住宅ローンは何歳まで?完済年齢や年代別の注意点と対策をFPが解説

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住宅ローンは何歳まで組めるのか、理想の完済年齢は何歳かなど、ローンに関する疑問はさまざまあるでしょう。ライフスタイルも多様化しているため、年齢だけで住宅を購入するベストなタイミングを判断することはできません。この記事では、住宅ローンを組める年齢や、完済の平均年齢と理想年齢などをFP資格者が詳しく解説しています。加えて、年代別のリスクと対策についても紹介しているので、住宅ローンを無理なく返済していくためにも、ぜひ参考にしてみてください。

目次

1. 住宅ローンは何歳まで組める?

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住宅ローンの利用は、各金融機関が定める条件を満たす必要があります。特に重要な条件は「申込可能年齢」と「完済年齢」です。住宅ローンを組むためには、この2つの条件を満たしている必要があります。住宅ローンの「商品概要説明書」でも、「申込可能年齢」と「完済年齢」は、利用条件の最上段に挙げられています。

1-1.申し込みが可能な年齢

一般的な金融機関の利用対象年齢は、18歳以上から70歳未満です。ただし、定期的な収入を前提としているため、学生や新卒で就職したばかり、勤務年数が浅い場合は、住宅ローンは組めません。また、ローンを組む条件を「正社員」としている金融機関もあるため、60歳で退職後に契約社員として再雇用された場合は、ローンが組めないケースもあります。

1-2.完済年齢の上限

一般的な住宅ローン完済年齢は80歳までです。例えば、現在50歳の方が金融機関で住宅ローンを申し込む場合、完済が80歳までとなるため、契約期間は最長で30年以下となります。つまり、35年ローンを希望するなら、45歳までに申し込まなければなりません。自身の年齢と希望する返済期間を考慮して、無理のない返済計画を立てることが大切です。

1-3.各金融機関の代表例

金融機関によって条件が微妙に異なるため、ローンを検討する際は、金融機関の詳細を調査・比較してみてください。完済年齢はおおよそ80歳ですが、申込が可能な上限年齢は、大手銀行でおおよそ70歳、ネット系の銀行は65歳となっています。代表的な金融機関の申し込み可能な上限年齢と完済年齢は以下の通りです。

申込上限年齢と完済年齢(2025年6月現在)

金融機関名 申込上限年齢 完済年齢
三井住友銀行 70歳の誕生日 80歳の誕生日
三菱UFJ銀行 70歳の誕生日 80歳の誕生日
みずほ銀行 71歳未満 81歳未満
りそな銀行 70歳未満 80歳未満
三井住友信託銀行 71歳未満 81歳未満
住信SBIネット銀行 65歳以下 80歳未満
auじぶん銀行 65歳未満 80歳の誕生日

2. 【データで解説】住宅ローン申込者の年齢

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住宅ローンを申し込む方の年齢層は、年々変化しています。ここでは、住宅金融支援機構が公表している「フラット35利用者調査」(2023年度)のデータをもとに、申込者の年齢に関する実態をご紹介します。

2-1.申込者の年齢割合

2023年度のフラット35利用者調査によると、フラット35(長期の固定タイプ住宅ローン)を新規で申し込んだ人の年齢割合は以下の通りです。

年齢割合

年代 2023年 2013年
30歳未満 10.6% 13.4%
30歳代 30.4% 46.8%
40歳代 27.6% 22.7%
50歳代 17.6% 10.1%
60歳以上 13.9% 6.9%

データによると、フラット35のボリュームゾーンは30代から40代です。また、2013年度の調査では、フラット35を利用する30代の割合は46.8%と約半数を占めていましたが、2023年度では30.4%にまで下がっています。

一方、2013年度における50代のフラット35利用者は10.1%でしたが、2023年度には17.6%に増加しています。10年間で7.5%伸びた要因は、晩婚化や晩産化といった社会の変化が影響しているのかもしれません。加えて、近年少しずつ定年年齢が引き上げられており、長く正社員でいる方が増えていることも影響していると思われます。

