権利書を紛失したら?再発行・名義変更・売買・相続まで徹底解説

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権利書を紛失したら?再発行・名義変更・売買・相続まで徹底解説

権利書を紛失した場合、再発行はできませんが、土地や家の書類がなくなったからといって、所有権がなくなるわけではありません。この記事では、家や土地の権利書を紛失した場合にとれる別の3つの登記申請に関する対処法を、宅建士が解説しています。権利書の役割や必要になるシーンや、不正登記防止の方法なども解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

1. そもそも「権利書」とは?

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以前まで登記後に交付されていた「権利書」と、それに代わって現在交付されている「登記識別情報」の概要を解説します。

1-1.権利書の正式名称(登記済証、登記識別情報通知)

「権利書」とは、不動産の所有者であることを証明する書類です。所有者本人を確認するための書類として、新たに「所有権移転登記」や「抵当権設定登記」を行う際に利用されます。一般的に「権利書」と呼ばれるものは、以下のような「登記済証」と「登記識別情報」のことです。

2025年現在では、不動産登記後に法務局から登記権利者に対して登記済証が発行されなくなりました。代わりに「登記識別情報」が発行されます。

登記済証

2005年の不動産登記法改正以前、不動産登記がオンライン化される前は、所有者が所有権移転登記を申請したときに登記申請書に法務局の受付印を押したものが返却されていました。これを「登記済証」と呼び、一般的に権利書と言われているものです。「登記申請書の写し」、「売買契約書」、「売渡証書」を含む書類が、まとめてファイルに保管されています。

登記識別情報

不動産登記のオンライン化後、登記済証は発行されていません。代わりに12桁のパスワード(英数字の文字列)が記載された登記識別情報通知が発行されるようになりました。以前はパスワード部分にシールが貼られていましたが、現在は袋とじのような形状になっています。

1-2.どんなときに必要なのか(売買、相続など)

権利書が必要になる典型的な場面は不動産の権利を変更する手続きに伴う以下の登記を行う場合です。

●売買・贈与による所有権移転
●抵当権の設定

一方、相続による所有権移転登記の場合や、登記事項の中でも単なる住所変更や氏名の変更登記を行う場合、権利書は不要です。

売買・贈与による所有権移転

売買・贈与・交換などに伴う所有権移転登記(名義変更)は、権利書が必要になる典型例です。登記の際には、以下の書類を司法書士に提出して、登記申請を依頼します。

●登記申請書
●権利書
●売買契約書
●委任状
●本人確認書類

抵当権の設定

不動産を担保に金融機関から借入を行う際は、所有不動産に抵当権を設定します。この抵当権設定登記申請の際にも権利書が必要です。不動産取得時の担保を設定する際はもちろん、不動産担保ローンの利用や借り換え時にも権利書が必要になります。

相続による所有権移転の場合は必要なし

相続による所有権移転では、本人が権利書を提示して意思確認をしないため、権利書は原則として必要ありません。ただし、住民票が発行されないため、被相続人と登記上の所有者の同一性が確認できない場合には、権利書が必要になるケースがあります。

1-3.紛失するとどうなるのか

権利書を紛失しても登記簿に記録された不動産の権利は失われずそのまま残ります。ただし本人確認資料を欠くため、法務局はそれ以降の登記を受け付けません。その場合、後述する3種類の代替手続きが必要です。

2. 権利書紛失時にやるべき3つの対処法と2つの不正防止手続き

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権利書と同時に、実印や印鑑カードも紛失しているなど、盗難の可能性もある場合は、警察署に「遺失届」を提出する場合があります。そのほか、紛失した権利書を使って、第三者が不正に権利移転の登記を行っていないかも確認しなければなりません。紛失が分かったときには、すぐに以下を確認・実行しましょう。

2-1.権利書の紛失に気付いてまずすべきこと

万が一、権利書を紛失してしまった場合でも、所有権移転登記や抵当権設定登記は可能です。権利書は所有権者としての本人確認書類の一種ですので、専門家に代替書類を作成依頼することで対応します。

