

マンションの内覧では、「なんとなく違和感がある(=想像と違う)」と感じることがあります。しかし、その理由をうまく言葉にできず、判断に迷う人も多いのではないでしょうか。
実はその違和感の多くは、間取り図と実際の空間のズレから生まれています。本記事では、内覧前に図面から確認ポイントの"アタリ"を付けることで、現地で何を見るべきかを整理します。日当たりや動線、収納の使い勝手、音、共用部との関係など、建築士の視点からわかりやすく解説します。
「あれ、思ったより狭い...」
「なんとなく暗い」
「落ち着かない」
内覧時にこうした感覚を覚えたことはないでしょうか。
多くの人は「気のせいかもしれない」と流してしまいますが、こうした違和感には理由があることが少なくありません。
人は間取り図を見ると、無意識のうちに「広さ」「明るさ」「動線」といった暮らしのイメージを頭の中で組み立てています。しかし実際の住まいは、部屋の形や家具の配置、窓の位置、天井高、周囲の建物との関係などによって印象が変わります。
つまり内覧時の違和感は、
「間取り図から想像した空間」と「実際の空間」のズレ
から生まれるのです。
内覧は現地で見て考えるものと思われがちですが、実は図面の段階で多くのことが分かります。
■図面から読み取れること
まず確認したいのが生活動線です。キッチンからダイニング、洗面室から寝室など、日常の移動のしやすさは図面からある程度想像できます。
例えば、キッチンから洗面所が遠い間取りや、廊下が長い間取り、トイレがリビングと隣接している配置などは、住み始めてから気になることが多いポイントです。
次に収納の配置です。収納は量だけでなく「場所」が重要です。玄関収納が小さい、リビング収納がないなどの場合、入居後に物の置き場に困ることがあります。
また、窓の位置と方位から日当たりの傾向も読み取れます。ただし、前面建物の高さや距離、バルコニーの奥行きによって、実際の明るさは大きく変わります。
■図面では分かりにくいこと
一方で、次のような点は図面だけでは分かりません。
・実際の明るさ
・音の伝わり方
・視線の抜け
・空間の広がり感
これらは現地でしか確認できないため、あらかじめ「どこを見るか」を決めておくことが重要です。
内覧で感じる違和感の多くは、「使い方」と「空間の形」のズレにあります。
■「面積」と「使える広さ」は一致しないことがある
図面では広く見えても、実際には狭く感じることがあります。そのひとつが、「通路部分」が面積に含まれているケースです。

【図1】は、廊下が長く、リビングに入るまでの動線がLDKの一部に取り込まれている例です。専有面積が70m2となっていますが、廊下(オレンジ色のA部分)の面積が多く、実際の居住空間はその分狭くなります。
また、図面上はLDKが17帖と広く見えても、通路部分(青色のB部分)は家具が置けないため、実際の使い勝手は数字ほどのゆとりを感じられないことがあります。
「数字上の広さと、実際に使える広さは違う」、この視点をもつことが重要です。
■「思ったより暗い」「音が気になる」理由
前面の建物が近い、バルコニーの奥行きが深い、窓が小さいといった理由で起こることが多く、日当たりは図面よりも周囲の建物との関係に大きく左右されます。また、共用廊下に面した部屋やエレベーター付近の住戸では、人の足音や話し声などが気になる場合があります。こうした音の問題も、図面だけでは分かりにくいポイントの一つです。
ここでは、実際によくある違和感の例を紹介します。
■帖数だけでは分からない「部屋の形」
「15帖あるのに家具が置きにくい」というケースは、少なくありません。例えば、リビングが 15帖 と表示されていると、一般的にはゆとりのある広さをイメージする人が多いでしょう。ところが実際に内覧してみると、部屋が縦に細長く、ソファーなどの家具を置くと、前面の空間が確保しにくいと感じることがあります。
これは、部屋の面積だけでなく「形」が影響しているためです。同じ15帖でも、横に広いリビングと縦に長いリビングでは、家具配置の自由度が大きく変わります。

特にマンションでは、住戸の間口(バルコニー側の幅)が限られている場合、リビングが縦長になりやすい傾向があります。間口が狭い縦長リビングの住戸では、面積は確保されていても家具配置の余白が少なくなり、内覧時に「思ったより使いにくそう」と感じることがあります。
内覧の際には、帖数だけで判断するのではなく、バルコニー側の間口の広さや家具を置いたときの通路、テレビを見る距離などを具体的にイメージしてみるとよいでしょう。
■空間が狭く感じる「低い天井」
居室の天井高の最低基準は2.1m以上と定められていますが、実際のマンションの居室では、それより高いことが一般的です。
例えば、マンション住戸のリビングの天井高は、建築年代によって次のような傾向があります。
| 建築年代 | 天井高の傾向(リビング) |
| 1980~90年代 | 約2.3~2.4m程度 |
| 2000年代 | 約2.4~2.5m程度 |
| 近年の新築 | 約2.5~2.6m程度 |
最近の新築マンションでは、開放感を重視してリビングの天井高を高くする傾向があるため、新しい住まいを見慣れている人が築年数の経った中古マンションを内覧すると、「天井が低い」と感じることがあります。
さらに、天井高の体感は梁(はり)や下がり天井、照明ボックスなどによっても変わります。図面上の高さだけでなく、実際の圧迫感も確認しておくと安心です。
【図3】天井、下り梁、リビングの断面図
同じ程度の天井高でも、梁や下がり天井の有無によって空間の感じ方は大きく変わります。

ここまで見てきたように、内覧で感じる違和感の多くは、図面と実際の空間のズレから生まれます。最後に、内覧時に確認しておきたいポイントを整理しておきます。
■1.広さは「面積」ではなく「使える形」で見る
部屋の帖数だけで判断せず、
・家具を置けるスペース
・通路としてしか使えない部分
を分けて考えることが大切です。
■2.動線は"実際に歩く"イメージで確認する
・キッチンからダイニングまでの動き
・洗濯機からバルコニーまでの距離
など、日常の動きを具体的に想像してみましょう。
■3.光は方位だけで判断しない
・前面の建物との距離
・バルコニーの奥行き
によって、実際の明るさは大きく変わります。
■4.音と共用部の位置関係を見る
・共用廊下
・エレベーター
に近い住戸では、生活音が気になることがあります。
■5.天井の高さは"数字"ではなく"体感"で見る
梁や下がり天井によって、同じ高さでも圧迫感は変わります。
マンションの内覧では、間取り図と現地の違いに注目することで、失敗を防ぐことができます。大切なのは、「なんとなくの違和感」を見逃さないことです。その違和感の理由を一つひとつ確認していくことが、納得できる住まい選びにつながります。

住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー
総合建設会社の設計部で約14年間、主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。2004年の独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)などがある。夫と子ども2人との4人暮らし。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 http://atelier-sumai.jp/
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