解体が必要か」などといった点を、建物や費用の状況を踏まえて判断できるようになります。
2. 相続した空き家を放置する4つのリスク
ここでは、相続した空き家を放置した際のリスクを4つ解説します。
2-1.固定資産税の負担が増える
相続した空き家を適切に管理していないと、自治体から「特定空家」と判断されることがあります。特定空家に指定されると住宅用地の特例が使えなくなり、土地の固定資産税が最大で約6倍になるため注意が必要です。例えば、屋根や外壁が傷んで今にも崩れそうな状態や、庭の雑草が道路まではみ出している状況でも管理が不十分と判断されることがあります。
2-2.倒壊や火災のリスクがある
管理されていない空き家は建物の傷みが早く進むため、地震や台風が起きると、建物の倒壊や外壁の落下につながるおそれがあります。また、放火対象にもされやすく、火災保険に加入していない場合、修繕費や近隣への損害をすべて自己負担することになりかねません。
2-3.近隣トラブルが発生する
空き家の放置により、雑草の繁茂や害獣の侵入が起こると、近隣住民から苦情が寄せられ、人間関係の悪化につながることも少なくありません。状況によっては、景観や安全面を理由に行政指導や是正勧告を受ける場合もあります。
2-4.資産価値が低下する
管理されていない空き家は、内覧での印象も悪くなり、修繕を前提とした値下げ交渉を受けやすいため、不動産としての価値や売却価格が大きく下がります。さらに、放置期間が長くなるほど補修費や解体費が増え、売却手続きが希望どおりに進められないかもしれません。
3. 相続した空き家にかかる主な4つの税金
ここでは、相続した空き家にかかる主な4つの税金について詳しく解説します。
3-1.相続税
相続税は、空き家そのものにかかるのではなく、土地や建物の評価額をもとに計算されます。評価の基準は、主に路線価や固定資産税評価額です。被相続人が生前に住んでいた宅地であれば、小規模宅地等の特例を使える可能性があり、条件を満たせば評価額を最大80%まで減らすことができます。
参照:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
3-2.所得税(売却時)
相続した空き家を売却して売却益が出た場合は、所得税を納めなければなりません。売却益は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
譲渡所得=売却価格 -(取得費+譲渡費用)
取得費がわからない場合は、売却価格の5%を目安として扱うのが一般的です。なお、管理費や固定資産税は含まれませんが、一定の条件を満たせば解体費を譲渡費用として計上できることがあります。
3-3.固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点での所有者に対して課税されます。相続後に固定資産税を支払うのは新しい名義人です。住宅用地であれば、土地の評価額が原則6分の1に軽減される特例が適用されます。空き家であっても、住宅として使える状態であればこの特例は継続されます。
3-4.都市計画税
都市計画税は、市街化区域内にある土地や建物にかかる税金です。固定資産税とあわせて毎年課税され、住宅用地については固定資産税と同様の軽減特例が適用されます。空き家であっても、市街化区域に立地している場合は継続して負担が発生するため、固定資産税とセットで把握しておくことが大切です。
4. 相続空き家に適用できる税制優遇
ここでは、相続した空き家について特に押さえておきたい代表的な2つの税制優遇を解説します。
4-1.被相続人の居住用財産(空き家)3,000万円特別控除
この特例は、相続した空き家を売却した際、売却益から最大3,000万円を差し引くことができる制度です。被相続人がひとりで住んでいた住宅で、相続後に空き家となっていることが主な条件となります。
1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた建物は、耐震基準を満たすか、解体して売却しなければなりません。売却価格は1億円以下で、相続人が住んだり貸したりしていないことも要件です。制度の期限は2027年12月31日まで延長されています。
参照:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
4-2.小規模宅地等の特例(相続税)
小規模宅地等の特例は、相続税を計算する際に被相続人が住んでいた土地の評価額を大きく下げられる制度です。一定の条件を満たせば、評価額を最大80%まで減らすことができ、相続税の負担を大幅に抑えられます。ただし、この特例は相続税の申告が前提となるため、申告をしないまま期限を過ぎると特例が使えなくなるため注意が必要です。
5. 相続した空き家の3つの判断基準
ここでは、相続した空き家の活用方法について迷ったときに役立つ、3つの判断基準をわかりやすく解説します。
5-1.売却するケース
建物の傷みが進み、修繕にかかる費用が見合わない場合は、売却を検討する余地があります。特に、次のような状況に当てはまる場合は、早めに売却することで負担を抑えやすくなります。