出典:2023年度フラット35利用者調査(P4)「年齢別」利用割合の推移(2013~2023年度)

2-2.申込者の平均年齢・中央値

申込者の平均年齢と、年齢の中央値も確認してみましょう。「平均値」とは、データをすべて合計し、総数で割った値です。そのため、極端に高い値や低い値があると、その影響を受けやすい特徴があります。一方、「中央値」とは、データを小さい順に並べたときに、ちょうど真ん中に位置する値です。中央値は、平均値よりも実態に近い傾向を示すと言われています。

2023年度の調査では、平均年齢が44.3歳、中央値となる年齢は42.0歳でした。一方、2013年度は平均年齢が37.0歳、中央値39.6歳となっています。そのため、住宅取得のタイミングは、30代後半から40代前半にシフトしていると言えるでしょう。

出典:フラット35利用者調査 2023年度集計表[全体] 第2表:年齢
https://www.jhf.go.jp/about/research/H25.html(2013年度集計表[全体] 第2表:年齢)

3. 【データで解説】住宅ローンの完済年齢

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ここでは、国土交通省住宅局が公表している「令和5年度住宅市場動向調査報告書」のデータから、住宅取得時の平均年齢と平均返済期間をもとに、推定される完済年齢をご紹介します。

3-1.住宅取得年齢

初めて住宅を購入した方(一次取得)の平均年齢を、下記の表から住宅タイプ別で確認してみましょう。

住宅取得平均年齢

住宅タイプ 取得年齢(一次)
新築 注文住宅 40.1歳
分譲戸建て住宅 36.6歳
分譲マンション 39.9歳
中古 戸建て住宅 43.1歳
マンション 44.2歳

調査対象期間2022年4月~2023年3月

上記によると、「新築住宅」は、注文住宅が「40.1歳」、「分譲の戸建て住宅」が「36.6歳」、「分譲マンション」が「39.9歳」と、比較的若い世帯が購入しています。一方、中古住宅の購入年齢はやや高めです。

3-2.返済期間

以下の表から、住宅取得時に設定した「住宅ローンの返済期間」にも注目してみましょう。

住宅取得時の住宅ローン返済期間の設定

住宅タイプ 期間
新築 注文住宅(建築) 32.7年
注文住宅(土地) 34.4年
分譲戸建て住宅 29.7年
分譲マンション 28.0年
中古 戸建て住宅 26.2年
マンション 29.0年

それぞれのローン返済期間は、「注文住宅」は土地が「34.4年」、建築費は「32.7年」と、30年を超える期間となっています。一方、「新築分譲戸建住宅」は「29.7年」、「新築分譲マンション」は「28.0年」と、30年を切っています。中古住宅でも、「戸建」が「26.2年」、「マンション」が「29.0年」と、新築分譲住宅と同様、ローンの返済期間は平均30年未満です。

3-3. 住宅ローンの推定完済年齢

上記の「住宅取得時の平均年齢」と「住宅取得時の住宅ローン平均返済期間」を合計すると、推定完済年齢の算出が可能です。多くのケースで、住宅ローンは「70歳よりも前の年齢で完済される傾向」にあります。特に分譲戸建住宅や分譲マンションでは、定年退職を迎える「60代後半までの完済」が多いようです。

住宅タイプ 取得年齢
(一次)
ローン
期間
完済年齢
(推定)
新築 注文住宅(建築) 40.1歳 32.7年 74.5歳
注文住宅(土地) 34.4年
分譲戸建て住宅 36.6歳 29.7年 66.3歳
分譲マンション 39.9歳 28.0年 67.9歳
中古 戸建て住宅 43.1歳 26.2年 69.3歳
マンション 42.2歳 29.0年 71.2歳

出典:令和5年度住宅市場動向調査報告書国土交通省住宅局

4. 理想的な完済年齢は何歳?

