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三代目 小川良雄さんインタビュー

小川産業株式会社・3代目社長

昭和29年生まれ、江戸川区出身。明治41年創業の製粉業・小川産業三代目。小川のこだわりとして「創業以来から伝わる石釜での二度煎り」「麦は砕かず、まあるい粒のままにこだわること」「毎日必ず、目で舌で鼻で煎り具合を確認する」「現地まで足を運び、自分の目で大麦を選ぶ」。これらを守りながら生涯、やりがいのある仕事を愛し続ける小川良雄さん。柔道5段。毎日麦茶を飲み続け、健康であることの証として現在も試合に出場している。

http://www.jah.ne.jp/~ogawa-no/

明治41年に創業以来、今年で105年目にあたる老舗の小川産業では昔ながらの石釜で二度煎りする製法で日本の伝統食である麦茶を製造しています。そこの3代目社長にあたる小川良雄さんに「麦茶の魅力やこだわり」についてお話を伺ってきました。昔ながらの麦茶の味をそのまま今に伝える、江戸職人の粋。

下町風情が残る東京都江戸川区に小川産業はあります。大麦の何とも香ばしい香りに誘われるようにして製造所へ入って行くと、3代目社長の小川良雄さんが笑顔で出迎えてくださいました。
「ここ数年、夏の定番として麦茶の良さが見直されてきたおかげもあって、今が1年のうちで一番忙しい時期です」。そう語る小川さんの背後には、創業以来、麦茶を作り続けてきた2つの大きな石釜がうなりをあげて稼働していました。

「石釜の中には山形産の硅砂(けいしゃ)という砂が入っていて、熱した硅砂と一緒に六条大麦を炒っていきます。なぜ砂を一緒に混ぜるのかと言うと、焼き芋がおいしく焼けるのと同じ理由で、石釜から出る遠赤外線の働きで大麦の芯まで均等に熱を通すため。最初の釜では250°Cで1分間、そこで煎られた大麦が次の釜へ移り、今度は色を付けるために180°Cで二度煎りします」

小川さんは最初の釜から煎ったばかりの大麦を取り出して「一粒、食べてみてください」と差し出してくださいました。まだホカホカに熱い煎ったばかりの大麦を食べてみると、なんとも言えない香ばしさが口の中に広がりました。次に二度煎りした大麦を食べてみると、格段に甘味と風味が増しているのがわかりました。
「何かの味に少し似ているでしょう」と小川さんに言われて思い当たるのが、ポップコーンの味。炒ったばかりの麦茶の美味しさに感動しました。

「六条大麦は栃木産と茨城産をブレンドして使用しています。2種類の麦を使うのはコーヒーの豆をブレンドして旨みを出すのと同じ理由で、それぞれの大麦の香ばしさや旨みを引き出すため。さらに石釜から出る遠赤外線の効果で二度煎りしているため、なんとも言えない香ばしさと甘味を出しています」

小川産業の麦茶は、粒のままの麦茶を1回の使用量ずつピラミッド型のティーバッグに詰めています。
「麦茶の粒をくだいてしまえば、少ない量で早く色の出る麦茶が作れますが、麦茶本来の美しく澄んだ透明感と上品な味や香りが出ません」。
麦茶本来の味を出すにはどうしたらいいか、長年試行錯誤した結果だと言います。

小川さんに麦茶の楽しみ方のコツを伺うと、「江戸時代は甘いものが高価なものとされていたこともあり、麦茶にサッカリン(人工甘味料の一種)を入れて飲むことが多かったそうです。今なら「ハチミツ」を入れて飲むのがオススメ。それに「牛乳」を入れても美味しいですよ。麦茶というと夏の定番とされているのは、ミネラルが豊富で血液サラサラにして体を冷ます効果があること。最近では熱中症予防に麦茶というのが定番になってきましたね。 私がオススメする飲み方は、夏にこそホットの麦茶です。冷たいものばかり飲んでいると逆に体は熱くなるといわれます。温かいものを飲むほうが体から熱が発散するので体を冷ます効果が増すようですよ。個人的には、お酒が好きだから麦焼酎の麦茶割りがオススメだけどね(笑)」

手間を省いて合理的なものを重んじる昨今では水出し用麦茶やペットボトルの麦茶が主流になり、煮出し用麦茶は面倒だと敬遠する声もありました。そんな中、昔ながらの製法にこだわり続け、根気強く美味しさをアピールし続けた結果、美味しさも健康効果も含め、煮出し用麦茶の良さが今また「再認識されました」と言う小川さん。

「今どき石釜で汗かきながら、せっせと大麦を煎るメーカーなんて珍しいかもしれませんね。機械で大量生産できる中、家庭でも水で麦茶のつくれる便利な時代ですから。でも、手間暇かけて作った麦茶のほうが旨いという自信があるから、これからも本当の麦茶の味や香りを多くの人たちに伝えていきたいですね」

そう語った小川さんは、愛おしそうに石釜をポンポンと撫でた。何気ないひとコマに麦茶への愛情がじわっと伝わってくる瞬間でした。

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