
日本銀行の政策金利引き上げに伴い、大手銀行は、2025年4月から変動型住宅ローン金利を0.25%引き上げました。契約している金融機関によっては、6〜7月の返済分から適用金利が上昇する可能性があります。今後も政策金利は引き上げられる可能性があり、家計へ大きな影響を与えるかもしれません。そこでこの記事では、FPの資格をもつ筆者が、変動金利の最新情報や金利が上昇したときに取るべき対策などを解説します。
1. 【2025年最新版】変動金利が一気に上がる?

2024年以降、日本銀行の金利政策の影響を受け、住宅ローンの変動金利は上昇傾向にあります。2025年も政策金利の引き上げが行われており、変動金利で住宅ローンを契約している方は注意が必要です。
1-1.2025年1月に政策金利の引き上げが決定
日本銀行は、2025年1月24日の金融政策決定会合において「金融緩和の度合いを調整することが適切である」と判断し、政策金利を引き上げました(3月では政策金利を据え置き)。特に、物価の上昇は政策金利上昇に大きな影響を与えているため、今後の経済・物価情勢によっては、さらなる政策金利の引き上げもあると示唆されています。
1-2.政策金利の引き上げは住宅ローン金利の上昇に繋がる
一般的に、住宅ローンの変動金利は「短期プライムレート」と連動します。短期プライムレートとは、各金融機関が「返済能力が高い」と評価する企業に、1年未満の期間でお金を貸すときの金利です。政策金利の引き上げは短期プライムレートの引き上げを引き起こし、変動金利の上昇へとつながるため、住宅ローンの返済に影響を与えます。
1-3.大手銀行は4月からの変動型住宅ローンの基準金利を引き上げ
政策金利の引き上げを受け、大手銀行は2025年4月に変動型住宅ローンの店頭金利(基準金利)を、約0.25%程度引き上げました(2025年5月は据え置き)。ネット銀行や地方銀行でも、すでに借り入れ中の場合は、6?7月の返済分から適用金利が上昇する可能性があります。特に、ネット銀行は「5年ルール」「125%ルール」が適用されないケースもあり、金利上昇による返済額急騰に注意が必要です。
2. 「変動金利はやめたほうがいい」と言われる理由
政策金利の引き上げや変動金利の上昇を理由に「変動金利はやめたほうがいい」といわれる理由を詳しく解説していきしょう。
2-1.今後も上昇が続く可能性があるから
2025年1月の政策決定会合では、「2025年度後半に(政策金利)1%程度という水準を念頭に置き、そこに向けて引き上げていくことが望ましい」という意見がありました。そのため、今後も緩やかに政策金利が引き上げられる可能性が示唆されています。「変動金利はやめたほうがいい」といわれるのは、政策金利引き上げによる「返済額の増加」や「返済困難になるリスク」といった不安が理由です。
2-2.物価の上昇も起こっており生活が苦しくなる可能性があるから
物価高により基礎生活費が上昇しているなか、さらに住宅ローンの返済額が増えれば、家計も苦しくなることが予想されます。
3. 変動金利について知っておくべき注意点
変動金利で住宅ローンを契約するときは、変動金利ならではの特徴を理解しておきましょう。
3-1.現在の返済額が継続するとは限らない点を知る
変動金利で住宅ローンを契約している場合、返済額の変動に注意が必要です。例えば、「借入額3,000万円・返済期間35年・金利1.0%」という場合、毎月の返済額は約8万5,000円です。金利が1.5%に上昇すると毎月の返済額は約9万2,000円となり、約7,000円増えます。残債や返済方法にもよりますが、変動金利が上昇する可能性を前提で考える場合、1万円/月程度の返済額上昇を想定しておきましょう。
3-2.「5年ルール」「125%ルール」を確認する
「5年ルール」「125%ルール」とは、急激な返済額増加から契約者を守るため、変動金利型の住宅ローンに適用される仕組みです。
○5年ルール:適用金利が上昇しても、実際の返済額(元利均等返済の場合)は5年間変わらない
○125%ルール:返済額の見直し時において、新しい返済額は直前の返済額の1.25倍(125%)が上限になる
いずれも、変動金利が急上昇した際に、返済額の高騰を防ぎます。ただし、実際に適用される金利は上がっているため注意が必要です。返済額のうち、利息の割合が増え、元金の返済が遅くなるため、総返済額が増えることになります。
4. 実際に変動金利を契約して後悔した方の事例
実際に変動金利を契約した方の事例を紹介します。実例に基づき、変動金利のリスクを把握しておきましょう。
4-1.返済余力がなく変動金利の上昇に対応できなかった
Aさんは当初の金利を抑えるため、手取り収入に対してギリギリの返済計画で住宅ローンの契約をしましたが、変動金利が上昇して対応に追われることになりました。5年ルールに基づいて5年間は問題なく返済できていたものの、返済額の見直しに伴って家計が苦しくなります。慢性的な赤字状態になり、生活費の切り詰めや子どもの習い事の削減など、苦しい家計運営を強いられる事態になりました。
4-2.収入減と金利上昇が重なってしまった
Bさんは、住宅ローンの契約当初は問題なく返済できていましたが、勤務先の業績悪化により収入が減少してしまいます。それと同時に変動金利が上昇し、住宅ローンの返済額も増加しました。「収入減」と「返済額増加」の二重苦に直面したBさんは、休日に副業をするダブルワークを始め、配偶者もパートに出る必要に迫られる事態となりました。
5. 変動金利の上昇に備えるための対策

