2016/04/11
2つ以上の不動産を持つ60代70代の相続対策~空き家にしない決断~
シニア世代においては、財産の中で不動産の占める割合は高く、財産の半分以上は不動産だと言われています。そして、その不動産のほとんどが今住んでいる自宅です。
また今では、親子世代がそれぞれ別の家で生活するパターンが増えています。子どもたちと一緒に大家族で生活することが当たり前の時代はもう過去のこととなっています。
なので、親世代が亡くなって、子どもは自分の住む家と親の自宅を所有するケースは珍しくありません。
しかし、親から相続した2軒目の家に住まない場合は要注意。空き家には固定資産税がかかるため、負担を伴う資産となってしまいます。
case.住まない家を売却し、資産組み換えで節税効果を得た実例
被相続人:本人(Aさん70代女性)
相続人:旦那さん、長男、次男
Aさんは、旦那さん名義の家に長男家族と一緒に二世帯住宅で暮らしています。次男もいますが、別の場所に自宅を買って済んでいます。
Aさんの旦那さんは設備工事会社を経営しており、長男が仕事を継いでくれているので、そろそろ世代交代の時期だとご夫婦で話し合われていました。
またAさんは、養母である叔母が昨年亡くなったため、叔母が住んでいた家を相続しました。子どもがいない叔母夫婦と養子縁組みをしていた Aさんは、叔父が亡くなったあと、ひとりで暮らしていた叔母を長年通いながら面倒を見てきたのです。
課題は2軒の家があるということ
叔母の家は立地の良い場所にありましたが、Aさんご夫婦も息子さんご夫婦も、二世帯で住んでいる今の自宅から出て、叔母の家に住むという選択肢は考えられませんでした。しかも、叔母の家は、立地は良いものの築40年以上と古く、人に貸すこともできないほど老朽化していました。
相続財産の確認
叔母の自宅は、土地が80㎡あり路線価が1㎡あたり37万円になるので、土地の評価は2,960万円。そのほか木造2階建ての建物の評価は65万円、預金が200万円ありました。葬儀費用が150万円かかったので、財産評価は3,075万円になりました。
叔母の相続人はAさんひとりで、相続税の基礎控除3,600万円以内に収まり、相続税の申告は不要に。分割協議なしに相続手続きができ、名義替えは済ませることができるのですが、住まない家をどうすればよいものかと、私のところへ相談に来られました。
対策の提案1:家を売却して現金化
叔母の家には住まないことは明白でしたので、まず、今の家を建て直して賃貸事業をする意思を確認しましたが、Aさんは、今の年齢で建築費の融資を受けて賃貸事業をすることは荷が重いとのことでした。
なので、次に、売却することをおすすめしました。
叔母の家の土地の路線価は2,960万円ですが、市場価格は4,000万円程度と試算。Aさんが売却を決断されると、ほどなく買い手が見つかり、4,500万円で売却ができ、手数料、譲渡税などを引いた後の手取り額は3,200万円になりました。
Aさんには預金3,000万円と生命保険2,000万円(うち非課税1,500万円)があったので、このままではAさんが亡くなった時には相続税がかかってしまいます。
対策の提案2:節税対策のために購入
そこで、売却代金手取り額の範囲で区分マンションを購入することを提案。Aさんは、3,000万円で1LDKの物件を購入し、家賃15万円で貸しました。
預金しても、利息は期待できないばかりか節税になりません。しかし、その現金を活用して賃貸不動産を購入しておけば節税効果があり、賃貸収入も得られます。
試算すると、区分マンション購入後のAさんの財産は、不動産購入の節税効果により相続税はかからない範囲に。相続税の申告も不要となりました。
対策ポイント
・住まない家は売却
・預金のままでは節税できないため、賃貸不動産を購入して節税
Aさんの場合、叔母の自宅を相続してから、すぐに売却を決断されたのがとても良い判断だったと言えます。
住まない、活用しない不動産には、固定資産税などの税金や光熱費などの維持費もかかります。また、老朽化しているだけに空き家のままでは火災や倒壊などの恐れもあり、近隣に迷惑をかけるかもしれません。
早く課題を明らかにして適切な対策を取られたことで、無駄な出費や事故の不安をなくすことができ、将来を見据えた資産組み換えが実現できたのです。
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執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。
本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、その内容について、弊社が保証するものではございません。