・遠方に住んでおり定期的な管理が難しい
・住む予定や使う予定がまったくない
・修繕や維持にこれ以上お金をかけたくない
空き家を持ち続ける限り、固定資産税や管理費は毎年発生します。加えて、3,000万円特別控除の要件を満たしていれば、税金面で有利に売却できる点も見逃せません。
参照:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
5-2.貸し出すケース
相続した空き家は、賃貸として活用する方法も考えられます。次のような状況に当てはまる場合は売却を急がず、貸し出しを視野に入れる余地があります。
・将来自分や家族が住む予定がある
・すぐに売却すると親族や隣地との関係で問題が出やすい
・賃貸需要が見込めるエリアに立地している
賃貸需要がある立地であれば、固定資産税や維持費を家賃収入で補える可能性もあります。ただし、貸し出す場合は火災保険への加入や見直しに加え、定期点検や防犯対策、通風や草刈りといった日常管理が欠かせません。
5-3.解体するケース
建物の老朽化が進み、倒壊や安全面に不安がある場合は、解体を検討する必要があります。解体費用は建物の規模や地域によりますが、目安として80?150万円程度です。解体後は住宅用地の特例が使えなくなり、固定資産税が上がるため注意が必要です。ただし、空き家の3,000万円特別控除を使って売却する場合は、解体してからの方が要件を満たしやすいケースもあります。
6. 相続した空き家を売却する流れ
相続した空き家を売却するまでの全体像を把握しておくことで、 進め方に悩む場面を減らすことができます。売却までの基本的な流れは、次の通りです。
1.遺品整理・残置物の撤去
2.建物の状態確認(雨漏り・シロアリ・基礎)
3.必要に応じてリフォームまたは解体の検討
4.不動産会社への査定依頼
5.査定価格を比較し、相場感を把握
6.売却条件を決定し、販売活動を開始
7.売買契約の締結
8.引渡し・決済
9.譲渡所得の確定申告(特例の適用)
まずは遺品整理を行い、建物の状態を正確に確認できる状態にします。その後、修繕や解体の必要性を見極め、不動産会社に査定を依頼しましょう。条件が整えば販売活動を開始し、売却後は確定申告まで忘れずに対応しましょう。
7. 相続した空き家を売却するなら査定比較がおすすめ
相続した空き家の売却時は、複数の不動産会社に査定を依頼するのがおすすめです。空き家は築年数や管理状況、立地条件、法的な制限の有無によって評価が大きく変わりやすく、1社だけの査定では価格の妥当性を見極めにくいためです。
例えば、現況のまま売却する場合と、解体して更地で売却する場合とでは、査定額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。古家付き土地や再建築不可物件についても、不動産会社ごとに評価や提案内容に差が出やすい傾向があります。
また、3,000万円特別控除の適用を考える場合も、査定の段階で「解体が必要か」「現況のまま売れるか」といった売却方法を整理しやすくなります。複数社の査定を比較すれば、売却価格だけでなく、売却期間や税負担を踏まえた現実的な判断ができるでしょう。
8. 相続した空き家についてよくあるQ&A
ここでは、相続空き家について特に質問の多いポイントをQ&A形式でわかりやすく解説します。
Q1.相続した空き家は、すぐに売らないといけませんか?
すぐに売却しなければならないわけではありません。ただし、所有している間は固定資産税の支払いや建物管理の責任が続きます。判断を先延ばしにするほど、税金の負担や修繕・管理のリスクが積み重なるため、早めに方向性を考えておくことが大切です。
Q2.空き家のままでも住宅用地の特例は使えますか?
建物としての実態があり、適切に管理されていれば空き家であっても住宅用地の特例は継続されます。ただし、老朽化が進んで危険な状態になっていたり、雑草の放置などで管理不十分と判断されたりする場合は、特例が外れる可能性があるため注意しましょう。
Q3.相続人が複数いる場合、売却はどう進めますか?
相続人が複数いる場合、原則として全員の同意がなければ売却できません。誰がどの割合で相続しているかを確認し、売却するか保有を続けるかといった方針を事前に話し合っておくことが大切です。
9. まとめ
相続した空き家を放置すると、固定資産税の負担増や火災リスク、資産価値の低下につながります。まずは相続登記や火災保険の確認、建物の状態把握といった初動対応が重要です。そのうえで、税金や特例を正しく理解し「売る・貸す・解体する」のいずれが適切かを判断しましょう。売却を検討する場合は複数の不動産会社に査定を依頼し、条件やタイミングを比較することで「納得のいく相続対策」につながります。

宅地建物取引士
2014年から現在まで宅建士として活動しており、2019年に不動産ライター、2022年に不動産賃貸業を始動しました。現在はいわゆる1人不動産屋として活動するほか、今まで、実体験を絡めたリアルな不動産関連の記事を1,000記事以上作成しています。
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