2015/09/09
相続税の節税は不動産の贈与が効果的
財産を減らしてできる節税対策
生前にできる相続税対策として、財産を減らしておけば確実に節税できます。「財産を減らす」といっても本当に財産を減らすわけではなく、「贈与」を活用して子どもや孫に財産を先渡しすれば、効果的に節税することができるのです。
「相続時精算課税制度」の特例を利用すれば、贈与税の負担は軽減され、財産の前渡しがしやすくなります。しかし、前渡しした財産評価は相続時に課税されるため、これだけでは相続税の節税にはなりません。
現金は貯めるよりも贈与しよう
多くの方が、子どもや孫に財産を残そうと、節約してでも何千万円、中には億単位で銀行に現金を貯めていらっしゃいます。「相続税がかかっても預貯金があるから払えるので安心だ」とおっしゃいます。
ところが、今や預貯金はかつてないほどの低金利となり、増える財産ではなくなりました。そして、金融機関に預けてある残高がそのまま財産評価となってしまうため、一生懸命貯めてきたお金にそのまま相続税が課税されてしまい、相続したとたん財産が多く減ってしまいます。ならば、生前に適切な方法で現金を贈与すれば節税効果もあり、子どもや孫が必要な時期にお金を活かすこともできるでしょう。
不動産で贈与すると節税効果は高い
生前に現金を贈与すれば節税につながると言いましたが、現金を不動産に換えて贈与する方法を取れば、さらに節税効果は高まります。不動産の評価は時価(公示価格、売買されている価格)よりも低いため課税される金額も少なく済み、その分多くの財産を渡せるということです。
贈与や相続時の土地評価の基礎となる路線価は時価の80%程度です。さらに、賃貸している場合、借地権、借家権などの関係で、土地と建物の評価が時価の半分から30%程度まで下がります。
〈実例〉ご主人の財産を上手に一人娘に残したいEさん
家族構成:ご本人(Eさん 70代女性)、ご主人(80代男性)、娘さん
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Eさんのご主人は80代で自宅とアパートを所有しています。Eさん自身もまもなく80歳となり、子どもは娘さんがお一人ということで、そろそろ相続のことが気になり始めました。そこで、知人の税理士さんにご主人の財産にかかる相続税の試算をしてもらったところ、1,000万円以上の税金が必要になることが判明しました。
Eさんが相続する場合は、配偶者の税額軽減が適用できるので、相続税はかからない範囲で収まりますが、Eさんにも預貯金がありました。子どもは娘さんが一人ということで基礎控除も少なくなるため、配偶者の税額軽減を活かすとかえって娘さんへ二次相続となった際には、負担増になりかねません。そんな相続の不安が残らないように対策をしたいと思い立ち、私のところへ相談にこられました。娘さんにはお孫さんが二人いて、これからまだまだ教育費が必要になりますが、娘婿が転職したばかりで収入が多くないというお話も伺ったため、早めに財産を活用できるよう対策をしました。
まずは、ご主人の相続対策として、預貯金を取り崩し、 5,200万円で賃貸用のマンションを2戸購入。不動産に換えたことにより財産評価は30%程度に減額できました。次に、ご主人が所有するアパートの築年数が古く、修繕費がかかることも不安材料になっていたので、この機会にアパートを2,200万円で売却。そして、諸費用などを差し引いた2,000万円で別の立地に賃貸マンションを購入し、こちらも不動産の財産評価は30%程度に減額。その後、その賃貸マンションを娘さんに贈与しました。「相続時精算課税制度」を利用することで贈与税の負担はありません。また、残った現金でご主人とEさん二人分の生命保険を非課税枠に収まる 1,000万円分契約をして、さらに節税効果を高めました。
◇対策したことによる節税額:471.5万円◇
<対策前>
財産評価 1億2,400万円
相続税 620万円
[対策前の相続財産 1億2,400万円の内訳]
アパート:1,500万円
預貯金:7,000万円
その他(自宅):3,900万円
[対策前の相続税 620万円の計算式]
1.課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を計算します。
財産評価 1億2,400万円 − 基礎控除 4,200万円(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数2人)
=8,200万円
2.Eさん、子ども1人の課税遺産総額を、それぞれ法定割合2分の1と想定し4,100万円に税率20%を掛け、定められた控除額200万円を引きます。
Eさんの相続税:
4,100万円 × 20% − 200万円=620万円
⇒配偶者控除により、Eさんの相続税額は0円に。
娘さんの相続税:
4,100万円 × 20% − 200万円 = 620万円
<対策>
・ご主人の預貯金7,000万円を解約し、5,200万円で賃貸用マンションを2戸購入。不動産評価は30%程度まで減額となり1,560万円に。
・ご主人の古くなったアパートを2,200万円で売却し、諸経費を引いた2,000万円で別の立地に賃貸用マンションを購入。不動産評価は30%程度まで減額となり600万円に。その後、娘さんに贈与するも「相続時精算課税制度」を利用することで贈与税の負担なし。
・残った預貯金のうち1,000万円でご主人、Eさん二人分の生命保険を契約。非課税枠に収まるので相続財産には含まれない。
対策後 財産評価 6,860万円
相続税 148.5万円
[対策後の相続財産 6,860万円の内訳]
賃貸用マンション2戸:1,560万円
賃貸用マンション1戸(娘さん贈与分):600万円
預貯金: 800万円
その他(自宅):3,900万円
[対策後の相続税 148.5万円の計算式]
1.課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を計算します。
財産評価 6,860万円 − 基礎控除 4,200万円(3,000万円 + 600万円×法定相続人数2人)
=2,660万円
2. Eさん、子ども1人の課税遺産総額を、それぞれ法定割合2分の1と想定し1,330万円に税率15%を掛け、定められた控除額50万円を引きます。
Eさんの相続税:1,330万円 × 15% − 50万円 = 148.5万円
⇒配偶者控除により、Eさんの相続税額は0円に。
娘さんの相続税:1,330万円 × 15% − 50万円 = 148.5万円
【節税額】
620万円 - 148.5万円 =471.5万円
対策したことで、娘さんには贈与された不動産から家賃収入が入るようになり、生活に余裕が生まれました。残る2つのマンションもいずれ時期を見て、お孫さんに贈与をするお考えです。
このように不動産で贈与することで価値の高い財産を残すことができます。ただ銀行に預けて現金を残すのではなく、不動産を購入し、評価を下げて贈与する方法もあるということを覚えておきましょう。
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執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。
本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、その内容について、弊社が保証するものではございません。