
家の査定を依頼するときには、「査定額が低かったらどうしよう」「新たな不具合が見つかったら大変だ」など、さまざまな不安が付きまとうものです。しかし、家を売却する際にはどのぐらいが適正価格かを知るために、査定依頼は欠かせません。今回は査定から売却まで滞りなく手続きを進めるための知識や手順、注意点についてまとめました。
1. 家の査定はどこに頼む?
家の査定には、簡易なものから本格的なものまでさまざまな種類があります。査定しようとしている物件の規模や種類(木造一戸建て、マンション一棟、商業ビルなど)によって依頼先が変わるため、目的に合った査定方法の選択が重要です。ここでは、物件の種類に合わせ、家の査定をどこに頼むのが良いかを解説します。
1-1.家査定シミュレーションを活用する
「家査定シミュレーション」とは、売りたい物件の売却価格を試算することで、不動産売却シミュレーションができるWeb上のサービスです。エリアや地積・延べ床面積、築年数といった不動産情報を入力すれば、Web上で売却価格の目安を算出してくれます。
最近では、AIが取引事例を学習し、必要なデータの抽出や査定プロセスの出力を行うサービスもあります。膨大なデータに基づいた査定結果がすぐに表示されるため、便利で使いやすいサービスです。
1-2.不動産仲介業者に依頼する
不動産売却の仲介を行う不動産業者に査定を依頼するのはもっとも一般的な方法といえるでしょう。仲介業者が行う査定には「机上査定」と「訪問査定」があります。「訪問査定」では、実際に対象物件を訪問して土地や建物の現況や劣化度合い、設備の状況をチェック・診断して売却額を査定するため、机上査定よりも精度の高い査定額が期待できるでしょう。
査定を大手に依頼するか地元密着の業者に依頼するかは悩みどころですが、複数業者に依頼して比較検討してみるのが正解です。
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1-3.不動産買取業者に依頼する
一部の不動産業者は、業者自身が家を買い取るサービスを提供しています。買取査定も無料で依頼可能です。ただし、このサービスは買い取り後に利益を上乗せして再販することが前提であるため、仲介業者よりもいくらか査定価格が低くなりがちです。その一方、取引自体はスピード感があるため、できる限り早く売却して資金化したいときには、買取業者による査定と買い取りを依頼するのも検討に値するでしょう。
1-4.不動産鑑定士に依頼する
不動産鑑定士は不動産に関する価格鑑定の専門家です。通常、一棟マンションや商業不動産など投資用不動産を売却する際は不動産鑑定士に鑑定を依頼します。専門家による査定結果は、売却価格の根拠や担保評価のエビデンスとして利用可能です。
一方、一般的な住宅を売却する場合、不動産鑑定士に鑑定を依頼することはほとんどありません。新規の不動産担保ローンのために銀行から鑑定を求められることはあるものの、たいていは、不動産業者が売買の前段階として無料査定を行うためです。
1-5.一括査定サービスを活用する
「一括査定サービス」とは、一度に複数の不動産業者へ査定が依頼できるWebサービスです。不動産の査定は、複数の不動産業者に依頼したうえで比較検討するのが理想的ですが、個別に依頼すると、何度も同じ物件情報を入力しなければならなくなります。
その手間を省くのが、一度の情報入力で複数の不動産会社から査定を受けられる「一括査定サービス」です。もっとも、依頼先が多過ぎると営業電話が煩わしいといったデメリットもあるため、査定依頼は数社程度が好ましいでしょう。
2. 家の査定に影響すること
家の査定には物件や周辺状況に関するさまざまな情報が影響します。不動産情報サイトで対象エリアの売却相場を調べることは可能ですが、その不動産相場がそのまま自分の家の査定価格になるとは限りません。家の査定に影響する要素を理解しておけば、不動産業者との相談もスムーズに行えるでしょう。
2-1.対象エリアの不動産相場
不動産相場は、首都圏か地方か、繁華街か郊外かといった要素でも大きく異なります。一見同じエリアの建物だと思っていても、道路一本挟んだだけで相場が大きく変わることも珍しくありません。対象エリアの不動産相場を調べたいときは、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」が便利です。
2-2.地積・建物の延べ床面積
不動産相場は「m2(平米)単価・坪単価」で表されることが多く、相場の単価に対象となる不動産の地積や延べ床面積を乗じて、査定のベースとなる価格を算出します。不動産情報サイトで相場を調べる際は、m2(平米)単価・坪単価を算出し、エリアごとの相場をくらべてみると良いでしょう。
2-3.利便性の良さ
土地やマンションの査定価格では、利便性の良い立地ほど資産価値が高くなる傾向が顕著です。最寄りの駅がターミナル駅や急行停車駅であれば、ほかのエリアよりも高い査定が期待できます。また、同じエリアでも「駅近」はプラスポイントです。そのほか、交通の便や商店街からの近さ、公共施設の近さもプラス査定の対象となります。
2-4.周辺環境
