
マンションのエントランスとは、どんな場所やデザインのものを想像するでしょうか。マンションのエントランスは、居住者が毎日通る場所であり、訪問者がそのマンションで初めて目にする場所です。エントランスの役割や機能には、外気との遮断性やセキュリティデザイン性、出入りの際の利便性など、暮らしの質を高める要素が凝縮されるため、そのマンションの印象や価値を左右する場所でもあります。
この記事では、マンションにおけるエントランスの定義や役割および機能、最新のデザイントレンドやセキュリティ進化、便利で美しいマンションエントランスの実例などをご紹介します。
1. マンション エントランスとは?

マンションのエントランスは「マンションの顔」とも呼ばれており、日々の快適性や資産価値にも直結する重要なスペースです。ここではエントランスの定義から最新トレンドまでをご紹介します。
1-1.エントランスの定義
エントランスとは、直訳すると「入口」を意味します。つまりマンションのエントランスとは、マンションの正面玄関のことです。多くの分譲マンションでは、敷地に入ってから建物に近づくと最初の扉があり、そこに入ると、オートロックの操作盤があり、もう1枚扉がある「二重扉のスタイル」が見られます。
2つ目の扉から中に入ると、ようやくエレベーターのあるロビーまたはホールと呼ばれるスペースに行きつきます。明確な決まりはありませんが、1つ目と2つ目の扉の間のスペースを「エントランス」や「風除室(ふうじょしつ)」と呼び、エレベーターのあるスペースまで含めて「エントランスロビー(エントランスホール)」と呼ぶ場合もあります。
こうしたエントランスやホールには「防犯・風除」と「面会場所」の2つの役割があります。
◆防犯・風除機能
多くの分譲マンションのエントランスは二重扉になっています。奥の扉はオートロックなどで鍵や暗証番号がないと開かない扉です。この二枚の扉の間の空間が「風除室」で、外気との温度調節や、外から入る強い風の緩和など、エントランス内を快適な空間に保つ役割があります。
◆外部の人と面会できる
エントランス内には、観葉植物や住人が自由に使える家具、調度品、ソファ、テーブルなどがあります。友人や家族が遊びに来たときや、急な来客との面会場所に非常に便利です。
1-2.なぜエントランスが重視されるのか
エントランスは管理状況やセキュリティ面、利便性が端的に表れるマンションの顔です。エントランスは、そのマンションのデザイン性や印象の善し悪しにも強く影響します。エントランスの風除室に設置されるオートロックや防犯カメラ、宅配ボックスなどの機能も、マンションの標準仕様になっているといえるでしょう。
◆オートロック
オートロックがあることで関係者以外の侵入を防ぐ効果が高まります。
◆防犯カメラ
防犯カメラは入館者の遠隔監視や録画記録はもちろん、防犯カメラ自体が、犯罪やトラブルの抑止力になります。
◆宅配ボックス
宅配ボックスは、日中不在の人や、子育て・介護などで手が離せない人にとって便利です。再配達の手配が不要になり、配達員と直接接触する必要もありません。ネットショッピングしたものが帰宅すれば受け取れるというのは非常に便利です。
加えて、国土交通省も、物流業の担い手減少に伴った配達の手間や再配達の減少を目指しており、宅配ボックス設置や玄関前に荷物を届ける「置き配」を推奨しています。以下の調査結果をもとに、今後はそれらを宅配便の標準サービスとする検討をはじめています。

