洗面所は1日の始まりや寝る前、出社・登校・帰宅など、自宅と外を行き来する際に利用することが多く、来客が利用することもあるため、気持ち良い空間にリフォームしたいと考える人が多いでしょう。
洗面所のリフォームにはどのようなものがあるのか、リフォームの傾向やニーズ、トレンドの洗面化粧台について、野村不動産パートナーズのリフォーム部門に在籍する五十嵐洋平が解説します。
洗面所のリフォームでよくご相談いただくのが、マンション購入時にあらかじめ設置されている洗面化粧台の交換です。特に、ビルトイン洗濯機と洗面化粧台が一体化している状態を、洗濯機の交換にともなって分離させたいという要望が多く、ほとんどの場合は洗面化粧台を交換することになります。
洗面化粧台に洗濯機を組み込んでいるビルトインタイプの場合、カウンターの下にドラム式の洗濯乾燥機、その上に洗面化粧台が設置されていて、カウンターの位置が通常よりやや高くなります。そのため「使いづらい」と感じる人や、好きな洗濯機を使いたいという人が多いのでしょう。
リフォームの際は、新しい洗面化粧台を設置するスペースと別に、洗濯機を置く「洗濯パン」の設置スペースが必要です。一体化してコンパクトになっていたものを分けて置くスペースが必要になるため、リフォーム前よりも洗面所が窮屈になりがちで、多くの場合、小さな洗面化粧台を設置することになります。
窮屈になることを避けたい場合も含め、洗面所全体を広く拡張するリフォームもあります。ボウルが2つあるダブルボウルの洗面化粧台へ交換するケースが多いのですが、ダブルボウルの洗面化粧台の幅は1500mm~1600mm程度必要なので、廊下や隣の部屋との間仕切壁を撤去して洗面所を広くする大がかりなリフォームになることもあります。
洗面所を広くするリフォームは、朝の身支度を円滑に進めたいというニーズからです。特に女性が多い家庭では、朝に身支度を整える時間が重なることが多く、学校や会社へ遅刻しないよう、一度に複数人が身支度できる空間にしたいとリフォームを希望されます。
また、手入れしやすい洗面化粧台に変更したいというニーズもあります。洗面化粧台は水を使うのでカビが生えやすく、歯磨き粉や石鹸カスが付いて汚れやすい場所です。そのため、日々の手入れが欠かせず、掃除がしやすい洗面化粧台に対するニーズは根強いものがあります。手で直接触れずに水を流せる自動水栓への交換も、汚れにくく使いやすいと人気です。
洗面化粧台には大きく分けて、カウンターとボウルの間に継ぎ目のあるものと、継ぎ目のないものがありますが、手入れがしやすいのは継ぎ目のないもの、つまりボウルとカウンターが一体になったタイプです。
ほかに洗面化粧台で頭を洗いたいというニーズから、水栓をシャワータイプにした事例もあります。あるマンションに住まわれているお客様は、購入時に設置されていた水栓カランが、デザイン性を重視したもので機能的には不便だったため、利便性の高いシャワー水栓に交換しました。
収納に対するニーズもあります。洗面所や洗面化粧台の収納と言えば、タオル、下着、パジャマなど、いわゆるリネン類を収納する「リネン収納」です。
容量アップはもちろんですが、清潔感を保ちながら使いやすい収納にしたいというニーズが高く、整理整頓しやすい引き出し式の収納が好まれます。
洗面所が脱衣場を兼ねている場合、洗面所で体重を測る家庭もあると思いますが、体重計の置き場に対するご要望もあります。多くの家庭では脱衣場を兼ねた洗面所の中央に体重計が置かれていることが多く、意外と足元の邪魔になります。そこで、リフォームにあたり洗面化粧台の足元に体重計を置くスペースの設置を提案すると喜んでいただける場合が多々あります。
最近は洗面室で使う小型家電も増えてきました。ドライヤーや電気シェーバーのほか、ヘアアイロンや電動歯ブラシを利用する家庭も多いでしょう。コンセントから電源を取る家電が増えると、洗面化粧台にコンセントを増設したいというニーズが高まります。
洗面ボウルについては、深めの大きなものへ交換を希望されることもあります。洗面所を単に顔を洗ったり、身支度を整えたりする場所としてではなく、靴などを手洗いする場所として利用する家庭では、深めのボウルの方が使いやすいという理由からです。
ここまでは、洗面所の利便性を高めるリフォームを紹介してきましたが、一方でおしゃれにしたい、デザイン性を高めたいというニーズもあります。例えば、デザインにこだわったボウルに変えたり、鏡とカウンターの間にモザイクタイルを貼って、よりラグジュアリーな空間にするといったものです。
洗面所リフォームに対するニーズには、利便性を高めるリフォームと、デザイン性を高めるリフォームの2方向あると前述しました。洗面所リフォームのトレンドも、この2つのニーズを満たしたうえで、よりどちらを重視するのか、加えてコストとのバランスによって選択が分かれます。
トレンドを押さえたブランドの具体例として、LIXILの「LUMISIS(ルミシス)」や、TOTOの「ESCUA(エスクア)」、パナソニックの「C-LINE(シーライン)」などが挙げられます。
ルミシスは、LIXILの洗面化粧台の最上位ブランドで、ボウル一体タイプは手入れが楽でありながら、デザイン性が高いのが特徴です。カウンター幅をセミオーダーで選ぶことができます。
TOTOのエスクアは、TOTO洗面化粧台の最上位ブランドでデザイン性が高いのが特徴す。LIXILのルミシス同様にセミオーダー式でカウンター幅が選べ、カウンター、収納、鏡などを組み合わせて、ライフスタイルに合わせた洗面化粧台を作ることができます。ボウル一体タイプは汚れがつきにくい樹脂製で、手入れがしやすいのが特徴です。
パナソニックのシーラインは、比較的リーズナブルで、利便性を重視した洗面化粧台ブランドです。手入れしやすいボウルと、使いやすい収納やカウンターが特徴で、カウンター幅も1700mmまで対応しています。
国産の大手3メーカー以外に、特にデザイン性を重視したものだと、オーダーメイドの洗面化粧台になります。
例えばCUCINA(クチーナ)の洗面化粧台はオーダーメイドで、ボウルはもちろん、鏡や水栓、収納などを自由に選んで組み合わせ、唯一無二のおしゃれな洗面化粧台にすることができます。
クチーナのボウルは樹脂製ではなく、天然石に近い風合いのクォーツストーン製を選べるので、センス次第でデザイン性に優れた高級感が漂う洗面化粧台に仕上げることができます。
洗面所をリフォームする際のポイントは、デザイン性と機能性のどちらをより優先するか、優先順位をつけておくことと、配管まわりの確認です。
利便性の高さとデザイン性の高さは、ある程度の両立や歩み寄りがあるとはいえ、基本的に洗面所においては相反するものです。リフォームする際に、「どうしてリフォームしたいのか」と目的を明確にして、優先順位をつけて検討することをお勧めします。
また古いマンションで、過去に配管の交換が行われていないと、リフォーム工事と一緒に配管の交換が必要になることがあります。配管の位置によっては洗面化粧台の配置が制限されることもあるので、事前に図面や仕様のわかる書類を用意し、リフォーム会社に相談しながら進めていきましょう。
野村不動産パートナーズ株式会社
建築学部を卒業後、新卒でリフォーム業界に。以来、24年にわたってリフォームに携わり、設計から現場まで幅広く経験を積む。現在は仲介案件を主に担当している。
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