2015/07/17
小規模宅地等の特例を使って賢く相続税を節税しよう
自宅や会社の土地の評価額を大幅に減額してくれる「小規模宅地等の特例」
「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が保有していた宅地の評価を減額してくれる特例です。自宅の土地に本特例を適用できれば、決められた限度面積まで評価が80%減額されます。
2015年から条件が緩和され、居住用宅地の場合はそれまでの240m2から330m2まで限度面積が拡大、会社や工場などの事業用宅地の場合は400m2まで適用を受けることが可能になりました。また、今までは居住用宅地と事業用宅地のいずれかを選択しなければならなかったところ、改正によって、居住用宅地330m2と事業用宅地400m2を併用して適用が受けられるようになりました。最大で730m2まで80%減額にしてもらえるということです。
要件が複雑なので専門家に相談を
また、独立型の二世帯住宅でも2014年1月1日以降の相続には「小規模宅地等の特例」の適用が受けられるようになりました。ただ、親の家と同じ敷地内に子どもが自分で家を建てて子どもが住む場合は「同居」とみなされず、特例の適用は受けられませんのでご注意ください。
また、同居していても親が老人ホームに入所して入所中に亡くなった場合特例が使えない場合があります。介護や治療のために一時的な入所で、他人に貸したりしていなければ特例の適用が受けられます。
このように、「小規模宅地等の特例」は要件が複雑ですので、ご自分で判断せずに専門家に相談することをお勧めします。
評価の高い土地を自宅にすることが節税につながる
複数宅地を所有している場合は、「小規模宅地等の特例」をどの宅地に適用するかにより、相続税が大きく変わる場合があります。
たとえば、土地の評価が低い地方のマンションを自宅にするよりは、都市圏で路線価が高い土地に自宅がある方が評価減は大きく、節税効果が高まります。よって、計画的に節税するためには、土地の評価が高いところを自宅にするという選択肢もあります。
なお、「小規模宅地等の特例」の適用を受けるには、申告期限までに遺産分割協議が整っていることが条件になるのでご注意ください。遺言書を作成しておくことでも特例を適用できます。
〈実例〉
父親の土地や自宅を相続するMさん
被相続人:父親
相続人:本人(Mさん 50代男性)、弟、妹(ともに50代)
Mさんは部品製造会社の3代目社長です。80代になるお父さんは、10年前に会社をMさんに譲って会長職に退きました。お母さんがすでに亡くなっていることもあり、Mさんのお父さんは、Mさん家族と同居していた自宅を出て、別荘の温泉付きのリゾートマンションで一人暮らしをされていました。
悠々自適な暮らしを送り、まだまだ元気なMさんのお父さんですが、先々のことを見据えて相続のことを調べてみると多額の相続税がかかってくることが判明しました。お父さんの財産には、自宅や別荘のほかに預金や自社株などがあり、自宅と土地をMさんが相続することで、家族から同意が得られていました。
Mさんは節税しようと、私のところに相談に来られたのですが、自宅はお母さんが亡くなっているため配偶者の特例が使えず、お父さんの別荘のマンションには同居する相続人もいないため、居住用の特例も使えませんでした。
詳しくお話を伺うと、自宅の築年数がずいぶんと経っており、建て直しの時期がきているため、自宅を建て直す計画があるということがわかりました。計画では、Mさんが借入をして自分名義で建て直すことを考えられていました。
そこで、もう一度お父さんと同居し、お父さんの土地に、父親名義の家を建て直すことを提案。そうすることで「小規模宅地等の特例」の適用を受けられるようになりました。建築資金はお父さんの預金を使うようにします。
◇対策したことによる節税額: 4,551万円◇
財産評価 3億1,500万円→1億4,600万円
相続税 5,910万円→1,359万円
〈対策前〉
財産評価 3億1,500万円
相続税 5,910万円
[対策前の相続財産 3億1,500万円の内訳]
自宅:1億5,500万円
(土地1億5,000万円 + 建物500万円)
預金:8,000万円
その他(別荘、有価証券):8,000万円
[対策前の相続税 5,910万円の計算式]
1.課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を計算します。
財産評価 3億1,500万円 − 基礎控除 4,800万円
(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数3人)
=2億6,700万円
2.お母さんが亡くなっているので、子ども1人の課税遺産総額を法定割合3分の1と想定し、8,900万円に税率30%を掛け、定められた控除額700万円を引きます。さらに3人分を合算します。
(8,900万円 × 30% − 700万円 )×3人
= 5,910万円
〈対策〉
お父さんとMさんが同居することで小規模住宅地等の特例が使えるので、土地の評価は1億5,000万円から80%減額の3,000万円に。
さらに父親名義で預金6,500万円を活用して自宅を建て直し、建物評価は2,600万円(40%と想定)に上がるも、自宅の財産評価はトータルで5,600万円に。
〈対策後〉
財産評価 1億4,600万円
相続税 1,359万円
[対策後の相続財産 1億5,100万円の内訳]
自宅:5,600万円
(土地3,000万円 + 建物2,600万円)
※小規模宅地等適用旧自宅の解体費:-500万円
預金:1,500万円
その他(別荘、有価証券):8,000万円
[対策後の相続税 1,359万円の計算式]
1.課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を計算します。
財産評価 1億4,600万円 − 基礎控除 4,800万円
(3,000万円 + 600万円×法定相続人数3人)
=9,800万円
2. 子ども1人の課税遺産総額を法定割合3分の1と想定し、3,266万円に税率20%を掛け、定められた控除額200万円を引きます。さらに3人分を合算します。
(3,266万円 × 20% − 200万円 )×3人
=1,359万円
【節税額】
5,910万円 − 1,359万円 = 4,551万円
対策を施したことにより、結果的に相続税を4分の1にまで減らすことができました。Mさんには今後、現金や有価証券をそのまま保持するのではなく不動産活用することを提案しました。そうすることで、さらに節税効果が高まるのです。
減額の幅が大きい分、節税の鍵は「小規模宅地等の特例」を上手く使えるか否かにかかっているといっても過言ではありません。亡くなる前に「小規模宅地等の特例」を見込んだ対策をお勧めします。
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執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。
本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、その内容について、弊社が保証するものではございません。