家の売却価格は、住宅地、商業地・工業地、ロードサイド(幹線道路ぞい)などの周辺環境に大きな影響を受けます。都市計画・用途地域による住み分けはある程度されていますが、住宅地の中に工場が点在する地域もあるでしょう。住宅用の土地やマンションであれば、幹線道路の騒音や排気ガスが気になる立地のほか、工場や嫌悪施設(火葬場・墓場など)に隣接している立地は、査定の際にマイナスポイントとなります。
2-5.法的規制・建築条件
土地の建ぺい率・容積率・接道条件・条例による建築条件や、環境・景観規制も、地価に影響を与える要素です。一般的には建ぺい率・容積率が大きいほど土地の利用価値が高まるため、資産価値も高くなります。
一部の別荘地や郊外には、良好な住環境を維持するため、建ぺい率・容積率が厳しく設定されている土地もあります。こうした土地は、環境そのものが資産価値となるため、建ぺい率や容積率が査定結果に及ぼす影響は小さくなるでしょう。
一方、法改正や都市計画の変更によって、市街化調整区域や無道路地、再建築不可物件、国立公園に設定される土地は、その場所に以前建設されていたものと同じ建物を建てることはできません。そのため、査定価格も低くなるか、売却が困難になるでしょう。
2-6.建物の築年数・老朽化の度合い
一般的に、建物の価値は築年数の経過とともに減少していきます。もっとも、立地やデザイン・意匠のレベルが高いビンテージマンションや一部の邸宅は、築年数に関わらず高い人気あるため、今でも売買価格は高額です。設備の更新やリフォームが前提となる建物については、更新費用が建物価格に反映されることがあります。
2-7.土地の地形・傾斜・接道・向きなど
土地の地形(じがた)が悪い、傾斜がある、接道部分が狭いといった特殊な形状の土地は、自由な建築設計を妨げるため、査定においてマイナスポイントになります。近くの同じ広さの土地の価格とくらべると、やや低めの価格での売却になるでしょう。住居系ならば日当たりや風通しも大切な査定ポイントです。道路に向いている側に広いスペースがあり、かつ南側ならば、日当たり・風通しともに申し分ない土地といえます。
2-8.不動産市況
日本全体の経済市況(好景気・不景気)や金利の状況も、不動産市況に大きな影響を与えます。売却時期が定まっていないのであれば、不動産市況の良いときに売るに越したことはありません。また、駅前で再開発や路線のダイヤ改正で最寄り駅に急行や快速電車が停車するようになるなど、エリア特有の不動産市況も査定に影響することがあります。
【関連リンク】
https://www.nomu.com/mansion/library/trend/report/market/#tab506-511
3. 査定前に準備しておくこと
査定を滞りなく進めるほか、査定後に売却をスムーズに行うためにも、査定前の事前準備をしっかりと行う必要があります。査定に必要な資料を事前に収集しておくほか、対象エリアの不動産相場、不動産売買に関する知識を蓄えておきましょう。
3-1.不動産に関する資料を準備しておく
前もって対象物件に関する資料を準備しておくことは、精度の高い査定への第一歩です。査定に必要な資料には以下のようなものがあります。
・不動産登記簿謄本
・購入時の売買契約書・重要事項説明書
・図面(公図・実測図・建物図面)
・検査済証
・販売時パンフレット
・固定資産税評価証明書
・修繕履歴その他新築から変更を加えたときの資料など
3-2.周辺の不動産相場を調査する
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」を活用して、周辺相場を把握しておけば、査定後の質問や相談をスムーズに、的確に行うことができるでしょう。
不動産情報ライブラリには、国土交通省が取引当事者に対して行ったアンケート調査に基づく取引価格の情報や、レインズに掲載された成約価格の情報がまとめられています。取引された物件の情報や取引価格の情報を地域や路線ごとに検索でき、だれでもアクセス可能です。
3-3.大まかな資金計画を立てておく
大まかな資金計画を立てておけば、どのぐらいの査定ならば売却可能かについてあらかじめイメージを持てます。資金計画に基づいたある程度のイメージ作りができていれば、実際に査定をしたとき、売却するか否かの判断がしやすくなるでしょう。また、ローンが残っている物件を売却する際は、売却代金でローンを完済する必要があるため、あらかじめローンの残高を金融機関に照会しておくことも大切です。
3-4.法律関係を整理しておく
相続した物件・共有物の査定を依頼するときは、所有関係や共有持分など、法律関係の情報をあらかじめ整理しておいたほうが良いでしょう。こうした法律関係の情報を、共同相続人や共有者といった関係者に知らせずに査定を依頼するのはトラブルの元となります。物件の所有者・共有者・担保権者・その他の権利者といった情報は、法務局で取得できる不動産登記簿謄本にて確認が可能です。
3-5.建物診断サービスを活用する
建物診断(ホームインスペクション)とは、建築士をはじめとする専門家が、住宅の施工状況や劣化状況、修繕の状況をチェックしてくれるサービスです。建物診断をあらかじめ依頼し、建物の不具合や修繕個所を事前に把握しておくことで売主・買主双方が安心して取引ができます。費用は10万円前後とそれほど大きな負担ではありませんので、検討してみる価値はあるでしょう。