2-2.対処法(1)事前通知制度を利用

権利書を添付せずに登記申請したのち、登記所(法務局)から本人限定受取郵便による確認通知(いわゆる本人確認ハガキ)が届きます。その通知書面に実印を押印し、2週間以内(海外在住者の場合は4週間以内)に法務局に返送もしくは持参するという方法で、本人確認手続きを行います。

事前通知制度の手続きに費用はかかりませんが、期限を過ぎるとその登記申請は却下されます。融資を利用して不動産を購入する際と同様、決済当日に本人確認を終えなくてはならない場合は、この手段を講じることはできません。

2-3.対処法(2)本人確認情報の利用

司法書士が権利書の代わりとなる本人確認情報(本人確認をしたことを証する書類)を作成し、登記申請書に添付する方法です。費用相場は後述しますが、作成には費用が発生します。登記手続きを司法書士に依頼する場合、この方法が一般的です。

2-4.対処法(3)公証人による本人確認制度

公証人立ち合いの下で登記申請書に記名押印し、本人確認の認証を有償で付与する方法です。司法書士へ依頼せず、自分で登記申請を行う場合は、公証人にサポートを依頼することもできます。ただし、手続きは厳格な基準のもと行われるため、事前に公証人役場に出向いて手続きを確認しておきましょう。

公証人への手数料は、1件につき3,500円が目安です。

2-5.不正登記を防止する2つの手続き

まずは、紛失しないように実印と印鑑証明書、顔写真付き身分証の保管場所を見直しましょう。万一紛失した場合は、「不正登記防止の申し出」と「登記識別情報の失効の申し出」が可能です。これらの手続きは、原則として、所有者本人が登記所(法務局)に出向かなければなりません。

不正登記防止の申し出をする

「不正登記防止の申し出」は、申し出から3カ月以内に疑わしい登記申請がある場合、本人は通知を受け取れる制度です。費用はかかりません。

登記識別情報の失効の申し出をする

「登記識別情報の失効の申し出」とは、盗難・漏えいの恐れがある登記識別情報を、永久に失効させて使えなくする制度です。オンライン申請可能で手数料もかかりませんが、次回登記では本人確認情報が必須になります。

3. 権利書を紛失したまま売買できる?

権利書を紛失したままでも、売買取引自体はできます。その流れを解説します。

権利書を紛失した場合の売買の流れ

権利書を無くしていても、売買自体の流れは権利書がある場合とほとんど変わりません。ただし、不動産仲介会社へ売却を依頼する「媒介契約の締結」の際は、権利書を使わずに売主の本人確認を行います。その場合に照合するのは、「直近の登記簿閲覧情報」と「売主の免許証(パスポート・マイナンバーカード)」、「不動産取得当時の売買契約書や重要事項説明書」などです。

一方、不動産売買による権利変動の登記申請では、権利書に代わる書類を手配する必要があります。

4. 家の権利書を紛失して名義変更はできる?

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家の権利書を紛失しても、名義変更登記申請は可能です。ただし、基本的には登記の専門家である司法書士にすべて任せるケースがほとんどです。

4-1.家の権利書を紛失した場合の名義変更の流れ

家の権利書を紛失した場合の名義変更登記申請は以下の手順で行います。

(1)司法書士へ依頼
(2)面談・身分証確認
(3)本人確認情報作成
(4)登記申請
(5)登記完了

権利書がある場合の標準的な流れに加え、「(3)本人確認情報作成」の手続きが増えます。

4-2.必要書類と手続き

本人確認情報制度で必要な書類や手続き内容について解説します。

「本人確認情報制度」とは

司法書士が本人確認情報を作成したうえで、権利書に代替する手続きは、「不動産登記法23条第4項第1号の資格者代理人制度」にあたります。これにより司法書士は「売主は間違いなく本人である」と保証する責任を法務局に対して負います。