今後、変動金利が上昇する可能性を考えた場合に、各世帯で必要になる対策を考えていきましょう。
5-1.繰り上げ返済用の現金を用意しておく
繰り上げ返済により、その後の返済負担を軽減できます。繰り上げ返済には、以下の方法があります。
・期間短縮型:毎月の返済額はそのままで、返済期間を短縮する
・返済額軽減型:返済期間はそのままで、毎月の返済額を減らす
金利上昇による利息負担の増加を軽減したい場合、毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」がおすすめです。ただし、金融機関によっては、繰り上げ返済時に手数料がかかります。また、手元の現金も減るため、当面の生活費に影響しないか検討する必要もあります。
5-2.事前にシミュレーションを行い具体的な影響を把握しておく
事前に金利上昇のシミュレーションを行い、「毎月の返済額」「総返済額」の具体的な数字を把握しておきましょう。リアルな数字を把握すれば、生活を守るために必要な備えが見えてきます。
金融機関が用意しているシミュレーションツールも活用し、その結果と現在の家計状況を照らし合わせながら、数年間の収支を予測した「キャッシュフロー表」を作成するのもおすすめです。
5-3.借り換えを検討する
より低金利で借り換えられる金融機関がある場合、「借り換え」も選択肢のひとつです。定期的に「金融機関ごとの金利」をチェックすると良いでしょう。ただし、借り換え時には新しく住宅ローンの契約をするため、契約に関する諸経費が発生します。借り換えによる「返済負担の軽減効果」と「諸経費」を比較し、経済的なメリットを確認しておきましょう。
5-4.住みかえを検討する
現在の住宅を売却し、より価格が低い住宅へ住みかえるのも選択肢のひとつです。現在よりも借入額を抑えて住宅ローンを契約すれば、返済負担を軽減できます。近年は不動産価格が上昇しているため、「売却価格>ローンの残債」という状況なら、差額分を新居の購入費用に充てることも可能です。
子どもが独立して家が手広くになっている方や、郊外へ引越しても仕事に支障が出ない方にとって、住みかえは合理的な選択肢になるでしょう。
6. まとめ:変動金利が上がる事態に備えた対策を
今後も、住宅ローンの変動金利は上昇が続く可能性があります。具体的な影響をシミュレーションし、返済額の増加に備えておきましょう。実際に変動金利が上昇した場合は、繰り上げ返済や借り換え、住みかえも選択肢のひとつとなります。返済計画に余裕をもたせ、家計の健全性を保ちながら、変動金利の上昇に備えた適切な対応を進めましょう。

FP1級技能士・社会保険労務士・行政書士・宅建士
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。多くの家庭に対して、家計・保険見直しやアドバイスを行うほか、各資格を活かした記事監修や、講演などを行っている。
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