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#マンション構造のヒミツ

2019.10.01

マンションの音を左右する!? 壁・床・開口部の構造

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近隣同士の音のトラブルは、誰にとっても身近に起こる可能性があり、関心が高いのではないでしょうか。人が集まって住む以上、音が発生して影響し合うのは避けられませんが、外からの音や隣接する住戸の音が気にならないようなマンションの造りはどのようなものでしょうか。物件探しや改修の目安を知っておきましょう。

「音への万全な対策はないもの」と心得つつ、最善を探す

住宅やマンションが建ち並ぶ住居専用地域であっても、身の回りに音はあふれています。線路が近ければ電車の音や踏切の音、幹線道路沿いであれば自動車やバイクの音、消防署や警察署のそばでは時折鳴り響くサイレンの音、マンションでは、隣人のテレビやオーディオ、楽器の音、掃除機をかける音や足音、公園や幼稚園、保育園、小学校などのそばでは、声や音が耳に障るという世知辛い話もあります。

一般的に音の大きさのレベルは、「デシベル(dB)」という単位で表されます。環境省は、一般的な住宅地域では昼間で55デシベル以下、夜間で45デシベル以下を基準としています。とはいえ、何をもって「騒音」とするかは難しい問題です。音の出し方や聞くときの感じ方は、同じ音でも人によって異なり、騒音問題を扱う法律でも規制される対象は工場などから出る音に限定されているためです。

騒音にかかわる環境基準(環境省ホームページをもとに作成)

マンションで騒音問題が起こっても、室内に届く音の要因はさまざまで、建物の構造に不備があるかどうかは証明しづらく、入居者同士で音について争ってもほとんどが和解となるようです。なにしろ、入居者は被害を受けるだけでなく、逆に加害者となり、クレームを受ける側になることもあり得ます。外からの騒音を意識するだけでなく、自分の住戸から出る音で隣り合う住戸に迷惑をかけないように気を配るモラルが必要です。

窓がない分厚いコンクリートの要塞のような建物にすれば、隣人や外の影響を受けない静かな環境は得られるかもしれませんが、現実的ではありません。集まって暮らす以上は、マンションの造りだけで完璧な音対策を望むのは厳しい面もありますが、少しでも不快な音を感じずに過ごしたいものです。音が届く要因を知り、どのような対策がなされているのかを見てみましょう。

床コンクリートに当たって響いてくる上下階の音を防ぐには

まず、上下左右に隣接する住戸から伝わってくる音についてです。天井(上階の床)から響いて届く音は、たいていが「固体伝搬音」と呼ばれるものです。これには、スプーンなどを床に落としたときや、椅子を引いたときに起こる音のように比較的軽くて高い「軽量衝撃音」と、子どもが走ったりするときに起こる比較的大きくて低い「重量衝撃音」があります。

音を遮る能力レベルの指標に遮音等級(L値)というものがあり、フローリング材や床のシステムでは「LL」で等級分けされる軽量床衝撃音の数値を表記しています。数値が小さいほど遮音性能が高いことを表し、LL-45または40程度が現在の主流となっています。

重量衝撃音に対する遮音性は「LH」で表示されます。やはり数値が小さいほど遮音性が高く、「上階で子どもが飛び跳ねる音が聞こえても意識することはあまりないレベル」がLH45といわれています。

L値とその値が示す遮音性能の目安(出典:日本建築学会)

ただし、これらの数値を満たしていても、音を感じることがないかといえば、場合によります。直上の住戸だけでなく、斜め方向の住戸から音が伝わってくることもあるでしょう。隣接する住戸からの音をより確実に避けたい場合は最上階の角の住戸を選ぶべきでしょうし、自分の家族の足音が下階住戸に響くことを避けたい場合は1階の住戸を選んだほうがよいでしょう。

そして重量衝撃音では特に、コンクリートの厚みが音の伝わり方に影響します。コンクリートの重量があるほど防音効果が高いためです。床コンクリートの厚みは昭和40年代までは13cmほどでしたが徐々に増え、現在では20cmほどが一般的になっています。

