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知っておきたい月の話

そもそも、秋に月を愛でる風習が定着したのはなぜなのでしょうか。また、日本では月に「うさぎ」が住んでいるといいますが、ヨーロッパ諸国では「魔女」が住んでいるとも。そんな不思議がいっぱいの月の話を「国立天文台 三鷹キャンパス天文情報センター」の小池明夫さんに、紐解いていただきました。

秋の月がきれいな2つの理由

秋の月がきれいな2つの理由

1つは、空気が適度に乾燥していて、水蒸気量が少ないためと言われています。「大気がぼやけることがなく、くっきりとした月が見えます」と、小池さん。

2つめは、月の高さ。「夏は南の低い位置に月があり、色はオレンジ色に近い色になります。少し太陽と似たような感じですね。冬はもっと高い位置に見えて、色は白っぽい月になるんです。春と秋はそのちょうど中間の位置を通ります」と、高さによって色も変わってくることを教えていただきました。

それでは、春の月はどうなのか疑問です。「春はおぼろ月夜といわれるように、綺麗に見えることが少ないんです。花粉や大気の影響もあると思います」と、一番は、やはり秋なのですね。「澄んだ黄色で、その上、湿度が低くなり綺麗ですよ」とのことです。

中秋の名月を愛でるようになったのは、いつ頃?

中秋の名月を愛でるようになったのは、いつ頃?

中秋の名月は、一節によると、中国から伝えられ、平安時代には、月見のことを観月(かんげつ)と称し、貴族たちが宮中などで月見の宴を開いていたそうです。庶民の間では月を神聖なものとしてあがめ、そこに、日本の秋の収穫物を供えて、五穀豊穣を祝う祭りごとにひっかけて広まったそうです。

厳密に言うと、中秋の名月(十五夜)とは旧暦の8月15日だけを指します。「仲秋の名月」という表現もありますが、「仲秋」とは、秋を初秋(旧暦7月)、仲秋(同8月)、晩秋(同9月)の3つに区分し、十五夜だけでなく、その期間に現れるいろいろな月の総称を指します。

その他、中秋の夜に雲や霧などで、月が見え隠れすることを「無月(むげつ)」、雨が降ることを「雨月(うげつ)」と呼ぶなど、実に風流な言い回しがあります。さらに、俳諧では8月14~17日の夜をそれぞれ「待宵(まつよい)」「十六夜(いざよい)」と言い、昔の人は名月の前後の月を愛でる粋なこともしていたのだそうです。

今年(2013年)の中秋の名月は、「9月19日(旧暦の8月15日)」になります。また、必ずしも中秋の名月が満月だとは限らないと小池さんは言います。「今年は9月19日ですが、旧暦の8月15日に当たる日は9月初めから10月初めの間で毎年異なります。
満ち欠けの周期は29.5日なので、新月の日を第1日として第15日頃が満月となりますが、月が軌道上を動く早さはその時ごとに異なるので、満月の日は15日の前後最大で2日くらいの差が起こるんです」。このように、毎年満月の日は変動します。

月は私たちにとって唯一無比の特別な天体

月は私たちにとって唯一無比の特別な天体

身近にある月ですが、その起源は諸説あります。近年有力とされているのが「巨大隕石衝突説」です。隕石が地球に落ちて、その衝撃で飛び散った地球と隕石の破片が、軌道上で集積して月を形成したというもの。「アポロ計画で、月から持ち帰った石を解析してわかってきたそうです」と小池さん。

そんな月ですが、楽しみ方もいろいろ。「満月だけの光で照らされた景色というのは都会ではもちろん、地方へ出向いてもなかなか感じることができません。0.1ルクス(一般的な日中の部屋は100~200ルクス)という微少な光なので、山奥に入らない限り、難しいです。」と小池さん。そんなわずかな月の光が私たちの地球を照らしているのですね。「月のあかりだけで見る自然はとっても綺麗ですよ」と、月の魅力を語っていただきました。

月は地球に住む人間が、唯一肉眼で地表面を見ることができる天体です。「もし、月がなければ海の汐の満ち引き、生物が陸上へ進化する過程も生まれなかったかもしれないほど、地球の生命体すべての歴史において重要なものだったんですよ」と、小池さん。月の持つ神秘的な力を改めて実感させられる話に、驚くとともに月の持つ豊かな魅力をしみじみ噛みしめてしまいました。ぜひこの機会に月の魅力、月が私たちにとって特別な存在であることを知って、お月見を楽しんでみてください。

月と文学

古代ギリシャの時代から現代の文学、詩集や絵本まで、月はさまざまに表現されています。中秋の名月を愛でながら、月にまつわる文学に触れあってみませんか?

『ムーン・パレス』

『ムーン・パレス』

自らの家系の謎とは

人類が初めて月を歩いた年、大学に入学したマーコは、中国料理屋「ムーン・パレス」に通っていた。父を知らず、母も唯一の血縁だった叔父も失い、絶望したマーコは友人と食べたクッキーに「太陽は過去であり、地球は現在であり、月は未来である」という文字を見た。その後、マーコは奇妙な仕事を見つけ、依頼を遂行するうち、家系の謎にたどり着く。
ムーン・パレス
ポール・オースター(柴田元幸 訳)
新潮文庫刊

『ギリシア神話』

『ギリシア神話』

ギリシア神話の伝説

著者アポロドーロスは、古代ローマ時代の著作家。この本は、純粋に古いギリシアの著述を典拠とした、ギリシア神話の原典ともいえる内容となっています。月の女神とされる「ヘカテ」や「セレネ」、「アルテミス」など、満月や三日月といった様々な月の形の女神が登場します。神話に興味がある方はぜひ読んでみては。
ギリシア神話
アポロドーロス(高津春繁 訳)
岩波文庫刊

『中原中也詩集』

『中原中也詩集』

中也の恋愛観を感じる

この本に収められている「湖上」という詩には、月が登場します。「ポッカリ月が出ましたら、 船を浮かべて出掛けませう。」この一文で始まる詩には、中原中也の恋愛観や幸福感が込められているような印象をうけます。一緒に船に乗っているのは恋人であると考えられ、どこか切ない思いにもなります。
中原中也詩集 在りし日の歌
中原中也
角川文庫刊

『おつきさまこんばんは』

『おつきさまこんばんは』

月や雲とおはなし

空に浮かぶお月さまを不思議な生き物のように見つめる赤ちゃん。お月さまやその前を横切る雲とお話をするように描かれた絵本。お月さまに描かれた優しい顔や困った顔、楽しい顔に子供がワクワクしそう。小さなお子様への読み聞かせ、ファースト絵本などにとても人気の高い絵本です。
おつきさまこんばんは
林明子
福音館書店刊

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