梅の月向農園・4代目園主 月向雅彦さん
日本一の梅の産地、和歌山県みなべ町。太平洋を見渡せる小高い丘の上に月向(げっこう)農園があります。初代園主が350年前に農家をはじめ、梅農家になったのが今から約100年前のこと。現在は4代目の月向雅彦さんが園主として奥様のゆみこさんと丹精込めて南高梅を育てています。梅本来の旨さを引き出す努力を続ける雅彦さんの梅干しや梅酒は日本全国に多くのファンを獲得しています。
大学を出てすぐ、広大な梅園を任された雅彦さん。右も左もわからない雅彦さんは「2~3年猶予期間をほしい」と当時月向梅園を守っていた祖父に直訴。農学部出身の雅彦さんは遺伝学を専門に学び、梅がどのように生育していくのかを身体で覚えたかったといいます。
梅農家は、梅の花の開花と同時に忙しくなります。「きれいですよ。何度みても感動します。山肌が白い絨毯に覆われて幻想の世界です。寒さの中で一生懸命咲いてくれているんです」と雅彦さん。その年の収穫量を左右する梅の花。キレイに咲かせるのも梅農家の大切な仕事のひとつです。
さらに梅の実はミツバチの受粉が必要です。花がしっかり咲けば、ミツバチがたくさん花の蜜を目当てに飛んできて、受粉し、それが梅の実となっていきます。
「満開時に嵐がきて花が散ってしまって、ミツバチの受粉できなかった年もあります」ミツバチは風がなく気温が11度以上ないと飛ばないことから、梅の花が咲く2月前後の1ヶ月間で受粉をさせるのは「案外難しい」とも。花の時期を経て、小さな梅の実ができ始めた頃に、20分間ひょうが降り続けて梅の実の表面を傷つけてしまったこともあるそう。
「でも今は、不作の年はあっても全体の生産量も増えて自然増があるので、出荷そのものに大きな影響がでないようになっています」。
3月から5月にかけ、暖かい日差しを浴びて梅の実はどんどん大きくなっていきます。草刈や肥料を撒きに追われます。6月になるとたわわに実った梅の枝が垂れ下がり、梅の実にも南高梅独特の紅がさしてきて、いよいよ最初の青梅の収穫です。傷をつけないように一粒一粒、手もぎし、品質検査後、消費者のもとへ。
それが終わる6月中旬、梅干し用の落ち梅の収穫が最盛期を迎えます。「梅干用はよく熟した枝から落ちた完熟の梅で、果肉が厚くやわらかく皮が薄いという南高梅の特徴を生かせる状態で収穫していきます」山の傾斜が30度近いところもあって大変な仕事です。
収穫が終わった後は、その梅をタンクに塩漬け、天日干しを経て、出荷です。「梅は、他の果物と違い生では食べないため、加工してはじめて『いいものができた』と実感します」
「梅の糖度は完熟でも6~7%くらいしかない、酸の強い果物。なので本来の酸味を落として食べやすくはちみつに漬けたりして加工しています。でも、震災後、本来の酸っぱい梅干は保存食となる、とその良さが再認識されました。甘味を加えた梅干はあまり保存がきかないのに比べて、酸っぱい塩漬けの梅干は保存もきくし、クエン酸も豊富ですから」。
これから梅干を作ろうとしている方に、雅彦さんはこうアドバイスしてくれました。
「スーパーで買った梅で梅干をつくる場合は、できるだけ大きい梅を買うほうがいいですね。完熟度が進んでいますし、小さいものを買って作るより、大きい梅の方が柔らかい梅干ができます。さらに、ちょっとへこむ程度の柔らかさの梅がオススメです」
また、作る段階ではできるだけ塩分を減らすように作りたい、と言う人がいますが、あまり塩分を控えてしまうとおいしい梅干ができないことが多いとか。できれば梅の量の18~20%の塩分、例えば梅1キロには200グラムの塩で作ってほしい、と雅彦さんはアドバイスします。
「梅には梅干や梅酒、梅肉エキス、梅ジャムなどいろいろな楽しみ方があります。私は寝る前に梅肉エキス(「梅で健康生活」ページ参照)をお湯で溶かして飲んでいますが、朝には疲れがとれてすっきり目覚めることができます。みなさんも自分に合った梅の楽しみ方を見つけて欲しいですね」。
梅園を前にした雅彦さんの梅を見つめる温かいまなざしに、先祖を思い、未来へつないでいく使命をもつ梅農家の熱い思いを感じました。
- 『南高梅』
- 皮が柔らかく、果肉が厚いのが特徴。完熟に近付くにつれ黄色味を増し、日光のあたるところは鮮やかな紅色に変わります。和歌山県の南部川村が原産です。
- 『和歌山県みなべ地区で梅の生産が盛んな理由』
- 水はけが良く、梅の生育に必要なカルシウムを多く含んだ中性質の土壌のおかげです。年間の晴天日数が200日を超え、日照時間も長く、梅が好む気象条件や、適度なミネラルを含む潮風も生育を助けています。
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