最近では「ボイドスラブ工法」といって、床コンクリート(スラブ)の内部に中空部分(ボイド)を設けることで、床を支える小梁を省くつくりのマンションも見られます。天井に小梁が出ないのでスッキリとした居住空間ができ、リフォームもしやすいのが特徴です。

ただし、厚みが増えていても音が伝わりにくいとはいえないので要注意です。中空の部分があると床コンクリート自体は軽量になるためです。このデメリットを解消するために、中空部分に遮音効果の高い発泡系資材を詰める方法も見られます。

隣の住戸との間を隔てる戸境壁については、「知ってるようで知らなかった『壁の種類と中身』」の回で触れたように、厚みは18~20cm程度が標準的になっています。隣のテレビや会話の音は聞こえず、楽器の音も静かなときに聞こえる程度となります。また、戸境壁ではコンクリートの壁に直にクロスを貼って仕上げるほうが、音が隣の住戸に伝わりにくいとされています。

外から室内に入ってくる音を防ぐには

次に、外から室内へ届く音についてです。経路としては、窓と外壁、そして換気口などの隙間があります。外からの音を遮るためには、外壁を厚くするほか、窓や壁の隙間をなくして気密性を高めることが対策となります。

窓のサッシは、JISで遮音等級が定められています。「T値」として、等級なしと1~4までの5つの等級で示され、数値が大きいほど遮音性も高くなり、外部からの音を和らげます。駅や繁華街が近い場合は遮音等級「T-1」以上、幹線道路や線路沿いは「T-2」以上、できれば「T-3」のサッシがよいでしょう。

サッシの遮音性能と仕様(出典:JIS A 4706-2000(サッシ)にサッシの仕様を加えて作成)

窓ガラス自体が防音仕様とされている場合もあります。通常の窓ガラスは厚さが3mmの単板ですが、防音仕様の場合は厚さを5mmや8mmとして重くする、または2枚のガラスの間に緩衝材のシートを挟んで音を伝えにくくするタイプなどがあります。

既存のアルミサッシの内側に取り付ける樹脂製の二重サッシは、防音の効果が高まります。断熱効果も高まるのでリフォームの際に採用する場合は多く、新築分譲マンションでも取り入れられている物件があります。

また、共有廊下からの音が、外壁を通して居室に伝わってくるケースもあります。共用階段が鉄骨と鉄板でできていて住戸の近くにあれば、靴の種類や上り下りの仕方によっては足音が響いてくるのです。共用廊下側の居室は寝室とすることも多いため、足音や声は特に気になるでしょう。

廊下が外部に開放された「外廊下」か、建物内に取り込まれた「内廊下」かによって室内に届く音は異なりますし、玄関ドアの素材や厚みなどによっても変わります。

さらには室内の換気のために外壁に設けられている給気口や換気口も、音の経路となります。防音フードや消音ボックスなど、音を低減する製品を用いるマンションもあります。

画像:LIXIL「換気口用消音ボックス クレール」と仕組み)

私たちは育った環境や家族構成がそれぞれ異なるので、音への感覚も人それぞれです。自分や家族の個性や現在の状況に応じて、音に関わるマンションの造りを細かくチェックしておくことが、満足のいくマンション選びにつながるでしょう。

加藤純(かとう・じゅん)

加藤純(かとう・じゅん)

1974年生まれ。建築ライター・エディター。出版物やWEBコンテンツ等の企画・編集・執筆を行い、意匠・歴史・文化・工学を通して建築の奥深さを広く伝える。1997年東京理科大学工学部第一部建築学科卒業、’99年同工学研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社建築知識(現・エクスナレッジ)月刊「建築知識」編集部を経て、2004年独立。著書に『日本の不思議な建物101』(エクスナレッジ)、『「住まい」の秘密』<一戸建て編><マンション編>(実業之日本社)など。

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