「借りていられる年齢」と「無理なく返済できる年齢」は異なるため、理想的な完済年齢は「65歳未満」と考えるのが一般的です。その理由として「定年年齢」と「健康寿命」が挙げられます。

4-1.定年年齢を60歳とする企業は6割強

厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告」(令和5年度)によると、企業の定年年齢は、60歳が64.4%、65歳が25.2%です。多くの企業は60歳を定年としており、それ以降は「継続雇用制度」の導入により、65歳までの人材を確保しているのが一般的です。

しかし、継続雇用制度における60歳以降の収入は、現役時代にくらべて大きく下がるケースが多いため、住宅ローンの返済が厳しくなる可能性があります。事前に、定年後の返済計画をしっかり立てておくことが重要です。

出典:厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」(令和5年度)

4-2.健康寿命は70代前半まで

厚生労働省の「健康寿命の令和4年値について」によると、健康寿命は男性が「72.57歳」まで、女性が「75.45歳」までとなっています。「健康寿命」とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間です。70歳以降は、病気や身体能力の低下によって、働き続けるのが難しくなるかもしれません。

健康寿命を考えると、70代以降は病気や体調不良による収入のストップや、それによる住宅ローン返済が不可能になるリスクが高まります。そのため、健康で働ける60代後半までに完済できる計画が理想的です。

出典:厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」

5. 住宅ローンを組む際に気をつけたいポイント

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住宅ローンを組むときは、「継続して無理なく返済できるか」をしっかり考えることが大切です。住宅購入後に発生するローン以外の支払いや必要経費も考慮に入れつつ、将来を見据えたシミュレーションが不可欠です。

5-1.無理なく返せる金額の考え方

住宅の維持費用は、物件の種類・地域・築年数によって大きく異なります。マンションの場合、「管理費」と「修繕積立金」を合わせると、月額3~5万円程度が一般的です。築年数が古いマンションや、共用施設が充実しているマンションほど、これらの費用は高くなる傾向があります。戸建ての場合も、設備の故障や、数年~数十年ごとの大規模な修繕に備え、貯蓄は欠かせません。

さらに不動産を所有している間は、「固定資産税」と「都市計画税」が課されます。物件の評価額や地域によって大きく異なりますが、年間10~30万円程度が一般的です。住宅ローンの支払いだけでなく、このような費用も「住宅費」として計算し、毎月の家計に無理がないかを検討しましょう。理想的な住宅費の割合は、一般的に手取り月収25%程度、高くても30%以内と言われています。

5-2.返済計画とシミュレーションの重要性

家計支出はライフステージによって大きく変わります。特に、子どもの成長に伴って増える教育費は、住宅ローン返済に大きな影響を与えます。私立大学に進学すると、毎年100万円以上かかるケースもあるため、将来の教育費を見越した返済計画が必要です。

金融機関や不動産会社のウェブサイトでは「返済シミュレーター」が提供されています。子どもの成長を含めたライフステージの変化や金利の変動も加味して、複数のパターンを検討・計画してみてください。

6. 年齢別のメリットと注意点

住宅ローンには、年代ごとの特徴や考慮すべき点があります。ライフステージにあった計画を立てるためにも、年代ごとのメリットや注意点を把握しておきましょう。

6-1.20代・30代

20代や30代で住宅ローンを組む最大のメリットは、返済期間を長く設定できることです。35年の住宅ローンでも、20代であれば50代後半、30代であれば60代後半で完済できます。早く完済できるなら、老後の資金計画も立てやすくなるでしょう。

注意点は「教育費の増加」です。例えば、子どもがもう1人・2人生まれる、私立学校へ進学するといった場合、想定よりも多くの費用がかかるため、教育資金の準備も並行して進めることが重要です。

