2014/02/10
相続税を減らす生前の不動産対策【贈与編】
20年過ぎていれば無税で自宅を妻に渡せる
財産を所有するのは夫だけで、妻はいわゆる「専業主婦」の立場で家族を支えてきたご家庭は多いことでしょう。妻の貢献があればこそ、夫は仕事に専念でき、財産を形成できたのですから、相続においては配偶者の権利は保護されており、財産を半分得る権利があります。
生前であれば、配偶者には贈与の特例があり、婚姻20年以上の妻に居住用の不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、2,000万円までは贈与税がかかりません。通常の基礎控除額を組み合わせると2,110万円までは贈与税がかからずに財産を受け取ることができるのです。
相続開始前3年以内に贈与された財産は、みなし相続財産として相続税を課税されますが、この配偶者控除を受けた場合だとみなし相続財産とはならず、除外されます。贈与を受けた翌年、税務署に贈与の申告をする必要があり、登記費用や取得税がかかりますが、夫婦間の合意により手続きをするだけで、2,110万円の財産がすぐに、確実に、配偶者のものとなり、節税することができます。
節税対策に時間がかけられない場合や、手間がかかるような対策はしたくない場合などであれば、登記手続きをするだけで形は変わらない贈与は、簡単にできる節税と言えます。
贈与する土地と建物が2,110万円を超える場合は、持分を贈与することで相続税対策になる場合があります。たとえば5,000万円の自宅であれば5分の2を妻、5分の3を夫の持ち分として登記します。こうして贈与特例を利用して自宅を夫婦の共有名義にした場合、売却のときに共有したメリットが生まれます。
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といいます。共有のマイホームを売った人の譲渡所得の計算は、共有者の所有権持分に応じて行います。共有者一人につき最高3,000万円ですので、夫婦合わせて6,000万円の特別控除ができるようになります。
家屋は共有でなく、敷地だけを共有としている場合、原則として家屋の所有者以外の者はこの特例を受けることはできませんので、土地、家屋ともに贈与を受けておく必要があります。
現金よりも不動産で贈与したほうがお得
現金の贈与は一般的に節税対策として多くの方が実行されていることでしょう。現金などの金融資産は額面どおりの時価で評価されます。100万円の現金は、100万円の価値だということです。
しかし、不動産の場合は少し事情が違います。なぜなら不動産は時価よりも低い路線価や固定資産税評価で評価されますので、より多くの価値分を贈与できるということです。
たとえば、都市部の場合、現在の地価は上昇しており、将来さらに跳ね上がることもあります。そうすると評価の低いときに贈与してもらうと有利です。賃貸物件なら、贈与後の家賃収入も受け取ることができ、節税効果と利用価値が得られます。
そうなると、住宅資金の贈与よりも住宅をもらったほうが得だということです。相続税法上の建物の時価は固定資産税評価額、土地は路線価で決まるので、市場での時価が1億円の都心の土地と建物でも評価額は半分以下ということが普通にあります。そのため、住宅購入資金として現金を生前贈与してもらうより、親が住宅を購入し、それを贈与してもらったほうが節税になるのです。
相続時精算課税制度では、相続財産として合算する贈与財産(相続時精算課税適用財産)の価額は、贈与時の価額で計算されるため、相続時に実際にその財産の価額が上がっていれば結果的に節税となります。贈与財産が「贈与時の価額」と「相続時の価額」が一緒であるならば、相続税の節税にはなりません。
しかし、贈与財産の「贈与時の価額」と「相続時の価額」が一緒である場合でも、収益物件を贈与するならば、所得税、相続税の節税となります。
たとえば、親が賃貸アパートを所有している場合、家賃収入のうち必要経費や所得税などを差し引いた残りの現金は、毎年、貯まって相続財産となり課税されます。ところが、賃貸アパートを子供に贈与すれば、その後の家賃収入は子供のものとなり、相続財産の増加を防ぐことになります。また、子どもは相続税納税資金として蓄えることができます。また、所得税についても、親だけの賃貸事業にするよりも、子どもも家賃収入を受け取ることで親の家賃収入が減り、所得税の税率が下がります。
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執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。
本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、その内容について、弊社が保証するものではございません。