4. 査定を依頼するときの注意点
査定結果は、物件の売出価格を決めるための重要な情報ですが、査定結果通りに成約できるとは限りません。後々後悔しないためにも、査定結果をうのみにせず、余裕のある資金計画を立てたうえでの売却活動を行っていきましょう。
4-1.査定結果が売却価格とは限らない
不動産会社の査定は、あくまで「市場ではこのくらいの価格で売れるだろう」という「売出価格の目安」に過ぎません。そのため、査定結果がそのまま売却価格となるわけではないのです。また、家の売却価格はあくまで売主と買主が合意したうえで決定されるため、不動産会社の査定価格を、そのまま買主に押し付けることもできません。
売却時は、住宅ローンの完済めどや引越し費用、新居の頭金の捻出など、さまざまな不安があるでしょう。良い査定結果が出ると、こうした問題がすべて解決されたと考えたくなりますが、査定結果が売却価格とは限らないことを覚えておきましょう。
4-2.複数の査定を比較検討する
複数の不動産業者へ査定依頼をすれば、いくつかの査定結果を比較・検討できるため、適正価格で不動産を売り出すことができます。ベースにしている取引データは、業者で大きく異なるわけではありませんが、物件のプラスポイントやマイナスポイントをどのようにとらえるかで、査定価格に差が付くこともあります。
高い査定価格が出た場合には、「なぜ高い査定となったか」を尋ねてみると良いでしょう。売り出す際のアピールポイントにできるかもしれません。
4-3.売却時の手数料・諸費用を見積もっておく
査定価格に近い価格で売却できても、売却価格がそのまま手取り金額になるわけではありません。不動産の売却には、仲介手数料や印紙税、ローン事務手数料、抵当権抹消費用、引越し費用、ハウスクリーニング費用など、多くの諸費用がかかります。また、売却によって譲渡益が出た場合は、売却した翌年の確定申告にて、譲渡所得税を納めなければなりません。こうした諸費用や税金も、資金計画に入れておきましょう。
5. 家の売却でやってはいけないこと5選
仲介担当者や買主との信頼関係は、価格査定からスムーズに売却活動につなげるために欠かせません。あとでトラブルになる隠し事や不誠実な対応は避けましょう。家の売却でやってはいけないことを5つご紹介します。
5-1.瑕疵やトラブルを隠す
適正な査定結果やトラブル回避のためにも、土地建物の瑕疵や隣地トラブルといった困りごとがあれば、事前に担当者に開示しておきましょう。売却する自宅に長期間住んでいれば、建物に不具合があるのは自然なことです。査定結果には影響するかもしれませんが、仲介担当者や買主に誠実さを示すことで、結果的に売買の成功につながります。
5-2.根拠もなく高い査定に飛びつく
高い査定が出てきたときは、同業他社よりも高い理由を尋ねてみましょう。根拠のある高い査定ならば、安心してその仲介業者に売買を依頼できます。中には、同業他社を出し抜くために根拠に乏しい高額査定を出し、同業者があきらめたところでゆっくりと価格を下げる交渉を進める悪徳業者も存在するため注意が必要です。
複数業者への査定依頼は、高い査定をもらうだけでなく、どのような点に着目して査定しているかを見極めるためでもあります。
5-3.査定価格を無視して売り出しをする
買い手も周辺相場を調査したうえで物件を吟味するため、査定だけ依頼したあと、独自の高価格で売り出そうとしても、買い手は現れません。ローン残債や手数料を考えると、少しでも高い値段で売却したいところですが、無駄な売却活動を避けるためにも、売出価格は仲介担当者と相談して決定するのが良いでしょう。
5-4.売却スケジュールを守らない
仲介担当者の訪問査定日や買主の内覧日、契約日、引渡日といった売却スケジュールは、きっちりと守りましょう。特に、引渡日は契約条項に含まれているため、遅延によって生じた追加の住居費用や引越し業者の手配費用などの実費は、損害賠償の対象になります。売却スケジュールの遵守は、無駄な賠償金の発生を避け、ビジネス上の信頼関係を構築するうえで非常に大切なポイントです。
5-5.査定時や内覧時の印象が悪い
査定時や内覧時に売主の態度が悪かったり、物件の清掃や残置物の撤去を怠っていたりすると、価格交渉のマイナス材料にされることがあります。売主・買主双方が気持ちよく取引できるよう、できる限り配慮することも、高額査定・高額売却のポイントになることを覚えておきましょう。
6. まとめ
家の価格査定は売却の第一歩です。資料の収集や不用品の片づけなどは大変ですが、担当者がスムーズに査定できるよう準備は怠らないようにしておきましょう。査定結果は、金額だけでなく、査定結果の根拠を理解することも重要です。高額査定の根拠は、買主へのアピールポイントでもあるため、実際の売却活動に役立ちます。査定結果の内容を理解し、適切な価格で売り出すことで、スムーズな売却活動につなげていきましょう。

宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験をもち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。
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