6-2.40代

40代で住宅ローンを組むメリットは、若い頃よりも収入が増えており、返済できる金額も増えているケースが多いことです。ある程度の頭金が貯まっている可能性も高く、多額の頭金を投入できれば、借入額を減らし、総返済額を抑えられるため、毎月の返済額も軽減できます。

注意点は、子どもの教育費が本格化する時期と重なることです。大学進学や留学など、予想以上に教育費がかさむ可能性もあります。住宅ローンの返済と、ピークを迎える教育費によって家計が圧迫されないよう、ゆとりのある返済計画を立てることが大切です。

6-3.50代から60代

50~60代で住宅ローンを組むメリットは、一般的に年収がもっとも高くなっている時期であることです。子どもの教育費も、一定のめどがついた時期かもしれません。その場合、住宅ローンの支払いにあてられる金額が多くなります。

一方、年齢とともに高まる健康リスクにより、団体信用生命保険(団信)の審査に通らない可能性があります。その場合、住宅ローンの利用自体が難しくなるため、別途保障を用意しなければなりません。また、完済年齢を80歳に設定している金融機関が多いため、50~60代での借り入れは、返済期間が短くなります。毎月の返済額が高額になる可能性もあるため、頭金を多めに入れるなど、余裕のある返済計画が不可欠です。

7. 40代後半からの住宅ローンとリスク対策

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完済年齢を考えると、住宅ローンは30~40代前半で組むのが理想的ですが、さまざまな事情で40代後半から住宅購入を検討される方もいらっしゃるでしょう。その場合、いくつかのリスク対策を講じることが重要となります。

7-1.繰上返済の活用

計画的な繰上返済を検討してみてください。退職金や保険の満期金など、まとまった資金が入ったときに、ローンの残高の一部を繰上返済にあてれば、総返済額の減少や返済期間の短縮が可能です。ただし、退職金は老後の生活費や医療費、介護費など、将来に備える重要な資金でもあります。住宅ローンの返済を優先するあまり、老後資金が不足しないよう、資金残高を見極めながら、バランスよく繰上返済を実行すると良いでしょう。

7-2.収入減少リスクに備える

定年後の収入減少に備え、65歳以降も働ける手段を検討してみてください。再雇用制度の利用や、新たなスキル習得による転職、フリーランスとしての活動など、年金以外の継続的な収入を確保することをおすすめします。

また、資産運用と同時に取り崩しの計画を立ててみてください。例えば、NISAの積み立て枠を活用し、長期の運用と、必要に応じた取り崩しを平行して行えば、老後の生活資金とローン返済の両立も可能です。

7-3.固定金利を選択する

40代後半から住宅ローンを組む場合、収入の大幅な増加は見込めないかもしれません。そのため、金利タイプは「固定金利」を選択することを検討してみてください。固定金利であれば、返済終了まで毎月の返済額が一定となるため、家計の計画が立てやすくなります。固定金利は、変動金利と比較して金利がやや高くなる傾向があり、総返済額が多くなる可能性はありますが、家計の安定を優先したい場合には有効な選択肢です。

8. まとめ

年齢と住宅ローンの関係を正しく理解し、ご自身のライフプランや家族構成、将来の収入見込みに合った選択をすることが成功の鍵となります。特に40代後半以降に住宅購入を検討する場合は、完済年齢、退職後の収入、健康状態など、若年層とは異なるリスクが浮上します。繰上返済の活用や、定年後の働き方、資産運用、金利タイプの選択など、複数のリスク対策を講じることが重要です。住宅ローンは長期間にわたる契約です。ライフステージの変化、想定外の出来事などにも対応できるよう、ゆとりを持った計画を立てましょう。

山内 真由美

山内 真由美

ファイナンシャルプランナー(CFP®)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
小樽商科大学卒業後、食品メーカー、都市銀行勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。東京吉祥寺において、子育て世代の家計相談・教育資金相談に応じている。著書:FPママの親と子で学ぶお金のABC(河出書房新社)

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