2015/08/03
慌てないために!相続税の計算を知っておこう
相続税の計算方法を知り、事前に財産をシミュレーション
人が亡くなることで相続は開始されます。相続人は、相続開始のときから亡くなった人の財産に関する一切の権利義務を承継することになり、相続税がかかるようであれば10ヵ月以内に申告し、納税をしなくてはなりません。
そのためには、すべての財産や負債を調べて評価する必要があります。亡くなってからバタバタと手続きをするよりも、事前に把握して相続になったときのシミュレーションをしておくことが賢明です。
一般的な財産の評価や相続税の計算は、そう難しくはありません。最初から専門家に頼りきりになるのではなく、相続税の計算の仕方など基本的なことは知っておいたほうがよいでしょう。
ただし、計算はシンプルでも解釈の仕方が違ったり、知識不足などから間違うことがあるかもしれません。理解度を深めるためにも、専門家に相談し、アドバイスを受けるようにしましょう。相続税の計算は次のステップで行います。
相続税の計算5ステップ
ステップ1:相続人を確認して相続税の「基礎控除額」を知っておく
相続人が誰か、何人いるかを確認し、相続税の基礎控除を確認しておきましょう。一般的な相続人は、配偶者と子どもですが、子どもが先に亡くなっている場合や、子どもがいない場合などにより相続人が変わります。
相続人が何人いるか確認できれば、相続税がかからない範囲の「基礎控除額」の計算ができます。
「基礎控除額」
=3,000万円+600万円×相続人の人数
たとえば、相続人が配偶者と子ども2人であれば、相続人は3人になります。
相続税の基礎控除額は、
3,000万円+600万円×3(人)=4,800万円
となります。
ステップ2:財産の確認、評価をし「正味の遺産額」を計算する
「正味の遺産額」とは、被相続人の財産に生命保険や死亡退職金などのみなし相続財産と相続開始3年以内の贈与財産を加算し、債務や葬式費用を差し引いた額です。ここでいう財産とは、土地や建物といった不動産、借地権などの権利、貯金や預金や株式などの金融資産などを加算したものです。
「正味の遺産額」=相続(遺贈)財産+みなし取得財産−非課税財産−債務及び葬式費用
+相続開始前3年以内の贈与財産+相続時精算課税制度の贈与財産
ステップ3:「課税遺産総額」を計算する
相続税の「課税遺産総額」は、「正味の遺産額」から「基礎控除額」を引いた額となります。
「課税遺産総額」=「正味の遺産額」−「基礎控除額」
ステップ1のように相続人が3人の場合、「正味の遺産額」が基礎控除の4,800万円以内であれば、相続税はかかりません。申告は不要です。税務署で何も手続きをしなくて大丈夫です。しかし、「正味の遺産額」が基礎控除を超えれば、相続税の申告と納税が必要になります。
ステップ4:「相続税の総額」を計算する
まず、「課税遺産総額」を各相続人の法定相続分(配偶者1/2、子ども1/2÷人数)で按分し、それぞれの額を「相続税の速算表」(※表1)に照らし合わせて、対応する税率をかけて控除額を差し引きます。相続人全員の額を計算し、それらを合計して「相続税の総額」を出します。
1. 「課税遺産総額」×(各相続人の法定相続分の割合)=各相続人の遺産額
2. 「相続税の総額」=(各相続人の遺産額×相続税率−控除額)を全員分合計した額
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ステップ5:配偶者控除、未成年者控除等に該当するかを確認する
相続税の控除には7種類あり、各人の相続税額が計算された後、それぞれの税額から一定額を控除することができます。
例えば、配偶者は、法定相続分または1億6,000万円分までは税額が控除され、未成年者は成人になるまでの期間に応じて一定額税額が控除されます。
10万円×(20歳-その相続人の年齢)
また、障害者は85歳になるまでの期間に応じて一定額税額が控除されます。
一般障害者:10万円×(85歳-その相続人の年齢)
特別障害者:20万円×(85歳-その相続人の年齢)
それでは、例を挙げて相続税を計算してみましょう。【相続税の計算例】
財産の内容:
自宅土地 3,000万円
自宅建物 500万円
駐車場土地 2,000万円
預金 4,000万円
有価証券 1,000万円
家財一式 100万円
●相続人が子ども2人(A68歳、B一般障害者65歳)の場合
※法定割合で相続
1.正味の遺産額1億600万円−基礎控除額4,200万円
=課税遺産総額6,400万円
2.課税遺産総額6,400万円×法定相続分の割合(1/2)
=相続人1人あたりの遺産額3,200万円
3.相続人1人分の遺産額3,200万円×相続税率20%−控除200万円
=1人あたりの相続税額440万円
4.税額の控除により、Bの相続税額440万円-10万円×(85歳-65歳)
=240万円
5.Aの相続税額440万円+Bの相続税額240万円
=相続税の納税額合計680万円
●相続人が配偶者+子ども2人(C15歳 D12歳)の場合
※法定割合で相続
1.正味の遺産額1億600万円−基礎控除額4,800万円
=課税遺産総額5,800万円
2.課税遺産総額5,800万円×法定相続分の割合(配偶者1/2)
=配偶者の遺産額2,900万円
課税遺産総額5,800万円×法定相続分の割合(子ども1/4)
=子ども1人1,450万円
3.(配偶者の遺産額2,900万円×相続税率15%−控除50万円)
=相続税385万円
(子ども1人分の遺産額1,450万円×相続税率15%−控除50万円)
×2人分=335万円
4.配偶者の相続税額385万円+子ども2人分の相続税額335万円
=相続税の総額720万円
5.相続税の控除により、配偶者の相続税額0円。
子どもCの相続税額720万円×1/4
=180万円-10万円×(20歳-15歳)=130万円
子どもDの相続税額720万円×1/4
=180万円-10万円×(20歳-12歳)=100万円
6.子どもCの相続税額130万円+子どもDの相続税額100万円
=相続税の納税額合計230万円
相続税の計算で間違いやすいポイント
まとめに、相続税を計算するうえで注意したい点に触れておきます。
1.相続になると誰もが相続税を払うものと思っている人が多いのですが、正味の遺産額が基礎控除の範囲内に収まると相続税もかからず申告はいりません。節税対策をするならこのバランスを意識することがポイントになります。
2.小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の特例を使って相続税の納税が不要になる場合でも、正味の財産額が基礎控除額を超えていれば、申告をしなくてはいけません。特例は申告をしないと適用されないので注意が必要です。
3.相続税は、まず法定相続割合にて各相続人分の額を計算し合算して総額を出します。配偶者と子どもがいる場合は、それぞれの法定割合や税率が違うため、別々に計算をしなければなりませんので、注意が必要です。
4.財産を相続しない人がいる場合でも、相続税の基礎控除は法定相続人の数で計算します。
以上のことに気をつけて、相続税のシミュレーションをし、相続が起きた場合にも慌てずに乗り切りましょう。
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執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。
本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、その内容について、弊社が保証するものではございません。