引用:【調査結果】令和7年4月の宅配便の再配達率は約8.4%|国土交通省
1-3.近年のマンションエントランスのトレンド
近年のマンションエントランスは、単なる出入り口ではなく、暮らしの利便性を高めるハブへと進化しており、特に都市部のマンションで以下5つの進化が顕著です。
セキュリティ機能の進化
ロック解除機能や居住階自動連動エレベーターで、鍵を出さずに玄関まで到達できるタッチレス動線が増えています。
・顔認証オートロック
・非接触スマートキー
・AI防犯カメラ
・非接触エレベーター呼び出し
物流 × 利便性
宅配ロッカーや置き配も次世代基準が採用されつつあります。
・スマート宅配ロッカー(冷蔵・冷凍対応)
・置き配の一元管理アプリ
生活支援・サービス設備
エントランスロビーに新たな機能を追加し、居住者の利便性が向上します。
・AIコンシェルジュbotが住民の問い合わせに即時回答
・デジタルサイネージでリアルタイム告知
・コワーキングやカフェラウンジスペースの設置
デザインとホスピタリティ
アート作品を配したホテルライクなラグジュアリーホールや、エントランスの外側に設けられた屋根付きの車寄せスペースなども増加傾向です。
スマートビルディング/環境配慮
人感照度センサーのLED照明や多彩なエコシステムと連動した環境配慮型機能の付加も増えています。
2. 【比較解説】エントランスとロビーの違い
エントランスとロビーは混同されがちですが、機能も評価ポイントも異なります。ここでは、エントランスとロビーの違いについて、画像に基づいて解説していきましょう。
2-1.マンションのエントランスとロビーの違いとは
エントランスは、外部と内部を隔てるアクセス制御ゾーンで、オートロックや防犯カメラなど安全設備を集約しているのが特徴です。一方ロビーはオートロックを抜けた先の共用リビングスペースで、テーブルやソファ、コンシェルジュカウンターなどが配置され、居住者のくつろぎやゲスト対応をする場所です。エントランスは防犯や空調維持が主体であり、ロビーは居住者サービスが主体の作りや機能になっています。
2-2.イメージ図で比較
エントランスはマンション入口部分のうち外部と内部を隔てた場所で、ロビーはエントランスを通って内部に入った場所にある共用スペースです。両者の違いをイメージ図で見比べてみましょう。
◆エントランス
◆ロビー

3. マンションエントランスの外観事情

マンションのエントランスの外観は、近隣の街並みとマンションとの調和を考えるだけでなく、マンションブランドを際立たせる印象的なデザインになっています。
3-1.マンションのエントランスの外観ポイント
マンションエントランスのデザイン面で大切なポイントを紹介します。
◆ロビー(ホール)
エントランスからも見えるロビー内部に、御影石や大理石のような石材が壁や床に使われていると、外観も高級かつ重厚な雰囲気になります。
◆照明器具
間接照明などによる壁から天井、または足元の演出はイメージアップになります。また特に夜間の照明は、エントランスに十分な明るさを確保できるため、防犯面でも有効です。
◆天井の高さ
エントランスの天井が高いと解放感があり、大勢で訪問しても音がこもらず快適に過ごせます。その反面、空調設備が十分でないと夏や冬は過ごしづらい空間になるでしょう。
◆バリアフリー設計
子どもが小さいときのベビーカー移動や、オートロック・宅配ボックスの配置の高さ、高齢者や障がい者のための車いす利用にも十分な配慮が必要です。
3-2.外観デザインの種類(ナチュラル系、モダン系、クラシック系)
外観デザインにはナチュラル系、モダン系、クラシック系などがあり、それらを組み合わせてデザインする場合もあります。
◆ナチュラル系
ナチュラル系のデザインは、木目や石材を多用しており、植栽と一体化させることで温かみを演出します。小規模低層マンションに多く、近隣の低層住戸が建ち並ぶ景観との親和性が高いデザインです。
◆モダン系
モダン系は、直線的なガラスカーテンウォールやアルミパネルによって、クリアでシャープな印象を作ります。特に、夜間は間接照明で奥行きや素材を浮かび上がらせる印象が特徴的です。都心のタワーマンションなどに採用されておりブランド力を強調するはっきりしたデザインです。
◆クラシック系
クラシック系は、列柱やアーチ、御影石などを用いて重厚感を高めています。門扉やエントランス扉に鍛鉄装飾が施されていることもあり、クラシカルな雰囲気を醸し出すのが特徴です。加えて、資産価値の高さとステータス感を嫌味なく醸し出してくれます。
3-3.エントランス外構で重要な要素(アプローチ・植栽・照明)
アプローチ動線は歩道と車道を分離するのが基本です。歩行者側に庇を設けて雨天時でも濡れないような設計が理想でしょう。植栽は常緑樹と四季咲き草花を組み合わせることで、年間を通じて常緑や開花を楽しみながら剪定や清掃コストを抑えます。
夜間の間接光は、植栽への美しいライトアップとともに、不審者が潜む死角のリスクも低減できます。また、段差をなくし、滑りにくいノンスリップタイルを採用すると、より安全性を高められるでしょう。
3-4.住民・来訪者の第一印象を左右する
人は視覚情報で第一印象の80%を形成するといわれます。明るく清潔なエントランスによって維持管理・居住者モラル・資産価値が良好であると印象づけられるでしょう。
4. マンションエントランスの場所は?よくある配置パターン
エントランスの位置は避難計画や車路動線とも密接に関連するだけでなく将来の増改築制限にも影響するため、安全性と利便性、デザイン、建築コストなどのバランスを見ながら設計します。
4-1.マンションエントランスの配置について
エントランスの配置でもっとも大切なのは防災動線です。主要道路側に広い歩道がある場合は、エントランスをそちら側へ設け、裏通り側に非常口を設計します。その際、想定する居住者の通行量から必要幅員を算出し、庇(ひさし)の規模(大きさや張り出しの長さ)や風除室の奥行きも決めます。
また、日常生活における安全性の確保も大切です。季節や時間帯による日差しや荒天の影響を遮る想定で、マンションの方位を決めます。そして、車道のドライバーがマンションから出てくる人に気付きやすいよう車道からの視界を遮る造作(看板や門柱)を設置しないようにして事故リスク等を低減します。さらに、夜間時に帰宅導線が分かるよう誘導灯を設置することや、居住者の生活動線とゴミ出しや回収車の動線を分離することも可能です。
4-2.メインエントランスとサブエントランス
メインエントランスは、格調高い印象と利便性、安全性などを両立するため、正面に設置されます。また、車寄せ併設型であれば、屋根付きピロティがメインエントランスとつながったデザインにされるケースが多いでしょう。
一方、サブエントランスは、駐車場やゴミ置き場側へのアクセスがメインです。メインとサブの役割分担を明確にして配置することで、不要な住民同士の動線干渉を抑えられます。
4-4.安全面を考慮した配置事例
安全面を考慮する例としては、車両進入口を幹線道路側に配置し、歩行者用エントランスを車両進入口から離した側に設置するケースがあります。人と車の動線が合流しないよう設置すれば、思わぬ接触事故のリスクを低減できるでしょう。
5. 【最新事情】マンションエントランスと鍵の進化

