月光写真家 石川 賢治 さん
オフィシャルウェブサイト http://gekkouyoku.com ツイッター http://twitter.com/moon_kenji
1945年福岡県生まれ。67年日本大学芸術学部写真学科卒業。ライトパブリシティ入社。 76年よりフリーランス・フォトグラファーとして活動を始め、CF・スチールを数多く手掛ける。 84年秋より月光写真に取り組み、初の写真集『月光浴』(1990年小学館)が一大センセーショナルを巻き起こす。その後の写真集に『神の降りた夜/新月光浴』(1993年集英社)、『大月光浴』(1996年小学館)、『満月の花』(1998年小学館)、『月光の屋久島』(2000年新潮社)、『地球月光浴』(2001年新潮社)、『京都月光浴』(2003年新潮社)、『天地水月光浴』(2006年新潮社)。 最新刊は『宙の月光浴 Space of Spirit』(2012年小学館)。DVD『月光浴 Moonlight Shower』(2006年カルチュア・パブリッシャーズ)を発表。展覧会も多数開催。
最初の写真集「月光浴」(1990年、小学館)が発刊された時、その幻想的とも言える幽玄な世界は多くの人に衝撃と感動を与えました。そこには吸い込まれそうな青の世界が広がっています。
石川さんはこの青の世界のことを、著作の中で『大気のカーテンの向こうには、青い宇宙がある。満月の光は、このカーテンを取り払う。地球と宇宙が繋がる。月光写真の青は、いわば成層圏(せいそうけん)の青だ。地上にいて宇宙を感じる。それが月光写真の世界なのだ』と記しています。
そんな青い世界が広がる月光のあかりで、自然を撮ろうと思ったきっかけは「インスピレーションとしかいいようがありません」と石川さん。 1984年、仕事でハワイのカウワイ島に行った時のことです。満月の夜、浜辺へ散歩に出かけた石川さん。「月光が明るくて、砂浜は輝いて見えました。その時です。目の前を突然、鳥が横切ったのが見えたのです。驚きました。その瞬間、写真が写るかもしれないというインスピレーションを感じたんです」。
それから半年後、サイパン島を訪問。「原生林の森の中に生息するジンジャーのつぼみを月光のあかりだけで撮ってみようと思ったんです。森の中は真っ暗闇。でも、もしかしたら影だけでも写るんじゃないかと、ヤマ勘で撮影したんです」。その勘が見事的中。「先がピンク色を帯びた白いつぼみが、月光の中で凛と写っていました」。衝撃を受けた石川さんは、そこに「宇宙感覚」を感じたといいます。そこから石川さんの月光写真への取り組みがスタートしました。
でも、その道は易しくはありませんでした。「月光というのは、太陽の46万5000分の1になって地上に届いているので、露出計が動かないんですよ」と石川さん。フイルムで撮影し、現像が上がってくるまでどうなるかわからず、「その間はずっとドキドキして待っています」と力を込めました。
試行錯誤の結果、「自分の手のひらの手相が露出計代わり」なのだそうです。「失敗を繰り返しながら、うまく撮影できるまで10年はかかりましたよ」と石川さん。月光写真は並々ならぬ努力と想いの結晶と言えそうです。
石川さんに一番感動したロケ地をお聞きしました。「どこもすべて感動しましたが、特にイグアスの滝です。水の音とそれがもたらす地響き、僕のまわりにはゲンジホタルの3倍はありそうな蛍が飛んでいて、虹も架かっていました。まさに地球本来の姿と向き合えた気がしました」。
さらに世界を回っているからこそ、日本人としてのアイデンティティを強く求めた石川さん。その作品が「京都月光浴」(2003年、新潮社刊)の中で発揮されました。「銀閣寺には月を愛でるための庭があって、白砂を盛り上げた銀沙灘(ぎんしゃだん)、円錐形の向月台(向月台)が月光を浴びて輝きます。その砂の表情は本当に美しかったです。一晩そこに居て、500年前の時間を肌身で感じました」。
満月の日は千年先もその先も、ずっと決まっています。だから石川さんは、上弦の月になるとロケ撮影の準備をごそごそ始めるそうです。「29.5日ごとに満月になるので、大体頭の中にもうすぐだって感じるんです。いわゆる満月に反応する狼男ですね(笑)」
表現へのあくなき探究心の原点には、何があるのでしょうか。「若い頃は海外の写真集をたくさん見ましたね。今考えると自然を撮っている人の写真集は印象に残っています。でも、一番の影響は月そのものですよ。月光を意識しなかったら、こんなことはしてないし、いまだにコマーシャルをやっています」。
石川さんは自分自身の写真を前に「まだまだです」と言います。「やっと入口まできたという感じです。究極、宇宙感覚という未知の世界まで到達したい」ときっぱり。
その瞳の奥には、世界中の月光に照らされた自然の絶景が焼きついていて、そこから何が生まれてくるのか、生み出せるのか、終わりなき葛藤の中で、今日も世界のどこかでシャッターを切り続けているに違いありません。
満天の星の下、悠久の時を刻み地平線の彼方まで広がるモニュメントバレー(アメリカ)、果てしなく続く塩の大地 ウユニ塩湖(ボリビア)、世界遺産の大瀑布イグアスの滝にかかる月虹(ゲッコウ)(ブラジル / アルゼンチン)、200万年の間に風が大地を削ってできたマンゴ湖跡(オーストラリア)、そして太古から変わらぬ姿を見せるマダガスカルのバオバブの木、ガラパゴスのイグアナやゾウガメなど化石的動植物。これまでよりも一層、満月の下の地球に宇宙空間を感じる風景を撮りたいと7年の歳月をかけて撮り綴った、満月の夜の地球の肖像です。
『星とイナズマ』
アメリカ / モニュメントバレー
モニュメントバレーは島国日本で考えていたより広大だ。下見をして回るにつれ神々しい想いが増していった。ストームが迫っていたが満月の夜、奇跡的に晴れてきた。遠くで雷鳴が轟く中、星空の天空と大地の間の稲妻が撮影できた。
『悪魔の喉笛』
ブラジル・アルゼンチン / イグアスの滝
ブラジル・アルゼンチンの国境にまたがるイグアスの滝は大小300の滝が幅4キロにわたって連なる世界三大名瀑の一つである。イグアス最大の滝は落差80メートルに及び、悪魔の喉笛と呼ばれる。この作品はアルゼンチン側から見た悪魔の喉笛。流れ落ちる滝と、月を入れることでスケール感を出したかった。滝の飛沫を浴びながら撮影。
『湖に映るバオバブ』
マダガスカル / ムルンダバ
月の出の静寂の時。風が止むと湖面にバオバブの林が映し出された。
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