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岩田アリチカさんインタビュー

快眠プロデューサー 岩田アリチカ さん

快眠術の専門家。睡眠環境、睡眠習慣のコンサルティング、眠りに関する教育研修、睡眠関連商品の開発、寝具の開発、睡眠環境アドバイザーの育成などを行っている。1983年、家業である京都の老舗寝具メーカー(創業1830年)に入社。1988年より独学で睡眠の研究を始める。その後、日本を代表する睡眠の研究者らに師事し、睡眠研究機関と産業を繋ぐ橋渡し役として活躍する。眠りのメカニズムに裏付けられた見識は、ヒット商品を数多く産業界に送り出すことに成功する。その活動は商品企画だけに留まらず、多くの異業種コラボレーション、大学との共同研究およびそのコーディネートなど快眠ビジネスにおける活動を推進している。

株式会社イワタ http://www.iozon.co.jp 寝具御誂専門店IWATA京都店/東京・銀座店 http://iwatashop.jp 有限会社アウェイク http://www.iwata-arichika.com

創業1830年(天保元年)。江戸の人々の眠りを支え、科学へと進化させたIWATA。その直営店舗の東京銀座ショップへ訪れ、岩田有史(アリチカ)さんにお話を伺いました。寝苦しい熱帯夜を快適に過ごす、知恵を教えていただきました。深い眠りを作る寝具作りに、あくなき挑戦は続く。

グッドデザイン賞を受賞したIWATAの看板商品「ラークオール」(上)。 タタミのベッドも開発(下)。

そもそも岩田さんが寝具と向き合いながら『眠りを科学する』という考えに至ったのは入社して何年かたった頃です。

「30数年前までは寝具の業界は、単に眠るときの道具を作るところでしかなくて、睡眠そのものについては深く考えていなかったと思います。当時の新作発表会では、柄が変わったから新作、新しい種類の綿を使用したから新作、という感じでした。
そんなある日、女性の新入社員に『今年は新作がひとつもないんですね』と言われたんです。私は質問の意味がわからなくて『どういうこと?』と聞くと、『去年と柄が変わっただけです。新作というからには去年より今年の方がずっと良く眠れるようになるものじゃないんですか?』と」。

彼女の言うことを聞いて、「すごいショックでした。今まで、より上質な寝具をどう作り上げていけばいいのかだけを考えて、寝具と眠りを結び付けてなかったんです。これからは睡眠とは何かを知って、寝具を作らないと寝具を作ってますとはいえないな」と思った岩田さん。そこから岩田さんの睡眠を科学するための勉強がスタートしました。

気持ちは何とかしたいと思っても眠りの研究者との出会いに恵まれず「少しあせりました」。と岩田さん。でもモノ作りの強い思いは必ず出会いを作るもの。たまたま参加した異業種交流会で睡眠を研究されている方の奥様との出会いがありました。

そこで得られた知恵は徐々に活かされていき、「寝具を変えたらよく眠れるようになりました」という声を聞くたびにあのときの出会い、それからご指導をいただいた先生方への感謝を思う岩田さん。

IWATAの枕は3つのクッションに分解されていて、人それぞれの頭に合うように調整できます。

現在IWATAではお客様の眠りに対する悩みを聞きながら、寝具選びの適切なアドバイスを行っています。

「眠りの悩みは大きく分けて3つです。(1)寝つきが悪い(2)夜中に目が覚めて困る(3)朝の目覚めが悪い。それも年齢によって特徴があって、若い方は目覚めが悪い、年齢を重ねると夜中に目が覚めるなど、年齢とともに変化していくんですね。そうしたいろんな状況を加味した上で、最適な寝具や枕のフィッティングをご提供させていただいています」

近年、「人々の眠りに対する意識が変わってきているように感じます」というご指摘も。「今まで、起きていることが生きていることで、寝ているのはそのおまけという感覚だったと思うんです。それが、24時間を通して人生であり、ライフスタイルであると意識し始めたように感じます。仕事でも勉強でも、夜に深い眠りを摂らないと昼間のパフォーマンスも上がらないですからね」と岩田さんは危惧。

世界でも類を見ない4種類(キャメル・ヤク・ホース・カシミヤキャメル)の天然毛による積層構造ベッドマットレスを実現しました(右下)。

さらに寝苦しい熱帯夜の過ごし方にも注意を喚起されます。

「じつは、睡眠中の熱中症が多くなっているんですよ。高齢者はもちろん若い方や小さなお子さんも注意が必要です」。そのためにも「『室内環境、寝床内気候』(前述参照)を整えて、深い眠りが得られる環境を作ることが大切です」と岩田さん。

「夏の寝床内では背中と敷寝具が接している部分が一番重要。そこに熱と湿度がこもりやすいので寝つけない、寝返りが多くなって深い睡眠が得られない、など質のいい睡眠をとれない夏こそ、寝具のことをお考えになるタイミングかもしれません」

問題意識を自ら課し、果敢に挑戦を続けてきた岩田さん。「これからも自然にある良い素材を使って、身体に負担をかけない寝具づくりをしていきたいですね。四季を通じて快適に眠れるような、そんな寝具が私の目指す理想です」。眠りに対する真摯な姿勢を前に、この方になら「任せられる」という確信がココロの中にあふれてきました。

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