高度な技術を用いた鍵の使用とセキュリティ設備の充実はエントランスの価値を示す最重要ファクターです。従来からあった形式と、最新技術を盛り込んだ形式を比較し、進化の背景やトラブル対応を解説します。
5-1.マンションエントランスの鍵に表れるセキュリティ性能の現状
マンションエントランスの鍵(オートロック)は、建物そのものの防犯性を考えるうえで重要なポイントです。従来の子カギ挿入や暗証番号入力の形式から進化した技術をご紹介します。
5-2.従来型 vs 最新型(オートロック・顔認証・スマートキー)
従来型と最新型(オートロック・顔認証・スマートキー)の特徴を解説して比較しましょう。
従来型(暗証番号式、集合キー式)
従来型(暗証番号式、集合キー式)の特徴を解説します。
◆暗証番号式
暗証番号式は、鍵ではなく暗証番号の入力によってオートロックの開錠をする方式です。オートロックの扉の前に入力装置(テンキー)が設置されており、住戸ごとにあらかじめ設定した暗証番号を入力することでドアが開きます。
暗証番号式のメリットは、鍵を使う必要がないので持ち歩く必要がない点です。一方、暗証番号の漏洩やのぞき見によって、部外者にオートロックを突破されるリスクがあります。また、暗証番号を忘れたり、間違えたりすると中に入れないので注意が必要です。
◆集合キー式
オートロックのインターホン部分に設置された鍵穴に、自分の住戸の玄関鍵を差し込んで開錠するのが集合キー式です。合鍵などで家族全員が所持でき利便性が高いため、もっとも普及しているタイプです。ただし、簡単に複製できるため、オートロックが突破されやすいというリスクがあります。
最新型(カードキー・非接触式、指紋や顔の生体認証)
最新型(カードキー・非接触式、指紋や顔の生体認証)の特徴を解説していきましょう。生体認証は複数方式のハイブリッド採用が増えており、2つの要素によって不正通過率を1/1000に低減したケースもあります。導入コストは従来型の1.5?2倍ですが、鍵の交換回数が減るため、長期的にはセキュリティ費用を抑えられるのがメリットです。
◆カードキー・非接触式
カードキーや非接触型の鍵、またはスマートフォンをかざすだけで開錠されドアが開くのが非接触式の特徴で、バッグやポケットに入れたまま近づくだけで解錠できます。差し込み型の鍵と異なり、複製がしにくいというメリットもありますが、組み込まれている磁気やICチップの破損、またはカードや鍵そのものの紛失リスクがあります。
ICカードキーは、紛失しても特定のICチップだけ解錠権限を停止し、改めて別のICカードキーを発行できます。またスマホアプリと連動しているタイプならクラウド履歴管理ができ、遠隔でゲストキーを発行することも可能です。
◆生体認証(指紋認証・顔認証式)
最先端の設備として導入が進んでいるのが生体認証式のオートロックです。あらかじめ登録した指紋や顔や虹彩(黒目の部分の模様や血管パターン)や指の静脈をセンサーにかざすことで認証、開錠します。顔認証や眼球認証や静脈認証であれば手がふさがっていても開錠でき、紛失や破損のリスクもありません。家族全員の指紋や顔、虹彩、静脈を登録しておけばいいので、小さなお子さんがいる家庭でも安心の設備といえます。
5-3.セキュリティ面での進化
高度化した鍵システムは「鍵不所持」「非接触」「常時監視」の3原則で構築されています。特に、近年のシステムの発達は目覚ましく、AIが通過ログを学習し、不審な行動を検知できるレベルです。例えば、深夜帯に滞在時間が長い人物や、顔を伏せた来訪者がいれば、リアルタイムで管理室や警備会社へ通報します。こうしたシステムが普及すれば、侵入事件を未然に防止できる可能性が飛躍的に高まるでしょう。
5-4.トラブル事例と対策方法
エントランスの解錠に関するトラブル事例と、その対策方法を4つご紹介します。
◆トラブル(1) 鍵の紛失
ICカードを落とした場合は即時アプリで利用停止を申請して翌日にはICカードの再発行が可能です。子鍵を紛失して玄関扉の物理シリンダーを交換する場合にはディンプルキータイプの交換で約2万円かかります。
◆トラブル(2) 顔認証エラー
マスクの着用や眼鏡の変更によって解錠が失敗する場合には、暗証PINコードで一次的に解錠して後日顔認証の再登録をします。
◆トラブル(3) クラウド障害
ネット接続や機器のトラブルでクラウド障害がある場合には、ネット回線の復旧や機器の交換などでシステムを回復させます。また、24時間体制で動くオフラインキャッシュを搭載した機種を選定して、トラブル時の影響を最小化することも可能です。
◆トラブル(4) スマホ紛失
システム管理画面から紛失した端末の権限を削除して一時的にそのスマホでは入れなくしてから、スマホ発見や買い替え後に改めて認証端末として再登録します。
6. おしゃれなマンションエントランス事例集