司法書士による手続きと注意点

本人確認の面談時には以下の書類の確認が必要です。

●運転免許証(マイナンバーカード、パスポートなど顔写真付き公的証明書)
●住民票
●印鑑証明書

※登記簿上の旧住所と現在住所がつながらない場合、追加の「戸籍附票」が必要になります。

費用・手間・期間の目安

司法書士への依頼は、遠方への面談や真偽の確認および書類作成などがあるため、決済予定日の2~3週間前までに済ませておくのが理想です。本人確認情報の作成費用は、1件につき5万円前後が目安相場ですが、不動産価格や本人証明リスクの大きさによって幅広く変動します。

4-3.司法書士に依頼する場合と自力でやる場合の違い

自力で登記申請をする場合は、本人確認に要する費用はかかりません。ただし、確実な手続きを原則として2週間以内(書類返送期限内)に完了させなくてはなりません。確実に手続きができるか不安であれば、専門家である司法書士へ依頼するほうが安心できるでしょう。

5. 権利書の再発行はできる?

権利書は紛失した事情にかかわらず再発行ができません。そのため、法務局に対して確かな本人確認をする代替手続きを講じる必要があります。

5-1.「再発行」ではなく「代替手続き」になる理由

権利書も登記識別情報も、発行された時点でのみ有効な「ワンタイムキー」といえます。また、不動産の権利主張や所有者の本人証明において最重要書類でもあるため、二重発行を防ぐ意味でも再交付制度は用意されていません。

5-2.金額の相場と負担するべき費用

司法書士報酬は前述の通り、1件につき5万円前後が目安相場です。ただし、物件の価格やリスクの大きさ、登記申請する物件数、共有する人数、地域格差といった要素で変動するため、費用の見積もりには注意が必要です。

6. 家の権利書を紛失した状態での相続は?

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不動産を相続する際に、被相続人が高齢だったり取得時期がずいぶん昔だったりすれば権利証がないことも少なくありません。その状態での相続について解説します。

6-1.家の権利書を紛失した場合の相続手続きの流れ

家の権利書を紛失していても、遺産分割協議や相続登記手続きの内容や流れは同じです。遺産分割や相続登記は被相続人が死亡した後の手続きであり、本人確認や本人の意思確認をする必要がないためです。

6-2.司法書士・弁護士に相談するべきケース

司法書士への依頼が必要なのは、権利書に代わる本人確認が必要な場合(相続以外で売買・贈与・遺贈など)や、旧住所との沿革書類が保管されていないケースです。また、弁護士への依頼が必要なのは、相続人同士が揉めている場合や、遺言、相続人の一部が海外に居住、抵当権などが残っているケースです。

7. よくあるQ&A

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権利書の紛失についてよくあるQ&Aをご紹介します。

7-1.権利書や登記識別情報を紛失した場合に再発行できる?

権利書や登記識別情報は、たとえ本人の過失なく紛失した場合でも再発行できません。

7-2.権利書がないと登記申請できない?

権利書に代わる方法により、法務局に本人であると証明できれば登記申請できます。例外として、相続登記は権利書不要の手続きのため、権利証がなくても問題ありません。

7-3.権利書を紛失して登記する場合の3つの対処法とは?

1.法務局の事前通知制度を利用(無償)
2.司法書士の本人確認情報を利用(有償)
3.公証人による本人確認制度を利用(有償)

8. まとめ

現在、「権利書」は「登記識別情報通知」に変わっていますので、今後は黒紐やファイルに閉じられた権利書一式を見かけることは一層少なくなるでしょう。どちらの形式のものであっても不動産取引における重要な書類ですので、将来のトラブルを回避するためにも、金庫や貸金庫などへ入れ、厳重に保管しておきましょう。

権利書を紛失しても登記は可能ですが、まずは不正登記を防止する手続きが必要です。権利書を紛失した際は、不動産会社や司法書士、弁護士など、専門家の手を借りて冷静に対処し、適切で安全な手続きを講じましょう。

柴田 敏雄

柴田 敏雄

宅地建物取引士、管理業務主任者
司法書士事務所に2年、大手不動産管理会社に5年、個人顧客を中心に不動産賃貸・売買の仲介営業会社に7年間従事。また、外資系金融機関にも2年間従事し個人顧客へ金融資産形成や相続税の節税アドバイスなどを担当。現在は不動産/金融業界での経験を活かし、記事を執筆にもあたっている。

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