おしゃれなデザインは居住する喜びやリセールバリューに直結します。ここでは、おしゃれなエントランスの事例をいくつかご紹介します。
6-1.おしゃれなマンションエントランスの特徴
おしゃれなエントランスのデザインに共通する要素は以下の4つです。
1.デザインテーマが明確で建物のデザインや周囲の景観とマッチしている。
2.昼と夜とで色調やライティングが変化してエントランスの表情が変わる。
3.建物や造作のデザイン形状や植栽との配置およびバランスが整っている。
4.好相性の色調や素材を厳選して落ち着いた上質な雰囲気を演出している。
6-2.テーマ別に実例紹介
ここでは、リゾート風、ホテルライクのエントランス実例をご紹介します。
1. プラウドシティ東雲キャナルマークス(東京・2020年竣工)
リゾート風のエントランス例
https://www.nomu.com/mansion/library/id/P0034680/
2. プラウドタワー芝浦(東京・2025年入居予定)
ホテルライクのエントランス例
https://www.nomu.com/mansion/library/id/P0041163/
7. まとめ
エントランスは、そのマンションの魅力を伝える「マンションの顔」でもあり、日々の快適性や資産価値にも直結する重要なスペースです。また、マンションには、さまざまな役割や機能があり、デザインや設計の特徴、セキュリティ技術など、さまざまな特徴があります。
おしゃれなエントランスの実例もご紹介しましたが、マンションで安全・快適に暮らすためにはエントランスのデザイン性だけでなく、利便性や安全性という観点も重要です。多角的な視点でさまざまなマンションのエントランスを比較しながら、自分にとって理想的だと思えるエントランスの配置やセキュリティレベル、共用のサービスや機能を見つけてみてください。

宅地建物取引士、管理業務主任者
司法書士事務所に2年、大手不動産管理会社に5年、個人顧客を中心に不動産賃貸・売買の仲介営業会社に7年間従事。また、外資系金融機関にも2年間従事し個人顧客へ金融資産形成や相続税の節税アドバイスなどを担当。現在は不動産/金融業界での経験を活かし、記事を執筆にもあたっている。
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